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細胞農業ハイプのくぐり方

2024.01版

一般公開用

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「ハイプ曲線」

①発明

話題性

③幻滅の谷

⑤安定期

②期待バブル

④回復期

新たな技術が登場し、話題と期待が膨張し、過度な期待が崩壊し、忘れられた頃に着実な発展を経て技術が普及するサイクル。

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人間の認知バグ?メディアのせい?スタートアップのせい?

過剰期待が

発生する

追従できなくなる

「ディスラプション」

「期待バブル」

人間は物事を線形に見がちで、指数関数が絡むテクノロジーの発展速度を誤認する?

メディアがアクセス数や視聴率を目的に、印象誘導やセンセーショナルな報道をするため?

複数のスタートアップが資金調達するにあたり、差をつけようと「大言壮語競争」が起きるため?

諸説あり。

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ハイプ曲線と細胞農業(2019時点予測)

・細胞培養肉のハイプ曲線は2021-22にピーク?

・高価なナゲットかフォアグラ程度で、商品力が不足

・2030頃には谷を抜けるも、シェア0.1%程度

・それでも技術は進歩を続け、一派普及へ向かう

・各社とも「がっかり」を耐える戦略が求められる

発明

期待バブル

がっかり

啓発活動

実になる

一般普及へ

(2019年)

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ハイプ曲線と細胞農業(2023-2024時点)

2023年

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「期待バブル」下での細胞農業各社の状況

Upside Foods事例

調達実績が細胞農業スタートアップのロールモデル化

Mosa Meat社

2013年の実証からの大学発スタートアップ、2020年にCEOがPeter Verstrate氏から、より「ビジネスに強い」Maarten Bosch氏へ交代

⇒三菱商事との連携やレオナルドディカプリオの個人出資など、マーケティングと資金調達に力点が移るも、技術的実態との乖離を巡って社内対立を生む結果にも。

・消費者ブランドを作る事業モデル(粗利が大きい)をもとに、最終製品のサンプルでメディア訴求�・潜在市場規模をベースに会社価値を算定

・Good Food Institute等による強気な白書を引用して製造単価の低減見通しを立てて資金調達

・Aleph Farmsなど同業他社も同じ方法論で追従

Eat Just社

FBS使用など技術的難点はさておき2020/12にシンガポールで世界初の認証を取得し、ごく少量ながらもレストランやデリバリー等で提供

⇒話題を勝ち取り、中東ファンド等から$267M(~300億円)調達

ライバル意識

2015 創業

2016

 ~$3M調達

2017

 ~$17M調達

2020

 ~$161M調達

ラボ実証�(FBS使用)

デモ商品発表�

  EPIC工場開設

 Upside Foodsにリブランド

「$5,280/kgに価格低減」

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細胞農業での「過度な期待」の争点

細胞農業の場合は、当初から技術的ハードルの所在が知られていたため、�ハードルのクリア状況(の実態)において「過度な期待」が発生していた

参考資料

成長因子・�血清成分

バイオリアクター設備

「過度な期待」

「実態」

産業用酵素と同じペプチドでしかない成長因子は、すぐに安くなるはず!

一部のペプチドだけが産業用酵素として使えるのには、耐熱性や抽出性など相応の理由がある

成長因子不使用の良い培養液ができた!

でもインスリンやトランスフェリンはまだ必要

成長因子コミで安い培養液ができた!

実は性能が低いか特定の細胞にだけ有効だったり

3年後に大幅に価格低下します!

価格低下を試みる研究に着手しただけ

2年後完成予定で大型工場を建設開始!

建物は作るも、稼働率については今後の課題

シンガポールで販売開始!米国でも!

「1店舗で週1で予約限定10名様まで」

$20/kgで肉が作れた!

原材料費だけで設備の減価償却を計算に含まず

50回目の大量生産に成功!

見る人が見ると、この数字では…

培養液と設備の価格

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「どうしてこうなった」

画像出典:

ホットな分野では、スタートアップが資金調達をしようと「大言壮語合戦」に走りがちで、さらに過熱メディア報道が「大言壮語」に説得力を加えてしまう。また、各社とも異なる比較軸を提示して差別化された優位性を主張するため、横並び比較も難しくなる。

うちで開発した培養液は$1/Lです!(実は設備費は含まれてないけど)

うちの培養液は設備費込みで$1/Lです!(実は性能半分だけど)

ライバル

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「期待バブル崩壊」の見え方の実例

期待の山では「イケイケ記事」が目立つが、崩壊と同時に裏側や実態に関する報道が増える。

←2022/06/03

←2022/09/08

←2022/12/06

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期待バブル崩壊後、がっかりの谷の突破

期待バブル下では様々な出口に期待が集まるが、バブル崩壊でふるいがかかる (本当に使えて事業として成立するものが残る「ダーウィンの海」)

AR(拡張現実)では、2015前後の熱狂に対して、2020頃には法人向けサービスにほぼ集中

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細胞農業での「がっかりの谷」の抜け方

成長因子・�血清成分

バイオリアクター設備

量産品の発売

初の黒字事業

一部製品での量産技術確立

事業として�の成立事例

2025?

ベストプラクティスの確立

規模拡大から一般普及へ

2028?

ISO規格制定や国際標準化など

2030?

ニッチなヒット

一部で日常化

黒字が出せる重量単価の商品

化粧品・うなぎ・フォアグラ・脂肪など

量産技術と設備投資の圧縮状況

主要な変数の特定状況や、新規技術や共同出資提携など

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「量産技術」とは何か?

ラボ実証

ラボ実証

「翻訳」

(pH,酸素濃度など)実現

すべきパラメーター群

×

量産スケール

量産プロセス

量産スケール

・ラボ実証での方式は、そのまま量産化はできない

・量産プロセスとは、ラボ実証と同じパラメーター群を別の方式で実現すること

・量産設備はラボ設備と似ていない形状になることが多い

・単位体積や単位時間あたりでは、量産プロセスの性能はラボ実証に劣ることが多い

・ラボ実証チームと量産化チームの不仲に注意

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細胞農業でのハイプ再来の可能性

新展開が「ブレイクスルー」であればあるほどハイプ再来を招きやすい

細胞組織の丸ごと培養(培養ステーキ)

「ミニマル・セル」とDNA著作技術

(安価な)なんでも培養バイオリアクター

3Dバイオプリンティング技術の完成