1 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第1書 『日本人論』

第1章�「日本人の美学

日本数寄

1

第2章

「日本人の感受性

物と恋会う力

2

第3章

「日本人の心のかたち

われらのウツホを�直視せよ

3

第4章

「日本人の� 根源にあるもの

無分別の活用

4

2 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第1書 『日本人論』

第1章�「日本人の美学

日本数寄

1

九鬼周造「『いき』の構造」からは、日本人の美学を

第2章

「日本人の感受性

物と恋会う力

2

折口信夫「死者の書」からは、日本人の感受性を

第3章

「日本人の心のかたち

われらのウツホを�直視せよ

3

河合隼雄「中空構造日本の深層」からは、日本人の心のかたちを

第4章

「日本人の� 根源にあるもの」 無分別の活用

4

鈴木大拙「日本的霊性」からは、日本人の根源にあるものを

3 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第1書 『日本人論』

「日本人論」といいますと、とかく「政治的」な取り扱い方をされがちなテーマですが、今回は、�「名著」から読み解くというスタンスに立って、あえて「哲学的」に、かつ「縦方向に奥深く」、�日本人のアイデンティティや文化の基層に迫ってみる手法をとりました。また、通常は、「平易�にわかりやすく」を旨とする「100分de名著」ですが、スペシャル版ということで、少しだけデ�ィープな議論にも挑んでみました。

今回のゲストの皆さんは、プロデューサーAにとっては、大変思い入れの深い方々でした。私が�大学一年生の頃出版された中沢新一さんの「チベットのモーツァルト」は夢中になって読みふけ�った本の一冊で、以来、ほぼ全ての著書を読ませていただいています。また、ちょうどその頃発�刊を終えた、松岡正剛さんが編集されていた「遊」は、私に知への扉を開いてくれた憧れの雑誌�でした。斎藤環さんの著書「社会的ひきこもり」は、マスコミ業界に入って中堅になってから読�んだ本で、精神医学が社会批評としても大きく機能しうるということを気づかせてくれた本です�し、赤坂真理さんの小説「東京プリズン」は今年読んだ本の中で最も衝撃を受けた本。そう、今回ご出演いただいた皆さんは、私の「知」を育ててくださった恩人でもあったわけです。同世代の方で私と同じ感慨を持たれる方も多いかもしれません。また、赤坂真理さんはもちろん、他のベテラン三人も現在でも第一線で活躍されている方々なので、若い世代の皆さんの中にも、大いに刺激を受けているという人が大勢いるかもしれませんね。

収録は実に5時間以上にわたり、日本人についてとことん語りつくしていただきました。そのエッセンスをお伝えすべく奮闘いたしましたが、あれだけ情報量の多い名著を解説するにはやはりどうしても時間が足りなかったというのも実感です。もしかしたら物足りないと思われる方もいらっしゃるかもしれません。去年の「100分de幸福論」に引き続き、後日、ムック本という形でも展開させていただこうと考えております。ぜひご一読いただけたらと思います。

4 of 178

第120回 ミート懇話会「先達に問う」

ビヨンドコロナのAXとライフシフト

トピックス

第120回

2022年2月9日

開催回数

日時・会場

ワークショップ形式

開催目的

開催内容

開催要領

定員10名

5 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第106書 GMV懇話会ファノン黒い皮膚・白い仮面

2020年5月25日、アメリカで黒人男性のジョージ・フロイドさんが白人警官に殺害された事件は世界を震撼させました。この事件をきっかけに、黒人の命の尊重と人種差別の是正を訴える「ブラック・ライブズ・マター」運動が世界中に広がっています。そんな中、一冊の本が静かに読み直され始めています。「黒い皮膚・白い仮面」。書いたのは、黒人差別の構造を精神医学・心理学の立場から追求した精神科医で、後にアルジェリア独立運動に尽力した思想家、フランツ・ファノン(1925-1961)です。自らも仏領植民地出身者として、いわれない差別を受け続けた黒人です。人種差別の問題に真っ向から取り組んだ彼の著作を通して、「差別とは何か」「差別はどうして生じるのか」「どうやったら差別を乗り越えることができるのか」といった普遍的な問題を深く考えたいと思います。

第2回

内面化される差別構造

第3回�「呪われたるもの」の叫び

第4回

疎外からの解放を求めて

第1回

言語をめぐる葛藤

6 of 178

第119回 ミート懇話会「先達に問う」

 ビヨンドコロナのAXとライフシフト

AXとふらっとホームの

GMV懇話会パスカル『パンセ』

トピックス

第119回

2022年2月2日

開催回数

日時・会場

ワークショップ形式

開催目的

開催内容

開催要領

定員10名

7 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第13書 GMV懇話会パスカルパンセ

パスカルが生きた時代のヨーロッパでは、科学が著しく進歩し、キリスト教に基づく世界観に疑問の声があがり始めていました。そして人間の理性が、世界の真実を明らかにするという思想が急速に広まっていました。

しかし世の中を冷静に見つめていたパスカルは、理性こそ万能だという考えには、危うさがあると確信するようになります。「人間はおごってはならない」と考えたパスカルは、人間の弱さを明らかにするため、日々考えたことをメモに書きとめました。それをまとめたのが「パンセ」です。そこには震災を経て、現代文明のもろさがあらわになった今こそ、改めてかみしめたい言葉があふれています。

第3回

生きるのがつらいのは何故か

 検索: 理性 あやうさ 心 限界 千夜千冊

人間は世界(宇宙)を感じると同時に自己を感じるのです。

「悲しさ」は世界感が捉えるものであり、客観的。

「悲しみ」は自己感が捉えるものである、主観的。

8 of 178

第118回 ミート懇話会「先達に問う」

 ビヨンドコロナのAXとライフシフト

AXとふらっとホームの

GMV懇話会ダーウィンの『種の起源』

トピックス

第118回

2022年1月26日

開催回数

日時・会場

ワークショップ形式

開催目的

開催内容

開催要領

定員10名

9 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第46書 GMV懇話会ダーウィン『種の起源』

「種の起源」は現代生物学の基礎理論の一つともいえる「進化論」を打ち立てただけではありません。ダーウィンが「種の起源」で打ち出した生命観から自然をみると、全ての生物は「生命の樹」といわれる一つの巨大な連鎖でつながっており、人間もその一部にすぎません。そこからは、人間には他の生物を意のままに操る権利などはなく、互いに尊重し共存していかなければならない、というダーウィンのメッセージがみえてきます。

検索: 巨大な連鎖 権利 進化 起源

検索:巨大な連鎖 権利 進化 起源  千夜千冊

10 of 178

第117回 ミート懇話会「先達に問う」

 ビヨンドコロナのAXとライフシフト

トピックス

第117回

2022年1月19日

開催回数

日時・会場

ワークショップ形式

開催目的

開催内容

開催要領

定員10名

11 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第82書 GMV懇話会スピノザ『エチカ”』 

私たちが漠然と前提しているものの見方がことごとく覆されますが、そこには不思議にも私たちが日常の中で見過ごしている物事の本質が浮かび上がってきます。とりわけ「意志」や「自由」に関するスピノザの洞察は、精神医療やケアの現場にも新たな知見を与えてくれることもあるといいます。幾何学の方法を徹底的に適用し一見冷めた非人間的な記述とも思えるスピノザの哲学は、深く読解していくと、「人間の幸福」「人生を正しい方向に導く方法」「真の善の発見」といったテーマが貫かれていることがわかっていきます。

検索: 自由 意志 人間の高お福 エチカ

哲学対話 PARA SHIF 「自由」

検索:自由 意志 人間の高お福 エチカ 千夜千冊

12 of 178

第115回 ミート懇話会「先達に問う」

 ビヨンドコロナのAXとライフシフト

AXとふらっとホームの実験場

GMV懇話会 河合隼雄スペシャル

トピックス

第115回

2022年1月5日

開催回数

日時・会場

ワークショップ形式

開催目的

開催内容

開催要領

定員10名

13 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第78書 河合隼雄スペシャル

人々の悩みに寄りそい、個人の物語に耳を澄まし続けた「こころの医師」河合隼雄は、私たちが見過ごしがちな「心の問題」「人間の本質」を、単なる学術的な方法を超えて、瑞々しい言葉で縦横に論じてきた。「心の問題」を解決に導くには、相手を客観的に「観察」するのではなく、その問題に主体的に関わり、その人の心に起きている現象をともに生き「経験」する必要があるという河合。それは、自然科学のように「いかに」を説明するのではなく、「なぜ」という問いを共に辿り、その人を揺り動かしている情動がおさめ心のバランスを取り戻していく過程を共に歩んでいく長い道のりだという。

第2回

人間の

根源とイメージ

第3回

昔話と神話

の深層

第4回

第1回�こころの問題に�寄りそう

検索:  河合隼雄 人間の根源 昔話

検索:司馬遼太郎 千夜千冊

「私」とは何か

14 of 178

第113回 ミート懇話会「先達に問う」

 ビヨンドコロナのAXとライフシフト

AXとふらっとホームの実験場

GMV懇話会 サルトル『実存主義とは何か』

トピックス

第113回

2022年12月22日

開催回数

日時・会場

ワークショップ形式

開催目的

開催内容

開催要領

定員10名

15 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第63書 サルトル『実存主義とは何か』

第二次世界大戦という未曾有の経験によって、既存の価値観が大きくゆらいでいたヨーロッパ。人々は、たよるべきよすがを失い「根源的な不安」に直面していた。意味や必然性を剥ぎ取られ不条理にさらされたとき、人は一体どう生きていったらよいのか? サルトルは、その「根源的な不安」に向き合い乗り越えるために、「実存主義」という新たな思想を立ち上げた。「人間の本質はあらかじめ決められておらず、実存(現実に存在すること)が先行した存在である。だからこそ、人間は自ら世界を意味づけ行為を選び取り、自分自身で意味を生み出さなければならない」と高らかに宣言した講演「実存主義とは何か」は、その後世界中で著作として出版され、戦後を代表する思想として広まっていた。

検索: 戦争 根源的な不安 人間の本質

検索:戦争 根源的な不安 人間の本質 千夜千冊

16 of 178

第112回 ミート懇話会「先達に問う」

 ビヨンドコロナのAXとライフシフト

AXとふらっとホームの実験場

GMV懇話会マルクス・アウレリウス"自省録

トピックス

第112回

2022年12月15日

開催回数

日時・会場

ワークショップ形式

開催目的

開催内容

開催要領

定員10名

17 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第63書 マルクス・アウレリウス"自省録

検索: 共生 自生 今、ここ

検索:共生 自生 今、ここ 千夜千冊

18 of 178

第111回 ミート懇話会「先達に問う」

 ビヨンドコロナのAXとライフシフト

AXとふらっとホームの実験場

GMV懇話会 洪自誠『菜根譚』

トピックス

第111回

2022年12月8日

開催回数

日時・会場

ワークショップ形式

開催目的

開催内容

開催要領

定員10名

19 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第38書 洪自誠『菜根譚』

「菜根譚」は、明代末期に優秀な官僚として活躍後、政争に巻き込まれ隠遁したと推測される人物、洪自誠(こう・じせい)が著したものです。前集222条、後集135条の断章からなり、主として前集は人の交わりを説き、後集では自然と閑居の楽しみを説いています。「菜根」という言葉は、「人はよく菜根を咬みえば、すなわち百事をなすべし」という故事に由来。「堅い菜根をかみしめるように、苦しい境遇に耐えることができれば、人は多くのことを成し遂げることができる」という意味です。辛酸をなめつくした洪自誠が「人は逆境において真価が試される」という思いをこめてつけたと考えられています。そこには、逆境を経験したからこそ生まれた「生きるヒント」が満ち溢れています。

検索:菜根譚 人生 政争

超訳 菜根譚 人生はけっして難しくない (知的生きかた文庫)

1分間菜根譚 差がつく実学教養(4)

【人事部長の教養100冊】「菜根譚」(洪自誠)要約&解説

検索:菜根譚 人生 政争 千夜千冊

20 of 178

第110回 ミート懇話会「先達に問う」

 ビヨンドコロナのAXとライフシフト

AXとふらっとホームの実験場

GMV懇話会  宮本武蔵"五輪書"

トピックス

第110回

2022年11月24日

開催回数

日時・会場

ワークショップ形式

開催目的

開催内容

開催要領

定員10名

21 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第54書 『宮本武蔵"五輪書"

諸国武者修行を行い、六十余度の剣術勝負で一度も負けたことがないという剣豪・宮本武蔵(1582-1645)。武蔵は、生涯にわたって剣術を磨き上げ、己れの生き方を見つめ、武士としての兵法の道を探求し続けました。その集大成となった著作が「五輪書」です。「五輪書」は、単に剣術や兵法の書にとどまりません。武蔵自身「何れの道においても人にまけざる所をしりて、身をたすけ、名をたすくる所、是兵法の道なり」と書いている通り、その極意は、社会のあらゆる道にも通じるものであるといいます。そこで、「100分de名著」では、「五輪書」に新たな光を当て、現代に通じるメッセージを読み解いていきます。

検索:宮本武蔵 五輪書 自己を磨く

検索:宮本武蔵 五輪書 自己を磨く、千夜千冊

22 of 178

第109回 ミート懇話会「先達に問う」

 ビヨンドコロナのAXとライフシフト

AXとふらっとホームの実験場

GMV懇話会 "小松左京スペシャル"

トピックス

第109回

2022年11月24日

開催回数

日時・会場

ワークショップ形式

開催目的

開催内容

開催要領

定員10名

23 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第21書 『"小松左京スペシャル"

古事記の特徴は、国家の正式な歴史書とされる日本書紀と比べて文学性が高く、物語として楽しく読むことができることです。また古事記で詳細に記されている「出雲神話」からは、古代国家がどのように形作られていったかをうかがうことができ、歴史の意外な一面をたどることができます。

こうした神話は文字が使われる以前の時代から、平家物語のような「語り」によって受け継がれてきたと思われます。この語りの口調を生かした現代語訳を行ったのが、ベストセラーとなった「口語訳古事記」の著者、立正大学教授の三浦佑之さんです。「語り」では、聞き手の関心をひく事柄が強調されため、物語に脈動感が生まれます。それが古事記の魅力になっていると、三浦さんは言います。

第2回

「滅びとアイデンティティ」-『日本沈没』

第3回

「深層意識と宇宙をつなぐ」『ゴルディアスの結び目』

第4回

「宇宙にとって知性とは何か」-『虚無回廊』-

第1回

「原点は“戦争”にあり」-『地には平和

検索:小松左京 戦争 深層意識 日本沈没

1511夜

検索:小松左京 戦争 深層意識 日本沈没、千夜千冊

24 of 178

第108回 ミート懇話会「先達に問う」

 ビヨンドコロナのAXとライフシフト

AXとふらっとホームの実験場

GMV懇話会 "古事記"

トピックス

第108回

2022年11月17日

開催回数

日時・会場

ワークショップ形式

開催目的

開催内容

開催要領

定員10名

25 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第21書 『古事記

古事記の特徴は、国家の正式な歴史書とされる日本書紀と比べて文学性が高く、物語として楽しく読むことができることです。また古事記で詳細に記されている「出雲神話」からは、古代国家がどのように形作られていったかをうかがうことができ、歴史の意外な一面をたどることができます。

こうした神話は文字が使われる以前の時代から、平家物語のような「語り」によって受け継がれてきたと思われます。この語りの口調を生かした現代語訳を行ったのが、ベストセラーとなった「口語訳古事記」の著者、立正大学教授の三浦佑之さんです。「語り」では、聞き手の関心をひく事柄が強調されため、物語に脈動感が生まれます。それが古事記の魅力になっていると、三浦さんは言います。

検索:古事記 語り 伝承 故事

検索:古事記 語り 伝承 千夜千冊

26 of 178

第107回 ミート懇話会「先達に問う」

 ビヨンドコロナのAXとライフシフト

AXとふらっとホームの実験場

GMV懇話会『夏目漱石”こころ”

トピックス

第107回

2022年11月10日

開催回数

日時・会場

ワークショップ形式

開催目的

開催内容

開催要領

定員10名

27 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第21書「夏目漱石 "こころ"

暴力ではなく精神の力でインドを独立に導いた指導者マハトマ・ガンディー(1869~1948)。「インド独立の父」とも呼ばれ、彼が身をもって実践した「非暴力不服従主義」の思想は、今も多くの人に巨大な影響を与え続けています。とりわけヤラヴァーダー中央刑務所に収監中に、弟子たちに宛てて一週間ごと書き送られた「獄中からの手紙」には、ガンディーの思想の精髄が込められているといわれています。「100分de名著」では、この「獄中からの手紙」に新たな視点から光を当て、現代に通じるメッセージを読み解いていきます。

検索:漱石の心は今

検索:漱石の心は今 千夜千冊

28 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第1書 『日本人論』 ーー 日本神話の中心は、空であり無である ーー

清き

明けき

此処露

29 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第1書 『日本人論』

第1章「日本人の美学

日本数寄

第2章「日本人の感受性

物と恋会う力

第3章「日本人の心のかたち

われらのウツホを直視せよ

第4章「日本人の根源にあるもの

 無分別の活用

30 of 178

31 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第2書 『代表的日本人』

2

3

4

1

日本が欧米列強に肩を並べようと近代化に邁進していた明治時代。日本の精神性の深さを世界に知らしめようと、英語で出版された名著があります。内村鑑三著「代表的日本人」。西郷隆盛、上杉鷹山、二宮尊徳、中江藤樹、日蓮という五人の歴史上の人物の生き方を通して書かれた日本人論です。「武士道」「茶の本」と並んで、三大日本人論の一冊に数えられています。

著者の内村鑑三(1861-1930)は、宗教家、思想家として聖書研究を行い、既存のキリスト教派によらない「無教会主義」を唱えた人物。当時の日本は、鎖国を解いてからわずか50年ほどで日清・日露戦争を勝ち抜き、世界から注目を集めていました。しかし、まだまだ偏見が根強く「盲目的な忠誠心」「極端な愛国心」が特徴の民族との一面的な捉え方がなされており、内村は、真の日本人の精神性を海外に伝える必要性を痛感していました。そこで、内村は、欧米人にもわかりやすいよう、聖書の言葉を引用したり、西洋の歴史上の人物を引き合いに出したりしながら、日本人の精神のありようを生き生きと描き出したのです。

しかし、この著書は単なる海外向けの日本人論であるにとどまりません。取り上げた日本人たちの生き方の中に「人間を超えた超越的なものへのまなざし」「人生のゆるぎない座標軸の源」を見出し、日本に、キリスト教文明に勝るとも劣らない深い精神性が存在することを証だてました。さらには、西洋文明の根底的な批判や、それを安易に取り入れて本来のよさを失いつつある近代日本への警告も各所に込められています。この本は、単なる人物伝ではなく、哲学、文明論のようなスケールの大きな洞察がなされた著作でもあるのです。

番組では、批評家の若松英輔さんを講師に招き、現代的な視点から「代表的日本人」を解説。現代に通じるメッセージを読み解き、価値感が混迷する中で座標軸を見失いがちな私達の現代人が、よりよく生きるための指針を学んでいきます。

西郷隆盛

杉鷹山・二宮尊徳

江藤樹・日蓮

内村鑑三

32 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第2書 『代表的日本人』

2

3

4

1

33 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第2書 『代表的日本人』

2

3

4

1

34 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第2書 『代表的日本人』

杉鷹山・二宮尊徳

試練は人生からの問いである

2

江藤樹・日蓮�考えることと信ずること

3

内村鑑三�後世に何を遺すべきか

4

西郷隆盛�無私は天に通じる

1

35 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」第1回代表的日本人

第2回 試練は人生からの問いである

改革者/上杉鷹山・二宮尊徳

ビンチをチャンスに

恐れ  畏れ

キーワード

自己に天からタクされた民

経済と道徳とを分けない

上杉鷹山

二宮尊徳

仕事

見る

見えないものを感じる

託された民の徳を見る

碩田の礼

経済=現実的な生活

道徳=かけがえのない人生

可能性

捨(損)

拾(得)

無私

人生

内村の見る力

見捨てない

託された民を見る

36 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第2書 『代表的日本人』

第1章西郷隆盛

無私は天に通じる

第2章上杉鷹山・二宮尊徳

試練は人生からの問いである

第3章中江藤樹・日蓮

考えることと信ずること

第4章内村鑑三

後世に何を遺すべきか

37 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第3書 『武士道』

2

3

4

1

新からほぼ一世代をへた一九〇〇年の前後、明治初めの文明開化期に英語を学んで成長した日本人のなかから、すぐれた英文の著作が相次いであらわれました。内村鑑三の『代表的日本人』(「Representative Men of Japan 」明治四十一年)、岡倉天心の『茶の本』(「The Book of Tea 」明治三十九年)、そして新渡戸稲造の『武士道』です。いずれも、日本の文化や思想を外国人に向けて紹介・解説した名著ですが、内外に大きな影響を与えたという意味では、やはり『武士道』を筆頭にあげるべきでしょう。

『武士道』の原題は「BUSHIDO The Soul of Japan 」。滞米中の新渡戸稲造が英語で書き、明治三十二年(一八九九)にアメリカ・フィラデルフィアの書店から出版されましたが、数年のうちにドイツ語、ポーランド語、フランス語、ノルウェー語、ハンガリー語、ロシア語、イタリア語に翻訳されるなど、世界的なベストセラーになりました。

なぜそんなにも欧米で読まれたのか。その理由は本書が出版された時期にあります。明治三十二年といえば、日本が日清戦争(一八九四〜九五年)に勝利して、ようやく世界の列強の仲間入りを果たそうとしていた時期。逆にいえば、世界が日本に注目していた時期にあたります。つまり、このアジアの片隅の新興帝国のことを、欧米人たちは知りたがっていた。彼らにとって日本とは「サムライの国」であり、日本を知ることとは要するにサムライを知ることでした。そんなとき、まさにサムライの意識と行動について日本人が書いた「BUSHIDO 」が出版されたので、これに飛びついたのでしょう。さらに、出版から五年後に起きた日露戦争(一九〇四〜〇五年)でも日本が大国ロシアに勝利したことが、このブームに拍車をかけました。日本を知るための恰好の参考書として、『武士道』を自国語に翻訳する国が一挙に増えたのです。

一方日本では、出版の翌年(明治三十三年)に英文『武士道』が出版されていますが、翻訳はむしろ他国よりやや遅く、原著出版から九年後の明治四十一年(一九〇八)に桜井鴎村が訳した『武士道』(丁未出版社刊)が最初です。その後、昭和十三年(一九三八)には、植民政策学者で新渡戸稲造・内村鑑三に私淑するクリスチャンでもあった矢内原忠雄の訳した『武士道』が岩波文庫から出て、現在にいたるまで広く読まれつづけています。

38 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第3書 『武士道』

39 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第3書 『武士道』

第1章

正義・日本人の美徳

第2章

名誉・日本人の責任の取り方

第3章

忍耐・謎のほほ笑み

第4章

武士道・その光と影

40 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第4書 『論語と算盤

1

2021年の大河ドラマの主人公であり、新一万円札の顔にもなる渋沢栄一(1840-1931)。約500社もの企業を立ち上げ、500以上の社会事業にも携わり、「日本資本主義の父」「実業界の父」と称された人物です。日本の制度や経済システムの基礎を築いたともいわれている。彼の思想や信念の根幹を記したとされるのが「論語と算盤」。今なお数多くの経営者や起業家に読み継がれ絶大な影響力を誇っています。そこで、この「論語と算盤」を現代の視点から読み解くことで、理想のリーダーや組織・制度のあり方、困難な人生を生き抜く方法などを学んでいきます。

「論語と算盤」が卓越したビジネス論、組織論といわれるのはなぜでしょうか? それは、今から100年以上も前に、「資本主義」や「実業」が内包していた問題点を見抜き、それを解決するための考え方やしくみをどう組み込めばよいかを指し示しているからだといわれています。「資本主義」や「実業」は、自分だけの利益を増やしたいという欲望をエンジンとして進んでいく面があります。しかし、そのエンジンはしばしば暴走し、さまざまな問題を引き起こしていきます。だからこそ渋沢は、この本によって,「資本主義」や「実業」に、暴走の歯止めをかけるためのしくみが必要であることを示そうとしたのです。

中国古典研究者・守屋淳さんは、「論語と算盤」が現代でもビジネスや組織運営、生き方などにおける最良の「教科書」になると指摘します。この本を読めば、社会や組織のしくみはどうあるべきか、理想のリーダーになるためには何をなすべきか、困難に直面したときどうふる舞えばよいのかを学ぶことができるというのです。資本主義が暴走し、さまざまな問題が噴出している今こそ、渋沢がこの名著で描いたヴィジョンを学ぶべきだと守屋さんは考えています。

番組では、守屋淳さんを指南役に招き「論語と算盤」をわかりやすく解説。様々な言葉を現代につなげて読み解きながら、そこに込められた【ビジネス論】【組織論】【経済論】【生き方論】などを深く学んでいきます。

41 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第4書 『論語と算盤』

2

3

4

1

42 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第4書 『論語と算盤』

第2回 「信用」で経済を回せ

2

第3回 

「合本主義」というヴィジョン

3

第4回 

対極にあるものを両立させる

4

第1回 

高い志が行動原理を培う

1

43 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第4書 『論語と算盤』

第1章

高い志が行動原理を培う

第2章

「信用」で経済を回せ

第3章

「合本主義」というヴィジョン

第4章

対極にあるものを両立させる

44 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第5書 『日本の面影』

2

3

4

1

「並外れた善良さ」「辛抱強さ」「素朴な心」「察しのよさ」……今や失われようとしている、私たち日本人がかつてもっていた美質。異邦人ならではの視点から、当の日本人ですら見過ごしていた日本の美しさ、精神性の豊かさを瑞々しい言葉で描き出してきた文学者・小泉八雲(旧名ラフカディオ・ハーン)。その初期の代表作が「日本の面影」です。7月の「100分de名著」では、優れた紀行文学であり、卓越した日本文化論としても読み解ける「日本の面影」を通して、「日本とは何か?」そして「異文化を理解するとはどういうことか?」をあらためて見つめなおしたいと思います。

小泉八雲が日本には到着したのは1890年(明治23年)。自らの居場所を求め続けた八雲が漂泊の果てにたどり着いた場所でした。時あたかも日本が西欧近代化に向けて邁進し始めた時期でしたが、地方にはまだ「古きよき日本」が色濃く残っていました。八雲はそうした「失われつつある日本」をこよなく愛し、それこそ日本の真髄だとして作品に書きとどめることで救い出そうとしたのです。

しかし、「日本の面影」は単なる日本礼賛の本ではありません。八雲は類い希なる感性で、あらゆる音に耳をすませ、全身で世界と共振しながら、自分とは全く異なる文化の深層を感じ取ろうとしました。この作品は、多様化し対立し合う現代の世界にあって、「異なる価値観」「異文化」を理解するための大きなヒントを私達に与えてくれます。小泉八雲の研究者、池田雅之早稲田大学教授は、八雲がそうできた理由を、「アイルランド人の父とギリシア人の母の間で自らのアイデンティティを引き裂かれながらも、世界中を旅することを通じて、どんな土地にでも溶け込んでしまえる『オープンマインド(開かれた心)』を獲得するに至ったからではないか」といいます。

番組では池田雅之さんを指南役として招き、小泉八雲が追い求めた世界観を分り易く解説。「日本の面影」を現代の視点から読み解いてもらい、そこにこめられた【日本文化論】や【異文化理解のヒント】【自分探し】など、現代の私達にも通じる普遍的なテーマを引き出していきます。

45 of 178

2

3

4

1

「並外れた善良さ」「辛抱強さ」「素朴な心」「察しのよさ」……今や失われようとしている、私たち日本人がかつてもっていた美質。異邦人ならではの視点から、当の日本人ですら見過ごしていた日本の美しさ、精神性の豊かさを瑞々しい言葉で描き出してきた文学者・小泉八雲(旧名ラフカディオ・ハーン)。その初期の代表作が「日本の面影」です。10月の「100分de名著」では、優れた紀行文学であり、卓越した日本文化論としても読み解ける「日本の面影」を通して、「日本とは何か?」そして「異文化を理解するとはどういうことか?」をあらためて見つめなおしたいと思います。

小泉八雲が日本に到着したのは1890年(明治23年)。自らの居場所を求め続けた八雲が漂泊の果てにたどり着いた場所でした。時あたかも日本が西欧近代化に向けて邁進し始めた時期でしたが、地方にはまだ「古きよき日本」が色濃く残っていました。八雲はそうした「失われつつある日本」をこよなく愛し、それこそ日本の真髄だとして作品に書きとどめることで救い出そうとしたのです。

しかし、「日本の面影」は単なる日本礼賛の本ではありません。八雲は類い希なる感性で、あらゆる音に耳をすませ、全身で世界と共振しながら、自分とは全く異なる文化の深層を感じ取ろうとしました。この作品は、多様化し対立し合う現代の世界にあって、「異なる価値観」「異文化」を理解するための大きなヒントを私達に与えてくれます。小泉八雲の研究者、池田雅之早稲田大学教授は、八雲がそうできた理由を、「アイルランド人の父とギリシア人の母の間で自らのアイデンティティを引き裂かれながらも、世界中を旅することを通じて、どんな土地にでも溶け込んでしまえる『オープンマインド(開かれた心)』を獲得するに至ったからではないか」といいます。

番組では池田雅之さんを指南役として招き、小泉八雲が追い求めた世界観を分り易く解説。「日本の面影」を現代の視点から読み解いてもらい、そこにこめられた【日本文化論】や【異文化理解のヒント】【自分探し】など、現代の私達にも通じる普遍的なテーマを引き出していきます。

46 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第5書 『日本の面影』

木の文化

石の庭

石の文化

花の庭

47 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第5書 『日本の面影』

48 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第6書 『善の研究』

2

3

4

1

日本が欧米列強に肩を並べようと近代化に邁進していた明治時代。しかし「哲学」という言葉が翻訳されたばかりの日本では、およそ自分たち独自の哲学を構築できるなど思いもよらないことでした。そんな時代に、禅などの東洋思想や西洋の最新思潮と格闘しながら、日本だけのオリジナルの哲学を独力で築き上げようとした人がいました。西田幾多郎(1870-1945)。彼のデビュー作にして代表作が「善の研究」です。西田の思想的格闘が凝縮したともいえるこの名著を、現代の視点から読み解くことで、「生きるとは何か」「善とは何か」「他者とどうかかわるべきか」といった、人生の根本的な問題を深く考えていきます。

西田は、近代の西洋哲学が確立させた、認識する主体/認識される客体という二元論を乗りこえるべく、「純粋経験」という概念を考案しました。主体と客体は抽象化の産物にすぎず、実際に我々にもともと与えらえた直接的な経験には、主体も客体もありません。たとえば私たちが音楽に聞き入っているときには、「主体」が「対象としての音楽」を把握しているのではなく、主客未分の純粋な経験がまず根源にあるといいます。そこからさまざまな判断や抽象化を経て、主/客の図式ができあがるのです。経験の根源である「純粋経験」に立ちもどらなければ、真理は見えてこないと西田はいいます。

この立場から世界を見つめなおすと、「善/悪」「一/多」「愛/知」「生/死」といった様々なに二項対立は、一見矛盾しているようにみえて、実は「一なるもの」の側面であり、「働き」であることがわかります。西田哲学は、合理主義的な世界観が見失ってしまった、私たちが本来もっている豊かな経験を取り戻すために、非常に有効な手立てを与えてくれるのです。

この難解な西田哲学を読み解くためには、4つの章を逆順に読み進めるのがよいと提案するのが批評家の若松英輔さん。西田が強靭な思考力で歩みぬいた過程は、問いの繰り返しであり常人には歩みがたい。けれども結論部分を実感的に読むのは意外にも容易で、頂上から降りていくように読み進めると、自ずと西田自身の言葉が語りだしてくるといいます。

番組では、日本近代思想に詳しい若松英輔さんを講師に招き、新しい視点から「善の研究」を解説。現代に通じるメッセージを読み解き、価値感が混迷する中で座標軸を見失いがちな私達の現代人がよりよく生きるための指針を学んでいきます。

49 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第6書 『善の研究』

50 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第6書 『善の研究』

51 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

   第6書 『善の研究』  (雑記)

場処

契機

哲学する

善の研究

対立

調和

絶対矛楯的

自己同一

生死を以て

一環とする

永遠の今

多の一

人格的生命

52 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第7書 『般若心経

1

日本人にとって最もなじみが深いお経であり、今、改めてその価値が見直されている「般若心経」。今回は、2013年1月に放送され、好評を博した「般若心経」をアンコール放送します。

「般若心経」の「般若」とは「知恵」を意味する言葉です。その般若心経で最も強調されているのは「空」という概念です。

世の中は、様々な複雑な要因がからみあいながら、常に移り変わっています。そして世の中の変化のすべてを、人間が完全に予測することはできません。

例えば気候変動にしても、宇宙や気象のメカニズムからある程度のことは予想できます。しかし次の氷河期がいつになるか、はっきりとしたことはいえません。つまり人間は、何がいつどのような形で起きるかを、正確に知ることは出来ないのです。

古代インドの仏教徒たちは、この不確かな世の中をどうとらえるべきか、様々な考察をめぐらしました。その中から生まれてきたのが「空」の思想です。変化し続ける世の中の背後には、複雑すぎるがゆえに、人智が及ばない何らかの法則がある。その「見えない変化の法則」を「空」と呼んだのです。

「般若心経」は、私たちは「空」のもとで生きているとしています。そして人間が、どのような心構えで人生をおくるべきなのかを語っています。

番組では、日本人の心の原点ともいえる般若心経を読みときながら、「空」の思想を今どのように受けとめるべきかを考え、生きるヒントを探っていきます。

53 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第7書 『般若心経』

1

日本人にとって最もなじみが深いお経であり、今、改めてその価値が見直されている「般若心経」。今回は、2013年1月に放送され、好評を博した「般若心経」をアンコール放送します。

「般若心経」の「般若」とは「知恵」を意味する言葉です。その般若心経で最も強調されているのは「空」という概念です。

世の中は、様々な複雑な要因がからみあいながら、常に移り変わっています。そして世の中の変化のすべてを、人間が完全に予測することはできません。

例えば気候変動にしても、宇宙や気象のメカニズムからある程度のことは予想できます。しかし次の氷河期がいつになるか、はっきりとしたことはいえません。つまり人間は、何がいつどのような形で起きるかを、正確に知ることは出来ないのです。

古代インドの仏教徒たちは、この不確かな世の中をどうとらえるべきか、様々な考察をめぐらしました。その中から生まれてきたのが「空」の思想です。変化し続ける世の中の背後には、複雑すぎるがゆえに、人智が及ばない何らかの法則がある。その「見えない変化の法則」を「空」と呼んだのです。

「般若心経」は、私たちは「空」のもとで生きているとしています。そして人間が、どのような心構えで人生をおくるべきなのかを語っています。

番組では、日本人の心の原点ともいえる般若心経を読みときながら、「空」の思想を今どのように受けとめるべきかを考え、生きるヒントを探っていきます。

54 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

2

3

4

1

日本人にとって最もなじみが深いお経であり、今、改めてその価値が見直されている「般若心経」。今回は、2013年1月に放送され、好評を博した「般若心経」をアンコール放送します。

「般若心経」の「般若」とは「知恵」を意味する言葉です。その般若心経で最も強調されているのは「空」という概念です。

世の中は、様々な複雑な要因がからみあいながら、常に移り変わっています。そして世の中の変化のすべてを、人間が完全に予測することはできません。

例えば気候変動にしても、宇宙や気象のメカニズムからある程度のことは予想できます。しかし次の氷河期がいつになるか、はっきりとしたことはいえません。つまり人間は、何がいつどのような形で起きるかを、正確に知ることは出来ないのです。

古代インドの仏教徒たちは、この不確かな世の中をどうとらえるべきか、様々な考察をめぐらしました。その中から生まれてきたのが「空」の思想です。変化し続ける世の中の背後には、複雑すぎるがゆえに、人智が及ばない何らかの法則がある。その「見えない変化の法則」を「空」と呼んだのです。

「般若心経」は、私たちは「空」のもとで生きているとしています。そして人間が、どのような心構えで人生をおくるべきなのかを語っています。

番組では、日本人の心の原点ともいえる般若心経を読みときながら、「空」の思想を今どのように受けとめるべきかを考え、生きるヒントを探っていきます。

55 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第7書 『般若心経』

56 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第7書 『般若心経』

57 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第8書 『フランクル“夜と霧

2

3

4

1

今、日本では自殺者が14年連続で3万人を超えています。震災に見まわれ、全てを失ったという人も少なくありません。

運命に打ちのめされたという人、将来に希望が持てないという人が、世の中にあふれています。そこで8月のシリーズでは、人間の生きがいとは何かを追求した名著「夜と霧」を取り上げることにしました。

「夜と霧」の著者は、強制収容所から奇跡的な生還を果たしたユダヤ人のヴィクトール・フランクルです。精神科医だったフランクルは、冷静な視点で収容所での出来事を記録するとともに、過酷な環境の中、囚人たちが何に絶望したか、何に希望を見い出したかを克明に記しました。

「夜と霧」は戦後まもなく出版され、世界的なベストセラーとなります。アメリカでは、「私の人生に最も影響を与えた本」でベスト10入りした唯一の精神医学関係の書となっています。日本でも、重いテーマにもかかわらず、これまでに累計100万部が発行されました。2002年には新訳本も刊行され、その人気は衰えていません。

「夜と霧」が時代を超えて人を引きつけるのは、単なる強制収容所の告発ではなく、“人生とは何か”を問う内容だからです。そこで今回の番組では「夜と霧」を“人生論”として改めて読みとくことにしました。

戦後、フランクルは「人生はどんな状況でも意味がある」と説き、生きがいを見つけられずに悩む人たちにメッセージを発し続けました。彼が残した言葉は、先が見えない不安の中に生きる今の私たちにとって、良き指針となるはずです。

収容所という絶望的な環境の中で希望を失わなかった人たちの姿から、人間の“生きる意味”とは何なのかを探ります。そして苦境に陥った時の“希望”の持ち方について考えていきます。

58 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第8書 『フランクル“夜と霧

2

生きる意味を知ること

人生はあなた方に期待している

まだ終えていない期待、待っている物

ミッションがある

意味と使命中心の人生に換える

1

時が私を待っている

繊細な性質の人間

神に祈りを捧げる(祈り)

歌を歌い心を癒やす(音楽)

笑いこそがエネルギーに

誰にも奪えない最後の自由

良い塩梅の希望

情熱を傾ける

創造価値

体験価値

面影価値

態度価値

真面

真っ当に苦しむことはそれだけで蒙精神的に何事かを成し遂げることだ

意味のある苦悩

意味のない苦悩

天の賜物

運命は贈物

むなしさと

向き合う

行為的直観

ストレス

が少ない

59 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第8書 『フランクル“夜と霧

過去というのは、全てのことを永遠に仕舞ってくれる金庫のようなものです

生抜かれた時間は、時間のある座標軸に永遠に刻まれ続ける

60 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第9書 『法華経』

1

古来、大乗仏典の中でも「諸経の王」と呼ばれ、広くアジア諸国で最も信奉されてきた経典の一つ「法華経」。日本でも、聖徳太子、最澄、道元、日蓮、宮沢賢治ら多くの人々に巨大な影響を与えてきました。「今昔物語」「源氏物語」「枕草子」などの文学にも法華経にまつわるエピソードが記され、日本文化の底流には脈々とその精神が流れ続けています。しかし、現代人には、意外にその内容は知られていません。「100分de名著」では、この法華経のサンスクリット版の原典を「思想書」ととらえて解読し、一宗教書にはとどまらない普遍的なテーマや、私たちにも通じるメッセージを引き出していきます。

「法華経」は西暦紀元1世紀末から3世紀始めに成立したと推定されています。当時のインドは、厳しい修行や哲学的な思索を出家者が中心になって行う「部派仏教」と呼ばれる教団が栄え、仏教が庶民の暮らしから遠い存在になっていました。そこに、広く民衆を救済しようという新たな潮流、大乗仏教が登場し、部派仏教との間で激しい対立が生じていました。この対立を乗り越え、これまでのさまざまな仏教をより大きな視点から統合しようとしたのが法華経だといいます。

法華経の舞台は、霊鷲山というインドの山。釈迦の説法を聞こうと八万人にも及ぶ聴衆が集まっていました。深い瞑想の中にいた釈迦はおもむろに目覚め、今までに誰も聞いたことがない奥深い教えを語り始めます。全てのいのちの絶対的な平等性、これまで成仏できないとされてきた出家修行者や女人、悪人にいたるまでの成仏の可能性、それぞれの人間の中に秘められた尊厳性、それを尊重する行為のすばらしさなどが、卓抜な比喩などを駆使して語られます。そして、クライマックスでは、これまで秘されていた釈迦の成仏の本当の意味が明かされるのです。

法華経には、忽然と虚空に出現する天文学的な大きさの宝塔、大地をわって湧き出してくる無数の菩薩たち等、神話的なシーンが数多く現れ、合理的な思考からすると一見荒唐無稽な物語とみなされがちです。しかし、当時の思想状況や社会状況に照らし合わせて読み解いていくと、当時の常識では到底受け容れられないような新しい考え方や価値観を、象徴的な出来事や巧みなたとえに託してなんとか表現しようとする作者たちの意図が明らかになっていきます。その一つひとつを解読すると、その中核には、「釈迦がもともと説こうとしていた仏教の原点にたちかえれ」という力強いメッセージがこめられていることがわかります。それは、さまざまな因習に縛られ見失われそうになっていた「人間自体を尊重する人間主義の思想」だと、仏教思想研究家の植木雅俊さんはいいます。

排外主義が横行し分断される社会、拡大し続ける格差……憎しみや対立の連鎖からなかなか抜け出せない現代、「法華経」を現代的な視点から読み解きながら、「差異を認め合い、共存・融和を目指していく知恵」「自己に眠る大きな可能性を開いていくには何が必要か」など、生きる指針を学んでいきます。

61 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第9書 『法華経』

1

古来、大乗仏典の中でも「諸経の王」と呼ばれ、広くアジア諸国で最も信奉されてきた経典の一つ「法華経」。日本でも、聖徳太子、最澄、道元、日蓮、宮沢賢治ら多くの人々に巨大な影響を与えてきました。「今昔物語」「源氏物語」「枕草子」などの文学にも法華経にまつわるエピソードが記され、日本文化の底流には脈々とその精神が流れ続けています。しかし、現代人には、意外にその内容は知られていません。「100分de名著」では、この法華経のサンスクリット版の原典を「思想書」ととらえて解読し、一宗教書にはとどまらない普遍的なテーマや、私たちにも通じるメッセージを引き出していきます。

「法華経」は西暦紀元1世紀末から3世紀始めに成立したと推定されています。当時のインドは、厳しい修行や哲学的な思索を出家者が中心になって行う「部派仏教」と呼ばれる教団が栄え、仏教が庶民の暮らしから遠い存在になっていました。そこに、広く民衆を救済しようという新たな潮流、大乗仏教が登場し、部派仏教との間で激しい対立が生じていました。この対立を乗り越え、これまでのさまざまな仏教をより大きな視点から統合しようとしたのが法華経だといいます。

法華経の舞台は、霊鷲山というインドの山。釈迦の説法を聞こうと八万人にも及ぶ聴衆が集まっていました。深い瞑想の中にいた釈迦はおもむろに目覚め、今までに誰も聞いたことがない奥深い教えを語り始めます。全てのいのちの絶対的な平等性、これまで成仏できないとされてきた出家修行者や女人、悪人にいたるまでの成仏の可能性、それぞれの人間の中に秘められた尊厳性、それを尊重する行為のすばらしさなどが、卓抜な比喩などを駆使して語られます。そして、クライマックスでは、これまで秘されていた釈迦の成仏の本当の意味が明かされるのです。

法華経には、忽然と虚空に出現する天文学的な大きさの宝塔、大地をわって湧き出してくる無数の菩薩たち等、神話的なシーンが数多く現れ、合理的な思考からすると一見荒唐無稽な物語とみなされがちです。しかし、当時の思想状況や社会状況に照らし合わせて読み解いていくと、当時の常識では到底受け容れられないような新しい考え方や価値観を、象徴的な出来事や巧みなたとえに託してなんとか表現しようとする作者たちの意図が明らかになっていきます。その一つひとつを解読すると、その中核には、「釈迦がもともと説こうとしていた仏教の原点にたちかえれ」という力強いメッセージがこめられていることがわかります。それは、さまざまな因習に縛られ見失われそうになっていた「人間自体を尊重する人間主義の思想」だと、仏教思想研究家の植木雅俊さんはいいます。

排外主義が横行し分断される社会、拡大し続ける格差……憎しみや対立の連鎖からなかなか抜け出せない現代、「法華経」を現代的な視点から読み解きながら、「差異を認め合い、共存・融和を目指していく知恵」「自己に眠る大きな可能性を開いていくには何が必要か」など、生きる指針を学んでいきます。

62 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第9書 『法華経』

2

3

4

1

贈物

仏教界の対立

権威主義的

全員参加の�プロローグ

一仏乗

方便本

しょうもん

変容した教え

63 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第9書 『法華経』

永遠の未完成これ完成

64 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第10書 宮沢賢治スペシャル

1

「銀河鉄道の夜」「春と修羅」などの作品で今も多くの人に愛される宮沢賢治(1896~1933)。数多くの愛読者をもつだけでなく、絵画、音楽、絵本、マンガ、映画、アニメーション、果てはプラネタリウムやゲームまで……幅広い分野のクリエイターや制作者たちの想像力を刺激し続け、「賢治ワールド」ともいうべき作品が誕生し続けています。その魅力は今なお汲み尽くされたとはいえません。そこで「100分de名著」では、「宮沢賢治スペシャル」と題して、代表作を絞るのも難しいほど多面的な作品群に4つのテーマから光を当て、宮沢賢治の奥深い世界に迫っていきます。

 何万年という時間をかけて生み出されてきた地層や石から地球の時間を感受した賢治。法華経を熱心に信仰し宗教的な生き方に身を捧げようとした賢治。遥か彼方からの届く星々の光に思いをはせ、宇宙を物語にした賢治。最愛の妹トシを失った痛切な体験を慟哭ともいえるような詩の言葉にした賢治。賢治の作品には、彼自身の人生そのものがつまっています。死の間際に自分の書いた原稿を「迷いの跡」とまでいった賢治は、生涯、命を削るように作品を創造し続けました。だからこそ、彼の作品には、人知を超えたスケール、思いもよらない圧倒的な表現、永遠に向かうまなざしが宿っているのです。

 賢治の作品が現代の私たちの心を揺さぶってやまないのはなぜでしょうか? 日本大学芸術学部教授の山下聖美さんは、彼の作品には「人間とは何なのかという問い」と「ほんとうの幸いへの探究心」が込められているからだといいます。わずか三十七歳で亡くなった賢治が残したテキストには、時代を経ても変わらない、むしろ時を経たほうが鮮明に浮かび上がる人間という不思議な存在の謎が描かれているからだというのです。

 番組では、宮沢賢治研究の新鋭、山下聖美さんを指南役に招き、「春と修羅」「注文の多い料理店」「雨ニモマケズ」「なめとこ山の熊」「銀河鉄道の夜」といった既存のジャンルにはおさまりきれない作品群に現代の視点から新しい光を当てなおし、多面的でスケールの大きな宮沢賢治の世界を味わいつくします。

65 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第10書 宮沢賢治スペシャル

66 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第10書 宮沢賢治スペシャル

永遠の未完成これ完成

67 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第11書 宮沢賢治“銀河鉄道の夜”

2

3

4

68 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第12書 柳田国男 遠野物語

69 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第13書 維摩経

1

聖徳太子によって日本で初めて解説された仏典の一つ「維摩経」。興福寺にある「維摩居士」の坐像は、今も多くの人たちに親しまれています。かの文豪・武者小路実篤も「維摩経を読んで偉大な知己に逢ったような気がした」と述べるなど、日本人に親しまれてきた経典です。しかし、現代人には、意外にその内容は知られていません。「100分de名著」では、この「維摩経」から一宗教書にはとどまらない普遍的なテーマを読み解き、私たちにも通じるメッセージを引き出していきます。

「維摩経」が成立したのは西暦紀元前後の頃。インドでは部派仏教と呼ばれる教団が栄え、出家者を中心にした厳しい修行や哲学的な思索が中心になっていた時代でした。仏教が庶民の暮らしから少し遠い存在になる中、リベラルな在家仏教者たちが一大仏教変革ムーブメントを巻き起こしました。自分自身の救いよりも、広く人々を救済しようという「大乗仏教」の運動です。「維摩経」はこうした流れの中で生まれた経典なのです。

主人公は釈迦でも仏弟子でもありません。毘耶離という都市に住む一市民、維摩居士です。この維摩がある時病気になりました。釈迦が弟子たちに見舞いに行くようにすすめますが、誰一人としてそれにこたえるものはいません。かつて維摩の鋭い舌鋒でことごとく論破された経験から、みんな腰がひけているのです。唯一人、見舞いに行くことを引き受けた文殊菩薩が維摩の元を訪れ、前代未聞の対論が始まります。その対論からは、「縁起」「空」「利他」といった大乗仏教ならではの概念が、単なる観念の遊戯ではなく、日々の暮らしの中の「実践」の問題として浮かびあがってきます。

「理想の生き方は、世俗社会で生きながらもそれに執着しないこと」「すべては関係性によって成立しており、実体はない」「だからこそ自らの修行の完成ばかりを目指さず、社会性や他者性を重視せよ」。維摩の主張には、既存仏教の枠組みさえ解体しかねない破壊力があります。それどころか、現代人の私たちがつい陥りがちな「役に立つ・役に立たない」「損・得」「敵・味方」「仕事・遊び」「公的・私的」のように、全てを二項対立で考えてしまう思考法をことごとく粉砕します。その結果、全てを引き受け苦悩の世の中を生き抜く覚悟へと私たちを導いてくれるのです。宗教学者の釈徹宗さんは、「維摩経」の最大の魅力は、「全編にわたって、いったん構築したものを解体し、また再構築する、そんなめくるめくドライブ感」だといいます。そして、その手順を踏めば、どんな時、どんな場所でも、生き抜いていける力をもらうことができるというのです。

排外主義が横行し分断されつつある社会、世界各地で頻発するテロ、拡大し続ける格差……なすすべもない苦悩に直面せざるを得ない現代、「維摩経」を現代的な視点から読み解きながら、「こだわりや執着を手放した真に自由な生き方」「矛盾を矛盾のまま引き受けるしなやかさ」「自分の都合に左右されない他者や社会との関わり方」などを学んでいきます。

70 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第14書 良寛 詩歌集

1

「良寛 詩歌集」

日本の僧侶の中で、お年寄りから子供まで誰もが知っている最も著名な人といえば、多くの人が良寛の名を挙げるでしょう。「子供たちと手まりをついて遊ぶ良寛」「粗末な草庵で自由気ままに暮らした良寛」といったイメージは誰しもの心の中に浮かび、「日本人の心のふるさと」と称える人もいます。しかし、いったい良寛がどのような思想を残したかとなると、ほとんど知られていないのが実情です。そこで「100分de名著」では、良寛が生前に遺した約500種の漢詩、約1400種の和歌の中から珠玉の名品を厳選し、そこから現代に通じるメッセージを読み解いていきます。

良寛は、越後出雲崎に町名主の長男として生まれ、後継ぎとして育てられました。しかし、見習いとして始めた仕事はことごとく失敗。大きな挫折を経験した良寛は家出し、やがて仏門に入ってしまいます。備中玉島の円通寺での厳しい修行を経て僧侶の資格も得ますが、寺の住職となることをよしとせず、七十四歳で生涯を終えるまで托鉢行脚の乞食僧として過ごしました。

いかなる組織にも所属せずホームレスにも似た質素な暮らしを続けた良寛でしたが、その人柄を慕い、悩み事を相談する人や心を通わせたいと訪ねる人は絶えませんでした。そんな人々に対して良寛は一切お説教をしないし仏教書を書くわけでもありません。良寛は、ただただ淡々となすべきことをなし徳の力を示しました。そして折にふれてその思いを託すように漢詩を作り和歌を詠むだけでした。

こんな良寛が多くの人々の心をとらえて離さなかったのはなぜなのでしょうか? 一見自由気ままに作られたようにみえる漢詩や和歌を深く読み解いていくと、その理由がわかってきます。「透徹した自己への洞察」「すがすがしいまでの清貧さ」「人や自然への温かいまなざし」「老いや死に向き合う強さ」等々……良寛の漢詩や和歌からは、全てをことごとく言葉で書き尽くすことで人生全体を修行の場にしていこうという生き方が伝わってくるのです。その生き方こそが人々の心を揺り動かしてやまなかったのです。

厳しい競争社会、経済至上主義の風潮の中で、気がつけば、身も心も何かに追われ、自分自身を見失いがちな現代。良寛の漢詩や和歌を通して、「命」や「自然」、「老い」「死」といった普遍的なテーマをもう一度見つめ直し、人生をより豊かに味わう方法を学んでいきます。

71 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第14書 良寛 詩歌集

2

3

4

1

72 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第15書 カミュ「ペスト」

1

カミュ「ペスト」再放送に寄せて 

〜「誠実さ」を武器に闘うこと〜

100分de名著・カミュ「ペスト」一挙アンコール放送をご覧いただきありがとうございました。SNS上では今までにない数のご意見や感想をいただきました。全て目を通させていただき参考にしています。

今回の再放送決定には特別な思いがありました。再放送に向けてのチェック作業のために番組を見直す中で、医師リウーとその友人タルーたちの姿に、今、日本全国、全世界で最前線で闘う医療従事者の姿が重なってみえたのです。専門家ではない私は、ただ祈り応援するしかありませんが、下級役人のグランのように一市民として彼らを支えたい、そう強く願っています。当面、私ができることは、「名著」の中に、厳しい状況に立ち向かうための智慧や勇気を見出し、お届けすることしかないと思っています。

この作品が何よりも凄いところは、今いるそれぞれの現場で、私たちが何を大事にして行動しなければならないのか、どんな声を上げていかなければならないのかを教えてくれることです。「ペストと闘う唯一の方法は誠実さだ」と主人公のリウーは語りました。「自分の職務を果たすことだ」とも。今の私たちが新型コロナ・ウィルスと闘うために必要なのは、何よりもこの「誠実さ」だと思います。「ペスト」を読み返す中で、私自身も、自らの甘さを痛感させられましたし、心を新たにさせられました。NHKオンデマンドで、現在も配信中です。今後も一人でも多くの人にみていただきたいと願っています。

73 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第15書 カミュ「ペスト」

2

3

4

1

74 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第15書 カミュ「ペスト」

つまり我々はこの病気がまるでまるでベストであるかのように 振る舞うよう責任を取らなければならない

斯くしてベストがわか市民に最初にもたらしたものは追放状態であった。

ベストという事実よりも言葉の影響力が問題となった。 ・・・ベストが起こると人生の問いに否応なく直面する。

があるでしょう』

しかし悪しき人々は震えおののく必要 心正し

い人は恐れることはありません

。Xにい人はされるのはありません。

75 of 178

なぜ「格差」や「階級」は生まれ、どのようなメカニズムで機能し続けているのか? この大きな疑問に回答をもたらそうとした名著があります。フランスの社会学者、ピエール・ブルデューの「ディスタンクシオン」。20世紀でもっとも重要な社会学の書10冊にも選ばれた名著です。階級や格差は単に経済的な要因だけから生まれるわけではありません。社会的存在である人間に常に働いている「卓越化(ディスタンクシオン)」によってもたらされる熾烈な闘争の中から必然的に生まれてくるといいます。番組では、この名著を読解することを通して、知られざる階級社会の原因を鋭く見通すとともに、「趣味」と「階級」の意外な関係を明らかにしていきます。

フランス南西部で郵便局員の息子として生まれたブルデューは、まさに階級社会の底辺に出自があるといえます。彼は、エリート校に進学した際、周囲に上流階級の子弟が圧倒的に多いことに愕然とします。格差社会の現実を目の当たりにしたのです。彼は自らが直面したこの現実を、いわば「学問の種」にして、フランスという国に深く根を張っている「階級現象」に鋭くメスを入れることを決意しました。その集大成が「ディスタンクシオン」です。

ブルデューは自らの理論によって、相続されるのは経済的な財産だけではないことを明らかにしました。私たちは、生み落とされたそのときから、家族の中で、身振りや言葉遣い、趣味、教養といった、体に刻み込まれていく文化能力をも相続していきます。そのように相続されたものを「文化資本」と呼びます。文化資本は、蓄積することで学歴や社会的地位、経済資本へと変換可能になり、大きな利益を生みます。文化資本の多寡は、自らが属する社会的階層によってあらかじめ決定づけられ、格差を生み出していく要因になっていきます。にもかかわらず「努力によって獲得されたもの」と誤認されることで巧妙に隠蔽されます。文化は、人々の行為を規定するものとして、社会の隅々まで力を及ぼしているのです。

番組では、ブルデューに大きな影響を受けたという社会学者・岸政彦さんを指南役に招き、難解とされる「ディスタンクシオン」を現代の視点から読解、「趣味」と「階級」がいかに密接につながっているかを明らかにするとともに、私たちが直面している「階級社会」のありようを暴いていきます。

76 of 178

2

3

4

1

77 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第17書 「万葉集」

2

3

4

1

78 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第17書 「万葉集」

儀式と権力

629

759

79 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第18書 「老子」

新年度から環境が変わり、5月病に悩む人もいるでしょう。そこで「100分de名著」5月シリーズでは、肩の力を抜き、自然体で生きる術を語った中国古典の名著「老子」を取りあげます。

「老子」は、老子という人物によって書かれた書物と伝えられていますが、この人物が実在したのかどうかを疑う説があるほど、その経歴は謎に包まれています。複数の思想家の言葉を集めたものとも言われています。

老子が生きていたと思われる春秋戦国時代は、鉄の生産が広まった時代でした。鉄は戦争を変え、農業を変えました。生産性が高まったことから、商業も発展しました。しかしその一方で、社会の急激な変化と果てしない生存競争に、疲れを感じる人も多かったと思います。

「老子」は、そうした疲れた人々にとって、癒やしとなる本でした。それは変化の荒波の中、とまどいながら生きている現代の日本人にも通じるところがあります。

「老子」は「自然の摂理に学べ」と説きました。自然には善意も悪意もなく、無理をしません。ただあるがままに変化するだけです。一方人間は、意志を通そうとつい無理をしてしまうことがあります。しかし無理は長続きしません。また疲れ果ててしまっては、良い人生を送ることが出来ません。老子は、道理にそぐわない無理を諫め、過剰な自己顕示欲をおさえることが必要だとしました。

番組では、「老子」を通して、現代人がとらわれがちな様々な強迫観念を覆すと共に、しなやかに生きる術を学んでいきます。

80 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第18書 「老子」

2

3

4

1

81 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第19書 アラン“幸福論”

どんな本かというと、たとえるならば、「寒い夜に湯気を立てている一杯の温かいスープのような書物」です。生きづらさを感じさせるこの世の中に、まさに一筋の光を当ててくれる本ではあるのですが、もちろん、「これを読めば幸せになれる!」などといったハウツー的な内容が書かれているわけではなく、れっきとした哲学に関する書物です。

ただ、邦題では『幸福論』と訳されてはいますが、フランス語の原題からすると、論文のような硬さの「幸福論」というよりも、「幸福小咄」「幸福のコラム」といった軽い読み物を意味していて、けっして難解な哲学書というわけでもありません。さまざまな生活の場面における幸福についての断章(フランス語で「プロポ」と言います)が一編につき便箋二枚程度、全部で九十三編に分けて書かれています。それぞれが独立した内容なので、最初から順に読んでもいいですし、興味のあるところから拾い読みしてもかまいません。そういう気軽な、でも「いつもポケットに」と思わせたくなるところが、この『幸福論』にはあるのです。

アランの『幸福論』は、いわゆる観念論ではなく、あくまで日常生活に立脚して幸福への指針を導き出した、文学的にも優れた名著として広く読まれてきました。プロポのなかには、古いものでいまから百年以上も前に書かれたものもありますが、現代のさまざまな困難に直面する私たちにも役立つ普遍的なヒントがたくさんちりばめられています。

ただ、アランの書き方の特徴でもあるのですが、ある意味で読みにくいなと感じさせる部分があります。それは、彼が何気ない日常的な表現を使っているようでありながら、その背後に、非常に広くて深い哲学の伝統を凝縮して埋め込んでいるからです。必ずしもそうした背景までを読み取る必要はありませんが、デカルトやスピノザなど、アランが強く影響を受けた哲学的思想を味わいながら読んでみると、また一味違った楽しみ方ができると思います。

82 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第19書 アラン“幸福論”

2

3

4

1

83 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

20 大岡昇平「野火

 大岡昇平の代表作「野火」は、太平洋戦争末期、絶望的な状況に置かれた一兵士が直面した戦争の現実と、孤独の中で揺れ動く心理を克明に描きだした作品です。戦後文学の最高傑作とも称される「野火」は、数多くの作家や研究者が今も言及し続け、二度にわたる映画化を果たすなど、現代の私たちにも「戦争とは何か」を問い続けています。世界各地で頻発するテロ、終わりのない地域紛争、緊迫する国際関係……現代という時代にも、「戦争」は暗い影を落とし続けています。作家の島田雅彦さんは、戦後70年以上を経て、実際に戦争を体験した世代が少なくなっている今こそ、この作品を通して、「戦争のリアル」を追体験しなければならないといいます。

 舞台は太平洋戦争末期のフィリピン・レイテ島。日本軍の劣勢が確実になる中、主人公・田村一等兵は肺病のために部隊を追われ、野戦病院からも食糧不足のために入院を拒否されます。米軍の砲撃によって陣地は崩壊し、田村は熱帯ジャングルの中をあてどなくさ迷い続けます。絶望的な状況の中で、かつて棄てた神へ信仰が再び芽生えはじめる田村。しかし、絶対的な孤独、発作的な殺人、人肉食への欲望、そして同胞を狩って生き延びようとする戦友たちという現実は、過酷な運命へと田村を追い込んでいくのです。

 この小説は単に戦場の過酷な状況を描いているだけではありません。絶望的な状況に置かれながらも、その状況を見極めようとする「醒めた目」で冷徹に描かれた状況からは、「エゴイズム」「自由」「殺人」「人肉食」といった実存的なテーマが浮かび上がってきます。また、極限に追い込まれた主人公の体験から、人間にとって「宗教とは何か」「倫理とは何か」「戦争とは何か」といった根源的な問いが照らし出されていきます。島田雅彦さんは、その意味でこの小説は、ダンテ「神曲」における「地獄めぐり」とも比すべき深みをもっているといいます。

 番組では、作家・島田雅彦さんを講師に迎え、「野火」を現代の視点から読み解きます。そして、終戦記念日を迎える8月、あらためて「人間にとって戦争とは何か」という普遍的な問題を深く考えていくきっかけとしたい。

84 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第20書 大岡昇平「野火」

2

3

4

1

85 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

21書 岡倉天心「茶の本

新渡戸稲造「武士道」とほぼ同じ時期に英語で出版され、日本文化の啓蒙書として世界中で読み継がれている岡倉天心著「茶の本」。初詣、おせち料理、書初め等…日本の文化を強く意識する新年、「100分de名著」では、「茶の文化」を通して日本や東洋文明の底流に流れている特異な世界観をわかりやすく紹介した「茶の本」を読み解き、日本とは、そして、日本人とは何かをあらためて見つめなおします。

「茶の本」といっても、茶道の指南書ではありません。近代欧米の物質主義的文化と対比して、東洋の伝統精神文化の奥義を解きつくそうという壮大な構想をもとに書かれた天心流の文明論です。明治時代、文部官僚として日本美術の再興に尽力した天心ですが、ボストン美術館で東洋美術収集の仕事をするようになってから、欧米社会にいかにして日本文化の奥深さを伝えるかを自らのミッションと考えるようになりました。その頃、日清・日露戦争を契機に日本人への関心が高まっていましたが、「武士道」等の影響で、日本人の「戦闘的精神」のみがクローズアップされることに天心は違和感をもっていました。そこで、それとは全く対極的な「平和的」「内省的」文化である「茶」にこそ日本の神髄があると主張しようとしたのです。

「茶の本」を読み解いていくと、建築、庭園、衣服、陶芸、絵画といった日本文化の隅々にいたるまで、「茶の思想」の深い影響が及んでいることがわかります。またごく日常的な営みに美や崇高さを感じ取る日本人ならではの感受性がいかにして育まれていったかを知ることができます。いわば、「茶の本」は、日本人のよい面、悪い面全てを映し出す「鏡」のような本ともいえるでしょう。

岡倉天心研究の第一人者、大久保喬樹教授(東京女子大学)は、「茶の本」を現代に読む意味は、「近代化の中で表面的には忘れ去ってしまっているが、無意識のうちに我々を規定している日本文化の基層に触れることができる」ことだといいます。大久保教授に岡倉天心「茶の本」を現代の視点から読み解いてもらい、「日本人」や「日本文化」の根底に流れる世界観を解き明かします。また第四回には、世界的な建築家・隈研吾さんをゲストに招き、「茶の本」に込められた思想をどのように建築設計に生かしているかをお聞きします。

86 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第21書 岡倉天心「茶の本」

2

3

4

1

87 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第22書 オルテガ「大衆の反逆」

インターネットやSNSの隆盛で常に他者の動向に細心の注意を払わずにはいられなくなっている私たち現代人。自主的に判断・行動する主体性を喪失し、根無し草のように浮遊し続ける無定形で匿名な集団のことを「大衆」と呼びます。そんな大衆の問題を、今から一世紀近く前に、鋭い洞察をもって描いた一冊の本があります。「大衆の反逆」。スペインの哲学者オルテガ・イ・ガセット(1883 - 1955)が著した、大衆社会論の嚆矢となる名著です。

社会のいたるところに充満しつつある大衆。彼らは「他人と同じことを苦痛に思うどころか快感に感じる」人々でした。急激な産業化や大量消費社会の波に洗われ、人々は自らのコミュニティや足場となる場所を見失ってしまいます。その結果、もっぱら自分の利害や好み、欲望だけをめぐって思考・行動をし始めます。自分の行動になんら責任を負わず、自らの欲望や権利のみを主張することを特徴とする「大衆」の誕生です。20世紀にはいり、圧倒的な多数を占め始めた彼らが、現代では社会の中心へと躍り出て支配権をふるうようになったとオルテガは分析し、このままでは私たちの文明の衰退は避けられないと警告します。

オルテガは、こうした大衆化に抗して、自らに課せられた制約を積極的に引き受け、その中で存分に能力を発揮することを旨とするリベラリズムを主唱します。そして、「多数派が少数派を認め、その声に注意深く耳を傾ける寛容性」や「人間の不完全性を熟知し、個人の理性を超えた伝統や良識を座標軸にすえる保守思想」を、大衆社会における民主主義の劣化を食い止める処方箋として提示します。

政治家学者の中島岳志さんによれば、オルテガのこうした主張が、現代の民主主義の問題点や限界を見事に照らし出しているといいます。果たして、私たちは、大衆社会の問題を克服できるのか?現代の視点から「大衆の反逆」を読み直し、歴史の英知に学ぶ方法やあるべき社会像を学んでいきます。

88 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第22 オルテガ「大衆の反逆」

2

3

4

1

89 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第23書 河合隼雄スペシャル

科学文明の進歩や経済的な繁栄を謳歌する一方で、「いじめ」「うつ病」「ひきこもり」等々のさまざまな心の問題が次々と噴出していた戦後日本。そんな中、人々の悩みに寄りそい、個人の物語に耳を澄まし続けた「こころの医師」がいました。河合隼雄(1928-2007)。日本を代表する臨床心理学者です。河合は、私たちが見過ごしてきた「心の問題」「人間の本質」を、単なる学術的な方法を超えて、瑞々しい言葉で縦横に論じてきました。彼の代表作「ユング心理学入門」「昔話と日本人の心」「神話と日本人の心」「ユング心理学と仏教」を読み解き、「心の本質とは何か?」「日本人の心のありようとは?」「人が再生していくには何が必要か?」といった問題をあらためて見つめなおします。

当初、河合は高校教師のかたわら大学院で心理学の勉強を続けていました。自分が本当に学びたい臨床心理学を学ぶためには海外に行かなければならないと考えて留学した河合は、やがてユング心理学と運命的な出会いをします。「心はなぜ病むのか」「心の根源とは何か」といった根本的な問題に対して、「普遍的無意識」「元型」「個性化」といったこれまでにない概念で新しい手がかりを与えるユング心理学に魅了された河合は、帰国後、その研究成果を駆使して、「心の問題」を抱える日本人たちに心理療法を施していきました。

その後、蓄積していった症例や夢分析などを通して日本ならではの独自の理論を構築していきます。河合がそうやって執筆した著作の数々は、結果的に独創的な「日本人論」「生き方論」ともなっており、専門家の領域を超えて、一般の多くの人たちが「自らの心の問題と向き合うための名著」として読み継がれているのです。

それだけではありません。河合隼雄は、培ってきた臨床経験を生かして「昔話」「童話」「神話」「仏教」などに研究領域を拡大。それらの分野でも画期的な業績を遺しました。それらは、西欧近代の自我意識とは全く異なる、日本人ならではの深層心理や文化の基層を鮮やかに解明してくれます。河合の著作は、価値観がゆらぐ現代にあって、私たちが、日本の文化の「あり方」や「独自性」を見つめなおすための大きなヒントを与えてくれるのです。

番組では河合俊雄さん(京都大学・こころの未来研究センター長)を指南役として招き、河合隼雄が追究し続けた独自の心理学やその応用研究を分り易く解説。彼の代表作に現代の視点から光を当てなおし、そこに込められた【生き方論】や【日本人論】【心を再生する知恵】など、現代の私達にも通じるメッセージを読み解いていきます。

90 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第23書 河合隼雄スペシャル

2

3

4

1

91 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第24書 カント“純粋理性批判”

近代哲学の骨格を築いたといわれる18世紀の哲学者イマヌエル・カント(1724 - 1804)。彼が確立した哲学は「ドイツ観念論」「批判哲学」と呼ばれ、今も多くの人々に影響を与え続けています。そんなカントが、人間がもつ理性の限界を確定し、「人間は何を知りうるか」を解き明かしたのが「純粋理性批判」です。哲学史上、最も難解な名著の一つといわれるこの著作をわかりやすく読み解き、現代に通じるメッセージを掘り起こします。

「純粋理性批判」が書かれた18世紀のヨーロッパでは、近代科学の最初の波が勃興。科学を使えば世界の全てを説明することが可能だとする啓蒙の時代を迎えていました。そんな中で、西欧人たちは二つの大きな難問に突き当たりました。それは「科学は本当に客観的な根拠をもっているのか」と「科学で世界の全てが説明できるとすると、人間の価値や自由、道徳などの居場所はあるのか」の二つです。その難問を考え抜いたカントは、理性の能力を精密に分析。「人間が知りうるものの範囲をどう確定するか」や「人間が知りえないものについてどんな態度をもつべきか」といった根本的な問題を明らかにすることで、難問に回答を与えようとしたのが「純粋理性批判」なのです。そこには、「認識が対象に従うのではなく対象が認識に従う」「理性は自らの力を過信して誤謬に陥る」といった、従来の哲学の常識を覆す革命的な視点が盛り込まれています。その強靭な思索は「人間が考えることの意味」をあらためて深く見つめなおすヒントを与えてくれます。

哲学研究者、西研さんは、AIやIT技術の発展で新たな形の「科学万能主義」が席捲し始めている現代にこそ「純粋理性批判」を読み直す価値があるといいます。カントの哲学には、「人間は何を知りうるのか」「人間にとって自由や価値とは何なのか」等、現代人が直面せざるを得ない問題を考える上で、重要なヒントが数多くちりばめられているというのです。

番組では、西研さんを指南役として招き、哲学史上屈指の名著といわれる「純粋理性批判」を分り易く解説。カントの哲学を現代につなげて解釈するとともに、そこにこめられた【知識論】や【人間論】、【道徳論】などを学んでいきます。

92 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第24書 カント“純粋理性批判”

2

3

4

1

93 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第25書 スピノザ「エチカ」

「知性改善論」「神学政治論」といった哲学史に残る名著を著し、近世哲学の一つの潮流を生み出した17世紀の哲学者、ベネディクトゥス・デ・スピノザ(1632 - 1677)。とりわけ彼の哲学は、現代思想にも巨大な影響を与え続け、人間の行為や感情、知性、ひいては社会のあり方にも深い洞察をもたらすものとして今も多くの人々の注目を集め続けています。そんなスピノザが最晩年、自らの哲学的な営為の集大成として、世に問おうとしたのが「エチカ」です。

現代でこそ哲学史上の名著とされる「エチカ」ですが、出版当初は無神論者による冒涜の書として黙殺されました。その理由は、常識を覆すあまりにも革新的なスピノザの思考法にありました。この世界のすべてのものは神のあらわれであり、神は世界に偏在しており、神と自然は一体であるという「汎神論」。それをベースとして、「自由意志の否定」「人間の本質を力だと考える人間観」「活動能力による善悪の再定義」など、常識とは全く異なる考え方が導かれていきます。

私たちが漠然と前提しているものの見方がことごとく覆されますが、そこには不思議にも私たちが日常の中で見過ごしている物事の本質が浮かび上がってきます。とりわけ「意志」や「自由」に関するスピノザの洞察は、精神医療やケアの現場にも新たな知見を与えてくれることもあるといいます。幾何学の方法を徹底的に適用し一見冷めた非人間的な記述とも思えるスピノザの哲学は、深く読解していくと、「人間の幸福」「人生を正しい方向に導く方法」「真の善の発見」といったテーマが貫かれていることがわかっていきます。

哲学研究者、國分功一郎さんは、新自由主義が世界を席巻する中、人間の行為があらゆる領域でマニュアル化され、思考の自由が奪われつつある現代にこそ「エチカ」を読み直す価値があるといいます。スピノザの哲学には、現代では失われつつある思考の本来のあり方や自由の根源的な意味を考えるための重要なヒントが数多くちりばめられているというのです。

番組では、20年来スピノザを研究し続けている國分功一郎さんを指南役として招き、哲学史上屈指の難解さをもつという哲学書「エチカ」を分り易く解説。スピノザの哲学を現代社会につなげて解釈するとともに、「意志とは何か」「自由とは何か」「人間はどうやって真理を知りうるのか」といった根源的な問題を考えていきます。

94 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第25書 スピノザ「エチカ」

2

3

4

1

95 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第26書 ダーウィン「種の起源」

「自然淘汰により生物は進化する」という画期的な理論を、粘り強い観察と精緻な論理の積み重ねで築き上げた「種の起源」。著者チャールズ・ダーウィンは、この著作で既存の生命観を一変させました。自然観察や博物館見学などの機会が多くなる夏休み、科学や発見の面白さに満ち、自然を巨視的にみることを教えてくれる名著「種の起源」を取り上げます。

19世紀を代表する博物学者ダーウィンは、軍艦ビーグル号での世界一周航海の途上、各地で珍しい生物相をつぶさに観察する機会を得ました。帰国後、集めた標本を研究する中で「神が万物を創造した」という当時の世界観ではどうしても説明できない事実につきあたります。「生物が長い時間をかけて徐々に進化してきた」という前提に立てば、さまざまな現象がうまく説明できると考えたダーウィンは、20年かけてこつこつと秘密のノートに自分の考えをまとめ続けました。その集大成が「種の起源」です。

「種の起源」は現代生物学の基礎理論の一つともいえる「進化論」を打ち立てただけではありません。ダーウィンが「種の起源」で打ち出した生命観から自然をみると、全ての生物は「生命の樹」といわれる一つの巨大な連鎖でつながっており、人間もその一部にすぎません。そこからは、人間には他の生物を意のままに操る権利などはなく、互いに尊重し共存していかなければならない、というダーウィンのメッセージがみえてきます。

番組では、ダーウィンが「種の起源」によって解き明かした自然のあり方を解説しながら、【生き物たちの驚異】【生命の素晴らしさ】【科学的な発見の面白さ】などを考えていきます。

96 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第26書 ダーウィン「種の起源」

2

3

4

1

97 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第27書 パスカル「パンセ」

原発事故やユーロ危機など、今ほど人間の理性の限界が明らかになった時代はありません。そこで「100分 de 名著」6月シリーズでは、理性の落とし穴を鋭く指摘し、物事を謙虚に受けとめることの大切さを記した名著、パスカルの「パンセ」を取りあげます。

「パンセ」は、フランス語で「思想」を意味します。「人間は考える葦である」「クレオパトラの鼻が低かったら世界は変わっていただろう」など、様々な名言が散りばめられています。

著者のブレーズ・パスカル(1623-1662)は、思想家であると同時に科学者でした。計算機の発明や大気圧の研究で知られ、気圧の単位・ヘクトパスカルにその名を残しています。「パンセ」は科学者の視点で、人間の心の特徴を分析した書と言えます。

パスカルが生きた時代のヨーロッパでは、科学が著しく進歩し、キリスト教に基づく世界観に疑問の声があがり始めていました。そして人間の理性が、世界の真実を明らかにするという思想が急速に広まっていました。

しかし世の中を冷静に見つめていたパスカルは、理性こそ万能だという考えには、危うさがあると確信するようになります。「人間はおごってはならない」と考えたパスカルは、人間の弱さを明らかにするため、日々考えたことをメモに書きとめました。それをまとめたのが「パンセ」です。そこには震災を経て、現代文明のもろさがあらわになった今こそ、改めてかみしめたい言葉があふれています。

なぜ人間は同じ過ちを繰り返すのか—「パンセ」は、まるで科学の法則のように、合理的で冷徹な視点にたって、人間の心の特徴を明らかにしています。番組では、パンセを読みときながら、私たち人間の限界と可能性について考えます。

98 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第27書 パスカル「パンセ」

2

3

4

1

99 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第28書 ファノン「黒い皮膚・白い仮面」

2020年5月25日、アメリカで黒人男性のジョージ・フロイドさんが白人警官に殺害された事件は世界を震撼させました。この事件をきっかけに、黒人の命の尊重と人種差別の是正を訴える「ブラック・ライブズ・マター」運動が世界中に広がっています。そんな中、一冊の本が静かに読み直され始めています。「黒い皮膚・白い仮面」。書いたのは、黒人差別の構造を精神医学・心理学の立場から追求した精神科医で、後にアルジェリア独立運動に尽力した思想家、フランツ・ファノン(1925-1961)です。自らも仏領植民地出身者として、いわれない差別を受け続けた黒人です。人種差別の問題に真っ向から取り組んだ彼の著作を通して、「差別とは何か」「差別はどうして生じるのか」「どうやったら差別を乗り越えることができるのか」といった普遍的な問題を深く考えたいと思います。

ファノンは仏領マルティニーク島で生まれた、アフリカからこの地に連れて来られた奴隷を祖とする黒人。若き日は、叶う限り白人のフランス人に同化しようとした過去をもちます。しかし、どれだけ努力しようとも差別はやみません。フランス本国で圧倒的な疎外感にさいなまれた彼は、やがて精神科医となり、なぜこのような差別が生まれるのかという問題を精神医学・心理学を武器に使って解明しようとします。その集大成が「黒い皮膚・白い仮面」なのです。

古今の文学や思想を渉猟しながら、ファノンは、差別が単に差別する側の心理機制だけでなく、その差別の構造を内面化し自発的隷従に陥ってしまう黒人の側の心理機制をも明らかにしていきます。その背景にある社会構造にもメスを入れます。その上で、どうやったらその差別の構造を乗り越えることができるのかを指し示そうとするのです。

この書は、単に人種差別を告発するだけにとどまりません。この問題が、すべての「人間」につながる普遍性を帯びていることを明らかにしていきます。虐げられた黒人たちを目にして私たちが動揺するのは、彼が人種差別の犠牲者であると同時に、虐げられ辱められているのが「人間」そのものだからです。ファノンの思想は、人種や言語の壁を超えた普遍的な痛みを共有することを私たちに求めているのです。

番組では、作家の小野正嗣さんを講師に招き、新しい視点から「黒い皮膚・白い仮面」を解説。そこに込められた「人種差別の問題」「差別を生み出す社会構造」「人間を疎外から解放するには何が必要か」など、現代に通じる普遍的な問題をテーマを読み解いていきます。

100 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第28書 ファノン「黒い皮膚・白い仮面」

2

3

4

1

101 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第28書 ファノン「黒い皮膚・白い仮面」

アフリカ革命に向けて仮病・偏見・心的病

102 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第29書 フランツ・カフカ「変身」

5月シリーズは、カフカの「変身」を取りあげます。年老いた両親と妹を養っているセールスマンの主人公・グレーゴル=ザムザが、ある朝、虫に変身してしまうという風変わりな物語です。グレーゴルは仕事に遅れまいと必死に自分の部屋から出ようとしますが、虫になったのは初体験なので、体をうまく動かすことが出来ません。やっとのことで部屋から出ることに成功、その姿を見た人たちの反応は・・。

小説では、虫は次第に家族の厄介者になり、最後にはひからびて死んでしまいます。長い小説ではないので、すぐに読めてしまいますが、心にひっかかるものがあります。いったいこれは何の寓話なのだろうかと・・。

現実に人間が虫に変身することはありません。しかしある日突然、虫のように扱われることはあります。差別を受ける時、あるいは病気になった時などです。実は「変身」は、疎外された人間の孤独と、疎外する側の冷酷さを、恐ろしいほど的確に描いた物語なのです。

これまで「100分 de 名著」では、ブッダの「心理のことば」やアランの「幸福論」など、人間の生き方について様々な角度から取りあげてきました。しかし私自身、番組を作りながら、どこかひっかかるところがありました。それはブッダもアランも「強い人」であることです。名著を通して心の整理をして、精神的に強くなる人もいるでしょう。しかし全ての人間が、ブッダやアランのように強くなれるわけではありません。

「変身」の作者であるカフカは、これまで紹介してきた名著の作者たちとはかなり違います。カフカは繊細すぎるほど繊細で、責任感が高い人でした。そして常に悩み、決断がなかなか出来ませんでした。そこで今回は、カフカの人生をひもときながら、「変身」を読み解きます。そして「変身」を「私たちの弱い心を映し出す鏡」としてとらえ、主人公の苦悩を描きます。

 不安と孤独を抱える人が多い今、疎外とは何かを教えてくれるカフカ。番組では、人の弱さを知るとともに、人と人とのつながりの大切さを改めて考えます。

103 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第29書 フランツ・カフカ「変身」

2

3

4

1

104 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

30書 ボーヴォワール「老い」

「人生100年時代」が到来し、100歳まで生きる人生に備えよ、といわれている現代。平均寿命は、10年前と比べるとおよそ3年延びました。65歳以上は人口の3割で、4人にひとりは高齢者という社会を私たちは生きています。これは、人類が初めて遭遇する事態といえます。このテーマにいち早く手をつけ、多角的に「老い」の姿をとらえたのが、哲学者・作家のシモーヌ・ド・ボーヴォワール(1908-1986)です。彼女が62歳の時に書いたのが「老い」。フェミニズムの代表作「第二の性」と並ぶ名著として知られている本です。

「第二の性」では、女は女であるが故に人間性を疎外された存在であると論じましたが、「老い」のなかでも老人が老い故に人間性から疎外された存在だと説きます。女も老人も社会から「疎外された存在」なのです。自身が女であることから「第二の性」を書き、老いの始まりに立って「老い」を描く…当事者として書かずにはいられなかった切実な書物なのです。

ボーヴォワールは、「老齢は我々を不意にとらえる」と書きます。老いとは他者から指摘されて知る、認めがたいものなのです。この「老い」から目をそらさずに、外部(生物学的、歴史的、社会的見地)からと、内部(老いの発見と受容)からの両面で、徹底的に「老い」を論じていきます。その筆は見過ごされがちな老人の性にも及び、老人=情欲から解放された清らかな存在という、ステレオタイプの老人像を容赦なく打ち砕きます。

「老い」が書かれてから半世紀。高度資本主義社会が到来し老人は増え続けていますが、相変わらず、生産性の低い者たちとして蔑視され続けています。そんな中で、ボーヴォワールはどのようなヒントを私たちに与えてくれるのか? 番組では、自らも「老い」の問題を思索し続ける、社会学者の上野千鶴子さん(東京大学名誉教授)を指南役に迎え、「人間にとって老いとは何か」「老いを疎外しない社会はどうしたら作れるのか」といった普遍的なテーマを考えていきます。

105 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第30書 ボーヴォワール「老い」

2

3

4

1

106 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第31書 アインシュタイン“相対性理論”

107 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

特別の アインシュタイン『消えた“天才脳”を追え

108 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第31書 アインシュタイン“相対性理論”

2

3

4

1

109 of 178

「人間にとって知的好奇心とは何か?」「人類にとって進化とは何か?」「科学技術だけでユートピアを作れるのか?」「科学と自然は共存できるのか?」……人間にとって根源的な問題をSFという手法による思考実験を通して、大胆に問い続けてきた作家・アーサー・C・クラーク(1917-2008)。「100分de名著」では、卓越した未来論、文明論としても読み解けるクラーク作品を通して、「未来社会のあり方」「科学技術のあり方」といった普遍的な問題をあらためて見つめなおします。

科学者でもあったクラークは、来るべき人類社会の未来図ともいうべきものを膨大なデータや科学的知識をもとに精緻に予測してきました。まだ人工衛星がこの世に存在していなかった1945年、衛星通信の可能性を論文で発表し、全世界にテレビ中継ができるというヴィジョンを示しました。彼は、こうした知識を総動員して物語を紡ぎあげます。そこで示される未来図は、現代社会を逆方向から照らし出し、私たちが未来に向かって何を備えなければならないかを教えてくれます。クラーク作品は「人類が目指す未来はどうあるべきか」を考えるための大きなヒントを私達に与えてくれるのです。

 クラークは、人類の未来を予見するだけにとどまりません。当時は、時あたかも、科学の急速な発展が社会問題や環境問題などに暗い影を落とし始めていた時期。「人間以上の判断力をもったAIなどが誕生した時、人類はそれとどう向き合うべきか」「人間の生命をもコントロールし始めた科学は果たしてユートピアをもたらすのか」といった人類が直面し始めた問題を先取りし、思考実験によって浮かび上がらせることで、問い直そうとしたのです。

番組では瀬名秀明さん(作家)を指南役として招き、クラークが追い求めた世界観・科学観を分り易く解説。「太陽系最後の日」「幼年期の終わり」「都市と星」「楽園の泉」等の作品に現代の視点から光を当てなおし、そこにこめられた【科学論】や【未来論】【文明論】など、現代の私達にも通じるメッセージを読み解いていきます。

110 of 178

2

3

4

1

111 of 178

永遠の未完成これ完成

112 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第33書 モンゴメリ「赤毛のアン」

36カ国で翻訳され、全世界で5000万部以上出版されているという驚異的な本がある。「赤毛のアン」。もともと無名の作家だったルーシー・モード・モンゴメリ(1874 – 1942)が1908年に発表して以来、多くの人たちが今なお愛してやまない永遠のロングセラーだ。「人間にとって想像力がいかに大切か?」「異なる個性を認め合うには何が必要か?」「自分の人生を愛する方法とは?」といったさまざまなテーマを、克明な人物描写、心理描写を通して見事に描き出したこの作品から、現代人にも通じる生きるヒントを読み解いていく。

舞台はカナダのプリンス・エドワード島。グリン・ゲイブルスに暮らす初老の兄妹マシュウとマリラは、農場を手伝ってもらおうと孤児院から男の子を迎えようとする。しかし、やってきたのは十一歳の赤毛の女の子アン・シャーリー。当てがはずれたマシュウだが、想像力の翼を広げ周囲に明るさをふりまくアンにたちまち魅了される。アンを預かることに強く反対していたマリラもやがてアンの魅力に心をほどいていった。アンの登場で島の人々の生活は一変。彼女の想像力と天性の明るさによって人々は次第に感化され、忘れかけていた若々しい気持ちや暮らしを取り戻す。そして、アン自身もさまざまな出会いの中で大きく成長していくのだ。

小学校5年生の頃から「赤毛のアン」を愛読してきた脳科学者の茂木健一郎さんは、この作品が巷間いわれているような単なる「児童文学」などではなく、人生の本質を見事にとらえた洞察を読み取ることができる、大人にこそ読んでほしい作品だという。生きていく上で「真摯な自分」をいかにして貫くのか、偶然の出会いをどう活かすのか、今までの世界観を変えるような出来事をどう受け入れ自分を変えていくのか、個性をどのように育み尊重していけばよいのか……といった人間誰しもがぶつかる問題を、あらためて深く考えさせてくれる作品が「赤毛のアン」なのである。

茂木さんにモンゴメリの最高傑作「赤毛のアン」を新しい視点から読み解いてもらい、「欠点だらけの自分の人生を愛するためには何が必要か」「人はどうしたら幸福になれるか」といった普遍的な問題を考えていく。

113 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第33書 「赤毛のアン」モンゴメリ

2

3

4

1

114 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第34書 「アラビアンナイト」

115 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第34書 「アラビアンナイト」

2

3

4

1

116 of 178

1974年に日本でアニメーション化され、今なお圧倒的な人気を誇る「アルプスの少女ハイジ」。スイスの作家、ヨハンナ・シュピリ(1827 – 1901)が1880年に執筆した児童文学の傑作ですが、日本ではアニメ作品があまりにも有名であるが故に、原作に触れる機会が著しく少ないといわれています。ところが、原作には、かつて傭兵として殺人も犯したことがあるおじいさんの心の闇、成長したハイジが発する宗教的ともいえる奥深い思想、クララの医師クラッセンの深い喪失体験と再生など、アニメ作品では割愛された、優れて文学的な要素がたくさん盛り込まれています。そこで、「100分de名著」では、瑞々しい人物描写、生き生きとした心理描写を通して「人間の生き方」や「心のあり方」を見事に描き出したこの作品から、大人をもうならせる奥深いテーマを読み解いていきます。

 孤児となり叔母デーテに育てられたハイジは、やっかいばらいのようにしてアルムの山小屋にひきこもるおじいさんの元へあずけられます。暗い過去をもち人間嫌いとなり果てていたおじいさんは、当初こそ心を閉ざしていましたが、天真爛漫に明るさをふりまくハイジに魅了され心をほどいていきます。しかし蜜月は長くは続きませんでした。デーテの身勝手によってハイジはフランクフルトに連れ去られ、おじいさんから引き離されてしまいます。足の不自由な良家の少女クララ・ゼーゼマンの話し相手を申しつかるハイジは、彼女と友情を育んでいきますが、執事ロッテンマイヤーの厳しい躾やアルムの大自然とはかけ離れた過酷な都市の環境は、やがてハイジを心の病へと追い込んでいきます。果たしてハイジの運命は?

近年「アルプスの少女ハイジ」の新訳に取り組んできたドイツ文学者の松永美穂さんは、この作品が巷間いわれているような単なる「児童文学」ではなく、深い思想的な背景をもった、人生への洞察を読み取ることができる、大人にも読んでほしい作品だといいます。人は「心の闇」とどう向き合っていけばよいのか、人間にとって本当の豊かさとは何か、真の家族のあり方とはどんなものなのか……といった人間誰しもがぶつかる問題を、あらためて深く考えさせてくれるのがこの作品なのです。松永さんにシュピリの名著「アルプスの少女ハイジ」を新しい視点から読み解いてもらい、「文明と自然は和解することができるのか」「人はどうしたら幸福になれるか」といった普遍的な問題を考えていきます。

117 of 178

2

3

4

1

118 of 178

今回取り上げるのは、ナチスドイツ占領下のアムステルダムで、ユダヤ人狩りを逃れ隠れ家で暮らした日々を記録した「アンネの日記」です。著者はユダヤ人の少女、アンネ・フランク。ホロコーストの悲劇を象徴する一冊として名高く、聖書に次ぐベストセラーともいわれています。皆さんも、子供の頃、一度は手にとった人も多いかもしれませんね。

アンネが使った日記帳は、13歳の誕生日プレゼントでした。最初は、学校での先生や友人との出来事、厳しさを増すユダヤ人差別の状況などが書かれています。しかしすぐにユダヤ人狩りの手が迫り、2年間にわたる潜伏生活が記されることになります。

日記は戦後、唯一生きのこったアンネ・フランクの父オットーによって出版されました。その時オットーは、家族や同居していた人々への批判や、「性」についての記述を大幅に削りました。1991年、この削除されていた部分を復活させた「完全版」がまとめられました。「完全版」では、「性」と向き合い大人へと成長していくアンネの姿が赤裸々に表現されています。

案内役となるのは、作家の小川洋子さんです。小川さんは、アンネの関係者を訪ねた本も執筆していて、熱烈な「アンネの日記」ファンとして知られています。小川さんが最初に「アンネの日記」と出会ったのは中学1年の時でした。その時は難しくて意味がよく分からなかったそうですが、高校生になって読んだ時に、親への反抗心や、異性への憧れ、将来への希望や不安などが、手に取るようにわかったといいます。小川さんは、アンネの精神年齢の高さに驚くとともに、言葉とはこれほどまでに人の内面を表現できるものなのかと思い、作家になることを決意しました。また大人になって読んだ時には、親としての立場からアンネを見るようになり、その時も新たな発見があったと語っています。

番組では、小川さん独自の視点を通してアンネの日記を読んでいきます。また小川さんが会った関係者の証言も交え、潜伏生活がどんなものだったかにも迫ります。

「悲劇の少女」、「戦争中の貴重な証言」という視点からだけでなく、思春期の少女が、「日常のかけがえのない瞬間」を生き生きと描いた、稀有な文学作品としても味わっていきたいと思います。

119 of 178

2

3

4

1

120 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第37書 「生きがいについて」神谷美恵子

「いったい私たちの毎日の生活を生きるかいあるように感じさせているものは何であろうか。ひとたび生きがいをうしなったら、どんなふうにしてまた新しい生きがいを見いだすのだろうか」

 そんな問いを発し、人間にとって「生きがいとは何か」を真摯に追求した一冊の名著があります。神谷美恵子「生きがいについて」(1966)。それまであまり注目されることのなかった「生きがい」という言葉に光をあて、時ならぬ「生きがい論ブーム」を巻き起こした書です。

 著者の神谷美恵子(1914-1979)が「生きがい」という問題に直面したのは、四十三歳のとき。精神科医として働いた、岡山県のハンセン病療養施設「長島愛生園」でのことでした。なぜ世の中には、絶望的な状況にあってなお希望を失わずに生きぬいている人たちがいるのか。ハンセン病患者たちに寄り添いながら、神谷が見つけたのは、「苦しみや悲しみの底にあってなお朽ちない希望や尊厳」でした。視力を完全に失いながらも窓外の風物に耳を澄ませ俳句を創り続けるひとたち、失った指の代わりに唇や舌に点字を当てて、血をにじませながら読み続けるひとたち……ハンセン病患者たちの姿に照らし出されるように、神谷は、「生きがい」の深い意味をつかみとっていったのです。

しかしこの書は、単に極限状況にある人々の「生きがい」を描いたわけではありません。神谷は、日常を平凡に生きている私たちが「生きがいをいかにおろそかにしているか」「生きがいを奪い去られるような状況に直面したときいかにもろいものか」を問いかけます。ひとが生きていくことへの深いいとおしみと、たゆみない思索に支えられた神谷のまなざしは、私たちが日々暮らしていく中で、「生きがい」がいかにかけがえのないものなのかをも明らかにしてくれるのです。

 番組では、批評家・若松英輔さんを講師に招き、新しい視点から「生きがいについて」を解説。「生きがいの深い意味」「困難な状況にどう向き合うか」「人間の尊厳」「人間を根底で支えるものとは?」など現代に通じるテーマを読み解くとともに、「生きがい」を奪われるような状況に見舞われたとき、人はどう再生していくことができるかを学んでいきます。

121 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第37書 「生きがいについて」神谷美恵子

2

3

4

1

122 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第38書 「伊勢物語」

王朝の雅とロマンを伝える歌物語として知られる「伊勢物語」。男と女の愛やすれ違い、旅先での鮮烈な風景、親子愛・主従愛・友情といったさまざまな愛の形……125の章段に華麗な物語と歌が綴られています。この作品は、一歩深く読み解いていくと、古典という枠組みを超えて、恋愛の奥深さや物事を深く味わう力、コミュニケーションの機微を教えてくれる、絶好の教科書になります。そこで番組では、「伊勢物語」に新たな視点から光を当て、現代人にも通じる、豊かな人間関係の知恵を学んでいきます。

「伊勢物語」の多くの章段に共通する主人公と目されるのは在原業平(825-880)。平安初期を代表する歌人です。平城天皇の直系であり世が世ならば天皇にもなれたかもしれない業平ですが、さまざまな因果から臣籍降下。貴種でありながら権力の階段からこぼれ落ちた彼は、そのエネルギーの全てを女性への愛と歌に注ぎ込みました。「伊勢物語」は、いわば業平のラブストーリー集とも読めますが、その核には業平の人間的な魅力が満ち溢れています。

それぞれの女性の心に見事に寄り添っていく華麗なふるまい、男と女の情をつなぎ縒り合わせていく絶妙な和歌、女性だけではなく男性をも惚れ込ませる律義さ。「伊勢物語」からは、業平の「人間力」といったものが浮かび上がってきます。そこから現代人が学びとれることがたくさんあります。ただ、それだけではありません。業平と彼が強い影響を与えた藤原高子らの働きによって、当時の教養の中で支配的だった「漢詩の世界」から、その後の日本的な情緒のベースを形作った「和歌の世界」へと時代が動いていったさまも、物語から読み取ることができます。この作品を読み解いていくと、日本人の感受性のベースになってきた文化的DNAを深く理解することもできるのです。

番組では、「伊勢物語」の世界を小説化したことで知られる作家・高樹のぶ子さんを講師に招き、これまであまり知られることのなかった、新たな「伊勢物語」の魅力を浮かび上がらせます。

123 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第38書 「伊勢物語」

2

3

4

1

124 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第39書 「永遠平和のために」カント

「純粋理性批判」「実践理性批判」「判断力批判」という哲学史に残る名著を著し、近代哲学の骨格を築いた18世紀の哲学者イマヌエル・カント(1724 - 1804)。彼が確立した哲学は「ドイツ観念論」と呼ばれ、今も多くの人々に影響を与え続けています。そんなカントが最晩年、戦争が絶えないヨーロッパ情勢を憂い、「世界の恒久平和はいかにしてもたらされるべきか」を世に問うたのが「永遠平和のために」です。終戦記念日を迎える8月、この本をあらためて読み解きたいと思います。

「永遠平和のために」が書かれた18世紀のヨーロッパでは、国家間の紛争が頻発。民衆たちが戦争を忌避し平和を希求する一方で、国家間のエゴが対立しあい、一部権力者たちによる軍備拡張や戦費の増大がとめどなく進んでいました。巨大な歴史の流れの中では、戦争を回避し、恒久平和を実現することは不可能なのかという絶望感も漂っていました。そんな中、「国家」の在り方や「政治と道徳」の在り方に新たな光をあて、人々がさらされている戦争の脅威に立ち向かったのがカントの「永遠平和のために」です。そこには、「常備軍の廃止」「諸国家の民主化」「平和のための連合創設」など、恒久平和を実現するためのシステム構築やアイデアが数多く盛り込まれており、単なる理想論を超えたカントの深い洞察がうかがわれます。それは、時代を超えた卓見であり、後に「国際連盟」や「国際連合」の理念を策定する際にも、大いに参考にされたといわれています。

哲学研究者、萱野稔人さんは、民族間、宗教観の対立が激化し、テロや紛争が絶えない現代にこそ「永遠平和のために」を読み直す価値があるといいます。カントの平和論には、「戦争と経済の関係」「難民問題との向き合い方」「人間の本性に根ざした法や制度のあり方」等、現代人が直面せざるを得ない問題を考える上で、重要なヒントが数多くちりばめられているというのです。

番組では、政治哲学や社会理論を研究する萱野稔人さんを指南役として招き、哲学史上屈指の平和論といわれる「永遠平和のために」を分り易く解説。カントの平和論を現代社会につなげて解釈するとともに、そこにこめられた【人間論】や【国家論】、【政治論】などを学んでいきます。

125 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第39書 「永遠平和のために」カント

2

3

4

1

126 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

40書 「エミール」ルソー

「人間不平等起源論」「社会契約論」等の著作でフランス革命を思想的に準備したといわれる、18世紀の哲学者ジャン=ジャック・ルソー(1712~1778)。彼は「近代教育思想の祖」とも呼ばれ、著書「エミール」は、「近代教育学のバイブル」として今も多くの人に読み継がれています。しかし、この「エミール」は単に「教育学」の書ではありません。ルソーはこの書物に自らの哲学・宗教・教育・道徳・社会観の一切を盛りこみました。100分de名著では、「エミール」を、現代の視点から、ルソーの思想を凝縮した「人間論」として読み解いていきます。

「エミール」は、一人の子どもをルソー自身があずかって教育するという形で、赤ん坊から青年期に至るまでの教育方法を論じた「教育小説」という体裁をとっています。「万物をつくる者の手をはなれるときすべてはよいものであるが、人間の手にうつるとすべてが悪くなる」という有名な言葉が示すように、徹底した自然の賞揚、人為への批判がその思想のベースを貫いています。しかし、決して教育を自然まかせにしようというのではありません。人間の成長や発達をもたらす力として「自然」「人間」「事物」の三つの力を挙げ、それらを相互に矛盾することなく、調和させていくことを教育の根本理念にすえて、「人間を作っていく技術」にあらためて光を当てなおそうとするのです。

では、ルソーはこの教育によって、どんな人間を作ろうと考えたのでしょうか? 哲学研究者の西研さんは、ルソーがこの「エミール」という著作によって、本当の意味での「自由な主体」を作り出そうと考えていたと指摘します。「自由な主体」というとき、ルソーは二つを考えていました。一つは、「名誉・権力・富・名声といった社会的な評価から自分を測るのではなく、自分を測る基準を自分の中にもっていること」。もう一つは、「民主的な社会の一員として、一緒にルールを作り自治をしていくことのできる公共性を備えていること」。この「自分のため」と「公共のため」という折り合いにくい二つを両立する主体こそ「真に自由な主体」であり、それを育てる「教育論・人間論」が「エミール」なのです。

確かな座標軸が見失われ、他者からの承認だけを求めて右往左往しがちな現代。「エミール」を読み解くことで、「人間は、自分の中に確固とした基準をもちうるのか」「ありうべき理想の社会を実現するためには、どのような人間を育てたらよいのか」といった根源的なテーマを考えるとともに、ルソーの思想に現代の視点から光をあて、そこにこめられた【人間論】や【自由論】、【社会論】などを学んでいきます。

127 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第40書 「エミール」ルソー

2

3

4

1

128 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第41書 「オイディプス王」ソポクレス

未曾有の震災、テロリスムの蔓延、断ち切れない憎しみの連鎖……私たちは今、自分の意志だけでは動かしようのない「運命」のような現実を生きています。そんな「運命」に直面したとき、人はどう生きるべきなのか? 今から2500年近くも前、人間が運命にどう立ち向かうべきかを問うた一篇の戯曲が執筆されました。ソポクレス作「オイディプス王」です。6月放送の「100分de名著」は、人間にとっての「運命の意味」を、悲劇を通して描いたこの作品を取り上げます。

原因不明の疫病が蔓延し破滅の危機に瀕した古代ギリシア都市国家テバイ。名君として知られるオイディプス王はその原因を究明すべく神への神託を請います。神託の結果は「先王ライオスを殺害したものを罰せよ」。犯人探しに乗り出すオイディプスですが、真相が明らかになるにつれ、自分自身の出生の秘密が少しずつ明らかになっていきます。やがて、先王ライオスこそオイディプスの実の父親であり、オイディプスがその父を殺害し、実の母親を娶ったという事実が白日の下にさらされます。衝撃的な事実に直面し、母親は自殺。オイディプスは自分自身を罰すべく自ら目をつぶします。

この物語は、単に運命に翻弄される人々を描いただけではありません。「人が運命に直面したときどうふるまうべきか」をさまざまなキャラクターを通して描き出しています。また、「自分探し」を続けるオイディプスの姿を通じて、人間にとって「知るという行為」の意味や「知るという行為」がもたざるを得ない危険性を鋭く問うています。

さまざまな意味を凝縮した「オイディプス王」の物語を【運命の意味】【人間にとって「知」とは何か?】【人間存在の本質とは?】など多角的なテーマから読み解き、困難な時代を生きるための、普遍的なメッセージを引き出します。

129 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第41書 「オイディプス王」ソポクレス

2

3

4

1

130 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第42書 「おくのほそ道」松尾芭蕉

松尾芭蕉が記した「おくのほそ道」。俳句が随所に散りばめられた旅のドキュメントというイメージがあるかと思いますが、実はそうではありません。今回はその意外な姿に迫ります。

伊賀に生まれた芭蕉は、武士の家に奉公人として仕えていた時に俳諧連歌に出会い、俳諧師になりました。俳諧とはもともと“滑稽”を意味し、上の句と下の句を複数の人が読みあうもので、遊びの要素が強く、芸術といえるほどではありませんでした。

芭蕉は、この俳諧を和歌に匹敵する文学へと磨き上げようとしました。そして“蕉風”と呼ばれる独自の境地を開きます。これが後の俳句へとつながっていくのです。

46歳の時、芭蕉はある大きな決意をします。古くから和歌に読み込まれてきた景勝地「歌枕」の宝庫であるみちのくを訪ね、理想の句を生み出そうとしたのです。その旅が「おくのほそ道」でした。

番組では、女優の内山理名さんが俳人の長谷川櫂さんとともに、芭蕉の足跡をたどり、その旅を追体験します。そして東京深川の芭蕉記念館をスタジオにして、司会の伊集院光さん、武内陶子アナウンサーと共に芭蕉の世界観を語りあいます。番組を見れば、あなたも必ず、旅に出たくなるはず。どうかお楽しみに!

131 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第42書 「おくのほそ道」松尾芭蕉

2

3

4

1

132 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第43書 「学問のすゝめ」福沢諭吉

「明治の人間は、やっぱり違うなあ」。子どものころ、そんな言い方がしばしば私のまわりに飛び交っていたような記憶があります。私の場合でいうと、父が大正末、母が昭和初期の生まれ、祖父母たちが明治生まれ、といったことになるのですが、その祖父母の世代がよくそのような形容で評されていたのです。彼らのいったいどこが違っていたのかといえば、たとえば、背筋が伸びている、気骨がある、前向き、覚悟ができている、一徹でブレない。——そのようなことだったかと思います。

明治の後には大正時代があります。しかし、「大正生まれは違う」と表現されているのはあまり聞いたことがありませんから、やはり、明治人の気骨は筋金入りなのでしょう。

それはなぜかといえば、封建的な幕藩体制から近代国家への一大転換期を生きたという一言に尽きると思います。

たとえば、源平合戦の時代とか、戦国時代とか、一九四五年の敗戦とか、日本史の中には「時代の変わり目」と呼ばれるポイントがいくつかあります。しかし、明治期ほど精神のあり方の変化を迫られた時期はなかったと思います。そこを生きた人たちだから、おそらく、性根の据わり方が半端でないのです。

さて、そこで、今回の主人公である福沢諭吉です。彼こそはその「明治の人間」の代表というべき人物です。まっすぐ前を向いてどんどん進んでいく明るさ、勇気、胆力。新しいものに順応し、ものにしていく意欲が、まさに明治時代のカラーです。慶應義塾という私立学校を作り、新聞社などの事業を興し、多数の著作をものした一級の評論家・ジャーナリストでもあります。

私はよく思うのですが、「日本人らしさ」というものについて語るとき、そこには大ざっぱに言って二種類のものがある気がするのです。一つは、『古今和歌集』や『源氏物語』に代表されるような「もののあはれ」の心を持った日本人。古代から脈々と受け継がれてきた日本人のオリジナルの精神です。しみじみとした情感を好む、言ってみれば「湿度の高い心」です。

もう一つは、勤勉で器用で、「働きバチ」のような日本人。こちらは、主に明治以降に発揮された精神といえると思います。言ってみれば、前者は情緒的で感性優位の精神、後者は論理的で合理的な精神です。このうち、福沢は後者も後者。合理的精神の極北のようなところがあります。 なにしろあっけらかんとした性格で、ネチネチしたところがまるでないのです。子どものころ、親戚の庭のお稲荷さんの社(やしろ)にもぐりこんでご神体をあばいてみたら石のようなものが出てきたので、「なんだ、こんなものを拝んでいたのか」と、別の石とすり換えてみた。そうして罰が当たるということが本当にあるのか試してみた、というエピソードがあるのですが、生涯それを地でいった感じです。

133 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第43書 「学問のすゝめ」福沢諭吉

自身、みずからの性格を「誠にカラリとしたものでした」と評していて、日本人としては珍しいくらい湿度が低いのです。しかし、そのくらい日本的でない人がこの国最大の変わり目を担ったから、日本の近代化は実現したのかもしれません。

今回はそんな福沢諭吉の『学問のすゝめ』を取り上げるわけですが、私はこの本を、いまの日本にとってはまことにふさわしい一冊だと思っているのです。どの時代にも、そのときどきの問題があり、そのときどきに求められる思想というものがありますが、いま、それは福沢ではないかと思うのです。

なぜなら、昨今の日本には、どうも「覇気」というものが感じられないからです。経済は停滞し、多くの人びとが心の問題に悩まされ、それでなくてもうつうつとしていたところに東日本大震災が起こり、ほうっておけばついつい日本全体が暗い雰囲気になってしまいます。

そんなときだからこそ、いま以上の内憂外患(ないゆうがいかん)の危機に際して、未来への夢にもあふれていた明治日本を見直したいのです。その中でもとりわけ前向きで明るかった福沢諭吉からヒントをもらいたいと思うのです。

『学問のすゝめ』が世に出たのは明治の初期で、発売されるや大ベストセラーとなりました。近代国家としての日本は、『学問のすゝめ』に多くのことを教わりながら、この本と二人三脚するように歩みを始めました。ですから、いまのわれわれは、この本を読んでいてもいなくても、みなその影響下にあると言って過言ではないのです。この世に「名著」と呼ばれるものは数々あれど、私はこの本なくしては近代日本の精神的風土は語れないというくらいの名著だと思っています。

とかく暗くなりがちなこの世の中で、われわれはどのような心構えを持つべきなのか、どこを目指せばよいのか、福沢諭吉から教わりたいと思います。カラリと明るく前向きなこの本を読み直して、私たちもぜひ、カラリと明るく前向きになりたいと思います

134 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第43書 「学問のすゝめ」福沢諭吉

2

3

4

1

135 of 178

「人間にとって本とは何か?」「思考や記憶のかけがえなさとは?」「権力者の論理とは?」

「反知性主義」という思潮が猛威を振るう中、SFという手法を使って、私たちにとって「思考する力」や「記録することの大切さ」などを深く考えさせてくれる文学作品があります。レイ・ブラッドベリ「華氏451度」。名匠トリュフォー監督による映画化、オマージュ作品として映画「華氏911」が撮られるなど、今も世界中で読み継がれている作品です。全体主義的な風潮がじわじわと世を侵食する現代に通じるテーマを、この作品をから読み解きます。

主人公は本を燃やす「ファイヤマン」という仕事に従事するガイ・モンターグ。舞台の近未来では、本が有害な情報を市民にもたらすものとされ、所有が禁止。本が発見されると直ちにファイアマンが出動し全ての本を焼却、所有者も逮捕されます。代わりに人々の思考を支配しているのは、参加型のテレビスクリーンとラジオ。彼の妻も中毒患者のようにその快楽に溺れています。最初は模範的な隊員だったモンターグでしたが、自由な思考をもつ女性クラリスや本と共に焼死することを選ぶ老女らとの出会いによって少しずつ自らの仕事に疑問を持ち始めます。やがて密かに本を読み始めるモンターグが、最後に選んだ選択とは?

この作品は、本を焼却し去り、人間の思考力を奪う全体主義社会の恐怖が描かれているだけではありません。効率化の果てに人々が自発的に思考能力を放棄してしまう皮肉や、「記憶」や「記録」をないがしろにする社会がいかに貧しい社会なのかも、逆説的に教えてくれます。そこで描かれている人々の姿は、GAFAやSNSに踊らされ、思考し何かを問い続けることをないがしろにしがちな私たち現代人をも鋭く刺し貫いていると、哲学者の戸田山和久さんはいいます。

さまざまな意味を凝縮した「華氏451度」の物語を【本を読むことの深い意味】【思考することで得られる真の自由】【権力にからめとられないための叡知】など多角的な視点から読み解き、混迷する現代社会を問い直す普遍的なメッセージを引き出します。

136 of 178

2

3

4

1

137 of 178

ヴィヴィアン・リー主演で映画化されて人気を博し、世界で今も読み継がれる名作「風と共に去りぬ」。もともとジャーナリストだったマーガレット・ミッチェル(1900 – 1949)が怪我の療養中に執筆し1936年に発表して以来、多くの人たちが今なお愛してやまない永遠のロングセラーです。「恋愛や友情の数奇さ」「どん底を生き抜く人間の力強さ」「本当の心に気づけない悲劇」といったさまざまなテーマを、克明な人物描写、心理描写を通して見事に描き出したこの作品から、現代人にも通じる生きるヒントや社会の見つめ方を読み解いていきます。

舞台は南北戦争前後のアメリカ南部。大農園主の長女スカーレット・オハラは、愛するアシュリの婚約を知り告白するも心を覆せません。当てつけに彼の婚約者メラニーの兄チャールズの求婚を受け入れます。ところが南北戦争の勃発はスカーレットたちの運命を翻弄していきます。チャールズの病死、アトランタへの移住、そして彼女のその後の生涯を左右するレット・バトラーとの再会。さらに、北軍の勝利は、スカーレットの家族と故郷タラをこれ以上なく荒廃させ、どん底の中で彼女は起死回生を誓います。生き抜くために金の亡者と化すスカーレット。数奇な運命の中、彼女はバトラーとの再会を繰り返し、二人はついに結婚します。しかし、その結婚は、更なる悲劇へと二人を追い込んでいくのでした。

近年「風と共に去りぬ」を新訳して話題を呼んだ鴻巣友季子さんは、この作品が巷間いわれているような単なる「ラブロマンス」などではなく、人生の本質を見事にとらえた洞察を読み取ることができるといいます。また、北軍再建時代を描いたパートは、一種のディストピア小説として読むことができるといいます。支配者の都合でルールがころころ変わり、不正選挙が行われ、内部で汚職が横行するアメリカ。トランプ政権樹立によって奇しくもあぶりだされた、アメリカの闇の部分や根深い同国民同士の分断が、この時代に起因していることを鮮やかに示してくれるというのです。いわば、現代人が誰しも考えなければならない問題が複合的にこめられている作品が、「風と共に去りぬ」なのです。

鴻巣さんに「風と共に去りぬ」を新しい視点から読み解いてもらい「どん底にあって人間が生きていくために必要なものとは何か」「私たちにとってアメリカとはどんな国なのか」といった現代人にも通じる問題を考えていきます。

138 of 178

2

3

4

1

139 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第46書 「かもめ」チェーホフ

その昔、仕事がめちゃくちゃ出来る不良中年風の上司がいました。野次馬精神丸出しで、熱しやすくてさめやすい私に、実に魅力的な言葉をかけてくれました。

「いいか、ディレクターっていうのは飽きるのも大事な素養だ。」

ふーん、そうか。

この言葉には、マンネリを戒め、常に新たな企画や演出を求めよ、という意味が込められていたのではないか?今になってそんな気がします。

2011年に始まった「100分 de 名著」では、誰しもが認める名著に正面から向き合ってきました。が、今回は少し趣向を変えました。

初めて取り扱うロシア文学。でもドストエフスキーでもトルストイでもない、チェーホフの戯曲「かもめ」が今回の主役です。

演劇通の方ならば「かもめ」が世界演劇史に画期をなす作品であること、モスクワ芸術座には「かもめ」のオブジェが据えられていることなど、ご存じでしょう。

しかし、多くのかたにとってはなぜ戯曲が、それもシェークスピアではない、チェーホフの「かもめ」が当番組で取り上げられるのか、不思議に思われることでしょう。

確かに番組で紹介しきれない名著が山のようにあるのに、なぜ今「かもめ」なのか。

しかし、そこには、意外な現代性が秘められていました。その続きは番組をご覧になってのお楽しみとしましょう。

さて、今回私たちはマンネリを打破すべく、新たな演出を試み、「100分 de 名著」の世界をもっと広げようと意気込みました。

いつもの収録スタジオを飛び出して都内の小さな劇場で対談を収録しました。また俳優・女優による朗読劇の撮影もしました。チェーホフの短編の世界も織り込みながら見えてきた、「かもめ」の持つ喜劇性・・・。

「この作品を笑って読めるようになったら、人生が楽になる」、そんな言葉が残されているそうです。皆さんが少しでも笑って「かもめ」を読める、そんな番組にしていきたいと思います。

140 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第46書 「かもめ」チェーホフ

2

3

4

1

141 of 178

世界文学史上の最高傑作のひとつとの呼び声も高い「カラマーゾフの兄弟」。ロシアの文豪・フョードル・ドストエフスキー(1821- 1881)の代表作です。ドストエフスキーが人生の集大成として執筆したともいえるこの名著を、現代の視点から読み解くことで、「生きるとは何か」「善と悪とは何か」「本当の意味での魂の救いとは何か」といった、人生の根本的な問題を深く考えていきます。

好色で老獪な田舎地主フョードル・カラマーゾフには三人の息子がいました。激情的で熱血漢の長男ドミートリー、冷徹な知性を持つ無神論者の次男イワン、心優しき修道僧の末弟アリョーシャ。そしてフョードルが産ませた私生児と噂される使用人のスメルジャコフも。父とドミートリーの間に起こった財産相続問題を話し合うために三兄弟が集結しましたが、ゾシマ長老の仲裁にもかかわらず決裂。更に問題をややこしくしているのは、父とドミートリーがグルーシェニカという妖艶な女性を取り合っていたことでした。解決に奔走するアリョーシャは「信仰のゆらぎ」に直面しながらも少しずつ成長していきます。ところが、そんなある日、父フョードルが自宅で殺されます。果たして「父殺し」の犯人は? その究明のプロセスの中で、人類にとって根源的な問題が浮き彫りにされていきます。

この物語の中に私たちが生きる時代の原型的な姿があるというのはロシア文学者の亀山郁夫さん。農奴解放によって一見改善されたかに見えたロシアには新たな神が生まれていました。「お金」です。それは、庶民の中に静かに息づいていたキリスト教的世界観を破綻させ、人々を限りない欲望とアナーキーな自由へと駆り立てていきました。「お金」と「欲望」に翻弄される人間を描ききった「カラマーゾフの兄弟」の物語は、グローバル資本主義や未曽有の格差社会によって翻弄される現代人たちを映し出す鏡であり、そこで問われた「本当の自由とは?」「人間の強さや弱さとは?」「魂の救いとは?」「真の幸福とは?」といった問いは、私たち自身を鋭く突き刺す問いだと亀山さんはいいます。

番組では、ドストエフスキー研究の第一人者のひとり、亀山郁夫さんを講師に招き、新しい視点から「カラマーゾフの兄弟」を解説。現代に通じるメッセージを読み解き、価値感が混迷する私達現代人がよりよく生きるための指針を学んでいきます

142 of 178

2

3

4

1

143 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第48書 旧約聖書

かつて、日本人は万物に神が宿っていると考え、八百万の神を信じていました。

これと対極にあるのが一神教の思想です。一神教は古代、ユダヤ教で生じました。

そしてユダヤ教を母胎にキリスト教が生まれ、その両方の影響を受けてイスラム教が成立します。

つまり一神教について学ぶことは、世界の多くの人々の文化の根源を知ることにつながるのです。そこで5月の「100分de名著」では、「旧約聖書」を読み解くことで、一神教とは何かを考えます。

そもそも聖書とは何でしょうか。聖書には「旧約聖書」と「新約聖書」があります。

「旧約」とは神との古い契約という意味で、「新約」とは、神との新しい契約という意味です。「旧約聖書」は、紀元前4~5世紀に成立しました。

ユダヤ教にとってはこれだけが「聖書」です。

一方「新約聖書」は、ユダヤ教を母胎に生まれたキリスト教が生み出した書物で、「旧約聖書」は「新約聖書」の前提という位置付けとなっています。

番組では、「旧約聖書」から、古代の中東における人々の営みや歴史を探ります。

グローバル化が進み、異文化の理解が必要となっている今、西洋における「神」の概念の原型が、どのようにして形作られていったかを分析していきます。

144 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第48書 旧約聖書

2

3

4

1

145 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第49書 「饗宴」プラトン

146 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第49書 「饗宴」プラトン

2

3

4

1

147 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第50書 「共同幻想論」吉本隆明

「人間にとって国家とは何か?」「国家の起源とは?」「国家はどのようなプロセスで成立したのか?」……私たちにとって根源的ともいえる、国家を巡る問いに独力で答えを導き出そうとした著作があります。「共同幻想論」。執筆したのは、数々の評論活動を通して戦後思想に巨大な影響を与え続けてきた、日本を代表する思想家・吉本隆明(1924-2012)です。学生運動が激化していた1968年に出版されたこの著作は当時の青年たちに熱心に読まれ、「共同幻想」という言葉は国家や権力の本質を言い当てた言葉として広く流通しました。出版から50年以上を経て、再び数多くの論考によって再評価の機運が高まる今、この名著を通して「国家と個人の関係」をあらためて見つめなおします。

 吉本がこの著作を書く原点となったのは、皇国少年として過ごした戦時中から終戦直後にかけての体験。戦中は「絶対的に『善なるもの』として戦争を鼓舞してきた文化人たち」が敗戦後にあっけなく意見を変えたことを若年で体験しました。それは吉本に「権威に対する不信感」を生みました。何が正しいのかという基準が崩壊し、何を信じてよいのかわからない混沌状態の中、前提を根本から考え直し、自らの思考によって価値観や国家観を組み立て直そう。そういった切実な問いが吉本にはあったといいます。「共同幻想論」はその問いに対して一つの答えを導き出そうとした著作なのです。

148 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第50書 「共同幻想論」吉本隆明

「国家とは何か」という問いに対して、多くの批判者は、政治的支配者が自分たちの利害を社会全体の利害と見せかける装置とみなすことで、国家を否定できると考えてきました。しかし、吉本はそれでは不十分であり、本質的・根源的でないといいます。人間は容易には国家から自由にはなれない。それは、国家が「私たちはあたかも家族が血で繋がっているように遠い先祖と血で繋がっている。だから私たちは本来一つもののだ」という共有された根深い「幻想」から成り立っているからなのです。

そこで、吉本は「遠野物語」や「古事記」を徹底的に分析することで、「共同幻想」としての国家の成立機序を解明し、私たちが国家にきちんと対峙し、自立的に生きていく方法を模索したのだと、日本思想史研究者・先崎彰容さんはいいます。「ポピュリズム」によって誕生する権力が時代を左右する現在、安易な国家批判だけでは、問題の根本的解決を導きだすことはできない。今こそ、吉本が主張したような、より本質的な国家論が必要なのであり、だからこそ「共同幻想論」を再読するべきだというのです。

番組では先崎彰容さん(日本大学教授)を指南役として招き、戦後思想の中で最も難解な著作として知られる「共同幻想論」を分り易く解説。この著作に現代の視点から光を当てなおし、そこにこめられた「国家論」や「自立して考えるとはどういうことか」といった問いなど、現代の私達にも通じるメッセージを読み解いていきます。

149 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第54書 紫式部源氏物語

源氏物語はこれまで、様々な関連本が出されています。様々なまとめ方があり、登場人物ごとに紹介したり、全体像を図鑑のようにまとめたりしています。しかしあまりにも長い物語であるため、ポイントを絞って要約することがなかなか出来ない作品でもあります。ですので今回は、的確なポイントを設定することに苦心しました。

例えば、光源氏とは一体どういう男なのか?を知りたいと思った場合、本やネットなどで調べると、イケメンでセレブで女を全力で愛することが出来て・・などなどが書かれていますが、何だか分かったような分からないような、非現実的な感じすらしてしまいます。

そこで第1回では「コンプレックスを抱えたさびしい男」としての側面に光をあて、光源氏が、愛に何を求めていたのかを探ることにしました。

源氏物語は、決して甘い恋愛物語ではありません。人生の現実を鋭く描いた、骨太な人間ドラマです。そこで現代に生きる私たちにも共感できる心理描写にスポットを当てて、テーマを絞り込みました。全4回、全て現代性のある切り口を心がけています。

また番組では、テキストの内容をさらに分かりやすくすると共に、テキストにはない情報も数多く取りあげています。最大の見所は、新しく司会を勤める伊集院光さんのテンポ良く鋭い突っ込み。難解な源氏物語がぐっと身近に感じられると思います。お楽しみに!

150 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」おもわく

第01書

第02書

第03書

第04書

第05書

第06書

第07書

第08書

第09書

第10書

第11書

第12書

第13書

第14書

第15書

第16書

第17書

第18書

第19書

第20書

第21書

第22書

第23書

第24書

第25書

第26書

第27書

第28書

第29書

第30書

第31書

第32書

第33書

第34書

第35書

第36書

第37書

第38書

第39書

第40書

第41書

第42書

第43書

第44書

第45書

第46書

第47書

第48書

第49書

第50書

第51書

第52書

第53書

第54書

151 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」おもわく

第55書

第56書

第57書

第58書

第59書

第60書

第61書

第62書

第63書

第64書

第65書

第66書

おもわく-

第67書

第68書

第69書

第70書

第71書

第72書

第73書

第74書

第75書

第76書

第77書

第78書

第79書

第80書

第81書

第82書

第83書

第84書

第85書

第86書

第87書

第88書

第89書

第90書

第91書

第92書

第93書

第94書

第95書

第96書

第97書

第98書

第99書

第100書

第101書

第102書

おもわく

第103書

第104書

第105書

第106書

第107書

第108書

152 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第50書 「共同幻想論」吉本隆明

2

3

4

1

153 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第51書 「金閣寺」三島由紀夫

三島由紀夫「金閣寺」は、1950年7月に実際に起こった「金閣寺放火事件」を素材にして創作された、戦後文学の最高傑作とも称される作品です。戯曲化や映画化も果たし、今も、国内外で数多くの作家や研究者、クリエイターたちが言及し続けるなど、現代の私たちに「人間とは何か」「美とは何か」を問い続けています。番組では、戦後日本文学の代表者ともいえる三島由紀夫(1925-1970)の生涯にも触れながら、代表作「金閣寺」に三島がこめたものを紐解いていきます。

舞台は戦前から終戦直後の京都府。成生岬にある貧しい僧侶の家で生まれた溝口は、幼い頃から吃音に悩まされる感受性の強い少年。父親から「金閣寺ほど美しいものは地上にはない」と聞かされ続け、美しい景色をみては金閣寺への憧憬をつのららせて、いつしか自らの劣等感を忘れさせてくれる存在に。やがて金閣寺の徒弟となり得度した溝口は、戦争の中で金閣寺とともに滅んでいくことを夢みるようになりました。しかし敗戦が、溝口と金閣寺の関係を決定的に変えてしまいました。戦時中は「滅びゆくもの」として自分と同じ側にあったと思われた金閣寺は、自分からかけはなれた「呪わしい永遠」と化したのです。師である住職との関係、友人たちからの影響、女性との遍歴の中で深い挫折感を味わった溝口は、ついに金閣寺を憎むようになり、「金閣寺を焼かなければならぬ」と決意するに至ります。果たして、金閣寺放火に至った彼の心境の裏には何があったのでしょうか?

小説家の平野啓一郎さんによれば、この小説には「心象の金閣」と「現実の金閣」に引き裂かれながらもその一致を求め続けた主人公の苦悩を通して、現実と理想、虚無と妄信、認識と行為などに引き裂かれて生きざるを得ない私たち人間が直面する問題が刻まれているといいます。それだけではありません。三島が苦渋をもって見つめざるを得なかった日本の戦後社会の矛盾や退廃が「金閣寺」という存在に照らし出されるようにみえてきます。この作品は、私たちにとって「戦後」とは何だったのかを深く見つめるための大きなヒントを与えてくれます。更には、なぜ三島が自決という最期を選んだのかという謎にも迫れるというのです。

番組では小説家・平野啓一郎さんを講師に迎えて「金閣寺」を現代の視点から読み解き、私たち人間が逃れようのない「劣等感」や「美への憧れ」といった宿命や、「戦後社会」が私たちにとって何だったのかといった普遍的な問題について考えます。

154 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第51書 河合隼雄スペシャル

科学文明の進歩や経済的な繁栄を謳歌する一方で、「いじめ」「うつ病」「ひきこもり」等々のさまざまな心の問題が次々と噴出していた戦後日本。そんな中、人々の悩みに寄りそい、個人の物語に耳を澄まし続けた「こころの医師」がいました。河合隼雄(1928-2007)。日本を代表する臨床心理学者です。河合は、私たちが見過ごしてきた「心の問題」「人間の本質」を、単なる学術的な方法を超えて、瑞々しい言葉で縦横に論じてきました。彼の代表作「ユング心理学入門」「昔話と日本人の心」「神話と日本人の心」「ユング心理学と仏教」を読み解き、「心の本質とは何か?」「日本人の心のありようとは?」「人が再生していくには何が必要か?」といった問題をあらためて見つめなおします。

当初、河合は高校教師のかたわら大学院で心理学の勉強を続けていました。自分が本当に学びたい臨床心理学を学ぶためには海外に行かなければならないと考えて留学した河合は、やがてユング心理学と運命的な出会いをします。「心はなぜ病むのか」「心の根源とは何か」といった根本的な問題に対して、「普遍的無意識」「元型」「個性化」といったこれまでにない概念で新しい手がかりを与えるユング心理学に魅了された河合は、帰国後、その研究成果を駆使して、「心の問題」を抱える日本人たちに心理療法を施していきました。

その後、蓄積していった症例や夢分析などを通して日本ならではの独自の理論を構築していきます。河合がそうやって執筆した著作の数々は、結果的に独創的な「日本人論」「生き方論」ともなっており、専門家の領域を超えて、一般の多くの人たちが「自らの心の問題と向き合うための名著」として読み継がれているのです。

それだけではありません。河合隼雄は、培ってきた臨床経験を生かして「昔話」「童話」「神話」「仏教」などに研究領域を拡大。それらの分野でも画期的な業績を遺しました。それらは、西欧近代の自我意識とは全く異なる、日本人ならではの深層心理や文化の基層を鮮やかに解明してくれます。河合の著作は、価値観がゆらぐ現代にあって、私たちが、日本の文化の「あり方」や「独自性」を見つめなおすための大きなヒントを与えてくれるのです。

番組では河合俊雄さん(京都大学・こころの未来研究センター長)を指南役として招き、河合隼雄が追究し続けた独自の心理学やその応用研究を分り易く解説。彼の代表作に現代の視点から光を当てなおし、そこに込められた【生き方論】や【日本人論】【心を再生する知恵】など、現代の私達にも通じるメッセージを読み解いていきます。

155 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第53書「君主論マキャベリ

人間は恐れている人より、愛情をかけてくれる人を容赦なく傷つける

(第15章)

わたしのねらいは、読む人が役に立つものを書くことであって、物事について想像の世界のことより、生々しい真実を追うほうがふさわしいと、わたしは思う。

(第15章)

永年、君位についていたイタリアの諸君侯が、しまいに国を奪われたからといって、責任を運命に負わせては困るのだ。これは彼ら君主の怠慢のせいである。

―いいかえれば、凪の日に時化のことなど想ってもみないのは、人間共通の弱点であって―彼らもまた、平穏な時代に天候の変わるのをまったく考えなかった。

(第24章)

運命は変化するものである。人が自己流のやり方にこだわれば、運命と人の行き方が合致する場合は成功するが、しない場合は不幸な目を見る。

(第25章)

運命は女性に似てつねに若者の友である。

(第25章)

156 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第53書「君主論」マキャベリ

マキャベリは、大学を出ていないにもかかわらず、その才覚が認められ、29歳でフィレンツェ外交官に抜擢された。

そして様々な国王との交渉を行った経験から、誠意だけでは問題が解決しないことを知る。

43歳の時、外国の介入によるクーデターで、政府を追放されると、マキャベリは自らを奮い立たせるように、“政治論文”を書いた。

それが「君主論」である。

人間の現実を通して、指導者の決断とは何かを説いた君主論は、道徳論ばかりが語られていた当時の社会では、極めて画期的だった。

今回は君主論に込められたマキャベリの真意に迫る。

157 of 178

2021/03/27作成

AB公体

大同小異

小異大同

A

OPF

自互共

感得現

B

TRR

去来場

去来場

という方法

158 of 178

去来場

という方法

2021/03/31作成

信念

自信

日本

信頼

確信

今日の始めに

明日に向けて

大同小異

小異大同

日本

という方法

159 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第23書 河合隼雄スペシャル

科学文明の進歩や経済的な繁栄を謳歌する一方で、「いじめ」「うつ病」「ひきこもり」等々のさまざまな心の問題が次々と噴出していた戦後日本。そんな中、人々の悩みに寄りそい、個人の物語に耳を澄まし続けた「こころの医師」がいました。河合隼雄(1928-2007)。日本を代表する臨床心理学者です。河合は、私たちが見過ごしてきた「心の問題」「人間の本質」を、単なる学術的な方法を超えて、瑞々しい言葉で縦横に論じてきました。彼の代表作「ユング心理学入門」「昔話と日本人の心」「神話と日本人の心」「ユング心理学と仏教」を読み解き、「心の本質とは何か?」「日本人の心のありようとは?」「人が再生していくには何が必要か?」といった問題をあらためて見つめなおします。

当初、河合は高校教師のかたわら大学院で心理学の勉強を続けていました。自分が本当に学びたい臨床心理学を学ぶためには海外に行かなければならないと考えて留学した河合は、やがてユング心理学と運命的な出会いをします。「心はなぜ病むのか」「心の根源とは何か」といった根本的な問題に対して、「普遍的無意識」「元型」「個性化」といったこれまでにない概念で新しい手がかりを与えるユング心理学に魅了された河合は、帰国後、その研究成果を駆使して、「心の問題」を抱える日本人たちに心理療法を施していきました。

その後、蓄積していった症例や夢分析などを通して日本ならではの独自の理論を構築していきます。河合がそうやって執筆した著作の数々は、結果的に独創的な「日本人論」「生き方論」ともなっており、専門家の領域を超えて、一般の多くの人たちが「自らの心の問題と向き合うための名著」として読み継がれているのです。

それだけではありません。河合隼雄は、培ってきた臨床経験を生かして「昔話」「童話」「神話」「仏教」などに研究領域を拡大。それらの分野でも画期的な業績を遺しました。それらは、西欧近代の自我意識とは全く異なる、日本人ならではの深層心理や文化の基層を鮮やかに解明してくれます。河合の著作は、価値観がゆらぐ現代にあって、私たちが、日本の文化の「あり方」や「独自性」を見つめなおすための大きなヒントを与えてくれるのです。

番組では河合俊雄さん(京都大学・こころの未来研究センター長)を指南役として招き、河合隼雄が追究し続けた独自の心理学やその応用研究を分り易く解説。彼の代表作に現代の視点から光を当てなおし、そこに込められた【生き方論】や【日本人論】【心を再生する知恵】など、現代の私達にも通じるメッセージを読み解いていきます。

160 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第23書 河合隼雄スペシャル

161 of 178

2021/03/27作成

AB公体

大同小異

小異大同

A

OPF

自互共

感得現

B

TRR

去来場

去来場

という方法

162 of 178

去来場

という方法

2021/03/31作成

信念

自信

日本

信頼

確信

今日の始めに

明日に向けて

大同小異

小異大同

日本

という方法

163 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第51書 「金閣寺」三島由紀夫

2

3

4

1

164 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第57書 マルクス「資本論」斎藤幸平氏

◆◆ おもわく ◆◆

猛威をふるい続ける新型コロナウィルス禍。それは人々の健康だけでなく、世界経済に大きな打撃を与え続けています。派遣労働などの非正規労働者の切り捨て、サラリーマンの給与カットやリストラ、相次ぐ中小企業の倒産等々…すでにその影響はじわじわと現れています。アフター・コロナの経済対策は、今、喫緊の課題として我々に迫ってきています。

そんな中、今、再び19世紀の思想家カール・マルクスの著作が多くの人たちに読まれ始めています。とりわけ私たちがその只中で生活している経済システムの矛盾を明らかにしてくれる『資本論』が大きな脚光を浴びているのです。

マルクスという名前を聞くと、ソ連や東欧諸国の崩壊以降はもはや時代遅れの思想と考える人も多いかもしれません。ところが、最近少し違った流れも出てきています。驚いたことに、アメリカでも、マルクスの名前が、若者たちのあいだで肯定的に使われるようになっています。アメリカの若者たちは、日本の若者たちと同様に、大学のローンを背負って社会にでても安定した仕事がなく、気候変動が深刻化する未来に不安を募らせています。そうした中で、資本主義では問題は解決しない、もっと抜本的改革が必要だとして、新たな社会像を考えるためのヒントをマルクスの思想に求め始めています。また、バルセロナ等の都

165 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第57書 マルクス「資本論」斎藤幸平氏

  市では、住宅や水、エネルギーといったコモン(共有財)を、利潤のみを追求し続ける大企業から市民の手に取り戻し、自分たちの力で水平的に共同管理していこうという試みも始まっています。それは、マルクスが「資本論」で「アソシエーション」と呼んだ仕組みに極めて近いあり方といえます。

経済思想研究者の斎藤幸平さんは、ソ連や中国といった既存の社会主義国家にはなかった全く新しい社会ヴィジョンが、マルクスがその生涯をかけ執筆した大著『資本論』のうちに眠っているといいます。マルクスによる「商品」、「貨幣」、「労働」、「資本」などについての鋭い分析は、執筆された150年前の当時と今では状況は異なっているにもかかわらず、全く古びていません。その可能性を読み解くとき、私たちが、今後どのような社会を構想すべきかという大きなヒントが得られるというのです。

世の中には『資本論』のたくさんの入門書はありますが、『資本論』に眠っている、将来社会という観点から読み直すものはあまりありません。そこで、番組では、グローバル資本主義社会が行き詰まり、その暴力性をむき出しにしつつある中で、もう一度、別の未来の可能性を、マルクスの代表作『資本論』を通して考えてみたいと思います。

166 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第57書 マルクス資本論斎藤幸平氏

2

3

4

1

167 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第57書 マルクス「資本論」斎藤幸平氏

ブルシットジョブ:ブルシットバリュー

気候変動・温暖化

剰余価値(余分)

科学が自立的脳力として労働過程に合体されるほど

168 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第102書「サン=テグジュペリ"星の王子さま"」

砂漠に不時着した飛行機のパイロットが、遠い小さな星から来た少年に出会う不思議な物語「星の王子さま」。人間の絆や愛の意味を問うた哲学的な童話として名高く、子どもだけでなく大人にも人気があり、多くの人を魅了してきました。その出版部数は日本だけで600万部、全世界では8000万部にものぼるといいます。

著者は、フランス人作家のサン=テグジュペリ(1900-1944)。青年時代、飛行機でサハラ砂漠を縦断し、郵便を届ける仕事をしていました。当時の飛行機はよく故障したため、編隊を組んで飛行し、不時着した仲間を助けることになっていました。僻地には中継基地があり、そこでは一人で飛行場を守らなくてはなりませんでした。砂漠の部族と親しくなり、運航に協力してもらうことも大事な任務だったそうです。こうした環境で、サン=テグジュペリは、孤独と死の恐怖、人の絆の有り難さを知ります。

星の王子さまは、こうしたサン=テグジュペリの経験をもとに執筆されました。飛行機のパイロットと星の王子さまの友情を通して、人の絆とは何かを訴えたかったのでしょう。

物語では、大人と子どもの考え方の違いが語られます。大人は、目に見える表面的なことで物事を判断しがちです。どんな服を着ているか、財産はどうか、データはどうなっているのか。しかし子どもは違います。子どもは相手の姿形に左右されません。子どもにとって大事なのは、心で感じたこと、それだけです。

子どもの心には大人への大切な教訓が秘められています。絆や愛はかけがえのないものですが、目には見えません。つまり、心で感じるしかないのです。だから目に見えるものしか理解しないような、間違った心を持つ大人になってはなりません。そうした願いを物語に込め、サン=テグジュペリは兵役に志願します。そしてナチスドイツとの戦闘に赴き、偵察飛行中に帰らぬ人となりました。

絆とは、愛とは、幸福とは何か。番組では「星の王子さま」を通して、サン=テグジュペリが残したメッセージをひもといていきます。

169 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第62書「ガンディー"獄中からの手紙"

暴力ではなく精神の力でインドを独立に導いた指導者マハトマ・ガンディー(1869~1948)。「インド独立の父」とも呼ばれ、彼が身をもって実践した「非暴力不服従主義」の思想は、今も多くの人に巨大な影響を与え続けています。とりわけヤラヴァーダー中央刑務所に収監中に、弟子たちに宛てて一週間ごと書き送られた「獄中からの手紙」には、ガンディーの思想の精髄が込められているといわれています。「100分de名著」では、この「獄中からの手紙」に新たな視点から光を当て、現代に通じるメッセージを読み解いていきます。

検索:ガンディーの思想は今

検索:ガンディーの思想は今 千夜千冊

170 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第67書「ジェイン・オースティン"高慢と偏見"」

「永続的かつ普遍的な魅力があり、英文学の最も偉大な作家の1人と認められる」と絶賛され、2017年から英国の新10ポンド札に肖像が印刷されると発表された、作家ジェイン・オースティン(1775 – 1817)。彼女の最高傑作とされる「高慢と偏見」は、人気映画「ブリジット・ジョーンズの日記」の元ネタになるなど今も世界中の人に愛されている小説です。「虚栄心」「偏見」といった人間が陥りがちな落とし穴がいかに人生を左右してしまうのかを、克明な人物描写、心理描写を通して見事に描き出したこの作品から、現代人にも通じるさまざまな問題を読み解いていきます。(NHK名著「おもわく」より)

検索:「偏見 バイアス ガラパゴス化」

遍見?

171 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第70書「ラッセル"幸福論"」

バートランド・ラッセルの「幸福論」。アランやヒルティの「幸福論」と並んで、三大幸福論と称され、世界的に有名な名著です。この名著を記したラッセルは、イギリスの哲学者でノーベル文学賞受賞者。核廃絶を訴えた「ラッセル=アインシュタイン宣言」で知られる平和活動家でもあります。そんな彼が58歳のときに書いたのがこの「幸福論」です。

 なぜラッセルはこの本を書いたのでしょうか? 平和活動に邁進したため、ケンブリッジ大学を追われ6ヶ月も投獄された経験をもつラッセルですが、それでも決してゆるがない幸福があるというのが彼の信念でした。思春期には、自殺すら考えたこともあるラッセル。しかし、そんな彼を思いとどまらせたのは、「知へのあくなき情熱」と「自分にとらわれないこと」でした。それは、その後の人生を生きる上での原点であり、どんな苦境にも負けない支えとなりました。

 専門領域で、数理哲学を大成した書といわれる「プリンキピア・マセマティカ」を書き上げ、一つの仕事を成し遂げたと考えた彼は、今後は、後世の人々のために「人生いかにいくべきか」「幸福になるにはどうしたらよいか」といった誰もがぶつかる問題を、自らの原点を踏まえて考究し書き残そうとしたのです。

 ラッセルの「幸福論」のキーワードは「外界への興味」と「バランス感覚」。

人はどんなときにでも、この二つを忘れず実践すれば、悠々と人生を歩んでいけるといいます。そして、それらを実践するために必要な思考法や物事の見方などを、具体例を通して細やかに指南してくれるのです。まさに、この本は、人生の達人たるラッセルの智慧の宝庫といえるでしょう。                    

NHK名著「おもわく」より

172 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第102書「サン=テグジュペリ"星の王子さま"」

2

3

4

1

不時着して8日目。飛行機の修理は進まず飲み水もつきた。困り果てた飛行士を見て、王子は井戸を探しに行こうと提案する。歩きながら王子は「月夜の砂漠が美しいのは砂漠がどこかに井戸を隠しているからだよ」とつぶやく。初対面の時と仲良くなった後では人の印象が異なるように、世界は心によって違う姿を見せる。心の影響力の大きさを、詩的に表した美しい言葉だった。そして夜が明ける頃、ついに井戸が見つかる。それはふたりの間の絆が確かなものになった瞬間だったが、実は悲しい別れの始まりでもあった。第4回では、世界が心によってどう変わるのかを、ラストシーンから探っていく。

7つめの星・地球で、王子は5千本のバラが咲いている庭を目にする。世界にひとつしかないと思っていたバラがこんなにある。自分が愛したバラが、何の変哲もない花に過ぎなかったことを知り、王子はショックを受ける。すると狐が王子に声をかけた。狐は王子に、愛は時間によって育まれると言う。共に過ごした時があるからこそ、かけがえのない唯一の存在になるのだと。王子は、狐との出会いを通して、幸せとは時間をかけて自分で作り出すものだと悟るのだった。第3回では、本当の絆のつくり方について語る。

王子は飛行士にこれまでの旅を語り始める。ある日、王子の星にバラが咲いた。バラを見たのは初めてだった王子は、感激して世話をするが、バラは強気で王子につれなかった。実はバラは王子への愛を素直に表せなかったのである。王子は傷つき、星々をめぐる旅に出る。そこには自己中心的な欲望にとらわれた大人たちがいた。やがて王子は、強いとばかり思ってきたバラが、いつ枯れてしまうか分からない弱い存在であることを知る。王子は、自分もバラも自己を中心に置きすぎていた、だから傷つけ合うことになったのだと悟る。第2回では、人間の愚かさと、他人の立場に立つことの大切さについて考える。

物語は飛行士が思い出を語る形で進む。飛行士は幼い頃、画家になるのが夢だった。しかし才能を認めてもらえず、夢をあきらめた。ある日、飛行士は砂漠に不時着、星から来た王子に出会う。王子の純粋な質問に答えるうちに飛行士はあることに気づく。自分が物足りない毎日を送っていたのは、子どもの頃の情熱を失っていたからだと。子どもの一途な心があってこそ、大人の経験が生きてくる。子どもと大人のバランスがとれるよう、心を常に手入れしなくては幸せになれない。第1回では、幸せを失わない心のあり方について問い直す。

173 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第102書「サン=テグジュペリ"星の王子さま"」

2

3

4

1

174 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第102書「サン=テグジュペリ"星の王子さま"」

2

3

4

1

175 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

第102書「サン=テグジュペリ"星の王子さま"」

永遠の未完成これ完成

176 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

2

3

4

1

177 of 178

GMV懇話会「NHK100分で名著」

永遠の未完成これ完成

178 of 178

チャットルームのご案内

マイクオフでご視聴下さい!!

永遠の未完成これ完成