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講師用マニュアル(京都府版)

 租税教育の目的は、租税に関する意義、役割、機能、仕組み等の租税制度を知るとともに、申告納税制度の理念や納税者の権利及び義務を理解し、健全な納税者意識を醸成することにあり、京都府租税教育推進連絡協議会では、教育関係者並びに税務関係者が協力して租税教育を推進し、その効果を高めることを目的に活動を行っております。� 平成23年11月に租税教育に関係する3省庁(文部科学省、総務省、国税庁)による「租税教育推進関係省庁等協議会(中央租推協)」が発足し、「各学校段階における租税教育の充実」に向けて関係省庁が定期的、継続的に協議することとし、中央省庁レベルにおいても連携して租税教育の充実を目指す環境整備がなされ、平成25年5月には「租税に関する指導内容を明記した学習指導要領の着実な実施」が合意されております。� また、平成29年3月に改訂された文部科学省「中学校学習指導要領」では、社会科公民的分野の「2 内容」「B 私たちと経済」「(2)国民の生活と政府の役割」において、「ア(イ)財政及び租税の意義、国民の納税の義務について理解すること。」、「イ(イ)財政及び租税の役割について多面的・多角的に考察し、表現すること。」とあり、さらに「3 内容の取扱い」において、「(3)イ(イ)「財政及び租税の役割」については、財源の確保と配分という観点から、財政の現状や少子高齢社会など現代社会の特色を踏まえて財政の持続可能性と関連付けて考察し、表現させること。」と記載されております。� この冊子は、このような趣旨を踏まえ、中学生用租税教育教材「わたしたちの生活と税金」の補助資料として、講師用に作成したものです。� 各ページに対応した参考資料を掲載しておりますので、是非、ご活用ください。

はじめに

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※ 動画教材は国税庁ホームページで提供されています。  

https://www.nta.go.jp/taxes/kids/video/index.htm#anime

  • 授業構成案

パワーポイント教材を活用されるに当たってのお願い

授業構成案

所要時間

項 目

講師用

スライド

生徒用

スライド

10分

生活と税金の関わりについて考えてみよう

・生活に関わる税金について理解させる

・なぜ無料で公的サービスを利用できるのか理解させる

P3~6

P2~8

15分

納税の義務と公平な税金

・ワークを通じて税負担の公平性について理解させる

・民主主権の下、国民(住民)の代表が税の使いみちを決めることを理解させる

→「税の本質」の理解へ

P7~10

P9~13

15分

国・地方の財政

・国と地方の財政を知り、現状と課題について理解させる

P11~18

P14~26

5分

問題(これまでのおさらい)

P19

P27~28

5分

まとめ・感想等

・持続可能な社会のために、負担と受益のバランスと改善策について考えさせる。

P20

P29

租税教育用アニメ

「ご案内します アナザーワールドへ」なども併用ください。

 この副教材は、生徒に「税の本質」を学ばせることを念頭において作成しています。� 基本的には、パワーポイント教材の差し替えは、授業をされる方の自由としていますが、「税の本質」を考えさせる「わたしたちの生活と税金」(生徒用)のP9~13については、授業に取り入れていただきますようお願いします。� なお、学習を進めるに当たっては、生徒に自由に意見を発表させ、主体的に考えさせることに重点を置いたものになるよう配意願います。

〈税の本質〉

  • 税は公共サービスの対価
  • 自らの代表が、国の支出の在り方を決めることと、自らが国を支える税金を負担しなければならないことは表裏一体
  • 税の使いみちを監視する(関心を持つ)ことも納税者として重要

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 学習を始めるに当たって、まず税金に興味を持たせる。また、税金の種類や分類を理解させる。

1.生活と税金の関わりについて考えてみよう(生徒用P2‐3)

 ・「どこに納めるか」による分類    → 国税・地方税

 ・「納め方」による分類        → 直接税・間接税

 ※その他

  「何に対して課税するか」による分類 → 所得課税・消費課税・資産課税

[家]

 ・住民税   … 住んでいる(会社がある)都道府県、市区町村に納める税金

 ・固定資産税 … 土地や家屋、事業に使う機械設備などを所有しているときに

         かかる税金

[会社]

 ・法人税     … 会社がもうけたお金にかかる税金

 ・所得税    … 個人の給料やもうけたお金にかかる税金

[外出先]

 ・揮発油税 … 揮発油(ガソリン)にかかる税金

 ・消費税  … 商品を買ったときにかかる税金

 ・入湯税  … 温泉(鉱泉浴場)に入浴したときの料金に含まれている税金

■P2「もっと詳しく」

 身近な税金を

 もっと調べよう

■P3「もっと詳しく」

 税金の種類をもっと

 詳しく見てみよう

ねらい

学習内容

 私たちの生活にどのような税金が関わっているのか、どのような種類や分類があるのかを知る。

  • 税金の種類
  • 税金の分類

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 生活の中で関りのある代表的な税金(消費税・所得税・住民税)を例に納税の仕組みを理解させる。

1988年 消費税法成立

1989年 消費税法施行 税率3%

1997年 税率5%に引き上げ

2004年 「税別」表示から

    「総額表示」義務付け

2014年 税率8%に引き上げ

2019年 税率10%に引き上げ

    (軽減税率8%導入)

 消費税は、商品・製品の販売やサービスの提供などの取引に対して広く公平に課税される税で、消費者が負担し事業者が納付します。

 消費税は、商品・製品の販売やサービスの提供などの取引に対して、広く公平に課税されますが、生産、流通などの各取引段階で二重三重に税がかかることのないよう、税が累積しない仕組みが採られています。

 商品などの価格に上乗せされた消費税と地方消費税分は、最終的に消費者が負担し、納税義務者である事業者が納めます。

1.生活と税金の関わりについて考えてみよう(生徒用P4‐5)

 所得税の確定申告は、毎年1月1日から12月31日までの1年間に生じた全ての所得の金額とそれに対する所得税の額を計算し、翌年2月16日から3月15日までの間に確定申告書を税務署に提出して、源泉徴収された税金などの過不足を精算する手続です。

ねらい

学習内容

 どのような場合に税金が関係するのか、どのような流れで国や地方公共団体に税金が納められているかを知る。

  • 消費税の歴史
  • 所得税の確定申告
  • 消費税の仕組み

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「公共サービス」や「公共施設」(いわゆる「公的サービス」)の具体例を通じて、自分たちの生活と税金の関わりに気づき、税金は自分たちの暮らしを支え、生活に欠かせないものであることを理解させる。

 日々の生活に必要な様々な財やサービスが消費されています。この中には市場メカニズムに委ねておいては十分に提供されないものがあり、それらは政府が公共サービスとして提供しています。外交、防衛や警察、消防、司法などは、誰もがその負担の有無にかかわらず便益を受け、ある人が便益を受けても他の人の便益を妨げないという性格から、市場からは全く提供されない可能性があります。また、生活や産業を支える基盤となる水道や道路などの社会資本、次代を担う人材を育成するための教育、安心できる生活を確保するための社会保障などは、市場のみに委ねた場合には必ずしも必要な量や水準が確保されないおそれがあります。� 生命・財産を守り平和で安全な暮らしを確保するための公的サービスは、なくてはならないものです。これらは、およそ国というものが形成されるようになって以来その基本的な役割とされてきました。

 公立学校や公園、道路など、誰もが利用できる施設。

 ごみの収集や処理、警察や消防など、生活に欠くことができないもので、民間の経済活動では十分には供給されないサービス。

1.生活と税金の関わりについて考えてみよう(生徒用P6)

ねらい

学習内容

警察やごみ処理、道路など、公的サービスの提供には多くのコストがかかっていることを確認する。

  • 公共サービス
  • 公共施設
  • 公的サービスと政府の役割

 また、水道や道路といった社会資本は、便利で快適な生活を送ったり、産業を発展させ経済的に豊かな社会を築いたりしていくために、また、自然環境を守ったり災害を防いだりするために、重要な役割を果たすものです。� さらに、教育によって子どもたちが社会生活に必要な能力を取得していくこと、貧しい人を社会全体で支えたり、病気、障がい、老齢に伴う生活不安を取り除いたりすることなどを通じて、より安定した社会を築いていくことが可能となります。� 以上のように、公的サービスは、家計や企業の働きを補完し、広く社会の構成員全体の利益にかなう役割を果たしており、私たち国民は、日々、様々な公的サービスの便益を享受しています。公的サービスは、社会を形成し、その社会を安全で安心できるものとし、経済活動などを通じて豊かなものとしていく上で欠かすことのできないものです。

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教育を受けるためにどれだけの税金が使われているか理解させる。

小学生

中学生

高校生(全日制)

約941,000円

約1,086,000円

約1,127,000円

 941,000円×6年 + 1,086,000円×3年

=8,904,000円

義務教育9年間で

1.生活と税金の関わりについて考えてみよう(生徒用P7‐8)

 私たちの暮らしを豊かで安全、便利にするため、様々な場面で税金が使われていることを理解させる。

※出所:文部科学省「令和5年度地方教育費調査(令和4会計年度)」   

ねらい

学習内容

中学生1人当たりの年間教育費を知る。

  • 年間教育費の公費負担額�(公立学校の児童・生徒1人当たり):令和4年度

ねらい

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 国を支える税は国民が負担しているが、税を納めない者がいると不公平になるため、ある種の強制力が必要となります。そのため、憲法で納税の義務が定められています。�(参考)大島訴訟(サラリーマン税金訴訟)判決として有名な最高裁昭和60年3月27日大法廷判決(民集39巻2号247頁)も「およそ民主主義国家にあっては、国家の維持及び活動に必要な経費は、主権者たる国民が共同の費用として代表者を通じて定めるところにより自ら負担すべきものであり、我が国の憲法も、かかる見地の下に、国民がその総意を反映する租税立法に基づいて納税の義務を負うことを定め(30条)、新たに租税を課し又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要としている(84条)」と述べている。

●納税の義務(憲法第30条)

●勤労の義務(憲法第27条)

 1.すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。

 2.賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。

 3.児童は、これを酷使してはならない。

●普通教育を受けさせる義務(憲法第26条)

 1.すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、等しく教育を受ける権利を有する。

 2.すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。

2.納税の義務と公平な税金(生徒用P9)

 税金は国を維持、発展させていくために欠かせないものであるため、憲法第30条で納税の義務が定められていることを理解させる。また、その義務を果たすには、税負担に公平性が必要であるという次の議論へ導いていく。

■P9「もっと詳しく」

 調べてみよう:納税の義務 

ねらい

学習内容

 なぜ納税の義務が憲法で定められているのか、国民生活に大きな影響力をもつ財政を支える租税の意義と役割について考える。

  • 国民の三大義務
  • 家の課税権

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2.納税の義務と公平な税金(生徒用P10‐11)

【スタート時】����【5分経過時】

����【13分経過時】���

【15分経過時】�

【各グループの

発表に対する

コメント例】

������【最終講評】

ねらい

学習内容

 それぞれの置かれている立場(所得金額や受け取る公共サービスの程度等)によって、「公平」に対する考え方が様々であることを理解させる。

 A家からD家の4グループに分かれて自由に発言し、グループの意見をまとめた上で、各グループ同士の意見を発表する。

 まず「パターン2」について、5分程度で簡単にまとめて、その後「パターン3」の討議を始めてください。正解はありませんから自由に考えてみてください。

� 5分経ちました。そろそろ「パターン3」の討議を始めてください。

 ポイントとしては、「橋の建設は4軒全ての住人の希望である」ということです。�

 あと2分です。そろそろ、発表用紙に記載(入力)してください。「円グラフ」も忘れずに記載(入力)してください。

 発表者も選びましたか。

 それでは終了です。発表者の方は準備してください。

� 考慮した「その他の要素」はどのような要素(内容)ですか。

 「●グループ」は、「所得金額」と「使用回数」と「●●」という要素を組み合わせてバランスを取って負担金額を決めてもらいました。特に「〇〇」の要素を最も考慮しているようですね・・・。など

 Aさんは、自分では橋を使わないかもしれませんが、消防車や郵便局、友達が橋を渡って訪ねてきたりする場合もあるかもしれませんよね。ありがとうございました。

 各グループで考えた税金の集め方は、どれも公平だと思います。発表者の方もとても分かりやすく説明してくれてありがとうございました。公平な税金の集め方の考え方には、いろいろな考え方があると感じたと思います。

進行例

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 社会の会費のようなものである税をルールに基づいて納税してもらうためには国民の公平感(納得感)が必要です。一言で公平といっても、様々な指標があるため、日本の税制度はいろいろな税を組み合わせることによって、全体として、公平に税を集められるように工夫されています。

2.納税の義務と公平な税金(生徒用P12)

税負担や公平の考え方を整理して理解させる。

 政府が提供する公共サービスは、国や社会を成り立たせるために欠かすことのできないものですが、その提供には費用がかかりそれを賄う財源が必要となります。様々な公共サービスの中には個々人が受ける便益が明確なものがあり、そのような場合には手数料や保険料といった形で費用を賄うことになります。しかし、公共サービスは、基本的には社会の構成員が広く便益を受けるものですから、個々人にとっての受益と負担とを直接結び付けることができない性格のものです。このため、公共サービスの費用は、価格を付け、その対価を調達できないことから、直接の反対給付を伴わない租税という形で賄うことになります。

 このように、租税の基本的な機能は公共サービスの財源を調達することにあります。租税は、社会を成り立たせるためになくてはならないものですから、民主主義社会では、社会の構成員である国民が自ら負担しなければなりません。また、公共サービスによる便益は社会の構成員が広く享受するものであることからも、租税は皆で広く公平に分かち合うことが必要です。このようなことから、租税は「社会の会費のようなもの」であると言えます。

「税率・税負担等に関する資料」(財務省)を基に作成

 所得が多くなるにしたがって税率が段階的に高くなる累進税率を適用して、納税者がその支払能力に応じて税を負担するしくみとなっています。

 所得税の最高税率はかつて70%の時もありましたが、平成27年分以後現在の最高税率は45%で7段階となっています。

■P12「もっと詳しく」

 調べてみよう(日本税理士連合会HP) 

ねらい

  • 税負担の公平について
  • 所得税の累進課税制度
  • 租税の基本的な機能

《負担の考え方》�・応能負担:税金を負担する能力(担税力)に着目する考え方

・応益負担:国や自治体から受け取る公的サービス(受益)に着目する考え方

《公平の考え方》�・水平的公平 :等しい負担能力のある人(経済力が同じ人)は等しい負担をする。消費税や個人住民税は、税率は一定だが、課税対象額が多くなるほど税額が多くなる(比例税率)

・垂直的公平 :負担能力の大きい人はより大きな負担をする。所得税や相続税などは、所得など課税対象額が多くなるほど税率が高くなる(累進税率)

・世代間の公平:高齢者の世代と若年者の世代など、異なる世代を比較して負担の公平が保たれているかどうかという観点と、それぞれの世代の受益と負担のバランスが保たれているかを考慮する

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「あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。」(憲法第84条)

 ⇒法律によらなければ、国家は租税を賦課徴収できず、一方国民は租税を負担することはないという原則

  • 税は公共サービスの対価
  • 自らの代表が、国の支出の在り方を決めることと、自らが国を支える税金を負担しなければならないことは表裏一体
  • 税の使いみちを監視する(関心をもつ)ことも納税者として重要

2.納税の義務と公平な税金(生徒用P13)

 今までの議論をまとめて、「税の本質」と民主主義の基本原則を理解させる。税金の使いみちの決め方や国民生活との関係を理解し、「政治への参加」と「国を支える税金を国民が負担すること」が対になっているのが民主主義の基本であることを理解させる。

 また、その使いみちをしっかりと監視していくことの重要性を理解させる。

 ① 歴史的に民主主義が確立していく過程で、国民一人一人が社会や国の運営に参加する権利と義務を有するようになってきたことに伴い、社会共通の費用を賄う租税は国民一人一人が広く公平に分担する必要があるという考え方が浸透してきました。

 租税については、公共サービスの財源としてどの程度のものが必要か、それを具体的に誰が、どのように分担するか、というルール(税制)が必要です。民主主義の下では、このルールは最終的には国民の意思によって決定されます。租税を納めることは自らの受益と直接関係なく金銭等を拠出するものですから、あらかじめ定められた手続に基づいて国民の合意の下にルールが決められなければなりません。一方、国民皆がルールに基づいた納税を行わなければ、必要な税収は集まらずまた、不公平が生じますので、ルールに強制力を付すことによって実効性を持たせる必要があります(これが国家の課税権

出所:「政府税制調査会答申(平成12年7月14日)『我が国税制の現状と課題-21世紀に向けた国民の参加と選択-』」(内閣府)

■P13「もっと詳しく」

 調べてみよう:税の決定者 

ねらい

学習内容

 国民主権と関連付けて、納めた税金が国や地方公共団体の予算として決められる仕組みを知る。また、我が国の政治が民主政治の考え方に基づいて国民生活の安定と向上を図るために大切な働きをしていることを知る。

■「税の本質」とは

  • 租税法律主義
  • 租税と民主主義

と言われるものです。)。

 このようなことから日本国憲法では、納税を国民の義務とし、また、租税法律主義を明記しています。

 ② 議会制民主主義の下では、税制は主権者である国民の意思を反映して議会で決められます。具体的には、国権の最高機関であり国民の代表で組織される国会で法律として議決されなければなりません。実際に国会の場で審議するのは国民の代表者ですが、私たち国民は代表者を選出することを通じてその議論に参加するほか、様々な場で議論に参加していくことが必要です。

 租税は、公的サービスと表裏一体であり、国民が自ら拠出するものです。また、税制は経済社会と相互に深く関係しています。このようなことから、私たち一人一人が、国民として、納税者として、かつ有権者として、税制について考え、議論に参加することが求められることとなります。

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国の歳入・歳出の内訳がどうなっているのかを学び、税がどのように使われているかを理解させる。

 公共事業関係費は、道路や港湾、住宅や下水道、公園、河川の堤防やダムなど、社会経済活動や国民生活、国土保全の基盤となる施設の整備に使われています。私たちの身近にある施設にお金が使われていることに注目しましょう。

 国の支出の約3/4を、社会保障関係費・国債費(借金の返済と利子の支払い)・地方交付税交付金等で占めています。

 国の収入の約3/4が「税収等」で、残りの約1/4は「公債金」に依存しています。

「公債金」とは国の借金のことで、元本の返済や利子の支払いなどの負担を、将来の世代に残すことになります。

 地方公共団体(都道府県や市区町村)は、私たちの日常生活と密接に結びついている教育・警察・消防・環境衛生・生活保護などの公共サービスを行うため、地方税を集めています。

 しかし、その地域の経済状況などによって、それぞれの地方公共団体の財政力に違いがあります。

そこで公共サービスに格差が生じないよう、国が地方公共団体の財政力を調整するために支出しているのが、地方交付税交付金等です。

3.国の財政をみてみよう(生徒用P14‐15)

ねらい

  • 国の歳入
  • 国の歳出
  • 社会保障関係費 �38兆2,938億円
  • 公共事業関係費 �6兆858億円

 文教及び科学振興費は、教育や科学技術の発展のために使われています。

 私たちが安心して生活していくために必要な年金、医療、介護、少子化対策、生活扶助等社会福祉、保健衛生対策、雇用労災対策に使われています。

  • 地方交付税交付金等 �18兆8,728億円
  • 文教及び科学振興費 �5兆6,560億円

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国の財政状況を理解させる。

3.国の財政をみてみよう(生徒用P16‐17)

 1990年度と現在の歳出を比較すると、社会保障関係費や国債費が大きく伸びています。特に社会保障は年金、医療、介護、こども、子育てなどの分野に分けられ、国の一般会計歳出の約1/3を占める最大の支出項目となっています。

 歳出の増加に対し歳入は、経済成長の停滞などが影響して税収の伸びが見合っておらず、不足分を借金に頼っているため公債金は約5倍と大幅に増加しています。

 健康で豊かな生活を送るためには、国や地方公共団体が様々な公共施設や公的サービスを提供していく必要があります。そのために税金などのお金を集めて管理し、必要なお金を支払っていく活動を財政といいます。財政の役割は多方面にわたり複雑になってきていますが、国民経済的な機能に着目すると、次の3つに整理できます。

①資源配分機能

 防衛や警察、外交などの「公共財」など、市場メカニズムに任せていては十分に供給されず、政府による供給が必要となるものを配分する。

②所得再分配機能

 所得税の累進税率適用や、生活保護や失業保険などを通じ、過度の所得格差が生じた場合にそれを是正する。

③景気調整機能

 税金の仕組みや、財政支出の規模の拡大・抑制を通じて、経済を安定化させる(景気変動を小さくする)。

ねらい

  • 「財政」とは
  • 財政構造の変化

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3.国の財政をみてみよう(生徒用P18‐19)

 日本が抱える問題の一つである「少子高齢化」を理解させる。また「少子高齢化」が進むと財政にどのような影響が出るのか理解させる。

 少子高齢化の原因は、平均寿命が延びたことと、平均出生率が減少したことです。

 少子高齢化の問題の一つは、社会保障の費用が増えていくことであり、もう一つは、その費用を負担する働き手が減っていくことです。

 子育てしやすい社会、誰もが活躍できる社会を実現するためには、大きな費用を必要とし、その財源の中心は税金です。どれだけ公的サービスを受け、その費用をどう負担すべきかを考えていく必要があります。

 日本では、高齢化の進展等に伴って、社会保障給付費が大きく伸びてきています。一方で、社会保険料収入は、近年、横ばいで推移しているため、社会保障給付費と社会保険料収入の差額は拡大傾向にあります。この差額は、主に、国や地方自治体の税負担で賄われることとなります。

ねらい

  • 少子高齢化
  • 社会保障給付費と社会保険料収入の推移

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3.国の財政をみてみよう(生徒用P20‐21)

公債残高の課題について理解させる。

 日本では毎年のように歳入の不足を補うために国債(赤字国債)を発行し、公債残高は年々積み上がっています。さらに、国の政策や事業には、国の財政状態や国民の生活のためにタイミングよく行わなければならないものがあり、2020年度には新型コロナウイルスによる経済危機への緊急対策のため新規国債発行額は過去最高となっています。過去には、阪神・淡路大震災(1995年)や東日本大震災(2011年)という大規模な自然災害時や世界金融危機(リーマンショック)(2008年)という金融危機の際にも国の経済や国民の生活を立て直すために国債が発行されました。

 2025年度当初予算では約29兆円の国債が発行され、2025年度末の公債残高は約1,129兆円になると見込まれています。これは、一般会計税収※の約15年分に相当し、将来世代に大きな負担を強いることになります。

 ※ 2025年度一般会計税収 77.8兆円

■P20・21「もっと詳しく」

 動画で学ぼう:日本の「財政」を考えよう

 [財務省作成動画:YouTube] 

ねらい

  • 公債残高

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  • 地方交付税

 地方公共団体ごとの財源の均衡化を図り、地方行政の計画的な運営を保障するため、国が、一定の基準に基づいて各地方公共団体ごとに標準的な必要額(基準財政需要額)と標準的な収入(基準財政収入額)を見積もり、財源不足が生じる場合に、その不足額を基礎として地方公共団体に交付するもので、国税のうち所得税及び法人税のそれぞれ33.1%、酒税の50%、消費税の19.5%、地方法人税の全額がその財源に充てられています。

  • 国庫支出金

 都道府県が行う特定の事務事業に対して国から交付される給付金であり、国が地方公共団体と共同で行う事務に対して一定の負担区分に基づいて義務的に負担する国庫負担金、国が地方公共団体に対する援助として交付する国庫補助金、国からの委託事務で経費の全額を負担する国庫委託金の3区分があります。

もっと税について調べてみよう - 京都府の財政―①歳入(生徒用P22,23)

  • 地方消費税清算金

 地方消費税は、国税である消費税とともに国が徴収し都道府県に払い込まれますが、これを消費に相当する額により都道府県間で清算することとなっており、この清算に係る収入です。

  • 府債

 道路、住宅、公園の建設など多額の経費を要する事業でその効果が後年度に及ぶもの又は災害復旧事業など緊急に実施する必要のある事業の財源に充てるため、国や金融機関などから長期にわたって借り入れる借金です。府債の発行に当たっては、総務大臣との協議又は総務大臣の許可が必要です。

 京都府の歳入・歳出の内訳がどうなっているのかを学び、地方では、主としてその地域に住む人々の豊かな暮らしと安全のために税金がどのようにつかわれているのかを理解させる。

ねらい

学習活動

 私たちのまちの財政を調べ、財政の役割や租税の意義などについて考えさせる。

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区分

年度

教育費

民生費

土木費

公債費

警察費

令和5年度

65,793

70,987

26,665

44,321

31,708

令和6年度

70,690

71.965

26,189

45,818

32,119

令和7年度

73,313

74,337

27,072

48,745

33,488

区分

年度

商工費

総務費

農林

水産業費

衛生費

-

令和5年度

65,874

16,204

7,245

23,038

-

令和6年度

64,161

16,094

7,361

7,775

-

令和7年度

63,770

18,213

7,605

6,967

-

もっと税について調べてみよう - 京都府の財政―③使われ方(生徒用P24)

  • 一般会計予算(当初予算)の府民一人当たりの額

 (各年度は3月1日現在の推計人口を基準として計算した。)

  • 税金の使われ方

(単位:円)

区分

小学校

中学校

高等学校

令和2年度

98万円

112万円

106万円

令和3年度

93万円

107万円

113万円

令和4年度

94万円

109万円

113万円

  • 学校教育のために

 小学校から高校まで公立に通った場合、1人当たりの教育費の総額は、1千万円を超える計算になります。

 また、私立学校にも私学助成金など、税金が使われています。

  • 国と地方公共団体が負担した�公立学校の児童・生徒の1人当たりの年間教育費
  • 私立学校への公費助成金の額(京都府内令和6年度予算)

小学校

(10校)

中学校

(24校)

高等学校

(40校)

13億3,659万円

28億4,844万円

213億2,236万円

【救急】

【警察】

【ごみ処理】

令和4年中の救急出動件数は、15万8,820件(前年比119.4%)でした。出動件数を事故種別にみると、急病が9万7,445件(構成比61.4%)、交通事故が9,374件(構成比5.9%) となっています。

令和5年中の京都府での刑法犯の検挙件数は5,560件(前年比113.0%)、交通事故(人身事故)の 発生件数は4,067件(前年比106.7%)です。

令和4年度の京都府でのごみの排出量は67万5,525トン(前年比98.6%)、1人1日当たりの排出量は721gでした。

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もっと税について調べてみよう - 京都府の財政―④知ってる?(生徒用P25)

 個人の市・府民税は、税金を負担する能力のある人すべてが均等の税額を納める「均等割」と、その人の所得に応じて納める「所得割」とからできています。

 なお、個人の府民税は、京都府の税金ですが、 納税義務者や課税所得金額などが個人の市民税と同じであるため、京都市が個人の市民税とあわせて課税及び徴収し、京都府へ払い込んでいます。

【目的】

【活用】

①森林の整備・保全

荒廃した森林の整備、山地災害が発生する危険性が高い森林における予防的な事業などの森林の保全を進める事業

②森林資源の循環利用

内産木材の生産・加工から消費に至るまでの循環型の仕組みづくり

③森林の多様な重要性についての府民理解の促進

森林の重要性を学ぶ事業

■「豊かな森を育てる府民税」

  • 市・府民税の均等割及び所得割とは

 府民の生活の安心・安全を確保する上で、土砂災害の防止、水源の涵(かん)養、地球温暖化の防止等森林の多面的機能が果たしている役割は重要であり、その恩恵を広く府民全体が享受しています。

※ 水源の涵(かん)養…森林の土壌が雨水を蓄え、河川の水量を調節し、水質を浄  

 化することで、水資源を保全する働きのこと。

 これらの森林の多面的機能を維持し、増進するためには森林の整備及び保全、森林資源の循環利用並びに森林の多様な重要性について府民の理解を深めることが必要です。

 そのための施策に要する経費の財源として活用することを「豊かな森を育てる府民税」の目的としています。

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もっと税について調べてみよう - 京都府各地の財政(生徒用P26)

京都府内の自治体(50音順)

※自治体の名称をクリックすると、自治体のホームページへ移動します。

  • 国と地方の主な行政事務の分担    (総務省HPより)

分 野

公 共 資 本

教  育

福  祉

そ の 他

高速自動車道

国道

一級河川

大学

私学助成(大学)

社会保険

医師等免許

医薬品許可免許

防衛

外交

通貨

 地 方 

 道

 府

 県

国道(国管理以外)

都道府県道

一級河川(国管理以外)

二級河川

港湾

公営住宅

市街化区域、調整区域決定

高等学校

特別支援学校

小・中学校教員の給与・人事

私学の助成(幼~高)

公立大学(特定の県)

生活保護(町村の区域)

児童福祉

保健所

警察

職業訓練

 市

 町

 村

都市計画等

(用途地域・都市施設)

市町村道

準用河川

港湾

公営住宅

下水道

小・中学校

幼稚園

生活保護(市の区域)

児童福祉

国民健康保険

介護保険

上水道

ごみ・し尿処理

保健所(特定の市)

戸籍

住民基本台帳

消防

※平成30年4月以降、国民健康保険の財政運営の責任主体は都道府県に変更

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解いてみよう - 穴埋め問題 / ちょっとブレイク - 税金クイズ(生徒用P27‐28)

答え

参考

② 約50種類

約50種類の税金を設けることにより、公平性のバランスを保っています。

③ クイズの懸賞金

①のノーベル賞の賞金、②の宝くじの当せん金は、法律により税金はかかりません。

② スペードのエース

1711年にイギリスでトランプが流行したとき、トランプに税金がかけられました。

③ 国会

選挙で選ばれた国会議員が国会で決めています。

② かえる税

中世のフランスで、かえるが鳴くのを止めさせる役目があり、役目の代わりにかえる税がありました。

答え

参考

① 納税

スライドP9

② 水平

③ 垂直

スライドP12

④ 国民

⑤ 国会議員

スライドP13

⑥ 社会保障関係

⑦ 国債

⑧ 税収

⑨ 公債金(借金)

スライドP16

⑩⑪ 道府県民税

   事業税など

スライドP3

■P28「もっと他にも」

 財務省×QuizKnock クイズで全知全納!?税制マスター

  • 穴埋め問題 解答
  • 税金クイズ 解答

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■「税の本質」

  • 税は公共サービスの対価
  • 自らの代表が、国の支出の在り方を決めることと、自らが国を支える税金を負担しなければならないことは表裏一体
  • 税の使いみちを監視する(関心をもつ)ことも納税者として重要

おわりに(生徒用P29)

  • 主権者として

 私たちが健康で文化的な生活を送るため、国や地方公共団体による多くの公的サービスが存在しており、私たちはその恩恵を受けています。税は、それらにかかる費用を賄うもの、いわゆる公的サービスの対価です。

 税はすべての国民が安心して暮らせる社会を支えるために、皆で広く公平に分かち合う社会の会費のようなものであると言えます。

 しかしながら、現在、租税収入だけではこれらの費用を確保できないことから、多くの国債を発行し、公債残高も増加の一途をたどっていることに加え、少子高齢化など、将来世代に大きな負担を強いることが危惧されています。そのため、国民の負担と受益のバランスを見直し、租税の意義と役割について、主権者として主体的に考えていく必要があります。

※ 18歳になれば選挙権が与えられ政治に参加することになり、さらに令和4年度からは成年年齢が18歳に引き下げられました。

 私たちがこれからも健康で文化的な生活を送るためには、税金の在り方を一人ひとりが真剣に考えていく必要があることを理解させる。

ねらい

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(編集・発行) 京都府租税教育推進連絡協議会

 〒602-8555 京都市上京区一条通西洞院東入元真如堂町358 上京税務署内

京都府租税教育推進連絡協議会は、京都府内の教育委員会や小学校・中学校・高等学校の教育関係者と、国・府・市町村の税務関係者が協力して、租税教育の推進を図るために設けられた組織です。

参考情報

税の学習コーナー(国税庁HP内)  �https://www.nta.go.jp/taxes/kids/index.htm

国税庁ホームページでは、「税の学習コーナー」を設けています。授業の参考にご活用ください。

 租税教育は、次代を担う生徒に対し、健全な納税者意識を養うことを目的としており、我が国における中長期的な納税環境の整備及び納税道義の一層の高揚の観点からも特に重要であると考えております。� 租税教育の充実に向けた我々の取組をご理解いただき、より一層、租税に関する学習を充実していただきますよう、よろしくお願いいたします。

おわりに

主な関係省庁ホームページ

文部科学省https://www.mext.go.jp/