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放射能測定の基本

2021年4月3日、ハカルワカルお茶会

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なぜセシウム137を測定するのか

核種 放出量(PBq、10の15乗)

キセノン133 11000

テルル127m 1.1

テルル129m 3.3

テルル131m 5

テルル132 88

ヨウ素131 160

ヨウ素132 0.013

ヨウ素133 42

ヨウ素135 2.3

セシウム134 18

セシウム137 15

ストロンチウム89 2

ストロンチウム90 0.14

右の表は、経産省が2011年10月に発表した福島事故によって放出された放射能の全各種一覧の一部。

97%がキセノン133で、それに比べればセシウム137は少ない。

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  1. 年月を経ても残っている

キセノン133の11,000pBqはとんでもない量だが、半減期は約5日で、短期間で消滅していく。

放射能は半減期の10倍が経過すると1/1000に減る。

  • 測定しやすい

アルファ線、ベータ線しか放出しない放射能の測定は難しい。

測定器の検出限界値以下に微量なものは測定が難しい。

  • 健康への影響が懸念される

トリチウム、クリプトン85など原発の通常運転中にも大量に放出されていることがわかっているが、健康被害が少ないと見られている。

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セシウム137とは?

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原子核の構成員は「陽子」と「中性子」

その陽子が55個、中性子が82個

55個と82個という組み合わせが、少しすわりが悪くて完全に落ち着いた状態ではない。

ここから落ち着いた状態への変化が自然に起こる。

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変化する時に

ベータ線とガンマ線を放出する

ガンマ線

ベータ線

変化はある時、突然起こる。

そのある時がいつなのかは予測できない。

30年の間に起こる確率が50%。

たくさんのセシウム137があれば30年後には半分に減っていることになる。

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セシウム137がバリウム137に変わる

セシウム137の方がバリウム137よりもエネルギーが高い。

変化の時、高いところから低いところに落ちる。

高いところから落ちるとただではすまない。

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高低差のエネルギーは

ベータ線とガンマ線に託す

ベータ線をキャッチして測定するのは難しい

ガンマ線はキャッチして測定できる

ガンマ線が出るところの高低差は662keVというエネルギー。これがセシウム137が変化する時の特徴的なエネルギー。

すなわち、662keVのエネルギーのガンマ線が検出されれば、それがセシウム137の存在を示すということになる。

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662keVのエネルギーの

ガンマ線を特定して測定することが

できるのか?

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10万円程度までの安価な測定器ではできない

100万円程度あるいはそれ以上の高価な測定器を使えばできる

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放射線が入ってきたら、放射線のエネルギーに関係なく電流が流れる。この電流がパルスとなるので、パルスをカウントすれば、どのくらいたくさん放射線が入ってきたかがわかる。

左側のタイプが主にこれ。

同様の原理だが、放射線のエネルギーに比例して電流が変化するので、パルスをカウントするだけでなく電流の強さも測ることで放射線のエネルギーの大きさもわかる。

右側のタイプが主にこれ。左タイプに対して高価。

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測定器に入ってくるのが、このセシウム137から出る662keVの放射線しかなければ、ただその数を数えるだけで、セシウム137の量を計測できる。

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いろいろなエネルギーのガンマ線が飛び交っている

500keV

1000keV

250keV

750keV

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様々なノイズがつきまとう

500keV

1000keV

250keV

750keV

ノイズの部分

このノイズに埋もれてしまうような微量な放射線はどんなに長時間測定しても測定できない。

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500keV

1000keV

250keV

750keV

この部分だけを調べることで、セシウム137

の量がわかる

これはかなり難しく、正確さには限界がある

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NaIシンチレーション測定器でCs134とCs137が同量程度混在しているところのスペクトルを見るとこのようになる。(最近はCs134のピークは見えにくい。)

Cs134

Cs134

Cs137

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ハカルワカル測定データ例、柿の木の皮(2016年4月16日測定,Cs137:156Bq/kg, Cs134:44Bq/kg)

Cs137, Cs134のピークがしっかり観測できる。Cs134の605はわかりにくい。

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ハカルワカル測定データ例、原木椎茸(2016年3月15日測定,Cs137:43Bq/kg, Cs134:18Bq/kg)

Cs134のピークはほとんどわからない。自然放射能も含まれているので、Cs137のピークもわかりにくい。

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様々なエネルギーのガンマ線が検出されるのは、

自然放射能の存在によるところが大きい

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自然放射能は大別して2種類

  • 半減期が億年単位で地球誕生時にあるものがまだある

ウラン238(半減期45億年)、カリウム40(半減期12億年)、トリウム231(半減期140億年)等

  • 宇宙線によって生成された放射能

炭素14(半減期5700年)、ベリリウム7(半減期53日)等

これらの放射性物質の中には、次々に崩壊してまた別の放射性物質を作るものがある。ウラン238はその代表。

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出典: http://www.ne.jp/asahi/kibono/sumika/kibo/note/naibuhibaku/img/uran-s10.gif

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U238

Pb206

何度も何度も放射線を出す

途中で早く進んだり、遅く進んだり、

最後の鉛206に行き着くまで数十億年の長い崩壊の道のり

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途中で出てくるラドン222は、よく知られているラドンガス。

ラドンガスは、タバコの次に肺がん要因になっている危険物質。

自然放射能だからと言って、安全なものであると考えていいわけではない。

地中のウランを掘り出して表に出したら、それは自然放射能と言えるのだろうか?

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セシウム137がキログラムあたり何ベクレル

その数値を見た時

なぜそれがあるのか

そのことを考えてみてください。

一緒に考えるためにハカルワカル広場があります。