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海賊が「存在する」世界を考える

 

◯通常のアメリカ大陸の海賊史(17世紀末〜18世紀前半)

 ・カリブ海で海賊が跋扈

   /植民地は海賊を庇護

 :アメリカ植民地は、遠隔地にあり、かつ独立性が高いた

  めに本国の統制・法の支配が及ばない。

⇔貨幣不足の植民地にとって海賊は通貨(銀)をもたらしてくれる存在。また戦時にも海賊に頼る(この点は。イギリス国家も同様)。

         ↓

1688年の名誉革命以後、本国は帝国全体の通商の円滑な運営や統治のために海賊の討伐に乗り出す。

⇔植民地も通商利益の安定的な確保のために要請に応じる:本国−植民地共同の海賊討伐作戦(17世紀末〜1720年代)。

⇒1720年代までには、海賊時代の終焉。

 

◯海賊の生きた世界を考えて、歴史像を見直す。

 史料から海賊の活躍した世界の状況を観察する。

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 クワイアリー大佐の商務院への北米植民地の情勢報告(1702年、CSP, pp.172-7)

「国王陛下および貴院への義務により、アメリカにおける陛下の植民地の真の状況についてお伝えします。

防衛の状況について 大陸において大多数の臣民はいくつかの植民地に分かれております。そしてそれぞれにおいて彼らは広い場所に分散しております。その結果、どの植民地もインディアンに対してフロンティアの防御を固めることなどできません。…私は(南部の)ヴァジニアとメリーランドは、人口の点、緊急時に兵を指揮できる経験のある将軍を擁している点で、最もよい状況にあると確信しています。しかし、どれほど彼らが分散しているか、また民兵のほとんどの武装が悪い―銃を持たない者もいるし、持っていても弾薬がない、ほとんどが緊急時に任務に就けない―を考えると、敵がこれらの植民地に襲いかかったとき、致命的な結果をもたらすでしょう。フロンティアの入植地は、残りの地域から迎撃の兵を集めているうちに、壊滅するにありません。

 領主植民地は自己防衛することなどできません。カロライナはアナーキーと混乱以外の何者でもありません。確かに民兵を擁する地域もありますが、名ばかりです。彼らは武器弾薬など自己防衛のためのものを何も持たず、それをすべき法律もありません。彼らは年に一度や二度、訓練の名目で集まっては、飲んだくれるだけです。全く民兵、武器弾薬、軍隊組織を持たず、臣民が陸と海からのあらゆる脅威にさらされている植民地もあります。ペンシルヴァニアがそれです。あろうことかペン氏は悪党で知られる外国インディアンやフランス人を呼び、彼の植民地に入植させるためのあらゆる工作をしているのです。ただ、彼らと貿易したいがために。…

 

 北米における国王陛下の下にある植民地での長い経験からするに、誰も陛下に忠実ではなく、法に従わず、総督に対して敬意を払わず、国王陛下の命令にも答えようとする気がありません。…私には、オルバニーとそのフロンティアを支援することは、北米の植民地全体にとっての利益と安全になるように思えます。そのための費用などさして多くなく、ほとんどの植民地の防衛状況と彼らの兵員割り当てを嫌っているさまを見るにつけ、私の驚きは増すばかりです。こうした傾向はイギリスで書かれた淫らな共和主義のパンフレットに由来するのではないかとも信じました。…ただ、よく考えるにつれ、ここ北米に問題の根があるということを確信するにいたったのです。隣り合った勅許状植民地の政府がそれです。このことは簡単に証明できます。領主の下にいる人民は教会のためにも国家のためにも税を支払いません。彼らは海賊を受け入れ、奨励しています。またあらゆる密貿易を行い、この悪癖を防ぐための法をすべて破ります。彼らは王、その法、権利、役人、すべてに真っ向から反対し、その不忠で不正な行動によって、どんどん豊かになり、財産を蓄え、かつその悪徳の報酬に対する罰を逃れているのです。このことが王領植民地の人民に不平を言わせ、彼らが隣り合った植民地にいる仲間の臣民のほうが楽をしていると考え、陛下の植民地にいるより自由を得られると考えさせる根拠になっているのです。…」

植民地の体制の問題だけから「海賊の時代」を考えていいのだろうか?

海賊=暴力的な悪漢⇔平和な一般市民は正しいのであろうか?

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   和平期間

1739-42

ジェンキンズの耳戦争

 

西インド

 

 

英 vs 西

 英 vs 西

 

 

1743-1748

オーストリア継承戦争

ジョージ王戦争

北米:ルイスバーグ占領(NE)

エクス・ラ・

 

 

 

NE辺境攻撃(仏,先住民)

シャペル条約

 

英・蘭 vs 仏・普

英 vs 仏

スペイン領フロリダ攻撃(SC,ジョージア)

 

1756-1763

七年戦争

フレンチ・インディアン戦争

北米:オハイオ・五大湖周辺(英・植民地,仏)

パリ条約

 

英・普 vs

ルイスバーグ・ケベック占領(英)

 

 

 仏・西・墺・露

英 vs 仏・西

ペンシルヴァニア辺境攻撃(仏側先住民)

 

期間

戦争名(ヨーロッパ)

戦争名(北米)

北米における主要な戦闘

条約

  参戦国

( )は主要部隊

1689-1697

アウグスブルク同盟戦争

ウィリアム王戦争

NY,NE辺境攻撃(仏,先住民)

ライスワイク

英・蘭 vs 仏

ケベック・アカディア攻撃(NE)

条約

1702-1713

スペイン継承戦争

アン女王戦争

NE辺境攻撃(仏,先住民),アカディア

ユトレヒト

英・蘭・墺  vs 仏・西

(ノヴァ・スコシア)占領(英,NE)

条約

時代背景:名誉革命後の帝国戦争

1688年の名誉革命後、イギリスは、フランスと対立関係に入る。

⇨海外での利権や領土をめぐる争いに展開(「第二次100年戦争」)。

シュネクタディへの攻撃

グローバルな諸地域への戦場の拡大

:戦争を勝ち抜くために、大量の資金、人員の必要。

    ↓

アメリカも含めた帝国全体で敵国と戦う体制が必要とされる

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私掠と海賊

◯私掠船

=戦時に許可を受けた他国船への略奪を行う民間船。政府が私掠許可書を発行する。

=合法

→対仏戦争が開始されると、イギリスは大規模に私掠船を活用

私掠許可証

Boston Weekly Newsletter, 1739.12.6ー13

:ロード・アイランドの私掠船がスペイン領のタークス島を襲ったケース。

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・キャプテン ・キッドは対フランス戦争中の1695年にイギリスの有力政治家の後援を受けながら、私掠許可証を獲得し、私掠船を出航させる。

・乗組員は怪しい連中

・キッド自身、途中で海賊をするかどうか迷う。

・キッドは私掠/海賊が微妙な状況で「略奪」を行う。政府はキッド の行為を「海賊」と断定し、逮捕ー処刑。

参考文献

:コーディングリ『海賊大全』

キャプテン ・ウィリアム・キッド

キャプテン ・キッドのケース

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キッドの逮捕に関する植民地議会議事録

キッドの逮捕に関する総督ベロモントの本国政府への報告(ベロモントはキッドの講演者の一人)

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左:ジャマイカ総督の本国政府への報告(奴隷が逃亡し、フランス船で海賊となる)

下:通商拓務院の書記の法務長官への諮問(大西洋貿易各地をめぐる貿易が非合法化どうか)。

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ジェンキンズの耳戦争(1739ー)におけるアメリカ兵の徴用のための植民地人への奨励

国務大臣ニューカッスル公爵からロード・アイランド総督と会社への書状(The Correspondence of the Colonial Governors of Rhode Island , 1, 127)(1740年1月)

「国王陛下は、スペインに対して宣戦布告し、あらゆる手段で、かつ効果的にスペイン人に苦痛をもたらし、混乱させることが適切であるとお考えになり、決断された。とりわけ西インドのスペイン人の大規模な入植地のいくつかを攻撃することがその手段となる。国王陛下は恭しくも、陛下の軍の少将であるカスカート卿の指揮のもと、大規模な兵の編成をお命じになった。カスカートは、イギリスを発ち、軍艦の十分な護衛の下、本事業のために指定された西インドの適切な場所に行き、現在西インドにいるヴァーノン提督の指揮の下にある艦隊に合流する。そこには陛下のアメリカの植民地と島々で募兵される軍団が加わることになる。…

 陛下は、新たな兵の徴用に際して、あらゆる適切な奨励を与えることを意図しておられる。すなわち彼らには、武器、公式の制服、そして国王陛下からの給与支払いがなされるよう命じてある。また敵から奪う略奪品については割り当てに加えること、また遠征が終了した際には、どこかに入植を希望するのでなければ、現在の居住地に送り返すことも確約する

アメリカ大陸は、合法・非合法の境界線が揺れ動く/未確定な世界

→戦時には、暴力が非合法から戦時には合法へと転じる。国は軍事動員のために、こうしたアメリカ大陸の状況を活用する。私掠船以外にも広がる。

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マサチューセッツ植民地1697年法

:インディアンの敵と反乱者への追跡奨励法

17ー18世紀の大西洋世界

:合法/非合法、民間人/兵士、英雄/犯罪者などの<境界線>が揺れ動く。

例)黒人奴隷の逃亡⇒海賊化

→果たして「犯罪」か?

⇨こうした世界を念頭に海賊を考えると?

自分を連行した先住民を虐殺し、政府から褒賞され、英雄となったハナ・ダンストン