vs海賊版サイト広告代理店訴訟
電羊法律事務所 平野敬
問題意識
これまで多数の海賊版サイトやリーチサイトをつぶしてきたが、きりがない
「管理者を特定した上で責任追及する」というアプローチには限界がある
なぜなら
・管理者を特定するのが困難で、時間や費用もかかる
・民事的に訴えても、賠償額より利益のほうが大きければ、やり得となる
・つぶしてもすぐ別の法人や代表を立てて別ドメインで営業を始める
→別のアプローチをとれないか?
着眼点
海賊版サイトの運営で利潤をあげているのはアドネットワーク
広告代理店はその特性上、身元を隠すのが難しいが、リスクはサイト運営者がとっているので第三者として安全に儲けられている
→ここを突いて「広告代理店にも責任がある」という法理を確立すれば、代理店が海賊版サイトに広告を出さないようになって、資金源を断てるのでは?
論点1 著作権侵害の幇助
発想
最高裁平成13年3月20日判決「ナイトパブG7事件」
カラオケ店に対し、カラオケ装置をリースした企業に対して、過失による著作権侵害(共同不法行為)を認めた事例
このロジックが使えないか?
ナイトパブG7事件
「カラオケ装置のリース業者は,カラオケ装置のリース契約を締結した場合において,当該…装置が専ら音楽著作物を上映し又は演奏して公衆に直接見せ又は聞かせるために使用されるものであるときは,リース契約の相手方に対し,当該音楽著作物の著作権者との間で著作物使用許諾契約を締結すべきことを告知するだけでなく,上記相手方が当該著作権者との間で著作物使用許諾契約を締結し又は申込みをしたことを確認した上でカラオケ装置を引き渡すべき条理上の注意義務を負うものと解するのが相当である…」
→注意義務がかなり高度に設定されている
構造の類似性
・カラオケ店はカラオケ装置がなければ営業できない
・海賊版サイトは広告がなければ営業できない
細かい事実を拾って、同一構造であることを丹念に主張立証していけばよい�(と言うのは簡単だが、がんばった)
・インターネットや一般社会の情勢
・広告業界における認識
・海賊版サイトの運営実態
結論① 実行行為性
判決18頁
結論② 注意義務
判決20頁
論点2 幇助の時期
問題意識
広告代理店と漫画村の契約は、漫画村が作られたあと
→つまり、無断転載がなされた後に広告代理店が共犯関係に入った
→事後共犯だから幇助にならないんじゃ?
状態犯か継続犯か?
状態犯:窃盗罪とか
犯罪の実行行為が既遂に達したら、事後共犯は不可罰となる
継続犯:監禁罪とか
既遂に達したあとも法益侵害が継続するから、以後の参加者も共犯となる
著作権侵害はどっちだ?
文献も裁判例もほとんど見当たらなかった
結論
判決18頁
論点3 損害論
114条を使うか?
著作権法114条1項や3項は便利だが、使いづらいときもある
(立証が弱いとか、114条ベースだと金額が低くなるときとか)
ネット事件だとPVをもとについ計算したくなるが、権利者保護のための推定規定なので、別に使わなくてもいい
普通に民法で損害を積算していいし、民訴法248条や著作権法114条の5を狙うこともできる。元となる権利が大きいときは、使わないほうが有利なこともある
本件では使ってない
結論
判決22頁
結論(続き)
判決22頁
結論(続き)
判決23頁