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セッション区分セッション名演題番号演者氏名(姓)演者氏名(名)演題名氏名(姓)氏名(名)所属コメント
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特別講演1康博癌細胞の孤立的および集団的浸潤:偶然と必然佐藤之俊北里大学医学部呼吸器外科学ご講演ありがとうございました。IFT20の浸潤性肺腺癌における実際の発現はいかがでしょうか。とくに微少浸潤性腺癌(MIA)の変化に興味があります。特に、浸潤の初期なのか否か。(大会長)
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團野株式会社LSIメディエンス 中央総合ラボラトリー南先生、EMTについて大変興味深く拝聴しました。有り難うございます。50年位前、がんセンター佐野量三先生らがⅡc早期胃癌の粘膜内進展の最先端部分をフロントと呼び、胃癌研究会(現胃癌学会)に美しい写真を提示しておられました。当時、先頭の細胞は誰なのかと皆考えたものです。
先生が仰せになるEMTまたはHybrid EMTそして集団的浸潤に類推してよろしいでしょうか。
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関根浄治医療法人長崎病理 EMTのこと、ためになりました。口腔の扁平上皮癌でも調べて見たいです。ありがとうございました。
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三輪秀明関西医療大学 臨床検査学科上皮性腫瘍の先進部で間葉化が起こり、浸潤が生ずると解しました。確かに実際の癌組織を見てみると、多くの場合分化度の低下が見られ、浸潤部では結合性の低下や孤立細胞化がよく見られます。しかしながら、一方では深部浸潤巣や遠隔転移巣で上皮系マーカーは保たれ、間葉系マーカーは陰性のままであることもよく観察されます。例えば、甲状腺の濾胞癌では、転移巣でも形態学的に原発巣からの逸脱がほとんど見られれないこともあります。よって南先生のご提唱されておられるhybrid ENT cell theoryが癌の進行を説明できるのは、一部のケースに限定されるのではないかと推定されます。三輪 秀明 関西医療大学 臨床検査学科
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田邉雅世奈良県立医科大学付属病院ご講演、ありがとうございました。
EMTの存在についてこの講演で知ることができました。
癌細胞の浸潤を紐解く鍵になっていることが理解できました。
Wont5,Ror2など、ゴルジ野の近くに存在している。また、IFT20、リーダー細胞が存在する。
一次線毛の有無については、標本を見るときに細胞所見の参考にしていましたが、こんなにも奥が深かったことを知りました。
この研究が進み、癌治療薬の発展に寄与することを願っています。
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康博神戸大学大学院医学研究科 生理学・細胞生物学講座三輪先生、コメントどうも有難うございます。hybrid EMTの考え方は、上皮・間葉の2極で考えるのではなく、(実際には定量的に表現することは出来ませんが)がんの種類によって、また様々なケースによって、例えば上皮的特性90%・間葉系特性10%、上皮的特性30%・間葉系特性70%というように様々な段階的(あるいは連続的)段階を考える必要があり、その段階によりがん細胞特性が(程度の差はあるにしても)異なるのではないか、という考え方です。したがって、各ケースで上皮vs間葉の程度や様式等が異なるものと考えております。
團野先生、コメント有難うございます。先頭の細胞はhybrid EMTとして上皮・間葉の両者の特性を持つものであることが考えられますが、現時点ではhybrid EMTの概念は比較的新しい考え方であり、今後分子レベルで機能との関連を含めた精査や細胞形態・特性などで特徴量を明確にする必要があると思います。
佐藤大会長、コメント有難浸潤性肺腺癌における個々の細胞レベルでのIFT20の発現はまだ解析したことがありません。肺腺癌で細胞集塊を形成する場合で検討いたしたいと思います。
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金井督之佐賀県医療センター好生館偶然と必然、心に残り響くテーマでした。癌細胞の特徴を別の視点でうかがえ大変勉強になり参考になりました。産婦人科臨床においてもそうしたスタンスで考えてみたくなりました。
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セッション区分セッション名演題番号演者氏名(姓)演者氏名(名)演題名氏名(姓)氏名(名)所属コメント
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特別講演2中川暴れる気候と暴れない気候: --人類は「予測不可能」な時代をどう生き延びたか--中野智裕純真学園大学トランプ大統領が言ってた、「温暖化はでっち上げ」は正解なのでしょうか。
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梅本瑞江自宅会員確かに自然変動に勝るほどのインパクトは人工的には起こせ無いようですが、これから寒冷期であるはずの周期が大きく外れて温暖化しているのは、観測値のグラフで分かりますね。温室効果のメカニズムは知っているのだから、その加速を緩める事は人類が出来る事の一つでしょう。
 この頃は再放送番組が多く、日本の国土が形作られたメカニズムに触れる機会がありました。宇宙物理や地質学はそのスケールが組織学とは随分かけ離れていますが、先生のご講演は面白くてしょうがないです。先生のご講演を大学の学生さんだけでなく、一般の私たちがネット上で拝聴したいと思いました。知る事で温暖化が抑えられるかも知れません。
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大石直輝山梨大学人体病理学講座中川先生の「人類と気候の10万年史 」を読んだ直後だったので、とても興味深かったです。ありがとうございます。
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中嶋義明銀河系-太陽系の密度移動における1.5億満年周期。
地球の楕円軌道による10万年周期。
現代は氷河期に向かっているという規則性と所謂二酸化炭素排出による温暖化は相殺されるのか、氷河期突入に何ら影響を与えないのか。
ただペルム期と三畳紀にシベリアで起きたこと、つまり、地球内部の地殻変動や酸素濃度の変化など周期性を逸脱する事象がありました。今後地球自体の大陸変動は考慮しなくてもよろしいのでしょうか。
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中嶋義明狩猟採集社会は持続可能。
しかし人類は農耕を選ぶという間違いを犯してしまった。
もう元には戻れない。
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佐藤之俊北里大学医学部呼吸器外科学三回目の視聴が終わりました。次の世代のために私たちは何をすべきなのか…年縞の解析、古気候解析に対する情熱、そして気の遠くなるような膨大な研究にサイエンティストの神髄を感じます。貴重なご講演ありがとうございました。(大会長)
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田中良太杏林大学医学部外科学教室(呼吸器・甲状腺)中川先生のご講演はユーモアあふれてわかりやすくとても楽しかったです。現在の気候変動をもっと広い視点で理解する必要があると認識できました。多様性を理解するうえで大変貴重なご講演有難うございました。
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小賀厚徳山口大学 院 分子病理学水月湖に行きたくなりました。顕微鏡でいいなら1 m(約40インチで、スライドガラス40枚)は、我々にとって1日慎重に作業しても疲れない程度と思います。多様性を平等に受け入れられる社会という提案に説得力がありますね。Web学会のメリットを生かし、数字など正確に知りたかった部分など何回か拝聴しました。ご講演くださった中川先生、中川先生をお呼びしてくださった佐藤先生ありがとうございました。
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石田国立埼玉病院病理診断科中川先生のご講演を大変興味深く拝聴いたしました。ヒトは将来起こることを予測するように進化してきたと言われていますが、それが温暖安定期の環境下での地質学的にはそれほど長くもないきわめて特別な期間における出来事であると気づかされました。
また、ある事象の成り立ちを理解する上で広く,深く、長い、科学的な視点がいかに重要かということを改めて気づかされました。
ある時、予測もつかない急激な変化が起こるというのは、多様性の中、様々なnegative feedbackが効いている状況から、何か突然にpositive feedbackがかかる事象に変じ、一気に指数関数的に事象が動いて閾値を越えてしまうということなのか?とも思いました。たとえば、H2Oが固体になる0℃を越えるか越えないかで(熱エネルギーも持ち方ががらりと変わるので)、気候が一気に動いてしまうというようなことがあるのか?、など素人的に考えてしまいました。
いろいろな視点で考えるヒントを与えていただいた、講演者の中川先生、そして特別講演を企画された佐藤学会長に、厚くお礼申し上げます。ありがとうございました。
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中川立命館大学古気候学研究センターすみません、ディスカッションパネルの存在に気付いていませんでした! 五月雨式に回答していきます。

まず「温暖化はでっち上げ」についてですが、地球温暖化の問題が急速にクローズアップされたのは、1998年のある論文が、IPCCの第三次報告書に引用されたことがきっかけです。その根拠になった1998年の論文には、「大幅に問題がある」ことがその後の研究で明らかになっています。アメリカは他の国よりも早くその「問題」に気付いたので、国際社会の中でも目立って温暖化問題に逆行しているように見えた時代がありました。

近年の温度上昇の中に、温室効果ガスの影響が「無視できない程度に含まれている」ことは事実だと思います。ただその影響が、たとえば太陽活動や大気の振動モードの影響よりも強いのかどうかについて、現在のところきちんとした評価はできていないというのが実情だと思います。
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中川立命館大学古気候学研究センター「地球内部の地殻変動」は気候変動に大きな影響を与えます。現在まで続くいわゆる氷河時代(南極と北極に氷が存在する時代)がはじまったのは、大陸移動によって南極が現在の位置に来たことの影響が大きいと言われています。ただし、このプロセスは数千万年かけて進行するので、人間活動との関連は薄いように思います。

最近の研究では、地磁気の逆転も気候の寒冷化を誘発することが分かっています(一部に認めたがらない人たちがいますが、事実です)。地磁気逆転は数千年程度で完了するので、歴史的な時間スケールではギリギリ認識可能かもしれません。

短い時間スケールでは、気候変動といちばん相関が高いのは、じつは大規模な火山噴火だと言われています。フィリピンのピナツボ火山の噴火や、アイスランドのラキ火山の噴火は、人類の歴史にも目に見える痕跡を残しました。このあたりのことは、拙著「人類と気候の10万年史」でもすこしだけ紹介しました。
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中川立命館大学古気候学研究センター二酸化炭素の放出が氷期の到来を相殺するか、ですが、2016年くらいから、それは「相殺する」という論文が目立つようになってきました。現在のレベルの放出を続けると、少なくとも1万年以内には来るはずだった次の氷期が、今後5万年あるいは10万年も来なくなるというシミュレーションが存在します。最近では「間氷期の維持」を飛び越して、「暴走温室への突入」を示唆する計算結果も増えてきています。

また講演でも少し触れましたが、人類がもし温暖化ガスを放出していなければ、18〜19世紀はすでに「氷期」だったとする意見は根強いです。
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中川立命館大学古気候学研究センター最後に、農耕を選択したことを、私は必ずしも「間違い」だったとは思っていません。どんな選択をしたとしても、それが吉であるか凶であるかは立場と状況によります。解決は後ろ向きでなく、前向きに探すのが私は好きです。

「エンジンが大気を汚す」 ⇒ 「文明など捨ててしまえ」ではなく、「クリーンなエンジンを作ろう」

「医療の発達が人口爆発を引き起こす」 ⇒ 「医療など捨てて原始に帰ろう」ではなく、「その人数で幸せに長生きできる方法を考えよう」

私は、人間がそれでも解決を見いだし続けていくことを期待し、むしろ楽しみにしています。
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中川立命館大学古気候学研究センターすみませんもう一つありましたね! 「ある時、予測もつかない急激な変化が起こる」ことの理由ですが、これは非線形大域結合開放形(簡単な言葉だと「複雑系」の一種)の相転移なので、解析的な理解が不可能である場合が多いのだと思います。

同じ様な系の例としては、人体とか株式市場がよく引き合いに出されます。人体は絶えず、「あした思いがけず病に倒れる危険」をはらんでいます(私より皆さんの方が実感としてご存じですよね!)。それが「なぜその日に起こったのか」を考えることには、意味がある場合もありますが、ない場合もあります。

株式市場も同様で、たとえばリーマンショックのような大規模な「相転移」は、金融のエキスパートにも予測が不可能でした。ある種の変動には「原因がない場合がある」というのは、科学にとってけっこう重要な認識なんじゃないかと思っています。このあたりの話も、拙著「人類と気候の10万年史」でもう少し詳しく解説しています。
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高野政志防衛医大産科婦人科中川先生へ 先生のご講演、感銘しました。「先祖さまは馬鹿ではなかった!」こころに響きました。見終わって、涙がとまりません。今年はオリンピックもあるし、いろんな国のひともくるだろうからと年初に1年のスローガンとして”Diversityを理解しよう”としていました。しかし、コロナのお陰で全てふっとび、だれも外からひとが来てくれませんし、自分たちも出かけられません。しかし、先生の講演をきいて、多様性の本質とは、ふだん何気なく接している人々のなかにこそある!という真実を再認識しました。先生が研究しつつ、結果(すなわち、今後の見通しも含めて)がわかった時の衝撃はどんなに大きかったのだろう?と思います。コロナの第2波に備える我々人類に対して、生きていく上での心構え、忘れてはいけないものを示して頂きました。本当にありがとうございました!佐藤会長にも心より深謝いたします。
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中川立命館大学古気候学研究センターわお! ここまでおっしゃっていただけると、率直に嬉しいです。ありがとうございました。
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馬場紀行KKR東京共済病院 乳腺科地球温暖化の話が極めて近視眼的でナンセンスに近いと知り、少なからずショックでした。
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師岡恭之船橋市立医療センター中川先生の研究に対する熱い思いが,今回のこの講演だけでもひしひしと伝わり感動いたしました.
ヒトは変化を嫌い,適応するのが苦手ですが,それを認識し多様性を受け入れていくことが大事なことだと再認識しました.

科学の世界では今までの通説や当たり前であった法則が覆ることがあり,そういったことを受け入れられる柔軟な思考で,日々の仕事そして私生活を送っていきたいと思います.
中川先生の惹き込まれるような講演をみることができて本当によかったです.
ありがとうございました.
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佐藤春美聖路加国際病院こんなに面白い講演をかつて聴いたことがあっただろうか。
わくわくしながら、拝聴しました。
地質学という分野のイメージが全く変わりました。
地球が経てきた気候変動の話から始まり、解明に至る驚きの成果、そして、これからの地球に未来があるとしたら、多様性が鍵であるというご提言も、安心と共に、心に響くものがありました。
中川毅先生、ありがとうございました。
また、このような講演を企画していただいた、学会長の佐藤之俊先生に感謝いたします。
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岡本哲夫株式会社岡山医学検査センター中川先生ご講演を拝聴いたしました。
ありがとうございました。
長年の研究を行う上でのご苦労もあったかと思います。
地球の自然変動はまさしく、私たちが行っている細胞の多様性にもつながるように思いました。
多様性の細胞検査士や専門医の先生方と力を合わせてよりよい医療の貢献にして参りたいと強く思いました。とても、面白い内容でした。
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中川立命館大学古気候学研究センター皆さま好意的な感想を本当にありがとうございます。普段の講演だと、直後に何人かの方に話しかけていただいて終わりっていうのが普通ですが、こういう形式だと余韻が長続きしますね。なんだか申し訳ないような気分になります。
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古田恒二取手医師会病院早速、「人類と気候の10万年史」BLUE BACKS 購入して来ました。
このような熱量のある講演を拝聴できると元気が出てきます。ありがとうございます。
立命館大学も偉い。素晴らしい中川先生を日本に呼んだのだから。
これから大学は立命館大学と自信を持って伝えます。
佐藤会長ありがとうございました。
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手塚文明仙台赤十字病院 中川先生、感動的なご講演ありがとうございました。先生の地道さと壮大さに敬意を感じています。気候変動では、銀河系における太陽系の公転や太陽系における地球の公転に関連する大きな周期性を示す波と、ある意味偶発的ないし確率論的に生じる波とが重なっている、そのように理解しました。そこでお伺いしたいことが2つあります。
1)寒冷期には気候が暴れる、なぜそのようなことになるのでしょうか? 温暖期にはなぜ変動が少ないのでしょうか? また気候が暴れ出すことは氷期への前兆となるのでしょうか?
2)現今の気象や気候について、私たちは生活実感として”異常”を感じます。 これは先生のおっしゃる「暴れ」に重なるものでしょうか? 
よろしくお願いします。
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中川立命館大学古気候学研究センター手塚先生、とても鋭いご質問だと思います。ありがとうございます。本質的なポイントだと思うので、少し丁寧めに回答させていただきます。

1)なぜ寒冷期に気候が暴れるか。
じつは、地球には4つの「安定状態」と、その間の「遷移状態」があるんです。4つの安定状態とは、1.赤道まで凍りついたいわゆる「スノーボール・アース」、「氷期の寒い時代」、現代のような「暖かい時代」、そして恐竜時代のような「温室地球」です。この4つの状態のうちのどこかにいるとき、地球の気候はどうやら暴れないらしいんです。ところが、このうちのどこかからどこかに「移り変わろう」とするとき、一時的に不安定な状態が発生して「暴れる」という現象が発生します。系の状態が、「あっちに転ぼうかこっちに転ぼうか」迷っているような状態をイメージしていただいたらいいかもしれません。

講演では氷期を「暴れる時代」と一括りにしましたが、じつは氷期の中でもいちばん寒い時代は比較的安定だったことが分かっています。そこから(天文学的なメカニズムによって)温暖な時代への移行がはじまると、気候は不安定になり、そして(つづく)
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中川立命館大学古気候学研究センター(つづき)ある閾値を超えたときに別の安定状態に飛躍します。相転移の前後で不安定性が増すというのは、複雑系の挙動としてはきわめて普遍性の高い現象だと思います(たとえば、飛行機は離着陸の前後でよく落ちるとか、新生児は死亡率が高いとか、類例は際限なく見つけることができます)。

なので次のご質問、「暴れ出すこそは氷期の前兆か」ですが、必ずしも「氷期の」前兆とは限らないと思います。ただし、「相転移」の前兆である可能性は高いと思っています。つまり、次の氷期が迫ってくるせいで暴れることもあるでしょうし、反対に、温暖化が進行して「温室地球」の状態が迫ってくることで暴れることもあるでしょう。ちなみに後者のような現象は、恐竜時代のモンゴルの年縞堆積物から実際に証拠が見つかっています。(まだまだつづく)
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中川立命館大学古気候学研究センター(つづき)そして最後に、2)いま感じている「異常」は「暴れ」に通じるものか、ですが、これはですね、恐ろしい話ではあるんですが、私はYesだと思っています。

私の講演をお聞きになった方の多くが、私は温暖化容認論者だと誤解されるんですが、私は二酸化炭素の排出はやっぱり制限するべきだと思っています。ただそれは温暖化が怖いのではなくて、急激な変化が引き起こす相転移と、それにともなう「暴れ」が怖いからです。私は正直、寒冷化よりは温暖化の方が「マシ」だと本気で思っています。ただどちらであるにせよ、変化は遅いに超したことはない。気候システムに余計な刺激を与えて、寝た子を起こすリスクは可能な限り避けた方がいい(このままだと本当に「温室地球」への遷移が起こるとする論文なども出てきました)。なので、温暖化そのものはほとんど何の問題もないと思いつつ、しかし排出削減するために本気の努力をするべきだとは、やっぱり思っています。(おわり)
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中川立命館大学古気候学研究センター補足です。「波が重なっている」という理解は、たぶんとても正しいんだと思っています。見る時間スケールによって、気候システムの挙動は本当に本質的に変わります。1.5億年で見れば規則的だけど、数年で見れば「暴れている」といったことは普通に起こります。「マルチスケール」などと表現されますが、要するに見る時間スケールによっていろんなことが複層的に起こっているというのは、気候変動に限らず、複雑系全般に見られるある種の本質的な特徴なんだろうと思います。ひとつの典型例は人体でしょうね。数秒スケールで見れば安定あるいは規則的に呼吸している。数分のスケールで見ればいつでも不規則なことをしている(あるいは眠っていれば極端に安定している)、でも日スケールで見ると睡眠と覚醒を周期的にくり返しているし、10年スケールで見れば加齢に伴って線形に変化していく。そのすべてが人体にとっては「真実」です。気候変動にも、たぶん同じようなことがあるんだと思います。
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手塚文明仙台赤十字病院 中川先生、ご丁寧な説明をありがとうございます。大変興味深く感じ入りました。先生の今後ますますのご活躍をお祈りしております。
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木佐貫宮崎県立日南病院中川先生ご講演ありがとうございました。とても興味深くお話を伺いました。本も購入して読んでみます。最後の多様性が重要という指摘、まさしくそうだと思いました。
ひとつ質問させてください。講演のなかで、氷河期から温暖期への転移は数年程度、場合によっては1年で起こる、という話がありました。その転移に際して、隕石落下のような外部(宇宙)からの影響というのは考えられるのでしょうか?またそういった証拠はあるのでしょうか?(例えば水月湖から何か見つかっているのでしょうか)。
隕石落下が恐竜の絶滅に繋がっているといわれているので、そういった思いがけない宇宙からの影響もあるのかな、と愚考した次第です。
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中川立命館大学古気候学研究センター木佐貫先生、それほど急激な変化が「なぜ」起こるかというのは大問題なんですが、少なくともグリーンランドでは、メキシコ湾流の北上が停止して海表面温度が低下、それによって風系が変化、というのがいちばん受け入れられている説明です。映画「デイ・アフター・トゥモロー」は、この学説がまだ新しかった時代にそれを踏まえて作られた作品です。

ただ、グリーンランドで「急激に」発生するのは「温暖化」のことが多くて、「寒冷化」は1000年くらいの時間をかけて進行することが多いんです。そんな中、1万2900年前に起こった急激な寒冷化だけは急激に起こったという説が2003年に提唱されて、学会は大騒ぎになりました。

根拠とされたのは、1)アメリカの湖の堆積物から見つかった(恐竜絶滅の時代と同じような)イリジウムの濃集層、2)同じ層に含まれていた、普通は核爆発の後でしかできないような、極端に高い圧力が加わったことを示す特殊な鉱物粒子、それから、3)同じ時期に北米の大型哺乳類が大量絶滅していること、でした。(つづく)
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中川立命館大学古気候学研究センターしまった書き間違えました!

誤: 1万2900年前に起こった急激な寒冷化だけは急激に起こった
正: 1万2900年前に起こった急激な寒冷化だけは隕石が原因で起こった

(つづく)
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中川立命館大学古気候学研究センターまだちょっと違いますね。。。

最終版: 1万2900年前に起こった寒冷化だけは隕石が原因で急激に起こった」

ですね。(つづく)
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中川立命館大学古気候学研究センター(つづき)じつは、この論争は20年近く経った現在でも決着がついていません。水月湖でも同じ時代の地層からイリジウムを探したんですが、見つかりませんでした。オランダでも同様の結果が出ています。ただ、日本とヨーロッパに隕石由来のイリジウムが「届かなかった」からといって、北米でそれがなかったことの根拠にはなりません。

また、それほどの隕石衝突であるなら、地球のどこかにクレーターがあるはずだというのは有力な反証だと考えられてきました。ただ当時は氷期なので、その隕石がもし分厚い氷床の上に落ちたなら、クレーターはできなくても不思議ではないのかもしれません(当時は氷期の終わりかけで、氷の後ろに巨大な融氷水の湖があったので、隕石がその氷のダムを破壊、大量の水が大西洋に一気に流入したとすると、じつはその時に起こった気候変動の特徴のかなりの部分が説明できるんです)。あといくつかの証拠から、今のミシガン湖はそのときの衝突でできた地面の凹みであるとする節もあります。衝突で飛び散ったかけらのシャワーが(つづく2)
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中川立命館大学古気候学研究センター(つづき2)アメリカのノースカロライナ州にある「カロライナ・ベイ」として知られる特殊な地形を作ったと考える研究者もいます。

私個人の意見としては、とくに強い根拠はないんですが、そういうことはあってもいいんじゃないかと感じています。(おわり)
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木佐貫宮崎県立日南病院中川先生、わかりやすく丁寧な説明ありがとうございました。
1回だけ隕石が原因と思われる急激な寒冷化があった可能性があると考えられるのですね。ますます興味深いお話です。先生の研究がますます発展して、またいつかお話を伺える日を楽しみにしています。
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金井督之佐賀県医療センター好生館地質学が気候学につながることに驚き、その研究のスケールの大きさに感動しました。水月ヒルトン時代の地道な研究が地球時計に!・・驚愕です。日本の底力を感じます。国は跡地にビックベンのような記念塔をたてるべきですね。私の展開する医療・診療において大変参考になる姿勢を教えて頂いたと思いますし、脱ノブレスを意識して水月湖に旅行したくなりました。ウイットを交えた楽しく貴重なご講演、本当に有難うございました。
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小山雄三福岡大学医学部病理学講座地質学の研究対象としているテーマの大きさに驚愕し,先生の御話しを聴いているとわくわくする童心のような気持ちにも立ち返ることが出来ました。
どのような学問,研究においても人類史(人類が辿ってきた道筋)を温故知新ではないですが振り返ることは欠かすことの出来ない貴重なことであり,先生が農耕生活を行っていなかったご先祖に対しても環境・時代に対応をしていたんだと敬意を払っている点にとても感銘を受けました。
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セッション区分セッション名演題番号演者氏名(姓)演者氏名(名)演題名氏名(姓)氏名(名)所属コメント
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特別講演3石川雄一人は何故がんになるのか –発がんと山極勝三郎の業績佐藤之俊北里大学医学部呼吸器外科学恐竜はなぜ絶滅したのか?中川教授の古気候の話と関連し、大変興味深い内容ですね。さて、がんから見てヒトの適正な寿命とは一体どのくらいなのでしょうか。(大会長)
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和田順子磯村クリニック#ヤマギワ #タール塗布 #人工ガンの発生 #イチカワ(北大ご出身の獣医師と記憶しています)程度の知識の者に詳しいご講演をいただき、100年前の山極先生がスタートを切られた大きな業績に気持ちを新たにいたしました。
また後半のお話しで、昨今の騒ぎから早く落着きを取り戻し、遺伝子学研究から発がんメカニズムの解明、診断や治療に利用できるように、PCRを回せるように祈るばかりです。
立派なご講演をありがとうございました。
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小室優貴埼玉メデイカルセンター興味深いご講演ありがとうございました。
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伊藤里子(株)エスアールエル以前、テレビや博物館で山極先生のタール癌のお話を見たり聞いたりしていたので拝聴させて頂きました。貴重なお話をありがとうございました。
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三上芳喜熊本大学病院 病理診断科世界に誇るべき日本の癌研究のパイオニアである山極先生のお話を興味深く拝聴致しました。次回は機会がありましたら山極先生のお弟子さんで、ウイルス発癌領域の先駆者である藤波肉腫(京都大学病理学講座初代教授)で知られる藤波鑑先生のお話をいただければ嬉しく思います。
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金井督之佐賀県医療センター好生館歴史をひもとき、パイオニアの苦労と苦悩を知ることは医学のみならず学問の発展に大切であることを再認識しました。山極先生がノーベル賞からもれたことは大変残念ですが、その功績をしっかり評価し後継しオンコロジー研究を確立させた日本魂を誇りに思います。癌が老化の指標、まで到達した事を知り、その流れの一つでもあるテロメアを思い出しましたが、沢山の地道な研究が長い年月をかけて分化して集結する、発癌に似ている気がします。座長藏本先生と石川先生との質疑応答で更に見地が広がりました。貴重なご講演、本当に有難うございました。学会におかれましては偉大な先駆者の業績講演を今後も企画して欲しいと思います。
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馬場紀行KKR東京共済病院 乳腺科いつ聴いても山極先生の業績は素晴らしいと思います。
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