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国連サイバー犯罪条約(新サイバー犯罪条約)について

弁護士 堀  新

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国連サイバー犯罪条約の意義

  • 欧州評議会発のサイバー犯罪条約(ブダペスト条約)が既に存在し、日本も2012年より発効。こちらは国際連合の条約ではなかった。
  • これとは別に、国際連合条約としてサイバー犯罪対策の多国間条約を作成する動きが広がり、国連サイバー犯罪条約(新サイバー犯罪条約)の取りまとめに至った

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国連サイバー犯罪条約の主な内容

  • 1.情報通信技術システムまたは電子データに関する一定の行為の国内犯罪化及び裁判権の設定
  • 2.電子データの迅速な保全・捜索・押収等の手続措置の整備
  • 3.犯罪人引渡し・電子的証拠の収集のための相互援助など国際協力
  • 4.途上国への技術支援 

  等

このうち表現作品に影響するのは1の中の一部

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日本の創作物に関連深い国際条約

  • ①児童の売買等に関する児童の権利条約選択議定書
  • ②現サイバー犯罪条約(ブダペスト条約)
  • ③国連サイバー犯罪条約(新サイバー犯罪条約、ハノイ条約とも。未発効

  • ★いずれも「児童ポルノ」またはそれに類する概念のものに対する取り締まりを含んでいる
  •  現在問題になっているのが③

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創作物の架空の児童(非実在)との関係

  • 政府の公式見解としては、締結済みの条約の取り締まりの対象とする児童ポルノ作品は:

  • ①児童の売買等に関する児童の権利条約選択議定書…架空の児童(非実在)を描写する作品は対象外
  • ②現サイバー犯罪条約…架空の児童を描写する作品も含む(が、留保規定により除外し、実在する児童を用いたものに限定している)

  • ★2016年2月29日参議院にて山田太郎議員が質問主意書、3月8日政府答弁

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国連サイバー犯罪条約の問題となる条文

  • 第14条:オンラインの児童性虐待または児童性搾取の資料に関する犯罪

  • 1. 各締約国は、以下の行為が故意にかつ正当事由なく行われた場合には、その行為を国内法に基づき犯罪行為として規定するため、必要な立法その他の措置を取るものとする:

  • (a) 情報通信技術システムを通じて児童性虐待または児童性搾取の資料を、制作、提供、販売、配布、送信、放送、表示、出版その他の方法により利用可能とする行為;
  • (b) 情報通信技術システムを通じて児童性虐待または児童性搾取の資料につき要求、調達またはアクセスする行為;
  • (c) 情報通信技術システムまたはその他の保存媒体に保存された児童性虐待または児童性搾取の資料を所有または管理する行為
  • (d) 本項(a)号から(c)号に従って規定された犯罪に資金提供する行為。この行為を締約国は別個の犯罪として定めることができる。

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国連サイバー犯罪条約の問題となる条文(続き)-具体的定義

  • 第14条(続き)
  • 2. 本条の目的の観点からは、「児童性虐待または児童性搾取の資料」という用語は、以下にあたる18歳未満の人物を描写、記述または表象する視覚的な資料を含むものとし、また以下にあたる文書コンテンツまたは聴覚コンテンツをも含めることができる:
  • (a) 実際の性行為、または性行為の模倣に従事している18歳未満の者;
  • (b) 性行為に従事している他人の面前にいる18歳未満の者;
  • (c) 主として性的な目的のためにその性器が陳列されている18歳未満の者;または
  • (d) 拷問または残酷、非人間的もしくは屈辱的な扱いもしくは処罰を科されている18歳未満の者。但しそれらが性的な性質の資料であること。

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国連サイバー犯罪条約の問題となる条文(続き)ー留保(限定)条項

  • 3. 締約国は、本条の第2項で定める資料を以下のものに限定するように求めることが出来る:
  • (a) 実在する人物を描写、記述もしくは表象するもの;または
  • (b) 児童性虐待もしくは児童性搾取を視覚的に描写するもの

  • 4. 締約国は、自国の国内法に従って、また適用される国際的義務との整合性を取り、以下の行為を犯罪化から除外するための措置を取ることができる:
  • (a) 自分自身を描写する資料を自分で作成するために児童が行う行為;または
  • (b) 本条第2項(a)号ないし(c)号で定める資料を合意により制作、送信もしくは所有する行為。但しその基礎となる描写された行為は国内法の定めにより適法であって、なおかつその資料はもっぱら、従事した人物の私的かつ合意に基づいた使用のために保管されるものとする。

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国連サイバー犯罪条約の影響

  • 14条を原則どおり適用した場合

 ①18歳未満のキャラクター(架空のもの含む)が性行為を行う描写

 ②18歳未満のキャラクターの前で別人たちが性行為を行う描写

 ③18歳未満のキャラクターが性器を露出している描写(主に性的な目的のため。医学書などは除外されると解される)

 ④18歳未満のキャラクターが拷問、または残酷、非人間的もしくは屈辱的な扱いもしくは処罰を受けている描写(性的な)

…がある漫画、アニメ、小説、ドラマ等は禁止対象になる恐れがある。

実在の18歳未満に対象を限定する「留保(除外)」を入れれば良い。

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条約と国内法

  • 国連サイバー犯罪条約を批准しただけでただちに特定の行為を処罰できるようになるわけではなく、それに応じた国内法の制定が必要

  • 条約を批准する一方で、「児童性虐待または児童性搾取の資料」をより具体的に定めて、それらについての行為を禁止し、違反した場合に一定の刑罰(拘禁刑、罰金)を科するための国内法を改めて制定することになる

  • 但し憲法21条の表現の自由の保障との関係が問題となる

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憲法と条約

  • 一般には憲法優位説が通説。

  • 憲法が条約より優位すると考えないと、仮に憲法と矛盾する内容の条約が締結された場合、条約を国会が承認することによって、実質的に国民投票もしないで憲法を変更したのと同じことになってしまう(憲法改正には国民投票が必要だが条約の承認は国会決議のみ)

  • 但し憲法が条約より優位だとしても、ある条約に基づいて制定された法律が(憲法解釈の争いになった場合に)合憲と判断されるか違憲と判断されるかは、また別問題。