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森林生態学を踏まえた広葉樹林施業

造林技術研究所 横井 秀一

日本林政ジャーナリストの会 令和7年度第4回研究会 2025. 10. 6

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お話しする内容

  1. 造林技術に寄与する生態学的知見
  2. 広葉樹林の更新
  3. 広葉樹林の保育

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1. 造林技術に寄与する生態学的知見

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針葉樹と広葉樹:生態的特性の違い

針葉樹

広葉樹

主な分布域

温帯~寒帯

熱帯~温帯

寿命

長め

短め

成長速度

中庸

多様

耐陰性

高め

低め

個体維持能力

低め

高め

防御機構

高め

低め

耐気象害性

低め

高め

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森林施業の基本原則:合自然性の原則

  • 自然に反する森林施業は行わない
    • 自然に逆らった森林施業はどこかで失敗する
  • 厳しい自然環境や脆弱な立地では林業活動を行わない
    • 合自然性に反する森林経営はいつか破綻する

  • 自然界で起きている現象を上手に利用/制御する
  • 自然の流れに沿うよう上手に目標へと誘導する
    • 林木は生きものであるとの意識を常に持つ
    • 樹木に対する理解を広げる/深める

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造林技術は科学技術

  • 造林:林木の成長制御

  • 個々の樹木だけなら植物学・生理学の世界
  • 林木は他者との関係があるので生態学の世界
    • 生態学を学ぶことは有意義
    • 生態学的な見方/考え方を身に付けることが大切

  • 造林技術は自然の理の上に立脚
    • 自然の理を知ることが基本の基

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合自然性の根拠になる科学的な大原則

  • 森林施業で扱うのは樹木という生き物
    • 自然の摂理に則って生活している(成長する/枯れる)

  • 森林の更新
    • 森林が撹乱を受けなければ更新はない
    • 更新の素(種子・苗木・株など)がなければ更新できない

  • 樹木の成長
    • 葉が光を受けられなければ成長・生存できない
      • 十分な光がない:上長成長も肥大成長もできない
      • 十分な葉がない:肥大成長できない

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森林整備作業ですべきことは自明で単純

できることは伐るか植えるか

  • 上層木を育てたいなら
    • 葉を十分につけられる空間を与える

    → 育てたい上層木の樹冠の拡張を邪魔する上層木を伐る

  • 下層木・下層植生を育てたいなら
    • 下層に十分な光が当たるよう環境を整える

    → 陰をつくる木(より樹高の高い木)を伐る

  • 上層木を違う樹種にしたいなら
    • 不要な上層木を伐って必要な木を導入する

    → 上層木を伐って新しい木が生育できる場所をつくる

    → 植栽または天然下種で新しい木を導入する

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森も木も枝葉も大事

  • 「木を見て森を見ず」はダメではない → 木を見て森も見る
    • 木があって森林が成り立つ
    • 人が制御できるのは一本一本の木の成長
    • 収穫の対象となるのは一本一本の木
    • 公益的機能は森林(の存在)として発揮される

  • 「枝葉末節」が基本
    • 葉があるから木(根幹)が育つ
    • 枝があるから葉をつけられる

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時間軸で森林を捉える

  • いま見ている森林 = 今このときの時間断面の姿
    • 過去があるから現在の森林がある
    • 現在の森林には将来がある

  • 森林施業(造林・育林):森林の将来のデザイン
    • 森林のこれからを制御 → 望ましい将来に誘導

  • 森林施業には時間軸で森林を見る力が必須
    • 経験知と知識知から将来を予測する力
    • 将来予測に基づいて必要な施業・作業を見いだす力

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広葉樹林施業は職人技ではない

  • 針葉樹/針葉樹林を育てた経験は活かせる
    • 針葉樹も広葉樹も同じ樹木
    • できる作業/やるべき作業は同じ

しかし

  • 針葉樹/針葉樹林を育てた経験だけでは難しい
    • 広葉樹ならではの扱い方がある

とはいえ

  • 技術者なら広葉樹/広葉樹林を育てることはできるはず
    • 造林技術は科学技術だから

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1. 造林技術に寄与する生態学的知見

種子散布様式とセーフサイト

外生菌根とアーバスキュラー菌根

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森林の更新に寄与する主な散布様式

  • 重力散布
  • 貯食散布

  • 周食散布
  • 風散布

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重力散布・貯食散布の大型種子の当年生実生

ミズナラ 5月29日

トチノキ 6月18日

散布された翌春に発芽(休眠できない)

リターの下でも発芽できる

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周食散布の中型種子の当年生実生

ホオノキ 7月20日

キハダ 8月2日

埋土種子(長期の休眠)になりやすい

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風散布の小型種子の当年生実生

シラカバ 6月24日

ウダイカンバ 7月26日

裸地の鉱物土壌の上で発芽

埋土種子(短期の休眠)になることがある

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風散布の中型種子の当年生実生

イタヤカエデ 6月15日

アオダモ 8月12日

少しぐらい暗い林内でも発芽

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カンバとブナの母樹と稚樹の位置関係

横井秀一・小谷二郎(2002)森林生態学が支える広葉樹林施業.森林科学36:25-30.

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ギャップサイズと更新樹種の種子重

清和研二『自然に倣う広葉樹の森づくり』築地書房(2025)p.195

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ミズキの親子の位置関係

清和研二『自然に倣う広葉樹の森づくり』築地書房(2025)p.76

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ブナの親子の位置関係

清和研二『自然に倣う広葉樹の森づくり』築地書房(2025)p. 85

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1. 造林技術に寄与する生態学的知見

開葉様式・シュート伸長様式

休眠芽と萌芽・後生枝

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開葉様式(=シュートの伸長様式)

  • 一斉型(前形成型/固定成長型)
    • 1成長期に展開する全ての葉が一斉に展開
    • 茎の伸長もそれに合わせて短期間で終了

  • 順次型(後形成型/自由成長型)
    • 葉が少しずつ順々に展開
    • 茎の伸長も長期間つづく

  • 一斉+順次型
    • 春に一斉開葉
    • その後に順次型の開葉

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一斉型

  • 冬芽に全ての葉
    • 冬芽の形成は高コスト
  • 安定した環境に生育(環境予測性が高い)
  • 弱光利用型
  • 遷移後期種

ミズナラ

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順次型

  • 芽には最初に展開する少しの葉
    • 冬芽の形成は低コスト
  • 不安定な環境への適応(環境予測性が低い)
  • 強光利用型
  • 遷移初期種

シラカバ

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一斉+順次型

  • 芽には一斉展開分の葉
    • 冬芽の形成は高コスト
  • やや安定した環境で伸長成長を狙う
  • 弱光利用型
  • 遷移中期種

ホオノキ

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一斉型の成長をする稚樹

ミズナラ

ミズナラのラマスシュート

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順次型の成長をする稚樹

シラカバ

ウワミズザクラ

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一斉+順次型の成長をする稚樹

ホオノキ

ハリギリ

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生育環境と伸長様式

横井秀一・小谷二郎(2002)森林生態学が支える広葉樹林施業.森林科学36:25-30.

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個葉の寿命と光合成能力

小池孝良:葉の構造と機能(小池孝良編『樹木生理生態学』朝倉書店 2004)p.43

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シュートと休眠芽

  • シュート
    • 開芽した芽
  • 休眠芽
    • 開芽しなかった芽

  • 頂芽優勢
    • シュート先端付近の芽が開く性質

シラカシ

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伐り株からの萌芽と休眠芽

清和研二『自然に倣う広葉樹の森づくり』築地書房(2025)p. 229

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萌芽の役割

  • 個体維持
    • 親株の位置
    • 地上部損傷の修復
    • 地上部の更新(入れ替え)

  • 繁殖
    • 親株から離れた位置
    • 親株との連絡が切れると別個体

 (生理的独立 → 物理的独立)

※ 正確には繁殖と言えない場合もある

伊藤哲:無性生殖(小池孝良編著『樹木生理生態学』朝倉書店 2004)p.196

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ミズナラの後生枝の起源と齢

横井秀一・山口清(1996)ミズナラの後生枝の発生起源と間伐がその発達に及ぼす影響.日林誌78:169-174.

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休眠芽の開芽

幹からの後生枝

(コナラ)

伐り株からの萌芽

(アベマキ)

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1. 造林技術に寄与する生態学的知見

初期成長速度と耐陰性

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種子の重さと実生の成長

清和研二:種子のサイズと実生の成長パターン

(正木隆編『森の芽生えの生態学』文一総合出版 2008)p.69

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陽樹と陰樹の光合成特性

壁谷大介:光への応答反応からみた実生の戦略(正木隆編『森の芽生えの生態学』文一総合出版 2008)p.97

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ハリギリ稚樹の受光環境と樹形(1)

林床(上から)

林床(横から)

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ハリギリ稚樹の受光環境と樹形(2)

ギャップ内

開放地

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1. 造林技術に寄与する生態学的知見

成長に伴う樹冠の発達

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樹木の成長の模式図

  • シュート:茎と葉のセット/樹木の体の基本的なモジュール
  • 樹木の地上部:シュートの積み重ね
    • 幹や枝は過去のシュート:新しいシュートを支持
    • 着葉量 ∝ 新しいシュートの数

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シュートの伸長と光・空間

  • 光が当たる → 葉をつけていられる → しっかり稼げる
  • 空間がある → シュートを伸ばせる → より多く稼げる
  • 光が当たる空間を獲得したものが勝ち

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樹形:シュートの積み重ねと枯れの結果

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広葉樹の樹冠の発達

横井秀一・小谷二郎(2002)森林生態学が支える広葉樹林施業.森林科学36:25-30.

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太い広葉樹は樹冠が大きく枝下が低い

ミズナラの胸高直径と樹冠幅の関係

ミズナラの胸高直径と枝下高の関係

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胸高直径と樹冠幅の関係

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広葉樹林の樹高と本数密度

横井秀一・小谷二郎(2002)森林生態学が支える広葉樹林施業.森林科学36:25-30.

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本数密度と平均胸高直径(針葉樹/広葉樹)

  • 同じ本数密度の胸高直径
    • スギ > ヒノキ > ミズナラ

  • 同じ胸高直径の本数密度
    • スギ > ヒノキ > ミズナラ

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林分内林木の胸高直径と樹高・枝下高

ミズナラ天然生林

広葉樹混生林

ブナ天然生林

スギ

人工林

ヒノキ

人工林

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1. 造林技術に寄与する生態学的知見

樹木の生育立地と分布様式

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常緑広葉樹の分布北限

酒井昭『植物の耐凍性と寒冷適応』

学会出版センター(1982)p.341, 343

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広葉樹の耐凍性

酒井昭『植物の耐凍性と寒冷適応』学会出版センター(1982)p.343, 344

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地形と樹木の分布

清和研二『自然に倣う広葉樹の森づくり』築地書房(2025)p. 229

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広葉樹の群れ方

清和研二『自然に倣う広葉樹の森づくり』築地書房(2025)p. 94

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2. 広葉樹林の更新

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更新のステージ

  • 育成木(育成木候補)を確実に導入する

  • 撹乱があるから更新がある
    • 撹乱(収穫)するなら:更新させなくてはならない
  • 撹乱がなければ更新もない
    • 更新させたければ:撹乱することが必要

  • 撹乱と更新の関係を理解することが重要
    • 撹乱の規模・形態と更新する樹種の関係

※ 撹乱:森林(林冠層)の破壊

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撹乱~更新のタイミング

  • 前更更新
    • 前生稚樹による更新:確実性が高い

  • 後更更新
    • 後生稚樹による更新:確実性が低い
    • 萌芽による更新:確実性が高い(萌芽可能であれば)

  • 現況に応じて補完し合えるとよい

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撹乱前に存在する稚樹(前生稚樹)

ブナ

ハリギリ

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撹乱後に発生した稚樹(後生稚樹)

キハダ

ミズキ

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2. 広葉樹林の更新

天然下種更新

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広葉樹の天然下種更新

天然下種更新:自然に散布された種子による更新

  • 種子がなければ始まらない
    • 種子が散布される範囲に種子源(母樹)が必要
  • 種子はどこでも発芽できるわけではない
    • 種子の発芽と実生の定着に適した場所(セーフサイト)が樹種で異なる
  • 実生稚樹の全てが生き残るわけではない
    • 熾烈な生存競争が待っている
    • 外敵(動物・病気)や乾燥で消失するものも多い

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広葉樹天然生林内の前生稚樹

ブナ林内の稚樹

ブナ

ブナ林内の稚樹

ミズナラ・コシアブラ・ウリハダカエデ

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林内に稚樹があるのと更新とは違う

  • 前生稚樹は林内にいるだけ
    • そのままでは光不足で大きくなれない
    • 下剋上はありえない
    • 前生稚樹がいる状態を更新しているとは言わない

  • 上層木による修復不能なギャップが開いたときに更新が始まる
    • そのとき前生稚樹が存在すると心強い
    • 前生稚樹を事前に確認すれば更新の予測がつく

  • 前生稚樹はとても重要な存在

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スギ人工林内のケヤキ稚樹の成長経過

大洞智宏・横井秀一(2000)スギ人工林に侵入したケヤキの成長過程.中森研48:1-2.

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天然下種更新の不確実性を低くする

  • 更新材料の不足 母樹保全/表土保全/豊凶予測
    • 種子源(母樹)の不在
    • 結実の凶作
    • 埋土種子(表土)の流失

  • セーフサイトの不適合 前更作業/地表かき起こし

  • 他の植物との競合 刈払い/刈出し
    • ササ・低木などの繁茂

  • シカなどの食害 柵/ササ高刈り/ツリーシェルター

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ブナを天然下種更新させる技術

ブナ林の間伐(下種伐)

新潟県魚沼市

前生稚樹の生育状況を確認しての群状択伐

新潟県魚沼市

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シラカバを天然下種更新させる技術

帯状皆伐+地表処理

北海道幌加内町

皆伐+地表処理

北海道幌加内町

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刈出し

刈出しで実現させたいこと

  • 目標とする樹種構成の森林をつくる
  • 目的樹種を確実に育てる

刈出しのタイミング

  • 目的樹種の稚樹が被圧を受け始めたとき

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伐採後1年目:刈出しが必要ない状態

ミズナラの前生稚樹が十分な陽光を受けている

ホオノキの後生稚樹が十分な陽光を受けている

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伐採後数年目:刈出しをしたい状態

ミズナラの稚樹とリョウブなどの萌芽が競合を始めている

キハダが周辺の木に被圧されかけている

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2. 広葉樹林の更新

萌芽更新

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広葉樹の萌芽更新

  • 伐採前と同じような森林が再生

  • 初期の再生速度が速い
    • 林床がササでも更新できる
    • 次回の収穫までの時間が短い

  • 伐り株が枯れない土砂災害防止機能が低下しない

  • 数本の幹が立つ → 大径の製材用材は得にくい

  • 伐採を繰り返すと萌芽しない株がでてくる(株落ち)

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萌芽更新した広葉樹林

コナラ林

長野県大町市

ミズナラ林

岐阜県高山市

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利用が継続している萌芽林

シイタケ原木林(コナラ林)

岐阜県高山市

薪炭林(クヌギ・コナラ林)

栃木県茂木町

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伐り株の直径と萌芽の発生

大住克博:里山林の生態(黒田慶子編『里山に入る前に考えること』森林総合研究所関西支所 2009)p.23

  • コナラは大径化による萌芽本数の低下が著しい
  • クヌギ・アベマキは大径化しても萌芽本数が減らない

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2. 広葉樹林の更新

植樹造林

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適地適木が植樹造林の基本

  • 造林の失敗の多くは不適地への植栽

  • 造林不適地
    • 気候・気象
      • 自生地と異なる気候帯
      • 積雪地帯
      • 風衝地
    • 地形・土壌
      • 樹種特性に適合しない土壌

  • 不適地に起因する生育不良:保育作業で挽回できない

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まずは気候帯に合致する樹種

  • 植栽場所は暖温帯か冷温帯か
    • 暖温帯:常緑広葉樹林帯(シイ・カシ帯)
    • 冷温帯:夏緑広葉樹林帯(ブナ帯)
    • 中間温帯:暖温帯と冷温帯の移行帯/暖温帯上部の北斜面

  • 冷温帯に暖温帯樹種
    • 冬の寒さを乗り切れない
  • 暖温帯に冷温帯樹種
    • 夏の暑さで衰弱 → 病虫害の発生

  • 周辺の自生種を参考にする

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その上で造林地の土壌に合う樹種

  • 広葉樹は適地が狭いものが多い
    • 適地を外れると著しく成長が悪化(するものが多い)
      • とくにケヤキ・トチノキ・キハダなど

 → その土地(土壌)に適する樹種を植える

 → 樹種を決めているならその樹種に適する土地に植える

  • 広い造林地では地形・土壌に合わせた植え分け

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ケヤキ植栽木の成長と土壌条件

横井秀一・山口清(1995)ケヤキ幼齢人工林の成長と土壌の理学性.日林中支論43:55-58 から作成

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ケヤキ造林地の下刈り

横井秀一(2001)ケヤキ造林地における下刈りの省略が林分構造に及ぼす影響.岐阜県森林研研報30:1-8.

※ 16年生時

BD(d)

4,000本/ha

集約:6年下刈り・雪起こし

粗放:1年下刈り

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天然林の樹種構成に基づいた混植樹種

熊本県林務水産部(1994)熊本県における広葉樹造林の手引き

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遺伝的撹乱への配慮

遺伝的撹乱:長い歴史で形成されたある種の遺伝構造や遺伝的多様性が人為的に持ち込まれた個体との交雑によって乱されること

  • 地域外遺伝子の持ち込みによる不具合
    • 植栽地の環境への不適合 → 生育不良
    • 雑種崩壊・希釈 → 遠交弱勢 → 地域集団や種の衰退

  • 遺伝子撹乱に配慮するなら地域産種苗が必要
    • 広葉樹苗木の流通は無法地帯(林業種苗法の適用外)
      • 苗木生産地が限定/種子は全国から
      • 出荷時に地域性を考慮している生産者もいる
    • 地域産種苗は自前で準備するしかない

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ブナの望ましい移動制限

森林総合研究所(2011)広葉樹の種苗の移動に関するガイドライン

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地域を越えて植えられたブナへの影響

by 小山泰弘

多雪

寡雪

多雪地域では太平洋側

産の雪害が多い

寡雪地域では日本海側産

の先端枯死が多い

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ミズナラの望ましい移動制限

森林総合研究所(2011)広葉樹の種苗の移動に関するガイドライン

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ヤマザクラの望ましい移動制限

森林総合研究所(2011)広葉樹の種苗の移動に関するガイドライン

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遺伝構造に基づく愛媛県の植栽指標

  • ヤマザクラ
    • 佐田岬半島、芸予諸島で分化が認められたので、この地域に対しての種苗の移入・移出は控えるべき。
    • 九州と四国の間で分化が認められたので、九州産の種苗の移入は控えるべき。
    • 本州と四国の間で分化が疑われ、四国内での分化は大きくないので、四国内での種苗の移動が望まれる。
  • コナラ
    • 西日本での分化は認められなかったので西日本内での種苗の移動は可能だが、四国内での移動が望まれる。
  • クヌギ
    • 全国的に分化は認められなかったので国内での種苗の移動は可能だが、由来がはっきりしている国内産の種苗を用いるのが安心。

愛媛県林業研究センター(2017)愛媛県における広葉樹の苗の植栽指標

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3. 広葉樹林の保育

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森林の発達の3つのステージ

  • 更新期
    • 林地に様々な樹種(高木も低木も草本も)が発生
    • 熾烈な生存競争 → 樹種・個体の淘汰が激しい

  • 樹高成長期
    • 樹高成長が旺盛
    • 枝の枯れ上がりが進む

  • 直径成長期(肥大成長期)
    • 樹冠を広げながら直径成長が継続
    • 個体間競争の結果(樹冠の大小)が成長に反映

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木材生産のための理想的な広葉樹の管理

樹高成長期

直径成長期

更新期

最初の間伐

除伐

更新補助

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保育のステージ

  • 育成木の成長を制御する(多くは促進させる)

  • 成長を制御したいのは個体
  • 成長に関係する要因は光と着葉量
    • 光も着葉量も直接的に制御できない

 → 育成木をとりまく環境を制御する

  • 個体の成長と個体間競争の関係を理解することが重要

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樹高成長のための作業

  • 樹高成長を支配する要因
    • 樹冠が受ける光の量(明るさ)
    • 樹種の樹高成長特性:とくに初期成長速度
    • 土地の生産力:地位

  • 樹高成長を阻害する要因
    • 被陰(被圧)
    • 動物による被食

  • 樹高成長促進のためにできる作業
    • 刈出し・除伐・受光伐
    • 食害防除

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直径成長のための作業

  • 直径成長を支配する要因
    • 葉の量 ≒ 樹冠の表面積
    • 樹冠が受ける光の量(明るさ)

  • 直径成長を阻害する要因
    • 葉の損傷
    • 低温

  • 直径成長促進のためにできる作業
    • 除伐・間伐

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広葉樹天然生林の保育の限界

  • 今、そこに存在する木で勝負するしかない。
    • 育成木になりうる個体が存在してこその保育。
    • 保育作業の効果が期待できるかどうかの判断が重要。

  • できることは、育成木の邪魔になる木を除去するだけ。
    • 育成木に陰をつくる木を除去する。
    • 育成木が樹冠を広げるのを邪魔する木を除去する。

  • 基本は「なるようにしかならない」。
    • 「成長しやすいように少しだけ手を貸す」くらいの気持ちで。

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3. 広葉樹林の保育

天然生林の除伐

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除伐

除伐で実現させたいこと

  • 目標とする樹種構成の森林をつくる
  • 育成木を確実に育てる

除伐のタイミング

  • 個体(幹)レベルで育成木を選定できるようになったとき

除伐の留意点

  • 伐りすぎない(本数密度を大きく低下させない)こと
    • 育成木が暴れて望ましい形質が得られない

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広葉樹皆伐後12年目の再生群落

横井秀一・古森隆・水谷嘉宏・小宮山章(1997)広葉樹林皆伐跡地に再生した群落の構造と構成種の特性.中森研45:255-258.

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広葉樹林の除伐の効果

横井秀一(2004)除伐後6年を経過した落葉広葉樹林における除伐の効果.岐阜県森林研研報33:1-6.

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3. 広葉樹林の保育

天然生林の間伐

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間伐

間伐で実現させたいこと

  • 育成木を伐期まで確実に育てる
  • 育成木をより早く/より太く育てる

間伐のタイミング

  • 初回:枝下高が必要な長さの材が収穫できる高さに達したとき
  • 2回目以降:育成木の樹冠に窮屈さが生じたとき

間伐の留意点

  • 伐る必要のない木(間伐木以外)を伐らないこと
    • 育成木が劣化(後生枝・皮焼け)する

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間伐のタイミングを考える

樹高成長は胸高直径30~40cmで頭打ち

  ↓

樹冠拡張の伸びしろが小さくなる

大径木の枝下は低い

  ↓

枝が高くなりすぎると太くなれない

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広葉樹二次林の間伐

約30年生で間伐

岐阜県高山市

約35年生で巻枯らし間伐

岐阜県飛騨市

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広葉樹林の間伐効果

横井秀一(2000)用材生産に向けた広葉樹二次林の間伐.山林99:771-773.

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Crop tree management(目標とする樹形)

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Crop tree management(初回の間伐)

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間伐前後の林冠(crop tree management)

間伐前

間伐後

Crop tree management(将来木施業・育成木施業)に準じる間伐

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間伐の弊害:後生枝の発達

ミズナラ

コナラ

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まとめにかえて

更新:撹乱と更新の関係

    • 種の遷移系列上の位置づけ
    • 種子の散布様式
    • 更新のセーフサイト
    • 萌芽
    • 前生稚樹と後生稚樹
    • 初期成長速度

保育:個体の成長と個体間競争の関係

    • 樹高成長
    • 樹冠の拡張と直径成長
    • 個体間競争
    • 階層の分化

  • 森林は自然の摂理に則って変化する
  • 樹種の性質を変えることはできない

 森林の生態と樹種の性質を関連付けて理解し施業に応用するしかない

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