1 of 28

「防窮訓練」�について��2021年12月14日

環太平洋大学講師

東京大学未来ビジョン研究センター客員研究員

白取耕一郎

1

2 of 28

2

  • マルチセクターが連携し金融包摂や就労支援の新たな在り方を見つめ直し、実証実験や政策提言を実施
  • グラミン日本、東京大学未来ビジョン研究センター、デロイト トーマツ、Code for Japan、Civichat、Robo Co-op、オズマピーアール……

包摂研究会

貧困におちいっても

命を守る!

3 of 28

「防窮訓練」プログラムの開発

  • 現状の問題点
    • 若者の少なくない割合が生活保護などの知識がない
    • 「生活保護」という用語を知らない者も一定程度いる
    • →貧困におちいりそう、あるいはおちいったときの備えがない、「予防なき治療」になっていないか?
  • 防災訓練があるなら、防窮訓練があってよいのではないか?
    • 防災訓練=災害に遭遇しても命を守る
    • 防窮訓練=貧困におちいっても命を守る

3

4 of 28

どうやって貧困におちいったときに命を守れるようにするのか?

  • 「防窮訓練」の所要時間は50分程度とし、参加者が能動的に関わるアクティブラーニング形式とする
  • 例)自分にあった支援制度を探せるシステム”Civichat”の活用
    • LINEなどから簡単に利用できる
    • チャットボットとやり取りしながら制度が探せる
    • 訓練後もLINEに残せばいざ困窮したときに使える(お守り代わり)

4

5 of 28

市民有志によるプロトタイプの開発

  • 方法:オンライン
    • 市民有志、学生インターン、グラミン日本R&Tチームで作業
  • 今後の展開:プログラム開発継続、実践など

  • ないもの……予算、権限、知名度などなど
  • あるもの……人とのつながり!

5

6 of 28

「防窮訓練」プログラムのイメージ

6

累積

時間

所要

時間

 

0:00

5:00

導入、目的の説明、事前アンケートフォーム記入→結果共有

5:00

10:00

動画視聴、ニュース紹介

15:00

10:00

配られたカードになりきって支援制度をネット検索→同じカードの人(近くにいる)と結果共有

25:00

10:00

Civichatを導入し、同じように制度を探す

35:00

10:00

ディスカッション(探し方による違い、どういう探し方があったらよい? そのために自分はどう行動していく?)

45:00

5:00

事後アンケートフォーム記入→結果共有、まとめ

7 of 28

防窮訓練プログラム�

ver211214

7

8 of 28

災害から命を守る 防災訓練

➡︎ 全国の学校や企業で実施

8

“もしも” に備えて

「地震です、地震です」

机の下に隠れる

玄関オープン

ガスの元栓

逃げ道確保

二次災害が

起きないように

リュックサック

水・保存食

懐中電灯

身軽に逃げられるように!

身を守る!

9 of 28

では、貧困から命を守るには‥‥‥

こんなとき、

  • どこに相談するか
  • どんな支援があるか

      知っていますか?

9

お金がない

仕事がない

食べるものがない

困 窮 状 態

窮する=困難にぶつかってどう処置したら

    よいかわからなくなること

10 of 28

ここでアンケートです!

10

スマホか

パソコンで

回答してね

11 of 28

まずは、動画を見てみましょう

11

[ハートネットTV] 今、生活保護を必要とする人へ | みんなの生活保護!| NHK

https://www.youtube.com/watch?v=adlA_FfngbU

12 of 28

若者取り巻く貧困問題

12

[出典]「若者の2割がアンダークラス 非正規、低賃金、未婚でぎりぎりの生活」https://book.asahi.com/jinbun/article/14343399

いずれかに該当している。

非正規雇用

完全失業

無業者

8人に2人!

総務省の労働調査(2020年平均)によると、

13 of 28

若者を取り巻く貧困問題

13

いる

いない

ヤングケアラー

の実態調査

世話をしている家族がいる?

[出典]厚生労働省「ヤングケアラーの実態に関する調査研究について」https://www.mext.go.jp/content/20210521-mxt_jidou02-000015177_00.pdf

14 of 28

若者を取り巻く貧困問題

14

[出典]「若者の2割がアンダークラス 非正規、低賃金、未婚でぎりぎりの生活」https://book.asahi.com/jinbun/article/14343399

[出典]厚生労働省「ヤングケアラーの実態に関する調査研究について」https://www.mext.go.jp/content/20210521-mxt_jidou02-000015177_00.pdf

非正規雇用

完全失業

無業者

いずれかに該当している。

8人に2人!

いない

いる

ヤングケアラー

の実態調査

世話をしている家族がいる?

15 of 28

若者を取り巻く貧困問題

15

総務省の労働力調査(2020年平均)によると、15歳~34歳の26%が非正規雇用・完全失業・無業者のいずれかに該当しており、若者を取り巻く経済環境は、一層過酷なものとなっている。

こうした社会背景の下、通学や仕事のかたわら、家事や家族の世話(介護や身体的・精神的なケア、身の回りの世話など)などを若者が担う「ヤングケアラー」が社会問題化している。

[出典]「若者の2割がアンダークラス 非正規、低賃金、未婚でぎりぎりの生活」https://book.asahi.com/jinbun/article/14343399

[出典]厚生労働省「ヤングケアラーの実態に関する調査研究について」https://www.mext.go.jp/content/20210521-mxt_jidou02-000015177_00.pdf

16 of 28

支援制度知らなかったがゆえに起きた悲劇

16

[出典]読売新聞オンライン「「つらい役を任せてごめんね」…困窮の果て、生活保護を知らない長男は母の最後の願いに応えた」https://www.yomiuri.co.jp/national/20211024-OYT1T50170/ 

日本では

すべての国民

健康文化的

最低限度の生活

営む権利がある…

17 of 28

支援制度を知らなかったがゆえに起きた悲劇

    • 経済的に困窮し、自分を殺してほしいと頼む母親の首を絞めて殺害
    • 生活保護などの支援制度を知らないまま追い込まれ、深刻な結果を招いた。
    •  昨年2月頃、新型コロナウイルスの影響もあり、勤務先を解雇された。
    •  祖父からの仕送りや弟の収入などで何とかやり繰りしたが、アメをなめて飢えをしのぐこともあった。そのうち母親は「これ以上、生きている意味はない」などと口にするようになった。
    •  事件の数日前から母親は自殺未遂を繰り返し、「殺して」と懇願するように。そんな母親を見ていられず、弟を外出させると、「こんなつらい役、任せてごめんね」「出来の悪い親でごめんね」と謝る母親を手にかけ、自ら110番した。
    •  失業保険や生活保護などの制度を知らず、誰かに相談することもなかった。

17

[出典]読売新聞オンライン「「つらい役を任せてごめんね」…困窮の果て、生活保護を知らない長男は母の最後の願いに応えた」https://www.yomiuri.co.jp/national/20211024-OYT1T50170/ 

18 of 28

日本の社会保障制度

18

社会保障制度は、国民の「安心」や生活の安定を支えるセーフティネットです。

[出典]厚生労働省HP https://www.mhlw.go.jp/seisaku/21.html

[出典]厚生労働省社会・援護局地域福祉課 生活困窮者自立支援室「生活困窮者自立支援制度について」https://www.maff.go.jp/primaff/koho/seminar/2016/attach/pdf/170214_08.pdf

①社会保険(年金・医療・介護)

②社会福祉

③公的扶助

④保険医療・公衆衛生

19 of 28

日本の社会保障制度の概要

19

日本の社会保障制度は①社会保険、②社会福祉、③公的扶助、④保健医療・公衆衛生によって構成されている。

[出典]厚生労働省HP https://www.mhlw.go.jp/seisaku/21.html

[出典]厚生労働省社会・援護局地域福祉課 生活困窮者自立支援室「生活困窮者自立支援制度について」https://www.maff.go.jp/primaff/koho/seminar/2016/attach/pdf/170214_08.pdf

20 of 28

日本の社会福祉行政の課題

20

日本の社会福祉サービスには、①多くの場合、サービスの受給にあたっては受給資格者による申請がない限りは給付がされず(申請主義)、②複合的な課題を抱えている場合、提供されるサービスが複数の部門に分かれてしまっている(縦割行政)。受給資格者は、そもそも自分が受けられる行政サービスを把握することができず、また、相談しても複数の部門にたらい回しに合ってしまうことがある。

[出典]「社会福祉制度は『申請主義の終焉』を夢見るか」https://note.com/wish0517/n/n5e56870f6669

21 of 28

生活保護は「恥ずかしい」?

21

生活保護の申請・受給にあたり、生活保護受給者は「自分は自力で生活できず社会に依存している」という「屈辱感」や「不名誉感」、「後ろめたさ」のような感情(スティグマ)を負わされることになってしまう。

厚生労働省は生活保護を「国民の権利」と明言している

22 of 28

こんなときどうしますか? (インターネット検索)

  • あなた(28歳)
  • 岡山県岡山市在住
  • あなたは2カ月前に失業
  • 乏しい貯蓄で生きている
  • 食べ物を買うにも困っている
  • 仕事を探しているが見つからない

  • →何か受けられる支援はないでしょうか??

22

23 of 28

23

私は岡山太郎。28歳、独身だ。生まれも育ちも岡山県岡山市。

両親は既に他界し、兄弟もいないため、安いアパートで一人暮らしをしている。

地元の公立高校普通科を卒業して、地元のしがない印刷屋で営業として働いていた。

仕事は、なんてことはない。

地元の企業に足を運び、「最近どうですか?」なんて、

爽やかな笑顔で声をかけながら、世間話をしたりする。

ご機嫌を伺えたところで、年賀状印刷や帳票印刷のおすすめと、

できる限りの低姿勢で、頭を下げてお願いするのだ。

世はデジタルだのなんだのと盛り上がっているというのに、

時代錯誤の営業方法と商品の代わり映えのなさに、

このまま朽ちていくのではないかという恐怖感を覚えた。

それに、どちらかというと内気で人付き合いが苦手な性格の私は、

爽やかな笑顔を無理矢理つくり続けなければならない毎日が苦痛だった。

おまけに、コロナがやってきて業績も悪化。ボーナスは出ない。

この際だから、もっとやりがいのある仕事がしたいと思い、

2か月前に退職した。前向きな決断だった。

コンビニで求人雑誌を立ち読みしたり、スマホで検索したり、

新しい仕事を探しているのだけれど、

資格も普通運転免許くらいしか持っていない私は

そもそも応募できる企業が少ないのだと、ここに来て気づいた。

安月給で、土日には趣味の車に注ぎ込んでいた私の貯蓄は乏しく、もう底をつきそうだ。

今は1日3食、カップ麺で過ごしている。ここ1週間、まともな食事にありつけていない。

職種を選んでいる場合じゃあないと思い直すも、空腹で笑顔をつくることさえできない。

仕事は見つけられるだろうか…

家賃は払えるだろうか…

身寄りも何も持たない私に、未来はあるのだろうかと、不安に押しつぶされそうだ…。

24 of 28

結果共有

  • 同じカードで制度を探した人と成果を話し合ってみましょう

24

25 of 28

Civichatを使ってみましょう!!�

  • 自分にあった支援制度を探せるシステム”Civichat
    • LINEなどから簡単に利用できる
    • チャットボットとやり取りしながら制度が探せる
    • 訓練後もLINEに残せばいざ困窮したときに使える(お守り代わり)
  • こんなのもあります)内閣官房孤独・孤立対策室HP

  • QRコードをスキャンするとLINEの友だちに追加されます→
    • QRコードをスキャンするには、LINEアプリのコードリーダーをご利用ください

25

26 of 28

ディスカッション

  • 先ほどと同じグループで次のことを話してみましょう

  • ①探し方による違いは?
  • ②どういう探し方があったらよい?
  • ③これから自分はどう行動していく?

26

27 of 28

まとめ

  • お金や食べ物が手元になくなっても助かる方法はある
  • 公的支援を利用するのは国民の権利
    • 民間支援団体の支援もあります!
  • 将来困窮したとき……たとえばCivichatを使ってみて!

27

28 of 28

もう一度アンケートです!

28