ゼータ関数とオイラーの公式
福井県立敦賀高等学校理数進学科2年1組 小倉 大輝
この研究を始めたきっかけ
1+2+3+・・・=-1/12という数式があり、一見1から順にたしていく大きな数になるように思えるが、ー1/12という結果になることにゼータ関数が関わっていることを知り、ゼータ関数についてより知りたくなった。
この研究の概要
・オイラーが計算したゼータ関数の特殊値の計算方法を野海著「オイラーに学ぶ」で調べ、その方法を使って、この文献に与えられている6個の値とその次の2個の値を計算し、合計8個の値を求めた。
・ベルヌーイ数を用いたゼータ関数の特殊値を与える公式を学び、8個の値が一致することを確認した。
ゼータ関数とは?
のように定義される関数のことをゼータ関数という。
ゼータ関数は上のような不思議な値になる
この発表の流れ
ゼータ関数の2の値を証明する
・テイラー展開(5,6,7,8ページ)
・無限積表示 (9ページ)
・オイラーの方法でゼータ関数の値を求める。(10,11,12ページ)
ゼータ関数の5〜8の値を求めた。
・ベルヌーイ数を用いてゼータ関数の値を求める。(13、14、15、16、17ページ)
ゼータ関数の値を求めた。
・ゼータ関数の物理との関係(18、19、20、21、22ページ)
ゼータ関数の特殊値に関するオイラーの計算方法
・成り立つことを示す前に双曲線関数について説明する。
双曲線関数は右図のようである。
sinhx,coshxと名付けられたのはsinx,
cosx,と性質はとても似ているため 数学の景色参照
である。 例えば sinh²x-cosh²x=1はsin²x+cos²x=1の式はとても似ている。
●テイラー展開とは
テイラー展開とは、関数f(x)とその高次導関数の値を用いて、元の関数を表示する方法である。
例えばf(x)=ax³+bx²+cx+dがあるとする。これにx=0を代入すると、f(0)=d
f(x)を微分すると、f‘(x)=3ax²+2bx+cよりこれに0を代入するとf‘(0)=cになる
このことを繰り返すと最終的にはf‘‘(0)=2b,f‘‘‘(0)=6aとなり、f(x)の導関数でa.b.c.dを表すことができるとわかる。
このことを式に書くと煩雑だが
のように表される。
●三角関数と指数対数のテイラー展開とは?
テイラー展開の式は右図のように
あらわされる。
先程紹介した、双曲線関数sinhx,をテイラー展開すると下図のように表される
・ゼータ関数の値の計算に用いるテイラー展開
先程のsinhxのテイラー展開の式にx=πxを代入する、πxで割ると
になる。
つまり、x²の係数の中身を別の表し方ができれば、その数式がその係数の値になることを証明できる。そこで無限積表示という表し方を紹介する。
・無限積表示
無限積表示とはある式を積の形で表そうということである。つまり、テイラー展開した式を無限積表示を使う事によって2通りに表すことができる。
前ページのx²の係数と比較すると
が成り立つ。
オイラーの計算方法でゼータ関数の値を求める。
右図のようなニュートンの公式とよば
れる対称式に代入をしてオイラーは
ゼータ関数の各値を求めました。
ここでの である
また,一般項を求めるとこの様になる。
と
・ニュートンの公式を利用してゼータ関数の2の値、4の値を求める。
より
であるので、
となる。
またP₁、P₂はそれぞれゼータ関数の2の値と4の値を表す事に注意する。
このようにゼータ関数の値は対称式を使い無限に求めることができる。
そこで、コンピューターを使い色々なゼータ関数の値を求めた。
・計算ソフトSage math を用いてζ(5)〜ζ(8)を求めた実際の様子
In(35)の計算ではベルヌーイ数を用いて計算の確かめをしてある。なおベルヌーイ数の説明は次のページでする。
ベルヌーイ数とは
右図のように表されるのが、ベルヌ
ーイ数とその漸化式である。
また、3以上の奇数のベルヌーイ数
は自明な零点と関係している。
このベルヌーイ数を使いゼータ関数の値を求めることができる。(そのため、Sage Math のIn35のところはべルヌーイ数を用いてゼータ関数の値の検算をしている。)
ベルヌーイ数とゼータ関数の値の関係はこのように表すことができる。
(オイラーの公式)
・オイラーの公式が成り立つことを証明する。
シグマの中身を比較するとオイラーの公式が成り立つことがわかる。
・ベルヌーイ数の一般項とは?
をテイラー展開すると になる。
で表される有理数の係数をベルヌーイ数という。
またベルヌーイ数は下記のような値を取りうりテイラー展開の係数に一致していることがわかる。
ゼータ関数の値を求めるために以下の簡略な公式を紹介する。なおオイラーの公式を変形したものである。
nが2以上の自然数のとき
また、nが偶数のとき iは虚数単位を表す。
・ベルヌーイ数を用いてゼータ関数の値を求める。
前ページで紹介した公式を用いてζ(-1)を求める。またζ(2)の値を求める。
それぞれ数式は
になる。
ゼータ関数の-1の値について次のページについて詳しく見ていく。
ζ(-1)の詳しい説明
実部が1より大きい複素数に関してはゼータ関数は収束する。
つまり、ゼータ関数の値は1より大きい複素数で定義できる。
現段階ではζ(-1)は発散すると考えられる。
ここで解析接続という考え方を用いる。
解析接続とはざっくり説明をすると、複素数平面上のある定義域で成り立つ関数をいい感じ延長して定義域を広げるということである。
また、複素数関数の性質上定義域を広げられた関数は一意的に定まる。
そのためそのため となる。
ゼータ関数と物理学のカシミール効果との関係
カシミール効果とは真空に平行に設置した2枚の金属板が、引力やクーロンや磁力以外の不明な力で引かれるというものです。この効果は、真空には「何もない」状態ではなく、何者かが現れたり消えたりゆらゆらしているもののエネルギーの振動の影響を受けて発生する。
この真空に存在するエネルギーのゆらぎが
ゼータ関数のζ(-3)=1/120と関係しているのである。
wikipedia参照
・カシミール効果を数式で考えてみよう(場の量子論におけるカシミール効果 北里大学非線形物理学研究室 二井 祥仁引用)
真空中の電磁場は Maxwell 方程式によって記述される。 よって、ゲージポテンシャル Aµ(x) をフーリエ級数展開した。
からハミルトニアン H は
このとき真空の基底エネルギーの期待値は である。
これは無限個の基底状態にある調和振動子の基底エネルギーの総和をとることに等しいので
・金属板による量子化
3 次元ユークリッド空間内で x1 = 0, x1 = a に置かれた平 行な平面を考える。この平面で囲まれる領域を D として、 平面による境界が存在する場合の状態を Db と表すと、カ シミールエネルギーを次のように定義できる。
このとき、領域 Db の場は平面の作る境界によって量子化さ れているため、連続値であった k は可算な値をとる。よっ て真空のエネルギー期待値 E0[Db] は
という無限和に変わり
なので ECasimir[D] 6= 0 となり、このエネルギー差によっ て、平面間すなわち金属板間に力が働くこととなる。
・ζ関数による無限の組み込み
ζ 関数は 全複素平面において 1 で 1 位の極を持つ以外は極 を持たず、有理型関数として解析接続され Re(s) > 1 の複 素半平面においては正則であるという特徴的な性質を持っている。ECasimir[D] は本質的には
るため、ζ 関数の定義からこれは ζ(−3) を求めるこ とに帰着できる。 これにより、得られる単位面積当たりのカシミールエネルギーは
となり、カシミール力は となる。
最終章 リーマン予想
ζ(s)の自明でない零点sは、すべて実部が0.5の直線上に存在するという予想である。
ここでいう自明でない零点とは、0<Res<1のことである。
今後リーマン予想を証明することが私達に求めるだろう。
おまけ (ゼータ関数の3次元グラフ)
まとめ
・テイラー展開や無限積表示を使うことによりゼータ関数のある値を示すことが できた。
・野海著「オイラーに学ぶ」で調べ、その方法を使って、この文献に与えられている 6個の値とその次の2個の値を計算し、合計8個の値を求めることができた。
・ベルヌーイ数を用いたゼータ関数の特殊値を与える公式を学び、8個の値が一致す ることを確認した。
・ゼータ関数が物理学で役立っていることを確認し数学の意義や重要性を確認した。