学校薬剤師の業務
~薬物乱用防止啓発活動~
福岡市南区薬剤師会
監事 中島英之
福岡県薬物乱用防止第五次五か年戦略
を三本柱として推進
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福岡県薬物乱用防止第五次五か年戦略について
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①啓発
若年層を中心とした社会全体への啓発活動の強化・推進
により、覚醒剤、大麻等違法薬物乱用の未然防止を目指す。
②取締り
暴力団等薬物密売組織の壊滅、巧妙化・潜在化する薬物
密売への対処及び多様化する乱用薬物に関する監視指導・
取締りの強化により、覚醒剤、大麻等違法薬物の供給遮断
を目指す。
③再乱用防止
医療機関や民間団体などとの連携を強化し、薬物乱用者
の治療、回復及び社会復帰へ包括的かつ継続的に支援する
ことにより、再乱用のない社会を目指す。
目 標
福岡県薬物乱用防止第五次五か年戦略について
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① 小・中・高等学校等における薬物乱用防止教室
の開催など大麻等薬物乱用防止に関する指導・
教育の充実強化及び大学、専修学校等に対する
啓発の推進
② 有職・無職少年に対する教育・啓発の強化
③ 家庭や地域における薬物根絶意識の醸成
④ 関係機関等による相談体制の充実強化
⑤ 大麻を中心とした広報啓発活動の推進と効果の
検証
⑥ 海外渡航者、訪日外国人に対する広報・啓発
活動の強化
「啓 発」の取り組み
第五次五か年戦略のポイント
①大麻等違法薬物乱用に関する若年層
を中心とした啓発の強化
②薬物密売等の流通に関する需要側と
供給側両面からの取締りの強化
③社会復帰支援体制の充実による再乱
用防止対策の強化
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なぜ減らない 薬物乱用
~各世代に広がる薬物乱用の現状と恐ろしさ~
福岡市南区薬剤師会
監事 中島 英之
太陽薬局
乱用薬物の種類
覚醒剤
大麻
MDMA
写真提供:九州厚生局麻薬取締部(シンナーを除く。)
シンナー
ヘロイン
LSD
『 薬 物 』って・・・
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興奮
作用
幻覚
作用
抑制
作用
覚醒剤
メタンフェタミン、アンフェタミン
コカイン
MDMA
LSD
マジックマッシュルーム
あへん(けしぼうず)
ヘロイン
モルヒネ
メチルフェニデート
(リタリン-向精神薬)
※不適正使用の場合
大麻
大麻樹脂
睡眠薬(向精神薬)
※不適正使用の場合
麻薬174種類
向精神薬80種類
覚せい剤取締法
麻薬及び向精神薬取締法
大麻取締法
あへん法
乱用薬物の種類・作用
第一次乱用期(終戦後の混乱期)
・軍部からの流出と国内密造
・敗戦で荒廃した社会に「ヒロポン」大流行
・乱用者:戦地からの引揚者,不定期労働者,水商売など
→罰則強化、徹底取締,国民運動展開により沈静化
第二次乱用期(高度経済成長衰退期)
・暴力団の資金源としてシャブの密輸・密売
・主婦やサラリーマン健全層まで乱用
・中毒者の凶悪犯罪
→徹底取締にも完全に沈静化せず
第三次乱用期(携帯電話やインターネットなど)
・暴力団に加え、イラン人等密輸組織の台頭
・中国や北朝鮮ルート
→未成年者・中・高校生のファッション感覚 による乱用急増
不正薬物事犯数
薬物事犯検挙人員の推移(全国)
※警察庁、厚生労働省、海上保安庁(厚生労働省)調べ
福岡県の小学校の校長が覚醒剤を所持していたとして高知県警察本部に逮捕された事件で、校長が「覚醒剤を使ったら大量の仕事が一気に片づくようになったので自分で使うために持っていた」などと話していることが、関係者への取材で分かりました。
警察は、校長が覚醒剤を使用するために所持していたとみて調べています。
福岡県の春日市立大谷小学校の校長、松原郁弘容疑者(57)は、およそ0.5グラムの覚醒剤を2つの袋に分けて持っていたとして、覚醒剤取締法違反の疑いで今月9日に高知県警察本部に逮捕されました。
警察によりますと、覚醒剤を所持していたことを認めているということです。
関係者によりますと、松原校長は「覚醒剤を使ったら大量の仕事が一気に片づくようになったので自分で使うために持っていた。専門の音楽でも覚醒剤を使うと発想が生まれた」と話しているということです。
警察は、松原校長が自分で使用するために覚醒剤を所持していたとみて調べています。
福岡県春日市立大谷小学校の校長(57歳)が、覚せい剤取締法違反(所持)の容疑で逮捕されました。
2014年5月10日
平成30年の薬物情勢(全国)
検挙人員:10,030人(-254)と依然として1万人超
再犯者率:65.9%と12年連続増加し、過去最高
→高い依存性、再乱用防止の必要性
覚醒剤押収量:1.206.7kg(+70.1)、3年連続で1トン超
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覚醒剤事犯
大麻事犯
検挙人員:3,762人(+544)と5年連続増加、過去最多
30歳未満が53.3%で、若年層が半数以上
乾燥大麻押収量:337.3kg(+66.8)、3年連続増加
麻薬事犯
コカイン押収量:157.4kg(+145.8)過去最多
MDMA押収量:12,307錠(+9,063)前年より大幅増加
( )は前年比
薬物乱用の最近の傾向
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①有機溶剤乱用・依存の減少
②覚醒剤乱用・依存の高止り
③大麻乱用の確実な浸透
④危険ドラッグの登場、厳しい取り締まり
⑤医薬品乱用の静かな拡大
決められたルールを守らないで、�薬を使用すること
⇒ 違法薬物は、1回でも使ったら乱用となり、法律で禁止されている
2. 目的や使用方法のルール違反
⇒(例)医薬品を医療目的以外に使用
(酩酊感を味わうために睡眠薬を服用)
薬物乱用
・「失敗は成功の母」ということわざがあるが、
・人生において、薬物乱用をすることは、非常に大きい
失敗で、絶対取り返しのつかない失敗である。
薬物乱用は取り返しのつかない失敗
18-3
・薬物乱用が法律違反で犯罪である。
・薬物乱用で壊れた脳は回復できない。
・薬物乱用は自分だけでなく、一番大切な人を不幸にする・・・
薬物乱用は取り返しのつかない失敗
その理由・・・
18-4
・依存性
⇒ その薬なしではいられない精神状態・心身状態におちいる性質を表す。
・薬物乱用を繰返し
⇒ 依存症になり その結果、
⇒ 薬物乱用による、精神病等になる。
依存性
17-3
・耐性
⇒ 人体が持つ性質で習慣により、薬に対する効き目が落ちてくる性質
・薬物には致死量がある。医者でも薬剤師でもない素人が効き目を良くしようとすると、
⇒ ショック死
耐性
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・薬物乱用をして依存症になった人が乱用をやめた後でも、ストレス・飲酒等により以前の症状が突然現れる。
・精神錯乱状態になり、通行人に切りつけ
⇒殺人・傷害事件
フラッシュバック
18-1
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覚醒剤事犯における再犯者率の推移
検挙人員(人)
再犯者率(%)
<国>
<福岡県>
64.5%
73.7%
・国、県ともに再犯者率が年々上昇している。
・県の再犯者率が国より高い。
覚せい剤
平成30年8月10日日経新聞(朝刊)
電子たばこを用いた覚せい剤事犯
↓
若者を中心に広がる可能性が・・・
初心者では 0.03g(耳かき一杯)使用により
目がくらむような快感
多幸感,高揚した気分が 30分続く
その後、3~12時間 覚せい状態が続く。その間、眠ることも食べることもできない
切れると、激しい抑うつ,疲労倦怠感,焦燥感
連用により、幻覚,幻想,依存性強く、フラッシュバック
・使用後、4~5時間でほとんど排泄。1週間で尿検査 陰性に
・刑務所入所者の1/3が使用歴ありの報告
覚せい剤の使用
・脳 ⇒
覚せい剤は中枢神経に作用する。意識障害、幻覚・妄想、記憶低下、
けいれん、脳溢血を起こす恐れがある。
・腎臓 ⇒
覚せい剤を長期間使い続けると、致死的な腎機能不全を生じる、
・心臓 ⇒
心拍数、呼吸、血圧上昇、心不全、不整脈、心臓発作を誘発する
覚せい剤の主な身体的影響
39-1
乱用者 ⇒ 覚せい剤精神病の発症
・幻覚、幻聴、妄想などの症状が出る。
・症状の典型は『被害妄想』
⇒自分が殺される!「殺される前に殺すしかない」
と思い込み、無関係の傍らにいる人を殺傷する。
・覚せい剤精神病は、幻覚などが慢性化・固定化して
しまい、治療は非常に困難。
覚せい剤の精神的影響Ⅰ
39-2
・フラッシュバック
⇒覚せい剤を止めた後、少量再使用しただけで以前と
同程度の症状が、容易に再燃してしまう。
⇒覚せい剤を使用しなくても、大量の飲酒、心理的なスト
レスが契機となって、精神病の症状が容易に再燃する。
覚せい剤の精神的影響Ⅱ
39-3
(県内には、指定暴力団が5団体もある)
(全国:約46.6%)
再犯者率 全国:65.5%、福岡県:71.5%
覚せい剤事犯の特徴
※警察庁、厚生労働省、海上保安庁(厚生労働省)調べ
福岡県警薬物銃器対策課
シンナー
シンナー等乱用少年検挙補導数の推移
(福岡県)
※福岡県警少年課
1事犯で数十万錠押収される場合もあるなど、大口の密輸も見受けられます。カラフルでかわいいマークなどがあり、特に青少年の乱用傾向が指摘されるなど、深刻な状態にあります。(写真提供:関東信越厚生局麻薬取締部、撮影者:向井 渉)
MDMA等錠剤型合成麻薬の全国押収量の推移
平成30年の薬物情勢(全国)
検挙人員:10,030人(-254)と依然として1万人超
再犯者率:65.9%と12年連続増加し、過去最高
→高い依存性、再乱用防止の必要性
覚醒剤押収量:1.206.7kg(+70.1)、3年連続で1トン超
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覚醒剤事犯
大麻事犯
検挙人員:3,762人(+544)と5年連続増加、過去最多
30歳未満が53.3%で、若年層が半数以上
乾燥大麻押収量:337.3kg(+66.8)、3年連続増加
麻薬事犯
コカイン押収量:157.4kg(+145.8)過去最多
MDMA押収量:12,307錠(+9,063)前年より大幅増加
( )は前年比
MDMAは臨床例からみて、覚せい剤より精神毒性がはるかに強くて、早くダメージを与える。
セロトニン・トランスポーターが減少し、神経ネットワークが断裂し脳が破壊される。
4日間で壊れる事もあり、7年後でも元に戻らない。
発熱38度以上あるのが特色。
MDMAが与えるダメージ
47-1
神奈川県立精神医療センター 岸本英爾 先生 の話
大 麻
THC�テトラヒドロカンナビノール
幻覚作用の本体
中枢作用が持続的で精神障害を誘発
※THCのLD50はニコチンの 約100倍高いため「タバコより安全」と言うが、ニコチンの作用は神経節ブロックで一過性であるのに対し、THCの中枢作用は持続的。
<マリファナ>
<ハシッシュ・チャラス>
花穂や乾燥葉を樹脂で固めたもの
大麻の葉
日本の法律では大麻(マリファナ)栽培免許を所持しない者が発芽させると犯罪になる。
大麻に関する法規制
・第二次世界大戦後、昭和20年10月 連合軍総司令部(GHQ)の指示で法規制が出来た。その後、数回改正が行われている。
・大麻取締法では、大麻取扱者以外の大麻の「所持」「栽培」「譲渡・譲受」「研究のための使用」は禁じられている。しかし、一般人の大麻使用(乱用になる)に関する明確な規制はない。
・その理由は、麻農家での麻から繊維を取る「麻打ち」の作業中に起こる「麻酔い」や間接喫煙(副流煙)からの接取の要素が考慮されているからとされる。
大麻事犯の割合(全国)
3,000人を超えた
※警察庁、厚生労働省、海上保安庁(厚生労働省)調べ
大麻事犯検挙補導人員の推移(福岡県)
※福岡県警少年課、薬物銃器対策課
過去最多
大麻を乱用すると・・・
長く続けていると・・・
・知覚の変化 : 酒に酔った感じで体がふらつく
・情緒の不安定 : イライラする、不安になる
・思考の変化 : 集中力がなくなる
・大麻精神病 : 幻覚・妄想等の症状が出る
・知的機能の低下 : ものを考えられなくなる
・無動機症候群 : 何もやる気がしない
大麻乱用による心身への影響
大麻の乱用は、
青少年期に構築される脳・神経系の正常な発達及び成熟に障害を起こす可能性が強く示唆されています!
大麻乱用による心身への影響
発達段階にある青少年の脳は、成人の脳に
比べて大麻の影響を受けやすい!
大麻は有用
<合成大麻>
ドロナビノール(米: Dronabinol)、マリノール (英: Marinol)、
ナビロン(米: Nabilone )など
<薬 効>
末期エイズ患者の食欲増進,ガンの化学療法に伴う
吐き気の緩和
<医療用大麻を認める国>
合衆国14州、カナダ、オランダ、英国、ベルギー等
医療用大麻
リクレーション・ドラッグ
東欧諸国、ドイツ、スペイン等
【アメリカ】
(参考)海外の大麻規制状況
国外犯処罰規定が適用され、外国で大麻を所持することは、大麻取締法が適用され、違法です!
カナダやアメリカで、日本人が大麻を所持してもOK?
大麻に関する誤った情報に注意!
全て誤り!
危険ドラッグ
危険ドラッグとは
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麻薬
覚醒剤
構造を
少し変えた
指定薬物等
ハーブなど
植物片に
添加
危険ドラッグとは
① 成分・含量が不明
② 薬理効果、毒性が不明
③ 成分の均一性、経時変化も不明
毒性が強い物や量が多かったりすると、
依存をおこす前に急性中毒で死亡する場
合もある!
3つの不明で何が起こるか誰にも分からない!
危険ドラッグの使用は・・・?
危険ドラッグは治療が非常に難しい
→ 急性症状から命を守る薬や治療法が確立してない。
・急性毒性の強いものは、急性中毒に陥る!
→ たった1回の使用でも、死に繋がる危険がある。
何が起きるか、誰にもわからない!
何が起きるか分からない!何が起きても不思議でない!
依存する前に、急性中毒に陥る!
危険ドラッグは「毒物!」
陶酔・多幸感
異常行動・精神錯乱
意識障害・カタレプシー
<程度が大きい場合>
<程度が中等度>
<程度が少ない場合>
死 亡
包括規制
覚せい剤の化学構造に類似するフェネチルアミン系及びカチノン系の薬物は主に液体や粉末から検出される
<合成カンナビノイド系>
大麻の主成分の化学構造に類似する系統の薬物で主に乾燥植物片から検出される
<フェネチルアミン系>
<カチノン系>
包括指定第2号
包括指定第1号
日本の青少年において・・・
西岡伸紀(兵庫教育大学大学院学校教育研究科)
・喫煙経験者では、薬物乱用経験率が高い
・大人が居ない場面での飲酒経験者では、薬物乱用経験率が高い
・喫煙経験,飲酒経験,薬物乱用経験,性の問題行動の経験は、
相互に関連がある
・薬物乱用経験者は、日常の生活行動が不健康な傾向にある
①薬物の多様化
②国際化・情報の氾濫
③使用方法の簡便化
④個人主義・モラルの低下
⑤ストレス・成果主義・現実逃避
⑥低年齢化・仲間意識
最近の薬物乱用の傾向・問題点
覚せい剤・大麻・MDMA・向精神薬・危険ドラック
多剤併用型
海外への渡航・密売ルート
インターネット・携帯電話の普及
入手方法の多様化
抵抗感の減少(注射→あぶり・経口など)
著名人・芸能人・スポーツ選手
ファッション感覚
小中高校生~ ・ 仲間はずれ
一気に広がる・・・
安易な充実感
薬物乱用
薬物依存
薬物中毒
薬物の恐さ
ほとんどが
「好奇心」から始まる
自分だけは大丈夫と思っていても
止められなくなる
代表的症状
「幻覚」
幻覚:実際には外界からの入力がない感覚を体験してしまう症状
薬物の誘惑
薬物がどこで売ってるなんか
知らないよ・・
*薬物を誘ってくるのは
『友人』『先輩』 が一番多いんだよ
*その場所は、
『コンビニ』『ゲームセンター』
『カラオケボックス』の順番だよ