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長野県の気候変化と
豪雨災害・森林への影響
長野県環境保全研究所 栗林 正俊
CWS第13回オンライン勉強会
日時: 2024/3/16(土)20:00-21:30
連絡先:kuribayashi-masatoshi-r@pref.nagano.lg.jp
2050ゼロカーボンを目指す長野県のシンボルマークです
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●氏名 : 栗林 正俊 (くりばやし まさとし)
●出身地 : 東京都
●専門分野: 気象・気候学、大気環境学
●学位 : 博士(環境学)
●2009-2012年: 筑波大学 (博士課程)
●2012-2014年: 岐阜大学 (ポスドク)
●2014-2015年: 九州大学 (ポスドク)
●2015~現在 : 長野県環境保全研究所 (研究員)
<基本情報>
<学歴・職歴>
<その他>
●幼少期は生き物や気象現象に興味
●青年期は登山とジョギングが趣味
●山を歩いていた頃に「科学者の見地から環境問題の改
善に貢献したい!」と思うようになり大気汚染の研究を
始める。
●壮年期は・・・
自己紹介
今は長男が5歳、長女が3歳になりました。
五竜岳直下で撮影した朝焼け
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研究所紹介
沿 革
1948年 旧長野県衛生研究所設置
1970年 旧長野県衛生研究所と旧長野県公害センターを統合し
て旧長野県衛生公害研究所が発足
1996年 旧長野県自然保護研究所設置
2004年 旧長野県衛生公害研究所と旧長野県自然保護研究所
を統合して長野県環境保全研究所が発足
2019年 長野県環境保全研究所自然環境部と長野県環境部環
境政策課が共同で信州気候変動適応センターに指定
青:スギ・ヒノキ 赤:アカマツ 緑:カラマツ
研究所(標高1030m)の敷地の空中写真 (2017/9/29撮影)
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第1章 長野県の気候とその変化
第2章 長野県の豪雨災害
第3章 森林の気候変動応答
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第1章 長野県の気候とその変化
第2章 長野県の豪雨災害
第3章 森林の気候変動応答
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長野県の地理
標高(m)
長野県は海と2000mを超える山に囲まれた世界でも稀な地域
長野県周辺の地形
飛騨山脈
赤石山脈
御嶽山
木曽山脈
八ヶ岳
志賀高原
乗鞍岳
富士山
秩父山地
頚城山地
浅間山
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気温・降水量の平年値
地形
標高(m)
長野地方気象台(標高418m)の年平均気温は12.3度で秋田や山形と同程度。
年降水量は965ミリで、全国の気象官署の中で最も少ない。
飛騨山脈
赤石山脈
御嶽山
木曽山脈
八ヶ岳
志賀高原
乗鞍岳
富士山
南
北
全国の気象官署における平年値(1991~2020年平均)
年平均気温
年降水量
長野地方気象台
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年降水量の分布
長野県の北・西・南の山で降水量が多い反面、長野盆地や上田盆地は全国有数の少雨地帯
(出典) 気象庁HP
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年間日照時間の分布
長野県と新潟県・富山県の境界の山は日照時間が非常に短いのに対して、上田盆地は全国有数の多照地域
(出典) 気象庁HP
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年最深積雪の分布
長野県と新潟県・富山県の境界の山は積雪が非常に多いのに対して、上田盆地は少ない
(出典) 気象庁HP
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月毎の気温と降水量
上田アメダス
飯山アメダス
上田と飯山の平年値のハイサーグラフ
同じ信州でも東信の上田と北信の飯山では気候が異なる
県北東部の地形
標高(m)
飯山
上田
長野
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月毎の気温と降水量
上田アメダス
菅平アメダス
上田と菅平の平年値のハイサーグラフ
同じ上田市でも盆地の上田と高原の菅平では気候が異なる
標高(m)
菅平
上田
県北東部の地形
長野
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年平均気温の経年変化
各年の気温
5年移動平均
回帰曲線
気温は100年で約1.3℃上昇しており、1980年以降は急激に温暖化が進行。
2023年は観測史上最高の13.6℃の年平均気温を記録!
2023年
各年の気温
1942/8/15
(38.6℃)
1994/8/16
(38.7℃)
2018/8/22
(38.5℃)
長野地方気象台で年間最高気温が38℃を超えた年は130年以上の歴史の中で3回。
1993年の冷夏以来、35℃(猛暑日の基準)を超えなかった年はない。
1993年の冷夏
年間最高気温の経年変化
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記録的猛暑だった2023年でも年間最高気温は36.8℃。
猛暑日日数の経年変化
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長野地方気象台で観測された猛暑日の日数は100年あたり4日の割合で増加。
2023年の猛暑日の日数は24日で過去最多を更新。
回帰直線
年降水量の経年変化
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降水量は年変動が激しく、経年的に有意な変化傾向はない。
2019/10/12
(東日本台風)
2004/10/20
(台風23号)
1982/9/12
(台風18号)
1983/9/28
(台風10号)
長野地方気象台で年間最大日降水量が100mmを超えた年は130年以上の歴史の中で7回。特に、1980年以降に5回あり、多くは秋に襲来した台風による豪雨。
年間最大日降水量の経年変化
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台風豪雨については、強度も頻度も増加している可能性。
年最深積雪の経年変化
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2014年2月の
南岸低気圧による豪雪
年最深積雪も年変動が激しく、経年的に有意な変化傾向はない。
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将来予測(真鍋淑郎博士の功績)
各年の気温
5年移動平均
回帰曲線
ノーベル物理学賞を受賞した真鍋淑郎博士は、気候予測に欠かせない全球気候モデルの原形を開発し、まだ温暖化が顕著ではない1960年代に大気中CO2濃度が上昇すると気温が上がることを予測
2023年
真鍋博士による偉大な功績「大気海洋結合モデルによる気候計算」は1969年に発表
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全球気候モデル
真鍋博士が開発した大気海洋結合モデルに様々な改良が施され、より多様に進化した全球気候モデルが気候予測に使われている。
<プリミティブ方程式系>
・運動量の保存式
・エネルギーの保存式
・質量の保存式
・水の保存式
・気体の状態方程式
コンピューターが仮想的な地球を作り、物理法則に基づいて気象現象を理論的に計算!
(出典) 桜美林大学大気環境研究室 気候モデル入門、海洋研究開発機構HP
プログラミング言語で記述して機械語に翻訳
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社会経済シナリオ:SSP
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第6次評価報告書では、緩和策と適応策の困難性に応じた5種類の共通社会経済シナリオ(SSP)が示され、気候予測に使われた。
適応策の困難性
緩和策の困難性
SSP1
持続可能
SSP4
格差
SSP2
中庸
SSP5
化石燃料
依存の発展
SSP3
地域分断
(出典)国立環境研究所HP
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長野県の気候予測の流れ
シナリオ(仮定)
全球気候モデル
地球全体の予測
高解像度化
社会経済
土地利用
人口
温室効果
ガス排出量
モデルA
その他
モデルB
モデルC
モデルD
モデルE
その他
予測値A
予測値B
予測値C
予測値D
予測値E
その他
入力
出力
長野県の予測
予測値1
予測値2
予測値3
予測値4
予測値5
その他
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最新の高解像度予測値
気候モデル5種
温室効果ガスシナリオ3種
×
ACCESS-CM2 (豪製)
IPSL-CM6A-LR (仏製)
MIROC6 (和製)
MPI-ESM1.2-HR (独製)
MRI-ESM2.0 (和製)
SSP1-2.6 (持続可能)
SSP2-4.5 (中庸)
SSP5-8.5 (化石燃料依存)
(共通社会経済経路; SSP)
=
15種の
気候予測
SSP1-2.6
出典) 石崎 (2021) https://www.nies.go.jp/doi/10.17595/20210501.001.html
2022年12月に国立環境研究所がSSPシナリオや全球気候モデルの一部を用いて高解像度化した1km格子の気候予測値を公開
持続可能な発展の下で気温上昇を2℃未満に抑えるシナリオ
SSP2-4.5
中道的な発展の下で気候政策を導入するシナリオ
SSP5-8.5
化石燃料依存型の発展の下で気候政策を導入しない最大排出量シナリオ
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近未来
(2031~2050年平均)
21世紀末
(2081~2100年平均)
20世紀末
(1981~2000年平均)
18
年平均気温 (℃)
16
14
12
10
8
6
4
2
0
20
年平均気温の空間分布(気候モデル:MIROC6、シナリオ:SSP5-8.5)
気温予測の空間分布
(出典) 栗林 (2024) 長野県環境保全研究所研究報告
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:豪製
:仏製
:和製
:独製
:和製
長野市の20年平均気温の予測
20世紀末に比べて、21世紀末は
0.7~6.7℃上昇
シナリオの違いは21世紀末に顕著な予測の差を生む
気温の経年変化の予測
長野県全体として同じ傾向
(出典) 栗林 (2024) 長野県環境保全研究所研究報告
0.7℃
21世紀末の長野の気温は、昇温量が小さい予測だと
現在の仙台と同程度。
長野の最低昇温量
(MPI-ESM1.2-HR, SSP1-2.6)
21世紀末の長野の気温(最低ケース)
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6.7℃
21世紀末の長野の気温は、昇温量が大きい予測だと
現在の鹿児島と同程度。
21世紀末の長野の気温の予測幅は、仙台と鹿児島の気温差レベル。
長野の最高昇温量
(IPSL-CM6A-LR, SSP5-8.5)
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21世紀末の長野の気温(最高ケース)
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降水量予測の空間分布
年降水量の空間分布(モデル:MIROC6、排出シナリオ:SSP5-8.5)
年降水量 (mm/年)
1000
700
1300
1600
1900
2200
2500
2800
3100
3400
3700
4000
近未来
(2031~2050年平均)
21世紀末
(2081~2100年平均)
20世紀末
(1981~2000年平均)
(出典) 栗林 (2024) 長野県環境保全研究所研究報告
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降水量の経年変化の予測
:豪製
:仏製
:和製
:独製
:和製
長野市の20年平均降水量の予測
予測のばらつきがどの年代も250mm前後あるが、概ね将来にかけて降水量は増加する予測
(出典) 栗林 (2024) 長野県環境保全研究所研究報告
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45.8mm
21世紀末の長野の降水量は、変化量が小さい予測だと
僅かに1000mmを上回る。
長野の最低変化量
(MIROC6, SSP1-2.6)
21世紀末の長野の降水量(最小ケース)
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309.5 mm
21世紀末の長野の降水量は、変化量が大きい予測だと
現在の盛岡・仙台・神戸と同程度。
長野の最高変化量
(MRI-ESM2.0, SSP2-4.5)
21世紀末の長野の降水量(最大ケース)
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全天日射量の経年変化の予測
:豪製
:仏製
:和製
:独製
:和製
長野地方気象台の20年平均全天日射量の予測
予測のばらつきが大きいが、概ね将来にかけて全天日射量は増加する予測
(出典) 栗林 (2024) 長野県環境保全研究所研究報告
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相対湿度の経年変化の予測
:豪製
:仏製
:和製
:独製
:和製
長野地方気象台の20年平均相対湿度の予測
予測のばらつきが比較的小さく、概ね将来にかけて相対湿度はほぼ変化しないか減少する予測
(出典) 栗林 (2024) 長野県環境保全研究所研究報告
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風速の経年変化の予測
:豪製
:仏製
:和製
:独製
:和製
長野地方気象台の20年平均風速の予測
予測のばらつきが比較的小さく、概ね将来にかけて風速はほぼ変化しないか減少する予測
(出典) 栗林 (2024) 長野県環境保全研究所研究報告
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第1章のまとめ
気象要素 | 将来の変化予測 |
気温 | 21世紀末は現在に比べて0.7~6.7℃上昇。 (この予測幅は現在の仙台~鹿児島のレベル) |
降水量 | 21世紀末は現在に比べて45.8~309.5mm増加。 |
全天日射量 | 21世紀末は現在に比べて0.18~1.69 (MJ/m2/日) 増加。 |
相対湿度 | 21世紀末は現在に比べて0.3~4.8%減少。 |
風速 | 21世紀末は現在に比べて0.0~0.40 (m/s)減少。 |
★温暖化は加速度的に進行しており、
猛暑と豪雨の頻度が増加
★長野県の気候は極めて多様
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第1章 長野県の気候とその変化
第2章 長野県の豪雨災害
第3章 森林の気候変動応答
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年間最大日降水量の観測値
2019/10/12
(東日本台風)
2004/10/20
(台風23号)
1982/9/12
(台風18号)
1983/9/28
(台風10号)
長野地方気象台で年間最大日降水量が100mmを超えた年は130年以上の歴史の中で7回。特に、1980年以降に5回あり、多くは秋に襲来した台風による豪雨。
豪雨については、強度も頻度も増加している可能性。
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東日本台風による洪水被害
2019年10月に令和元年東日本台風による豪雨災害が発生し、気候変動と災害の関係に関する関心が高まっているが、長野県の豪雨災害について気象学的な特徴をまとめた研究は乏しい。
令和元年東日本台風で浸水した長野市の北陸新幹線車両基地
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方法と使用データ
<方法>
●過去の気象災害について整理し、
顕著な豪雨事例について高密度観
測と気象モデルにより降雨分布の
特徴を評価・考察
●モデルの感度実験により東日本台
風の豪雨と地形の関係を評価
45観測点
気象庁
長野県の降水量観測点分布図
368観測点
合計
<使用データ>
●文献
県が毎年発行する「長野県の災害と気象」
●高密度観測
信州・気候変動モニタリングネットワークの
各機関が設置した雨量計の観測値
●非静力学地域気象モデル
NHRCMとWRFを用いた再現計算
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方法(NHRCMの長期再現計算)
●初期値・境界値:気象庁55年長期再解析データ(JRA55)
●水平解像度 :5km格子 (ネスティングした本州周辺)
●計算期間 :1980~2015年 (1年毎に前年7月末~8月末まで計算)
●微物理過程 : Bulk-type cloud microphysics
●積雲対流過程 : Kain-Fritsch convective parameterization scheme
●放射過程 : Clear-sky radiation scheme, Cloud radiation scheme
●境界層過程 : Mellor-Yamada-Nakanishi-Niino Level 3
●陸面過程 : Improved MRI/JMA Simple Biosphere (iSiB)
<NHRCMの計算条件>
出典:Kawase et al. (2018) JMSJ
しかし、長野県に東日本台風が襲来した2019年をカバーしていない。
そこで、WRFで独自に計算を実施。
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方法(WRFによる台風事例の再現計算)
●初期値・境界値:NCEP GFS-FNL
●水平解像度 :3.3km格子 (2段ネスティングした長野県周辺)
●計算期間 :2019-10-8~2019-10-15 (台風襲来は10月12日)
●微物理過程 : WSM 6-class graupel scheme
●積雲対流過程 : Off (外側の計算領域はNew Tiedtke scheme)
●放射過程 : RRTMG scheme
●境界層過程 : Bougeault-Lacarrere PBL
●陸面過程 : Noah LSM
<WRFの計算条件>
出典:Yamada and Kuribayashi (2021) SOLA
台風の経路
3.3km解像度での計算領域の地形
1800m
1200m
600m
<WRFの実験設定>
●再現実験
●地形改変実験
2つの実験の差分から地形が降水にもたらす影響を評価
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長野県で発生した気象災害による死者・不明者
台風
梅雨前線豪雨
豪雨
大雪
土砂
地震
火山
1位:台風 30%
2位:梅雨前線 27%
3位:大雪 19%
1945~2020年の気象災害による
死者・不明者の割合(N=880人)
台風と梅雨前線による豪雨災害が長野県で大きな被害をもたらしてきた。
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各年の気象災害の被害額
被害額(億円/年)
梅雨前線
豪雨(36災)
台風7号,
伊勢湾台風
台風10号,
台風18号
1983年
台風10号
1995年
梅雨前線
豪雨
冷害
2019年
東日本台風
2006年
梅雨前線
豪雨
長野県で1945~2020年に発生した気象災害による被害額
(2015年の物価水準に換算)
年
※) 赤は1980年代以降の各年代で最も被害額が大きい事例
1980年以降の40年ほどで被害額2000億円を超える豪雨災害が4回発生≒(約10年に1度)
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高密度気象観測とNHRCMの降水量分布
(mm)
:海岸線
:標高2000mの等高線
:長野県の市町村境界
:気象庁の雨量計
:長野県の雨量計
:国土交通省水管理・国土保全局の雨量計
飛騨山脈北部を中心に強い雨。
小谷村で姫川が氾濫して洪水が発生。
マークの色:観測値
背景の色:モデル値
1995年の梅雨前線(7/11-12)の2日間降水量の空間分布
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高密度気象観測とNHRCMの降水量分布
(mm)
:海岸線
:標高2000mの等高線
:長野県の市町村境界
:気象庁の雨量計
:長野県の雨量計
:国土交通省水管理・国土保全局の雨量計
飛騨山脈を中心に強い雨。西側の山岳の標高が低い南部の雨量が多い。
岡谷市や辰野町で土石流が発生。
マークの色:観測値
背景の色:モデル値
2006年の梅雨前線(7/16-19)の4日間降水量の空間分布
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各年の気象災害の被害額
被害額(億円/年)
梅雨前線
豪雨(36災)
台風7号,
伊勢湾台風
台風10号,
台風18号
1983年
台風10号
1995年
梅雨前線
豪雨
冷害
2019年
東日本台風
2006年
梅雨前線
豪雨
長野県で1945~2020年に発生した気象災害による被害額
(2015年の物価水準に換算)
年
※) 赤は1980年代以降の各年代で最も被害額が大きい事例
1980年以降の40年ほどで被害額2000億円を超える豪雨災害が4回発生≒(約10年に1度)
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1983年台風10号と2019年東日本台風の経路
1983年台風10号の経路図
2019年東日本台風の経路図
中信・南信地域を中心に激しい雨
東信・北信地域を中心に激しい雨
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高密度気象観測とNHRCMの降水量分布
1983年台風10号襲来時(9/27-28)の2日間降水量の空間分布
(mm)
:海岸線
:標高2000mの等高線
:長野県の市町村境界
:気象庁の雨量計
:長野県の雨量計
:国土交通省水管理・国土保全局の雨量計
天竜川上流域にあたる伊那谷で強い雨。
飯田市周辺で土砂災害と洪水が発生。
マークの色:観測値
背景の色:モデル値
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高密度気象観測とWRFの降水量分布
東日本台風襲来時(2019/10/12)の日降水量の空間分布
(mm)
千曲川上流域にあたる奥秩父周辺で猛烈な雨。
中流域の長野市で破堤し洪水が発生。
:海岸線
:標高2000mの等高線
:長野県の市町村境界
:気象庁の雨量計
:長野県の雨量計
:国土交通省水管理・国土保全局の雨量計
マークの色:観測値
背景の色:モデル値
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東日本台風時の降水量分布と地形の関係
県北部
県南部
観測(レーダー)
モデル(再現計算)
モデル(山岳除去計算(標高1mに制限))
類似
差分
山岳除去計算-再現計算
青:山が降水を助長
赤:山が降水を抑制
2日間積算降水量 (mm)
降水量の差分 (mm)
・モデルの再現計算はレーダー
による降水分布の観測値とよく
整合
・山は長野県やその周辺の降水
分布に大きく影響し、千曲川流
域では概ね山岳が降水を助長
出典: Yamada and Kuribayashi (2021) SOLA, Vol. 17A, 45-50
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長野県北部の積算降水量 (mm)
長野県南部の積算降水量 (mm)
山岳の標高を1mから2200mに段階的に制限した場合の感度計算
出典: Yamada and Kuribayashi (2021) SOLA, Vol. 17A, 45-50
2021年7月15日にプレスリリース、マスコミ取材7件
東日本台風時の降水量分布と地形の関係
長野県北部では、山岳が降水を助長していたのに対し、長野県南部では、1000m前後の山岳が降水を抑制していた。
山岳の制限高度1000m前後で南部の降水量は変化大
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第2章のまとめ
●長野県で過去に発生した気象災害は、
台風と梅雨前線による豪雨が最も甚大。
●台風による豪雨災害の事例では、
長野県の南を台風が通過し、南部
や東部で比較的降水量が多い分布。
●梅雨前線による豪雨災害の事例では、
西部の飛騨山脈周辺や南部で比較的
降水量が多い分布。
謝辞
本研究は、(独)環境再生保全機構の環境研究総合推進費(JPMEERF20192007)により実施した。
●東日本台風襲来時、山岳は県北部の降水
を助長し、千曲川流域に豪雨をもたらした。
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第1章 長野県の気候とその変化
第2章 長野県の豪雨災害
第3章 森林の気候変動応答
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引用元:JCCCAのHP
国別の一人あたりの二酸化炭素排出量
日本の一人あたりのCO2排出量は世界第4位
長野県の一人あたりのCO2排出量は6.9 tで日本の平均より低いが中国と同レベル
長野県
6.9
t
人
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日本の温室効果ガス排出量の推移
出典) 国環研 温室効果ガスインベントリオフィス
2013年度をピークに緩やかな減少傾向。
2020年度にコロナ禍で減少したものの、その後は横ばい。
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長野県ゼロカーボン戦略
●2020年10月に長野県脱炭素社会づくり条例を施行
長野県の二酸化炭素排出量 (単位:万t-CO2)
出典:長野県ゼロカーボン戦略
●2021年6月に長野県ゼロカーボン戦略を策定
CO2排出量≦森林CO2吸収量
(万t-CO2)
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長野県の森林
長野県の民有林人工林齢級別森林面積
10年
20年
30年
40年
50年
60年
70年
出典:長野県林務部「平成29年度民有林の現況」
林齢
高齢級の人工林が全体の69%
出典:長野県林務部資料
長野県の
人工林面積
442,077 ha
●長野県の森林の65%は民有林
●長野県の民有林人工林の69%は高齢林
●長野県の人工林の55%はカラマツ、18%
はヒノキ、14%はスギ、11%はアカマツ
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長野県の人工林の分布
標高(m)
青:スギ・ヒノキ 赤:アカマツ 緑:カラマツ
長野県環境保全研究所(標高1030 m)
(出典)環境省植生図より作図
<標高の低い地域>
スギ、ヒノキ、アカマツ
といった常緑針葉樹
<標高の高い地域>
カラマツ (落葉針葉樹)
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光合成と呼吸
光合成によるCO2吸収-呼吸によるCO2排出=正味のCO2吸収(炭素収支)
CO2
O2
CO2
O2
光合成(こうごうせい)
呼吸(こきゅう)
気候変動で炭素収支はどう変わる?
コンピューターで計算してみよう!
<シミュレーションの威力>
★将来予測ができる
★寄与評価ができる
60/62
カラマツ林と気候変動影響
総光合成量(GPP)
0
1
365
Day of year
現在
近未来
落葉
晩期化?
展葉
早期化?
短期的には、展葉・落葉のタイミングが変化してよりCO2吸収?
長期的には、生育適地が高標高地域
に遷移?
未来
現在
CO2
O2
CO2
O2
呼吸量が増加してよりCO2放出?
2050ゼロカーボンを目指している長野県のカラマツ林は、気候変動にどう応答?
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炭素収支シミュレーション
大気: CO2
腐植
分解
リターフォール
腐植土
リター
根
幹・枝
葉
C分配
光合成
呼吸
Ito (2010); Ito and Inatomi (2012)
陸域生態系モデル(VISIT)
高解像度気候予測
5km格子
20km格子
入力
長野県周辺を1km格子
(℃ day)
となる最初の y
観測した展葉・落葉と積算気温の関係式
Ta: 2℃以上の日の日平均気温 (℃)
: 1/1からの経過日数 (day)
y
展葉
落葉
(℃ day)
となる最初の y
Ta: 18℃以下の日の日平均気温 (℃)
: 8/1からの経過日数 (day)
y
組込
・過去
・21世紀中頃(産業革命前+2℃)
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VISITの計算設定
計算 | 気候 | 大気CO2濃度 | 間伐・植林 |
過去計算 (CTL) | 過去 | 過去 | なし |
将来計算 (FUT) | 将来 | 将来 | なし |
感度計算 (SENFclim) | 将来 | 過去 | なし |
感度計算 (SENFCO2) | 過去 | 将来 | なし |
感度計算 (SENPL) | 将来 | 将来 | あり |
※) 過去:2010年頃 (CO2濃度は389ppm)、将来:2050年頃(CO2濃度はRCP8.5で541ppm)
将来変化=FUT-CTL
CO2施肥効果=
2
(FUT-SENFclim)+(SENFCO2-CTL)
気候変動効果=
2
(FUT-SENFCO2)+(SENFclim-CTL)
植林効果=SENPL-FUT
※) 間伐率50%の間伐、または皆伐を2020~4045年の間に
1回実施。
植林する樹種はカラマツとスギの2通りで評価。
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フラックス観測サイト
標高(m)
青:スギ・ヒノキ 赤:アカマツ 緑:カラマツ
国環研の富士北麓フラックス観測サイト (標高1100 m)
長野県環境保全研究所(標高1030 m)
●林齢 :60-70年
●林冠木 :カラマツ
●林床植生:広葉植物
●樹高 :20-25m
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モデルの検証
炭素吸収
炭素放出
展葉・落葉に伴う炭素収支の変化をモデルは良く再現
気温の季節変化をモデルは良く再現
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過去と将来のカラマツ林の炭素収支
LAI (m2 m-2)
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
0
2
4
6
8
10
12
14
GPP (g C m-2 day-1)
0
2
4
6
8
10
ER (g C m-2 day-1)
0
2
4
6
-2
-4
NEP (g C m-2 day-1)
0
60
120
180
240
300
360
DOY
0
60
120
180
240
300
360
DOY
葉面積指数
総光合成量
生態系呼吸量
生態系純生産量
(葉群密度)
(炭素吸収)
(炭素放出)
(炭素収支)
過去(2010年頃)
将来(2050年頃)
過去→将来
過去→将来
過去→将来
+21.6%
+26.1%
+6.5%
10
9日
13日
NEP=GPP-ER
●気温が2℃上がると着葉期間が約3週間延び、CO2濃度が上がると葉量が増える。
●総光合成量(GPP)は21.6%増加するが、
生態系呼吸量(ER)も26.1%増加
結果として2050年頃はカラマツの林齢が100年生近くになるが、
大気CO2濃度と気温が上昇して炭素収支(NEP)は6.5%増加。
0
60
120
180
240
300
360
DOY
0
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120
180
240
300
360
DOY
CO2施肥効果と気候変動効果
1
3
2
0
-1
CO2施肥効果
気候変動効果
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
月
生態系純生産量
の将来変化量
(g C m-2 day-1)
●気候変動効果は展葉季と落葉季に炭素
収支を増加させるが夏季は減少させる。
●CO2施肥効果は5~9月の着葉期に炭素収支を増加させる。
●6.5%の増加のうち、4.6%がCO2施肥効果で、1.9%が気候変動効果。
生態系純生産量(炭素収支)の月毎の将来変化 (2050年-2010年)
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森林管理の効果
●2050年の炭素収支は、2040年までに皆伐・植林(カラマツ)の施業を
することで何もしない場合に比べて1.5~1.7倍に増加。
皆伐&カラマツ植林
皆伐&スギ植林
●2040年以降の施業であれば、間伐が最も効果的。
間伐率50%の間伐&カラマツ植林
2050年の生態系純生産量(炭素収支)
生態系純生産量
(Mg C ha-1 y-1)
●スギを植林すると、何もしない場合と同程度か減少。
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長野県の2050年の森林吸収の試算
67
各部門からのCO2排出量を計画通り削減していけば、カラマツ人工林を主伐・再造林することで2050年のゼロカーボン達成が見込める。
(万t-CO2)
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全体のまとめ
緩和策
適応策
大気中の温室効果ガス濃度を低減
気候に合わせて社会のあり方を調整
気候変動
長野の気温は21世紀末に0.7~6.7℃上昇
森林
フェノロジーの変化
二酸化炭素の吸収
質問用スライド
樹種別・林齢別炭素吸収量
https://www.pref.nagano.lg.jp/shinrin/sangyo/ringyo/seibi/ninsho/documents/h280209_santeikijun.pdf
参考) 長野県 「森林の里親促進事業」より
長野県の他の樹種の気候変動影響は?
リスク
レベル
5
RCP2.6
過去(1980~2010年)
アカマツ
松枯れ潜在リスク
RCP8.5
出典) Matsuhashi et al. (2020)
赤で示した松枯れリスクが特に高い地域(レベル5)の範囲が拡大
1
近未来(2026~2050年)
気候モデル:MRI-CGCM3
長野県の他の樹種の気候変動影響は?
ブナ
潜在生育域
過去(1980~2000年)
RCP2.6
RCP8.5
21世紀末(2081~2100年)
気候モデル:MIROC5
潜在生育域
出典) Nakao et al. (2013)
ブナの潜在的な生息適域の範囲が高標高域に遷移する形で縮小