経営者ファミリーのための
教養MBA講座
第 2 回
村田弘子
FORTUNA GROUP株式会社
一般社団法人 事業承継結婚推進機構
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この講座について
2
こんにちは。村田弘子です。
この講座は、ファミリービジネスの経営者・そのご家族・支援する士業専門家のために、ファミリービジネスの特長や永続した繁栄のポイントをわかりやすく学習していくためのガイド講座です。
なぜ今?
海外が注目する日本の老舗大国。しかし国内では後継者問題が深刻化しています。
現在の課題
過去30年、欧米型経営をよしとし、ファミリーをビジネスから遠ざける傾向が続きました。
この講座が目指すもの
オーナー家・社員・支援プロが共にファミリービジネスを学び、問題に前向きに向き合います。
MBA読書講座 ── 講座の概要と受講上のお願い
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受講目的
1年間のカリキュラムのなかで、ファミリービジネスを読書教材を使いながら学び、ご自身のクライアントへの対応に活用いただくための動画講座です。
内容の活用
この中で使われている内容は、ぜひご自身のプレゼンに活用ください。
版権について
資料の版権は弊社にございます。図表などは、必ず作者や出所を添えてください。
前回の振り返り
第1回:ファミリービジネスとは何か
テキスト:明治大学ビジネススクール編「ファミリービジネスMBA講座」
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ファミリービジネスの長所(テキスト4ページ)
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1
永続性・長期的視点からの経営
2
財務的業績の優位性
3
不況下での雇用維持
4
地域密着性
5
社会情緒的資産(SEW)の重視
日本ではファミリービジネスが軽視されがちな傾向があります。声を大にして後継世代と社会に伝え、視座を高めていきましょう。
ファミリービジネスの定義
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「創業者およびその一族が経営に一定の影響を及ぼす企業」
この読書講座ではファミリービジネスを広くとらえます
オーナー家が経営に関与
上場・非上場を問わず
大企業・中小企業を問わず
わが国のファミリービジネスの現状と課題(テキスト9ページ)
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99.7
%
日本の企業の
ファミリービジネス率
倒産より廃業が多い。黒字であっても後継者不在などの理由により廃業する会社が多い。
高齢化は急速に進み、少子高齢化の構造的課題は今後さらに深まる。事業承継の円滑化は国の急務。
オーナーも支援側も、この先30年・100年先の自社と日本社会全体を真剣に考え、課題に逃げずに取り組む時期です。
日本の税制とファミリービジネス承継の課題
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55%
相続税 最高税率
(6億円超・平成27年改正)
世界最高水準
高い相続税が招く問題
承継よりも廃業を選ぶオーナーが増加
専門家・実務家の間で税制改革を求める声が高まっている
後継者不在と税制が二重の壁となっている
※ テキスト11ページの最高税率50%は旧データ。現在は6億円超が55%(平成27年改正)
日本が世界一の老舗大国である理由
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番頭制度と婿養子制度 ── 日本独自の「中継ぎ」の知恵
番頭制度
日本独特の後継者補完システム
血縁でない優秀な人材が経営を支える
親族内承継のかけはし役として機能
経営能力を客観的に評価できる
婿養子制度
海外から見て非常にインパクトのある習慣
成人を養子に取り最適な後継者を迎える
婿養子の時期に経営力が最も高まるとも言われる
血縁に戻す「中継ぎ」の発想が長寿経営の秘訣
経営の承継 ── 伝統と変革のバランス(テキスト13ページ)
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「3代目で家業を潰す」と言われてきたファミリービジネス。永続のカギは何か?
創業理念・家訓を引き継ぐ
時代に合わせた変革と同時に、分をわきまえ、伝統に敬意を払い、感謝の念を持ちながら経営する。
短期業績より長期経営
短期に売上を上げることに走らず、長期的な視点からの経営を重視する。
社会情緒的資産(SEW)の重視
地域や会社を感情的にも大事にした、情緒的な絆による経営。会社は社会の公器であるという認識。
支援者の役割
ファミリービジネスの構造・制度・経営的課題を理解し、客観的に把握して積極的に課題に当たる。
第 2 回 本 編
テキスト:先代とアトツギが知っておきたい本当の事業承継
伝承と変革・適応の教科書
第1章 ファミリービジネスは「強く」なれる ── 永続的な発展のための提言
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第2回テキスト紹介
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先代とアトツギが知っておきたい本当の事業承継
伝承と変革・適応の教科書
日本ファミリービジネス協会(著)
現場から生まれた本
オーナー経営者・士業など実務専門家が、それぞれの経験をもとに執筆した実践書。
支援者のための1冊
オーナー経営者の気持ちを理解し、寄り添い、共に解決に向けて頑張るための理解を深める。
オーナーへのメッセージ
「ひとごとでなく、いつ我が家にも起きるかも」という視点で読み、事業承継の第一歩に。
コロナで見えたファミリービジネスの強さともろさ(14ページ)
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もろさ(コロナで露わに)
短期業績追求で運転資金が不足していた
危機への免疫がなく脆弱
ビジネスマネジメント偏重でファミリーマネジメントを軽視
永続経営を目指す力のもろさが浮き彫りに
強さ(老舗の底力・レジリエンス)
戦争・地震・疫病・飢饉を乗り越えた歴史
再生能力(レジリエンス)を備えている
老舗同士の強い横連携(例:酒蔵間の相互支援)
地域への多大な貢献が経営の柱になっている
永続性の条件(テキスト19ページ)
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創業の理念が守られ、育てられ、浸透して独自の企業文化が定着している
2
後継者の選考ルールが明確である
3
ビジネスファーストで家族が協力している
4
ファミリーがファミリーの役割を理解しており勉強している
5
ノンファミリーの経営幹部を育て活躍の場を設けている。所有と経営の分離を大胆に行うこともある
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イノベーションに貪欲。M&Aに積極的。社員を大切にし、地域社会・環境問題への取り組みが早い
ファミリー企業と非ファミリー企業の違い
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ひと言でいうと……
ファミリー企業では「ステークホルダーのメイン」にオーナー家族が存在する
非ファミリー企業
オーナー ↔ ビジネス(顧客・取引先・従業員)
関心事は株価。株価を高めることが主目的。
ファミリービジネス
オーナー ↔ ビジネス + ファミリー(3円モデル)
愛情で結ばれたファミリーの原理は株価追求と相いれない。ここにファミリービジネスの難しさがある。
3円モデル ── ファミリービジネスの構造を理解する
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ファミリー
ビジネス
オーナーシップ
社長
3円モデルのポイント
息子が成人前 → ファミリーの円のみ
事業に関わると → ファミリー+ビジネスの重なりへ
株式取得後 → 3つ全ての円に存在(=後継社長)
妻(専業主婦) → ファミリーの円のみ
ただし夫の立場を通じ間接的に影響を受ける
兄弟・配偶者同士 → 複雑な利害関係が生じやすい
誰と結婚するかも大切な経営戦略のひとつ
ダブルバインド ── ファミリービジネス固有の「板挟み」
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3つの円が重なり合うことで、一人の人間の中に「相反するニーズ」が生じる
【具体例】社長の「板挟み」
ビジネスの長として → 配当を抑制し、内部留保したい
ファミリーの長として → 一族の株主のために多く配当を出したい
放置すると……
▶
ダブルバインドが続くと心の健康を害する。アルコール依存・ギャンブル依存・家庭内暴力につながるケースも多いと言われている。
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一時的な成功を収めた企業であっても、心の健康を壊したまま次世代に継がれると、ファミリービジネスは必然的に「闇・消滅」の運命をたどる。
ファミリーとビジネスの境界線管理 ── 永続繁栄の重要課題
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ファミリーとビジネスの「境界線をいかに管理するか」が、
永く繁栄するための最重要課題である。(筆者)
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境界線が崩れると……
家族の感情論がビジネスの意思決定に入り込む。公私の区別がなくなり、経営判断が歪む。
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境界線を守るためには……
ファミリーとビジネスのルール(家憲・ファミリー評議会)を整備し、役割を明確にする。
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支援者に求められること
オーナー家の複雑な感情・関係性を理解したうえで、境界線の設計を共に考えること。
水谷商事 事例① ── 2代目の時代(テキスト31ページ)
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ファミリービジネスの難しさが、実際にどう現れるか。水谷商事の歴史から学ぶ。
2代目の時代に起きたこと
兄弟間の競い合い・配偶者同士の対立。大将と番頭の関係に親子兄弟の関係が混じり、権力争いが当事者と配偶者の間で繰り広げられた。
解決策:分割・分家統治
単独オーナーが全てをコントロールする形から、分割してそれぞれ分家で統治していく形で再スタート。
この事例が示すもの
3円モデルが複雑に重なり合った時、感情的なもつれが経営に深刻な影響を与える。境界線の設計とファミリー内のルール整備が不可欠。
3次元発展モデル ── 3円モデルに時間軸を加える(テキスト39ページ)
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ファミリー・ビジネス・オーナーシップの3つのシステムは、時間とともにそれぞれ発展していく。
ファミリー
ヤングアダルトファミリー
世代交代(約40年)
核家族
多世代家族
ファミリーネットワーク
ビジネス
創業期
成長・形式化
成熟期
多角化・刷新
次世代への再起動
オーナーシップ
①単独所有
②兄弟姉妹共同
③いとこ集団
④ファミリーダイナスティ
← 時間の経過(世代交代)→
所有構造の4段階発展(テキスト42ページ)
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一つのファミリービジネスは、世代を経るにつれて所有構造が根本的に変化していく。
①
単独所有
創業者または一人のオーナーが全株式を保有。意思決定が速い。
②
兄弟姉妹共同所有
2〜3人の兄弟姉妹が共同で保有。意見調整が必要になる。
③
いとこ集団所有
第三世代がいとこ同士で保有。顔を知らない株主も出てくる。
④
ファミリーダイナスティ
曽祖父母を同じくする大集団。話したことも会ったこともない株主が存在。ファミリー評議会などの仕組みが必須。
ファミリー評議会とガバナンスの必要性(テキスト47ページ)
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ファミリーが複雑になるほど、個々のミーティングではなく
「制度的な意思疎通の仕組み」が不可欠になる。
家憲・家訓
ファミリーの価値観・行動原則・所有に関するルールを文書化。世代を超えて受け継ぐ「ファミリーの憲法」。
ファミリー評議会
ファミリー全員が参加する定期的な話し合いの場。複雑なファミリーほど「一族の声を一つにする」制度が必要。
経産省の動き
2025年、経済産業省はファミリービジネスのガバナンスの在り方に関する研究会を立ち上げた。国レベルでの制度整備が始まっている。
水谷商事 事例② ── 戦前・戦後のファミリーの変化
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戦前 ── 一体型ファミリービジネス
ファミリーとビジネスが物理的・心理的にひとつ
全員が仕事と家族に何が起きているかを把握
将来ビジョンが自然に共有されていた
戦後 ── ステークホルダーの急増
第三世代が参加し家族の数が格段に増加
郊外に住宅を持ち、会社に通う生活スタイルへ
別々に育つ兄弟・いとこが「家業がわからないまま」跡取りとしてビジネスに参加
水谷商事 事例③ ── 合併・派閥・成長と25年のモヤモヤ(32ページ)
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STEP 1
第二世代・勇一の限界
勇一が病気のため仕事から離れ、業績が伸び悩み限界に達する。
STEP 2
東京・名古屋の合併(会計士の助言)
合併前から勇一家・修二家の間に確執。立場の違いが配偶者間の対立を生み、東京店に2つの派閥が生じた。
STEP 3
第三世代:いとこ同士の誠一と秀雄(ジェノグラム:32ページ参照)
誠一が社長、秀雄が取締役営業部長に。後継者キャリアの大幅変更に配偶者も大きく動揺。
STEP 4
会社の成長と25年続くファミリーのモヤモヤ
東京幹部中心の意思決定で会社は大きく成長。しかしファミリー内のモヤモヤは解消されず25年間続くことに。
水谷商事 事例④ ── 最終段階と教訓
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水谷ファミリーは家長に従うのが当然と考え、お互いの見解の違いについて話し合う努力を怠り、オーナー家の意見を一つの声とする努力を怠ってきた。ファミリーの声を一つにする役を誠一一人が担うには、ファミリーは複雑になりすぎていた。
▶
何が問題だったか
「家長に従う」という暗黙ルールだけでは、ファミリーが複雑化した時に機能しない。対話の仕組みがなかった。
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複雑さに応じたガバナンスが必要
煩雑さの程度に応じて、ガバナンス・家訓・家憲・ファミリー評議会といった意思疎通の仕組みが必要になる。
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支援者として覚えておくべきこと
ファミリーの「感情的なもつれ」は、放置すると経営を脅かす。早い段階から仕組みづくりを提言すること。
まとめ ── ファミリーガバナンスの仕組み
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ファミリーが複雑になるほど、「制度」が家族の絆を守る。
家訓・家憲(ファミリー憲法)
ファミリーの価値観・行動原則・所有に関するルールを文書化。世代を超えて受け継ぐ「ファミリーの憲法」。創業の理念と家族のアイデンティティを守る役割を持つ。
ファミリー評議会
ファミリー全員が参加する定期的な話し合いの場。ビジネスに関与しない家族も対話に加わることで、一族の意思を「一つの声」にする。
ファミリーオフィス
資産管理・教育・次世代育成を担う専門組織。ファミリーが大きくなるほど機能する。ファミリーダイナスティ段階では特に重要。
次回の
読書会MBA講座は……
次回のテーマ・テキスト・日程は
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本日もご視聴ありがとうございました。
村田弘子 FORTUNA GROUP株式会社
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