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合意形成モデルの多様化と分析

物理学科 石井慶太郎

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0.目次

  • Agenda
  1. 合意形成モデルの説明

  • モデルの発展

  • 確率過程を含むモデル

  • 分析・まとめ

  • 今後の展望

  • (一年間で他に行ったこと)

  • 参考文献

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1.合意形成モデルの説明

  • 合意形成モデルとは何か

合意形成モデルとは

井戸端会議のシミュレーション

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1.合意形成モデルの説明

  • 基本概念の説明

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どちらが正しいのだろう。

①多数決なら…

②正しい確率分布なら…

「3:1で1が多いな!」→1

「3つは1、1つは0」→1(75%)、0(25%)

③逆張りなら…

「3つは1、1つは0」→1(25%)、0(75%)

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1.合意形成モデルの説明

  • この井戸端会議を”たくさん”・”いっぱい”やってみる。

初期状態

(ランダム)

最終状態

(これ以上意見が変わらない)

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1.合意形成モデルの説明

  • 実際どのように推移するか

(例:5×5マスの多数決同調集団)

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2.モデルの発展

  • 影響範囲の変更

①十字×1マス

②正方形×1マス

③十字×2マス

④正方形×2マス

通常は①の十字×1マスだが、範囲を広げるとどうなるだろうか。

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2.モデルの発展

①十字×1マス

②正方形×1マス

③十字×2マス

④正方形×2マス

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4つのパターンによる違い

  • 変更の結果

①十字×1マス(5マス)

②正方形×1マス(9マス)

③十字×2マス(9マス)

④正方形×2マス(25マス)

同じスタートでも周囲の影響範囲が大きいものほど、きれいな形を取り、

小さいものほどバーコードのような文様が残る。

通常、最初の行列はランダムに出力しているが、今回は比較のため、シード値を固定している。

2.モデルの発展

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4つのパターンによる違い

  • 定量評価について

合意形成モデルの定量評価は

2.モデルの発展

収束速度(合意に達するまでの時間)の分布

しかし、今回の決定論的なモデルでは、合意に至らず、動かなくなってしまう。

➡適切な定量評価がしづらい。

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3.確率過程を含むモデル

  • 教科書の確率過程を含むモデルの作成

今までは、多数決で100%決まる”決定論的”なモデルだった。

確率過程を含んだモデルでは、どのような特徴がみられるか。

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3.確率過程を含むモデル

  • 主なモデルの種類

①多数派同調集団(多数決)

③意見分布同調集団(Voter Model)

②不誠実な多数派同調集団

④不誠実な意見分布同調集団

➡絶対に意見が多い方にする (ただし、4:0と3:1の区別はない)

➡意見が多い方にする可能性の方が高いが、少ない方にすることもある

➡周囲の意見から一つをピックアップする (ただし、4:0と3:1の区別がある)

➡周囲の意見からピックアップするが、等確率ではない

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3.確率過程を含むモデル

  • ②不誠実な多数派同調集団(75%)

➡ベースは多数決だが、つねに25%のノイズがあるようなもので、

 どちらかに偏らない初期状態が続いてしまう。

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3.確率過程を含むモデル

  • ②不誠実な多数派同調集団(75%、2マス)

➡影響範囲を広くし、収束しやすくする。

➡ある程度まで行くとノイズになる。

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3.確率過程を含むモデル

  • ②不誠実な多数派同調集団(90%、1マス)

➡偏りを作りやすくなり、少しずつどちらかに偏る。

➡10%のノイズを入れたようなものに近い。

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3.確率過程を含むモデル

  • ③意見分布同調集団(Voter Model)

➡4:0で必ず1になるため、必ず収束するが、ダイナミックに動く。

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3.確率過程を含むモデル

  • 不誠実な意見分布同調集団

➡3:1でも60%ほどしか黒にならないため、

  ランダムに近く、初期状態から抜け出せない。

 (ちなみに、0.95/0.725にしても同じような形が続く。)

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4.分析

  • 収束する二つのモデルの分析

①多数派同調

③意見分布同調

注意!:横軸と縦軸が大きく異なるので注意すること。

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4.分析

  • 収束する二つのモデルの分析

10000stepまで、10000件

50000stepまで、1000件

多数派同調集団と似たような概形になる!

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4.まとめ

  • 研究でわかったこと。
  1. 影響範囲の形を変えることで、そのモデルの形状的特徴を大きく変えることができる。

  • 確率過程を含んだモデルでは、均衡している意見(3:1等)の意見の重要度が低いと、初期状態から抜け出せず、収束しない。

  • 影響範囲を広くしたり、意見の重要度を上げることで、初期状態から抜け出せる。

  • 多数派同調集団と意見分布同調集団では、それぞれスケールは異なるが、収束に至る。

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5.今後の展望

  • 研究余地のある部分
  1. 1ステップで1つの意見しか変化しないもの(イジングモデル)に対して、一度に2500個のすべての意見が変化するこのモデルは収束速度にどの程度の変化があるか。

  • 確率過程を含むモデルでは、初期状態から最終状態を予測できるか。

  • 一度、意見が”1”に限りなく近づいたものが、その後急激に0.5に戻っていくことがあるが、形状的にどのような特徴があるか。

  • 後述する参考文献(2)で指摘されているような収束を妨げる帯状のバンドの再現

  • プログラムの実行時間が10000個の意見分布同調集団を行うのに、2時間ほどかかる。高速化と簡略化をできるか。

  • 一見して「ウネウネ動いているな」と思ったような視覚情報を表すことのできる評価指標。➡クラスタリング係数・エッジ係数

➡教科書(参考文献1)では10^8スケールまで試行しているが、

現在のプログラムでは不可能に近い。

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6.一年間で他に行ったこと

  • ディープラーニングによる最終状態の予測

CNNの教師あり学習を用いて初期状態から最終状態を予測する。

➡決定論的なモデルには使えるが、確率過程を含んだものまではなかなか研究が難しかった。

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6.一年間で他に行ったこと

  • そのほかのモデル

例1.ベータ関数を用いたもの

➡ランダムに近い

➡塊を形成することができない

➡不誠実な意見分布同調集団と似た挙動になる。

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7.参考

  • 研究に用いたもの
  1. 小田垣学他(2022), 『社会物理学』, 共立出版

  • P. Chen and S. Redner, Majority rule dynamics in finite dimensions, Physical Review E 71 (2005)036101.

  • B. Granovsky and N. Madras, The noisy voter model, Stochastic Processes and their Applications 55 (1995) 23.

  • クジラ飛行机(2016), 『Pythonによるスクレイピング&機械学習 開発テクニック』,ソシム株式会社