経営者ファミリーのための
教養MBA講座
第 3 回
ファミリービジネスにおける不動産活用 前半
CRE戦略 / 事業承継における課題と保有不動産の活用
村田弘子
FORTUNA GROUP株式会社 / 一般社団法人 事業承継結婚推進機構
この講座について
この講座は、ファミリービジネスの経営者・そのご家族・支援する士業専門家のために、ファミリービジネスの特長や永続した繁栄のポイントをわかりやすく学習していくためのガイド講座です。
なぜ今
海外が注目する日本の老舗大国。しかし国内では後継者問題が深刻化しています
現在の課題
過去30年、欧米型経営をよしとしファミリーをビジネスから遠ざける傾向が続きました
この講座が目指すもの
オーナー家・社員・支援プロが共にファミリービジネスを学び、問題に前向きに向き合います
経営者ファミリーのための教養MBA講座 第3回 | 2026年5月 第1回
2
MBA読書講座 ── 講座の概要と受講上のお願い
01
受講目的
1年間のカリキュラムのなかで、ファミリービジネスを読書教材を使いながら学び、ご自身のクライアントへの対応に活用いただくための動画講座です
02
内容の活用
この中で使われている内容は、プレゼンに活用ください。
03
版権について
資料の版権は弊社にございます。図表などは、必ず作者や出所を添えてください。
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3
前回の振り返り
第2回
ファミリービジネスは「強く」なれる
永続的な発展のための提言
使用テキスト
先代とアトツギが知っておきたい ほんとうの事業承継
── 伝承と変革・適応の教科書
日本ファミリービジネス協会 編著 / 同文舘出版
第1章 ファミリービジネスは「強く」なれる ── 永続的な発展のための提言
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4
永続性の条件 ── テキスト19ページ
ファミリービジネスが代々続いて繁栄するための重要な条件
1
ビジネスファーストで家族が協力していること
2
ファミリーがファミリーの役割を理解しており勉強していること
3
後継者の資質:イノベーションに貪欲、M&Aに積極的、社員を大切にする、地域社会・環境問題への取り組みが早い
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5
振り返りからの大切な学び
「家全体の一致」が、永続のカギ
事業に関わるファミリーだけでなく、関わらないファミリーも含めた、家全体の一致が必要
配偶者へのファミリービジネス教育
ファミリービジネスの中のファミリーを育てる配偶者に、いかにビジネスを教えていくか、知ってもらうか
ここがファミリービジネス永続のカギ
事業承継結婚アドバイザーへの示唆
お相手選びの段階から、家業への理解と協力を共有できる方を選ぶこと
永続性に直結する
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6
第 3 回
本日の本編
ファミリービジネスにおける
不動産活用
テキスト:先代とアトツギが知っておきたい本当の事業承継
第2章 ファミリービジネスにおける不動産活用 pp.26〜30
本章のねらい ── テキスト25ページ
不動産を数多く保有しているファミリービジネスにとって、これらを活用すれば、事業承継や経営に役立てることが可能です。
しかし不動産には、借地権、共有などや建物の老朽化により、すぐに流動化できないことがあり、時間をかけて事業承継対策・相続対策をすることが課題です
キーワード
事業承継
不動産有効活用
節税対策
企業不動産戦略
本章では、事業承継の一般的課題(株の承継、節税、納税資金確保、相続争い回避)を整理し、保有している不動産を最大限活用することを提案します。
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全体の流れ ── 2回に分けて学ぶ範囲
本日(第1回)
不動産を活用する基本の考え方
■ 1. ファミリービジネスの事業承継に向けたCRE戦略
■ 2. 事業承継における課題と保有不動産の活用
(1) 事業承継の課題:対策以前
(2) 事業承継・相続対策の4つの目的
次回(第2回)
不動産活用の各論
■ 3. 貸家経営一般の課題
■ 4. 老朽化した貸家の課題
■ 5. 借地権・底地・使用貸借の課題
■ 6. 共有不動産の課題
■ 7. 空家問題
■ 8. ケーススタディ
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1. ファミリービジネスの事業承継に向けたCRE戦略
CRE
Corporate Real Estate (企業不動産)
CRE戦略の定義(テキスト26ページ)
企業の経営戦略・事業戦略に適合するように、保有する不動産・施設について、適正に維持・管理・処分あるいは取得・賃借することにより、最終的には企業価値の向上を目指すもの
不動産を「持っているもの」として漫然と扱うのではなく、
経営戦略の一部として能動的に運営するもの として位置づける。
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10
CRE戦略の3つの段階 ── 図表2-1ベース
01
経営戦略段階
全不動産のデータベース化、実態調査・評価、必要/不要の仕分け、売買・賃貸借の計画策定
外部ベンダー: 戦略コンサル / 税理士 / 中小企業診断士
02
不動産取引実行段階
計画に従い、実際に売買・賃貸借・建築プロジェクト等を実行
外部ベンダー: 不動産仲介会社 / 建設会社
03
維持・管理・運用の段階
ファシリティマネジメント(FM)、プロパティマネジメント(PM)の実行
外部ベンダー: FMコンサル / PMコンサル
出典: 同文舘出版「先代とアトツギが知っておきたい本当の事業承継」第2章 図表2-1(CRE戦略の基本的仕組み)
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ファミリービジネスにおけるCRE業務の本質
テキスト27ページ
外部のサービスベンダーは、単なる税金の計算をする税理士、不動産の売買を仲介する宅地建物取引士、不動産の鑑定評価を行う不動産鑑定士等であっては足りず、自らの専門性を深めつつ他の専門家の協力を得て、顧客の信頼できる相談相手になって、その課題を整理し、真のニーズを共創することできるプロフェッショナルであることが求められる。
つまり ──
単一機能ではなく、家業全体の課題を整理して
真のニーズを共創できる「伴走型のプロフェッショナル」が求められる。
事業承継結婚アドバイザーへの示唆
会員さんの結婚という一点だけでなく、家業全体の文脈を理解した上でご縁を紡ぐ。これが「真の相談相手」になる道。
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2. 事業承継における課題と保有不動産の活用
テキスト27〜30ページ
第1段階
対策に入る前の前提課題
(1) 事業承継の課題:対策以前
① 事業を継続するかどうかの判断
② 承継者の選定
第2段階
承継後の事業承継・相続対策
(2) 事業承継・相続対策(4つの目的)
① 承継者への株式の集中(法務対策)
② 納税額の引き下げ(税務対策)
③ 納税資金の確保
④ 相続争い回避のための不動産活用
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事業承継の課題と解決フローチャート ── 図表2-2
スタート: 事業の継続?
YES
NO → 廃業
①
承継者への
株式の集中
法務対策
②
納税額の
引き下げ
税務対策
③
納税資金の
確保
④
相続争いの
回避
不動産対策
専門家アドバイザリーチーム
税理士 | 弁護士 | 不動産コンサルタント | 事業承継アドバイザー
事業承継は単独では完結しない。アドバイザリーチームでの支援が前提。
出典: 同文舘出版「先代とアトツギが知っておきたい本当の事業承継」第2章 図表2-2(事業承継の課題とその解決フローチャート)
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(1)-① 事業を継続するかどうかの判断
テキスト29ページ
少子高齢化、グローバル化、ICTやAIの発達など、昨今の日本のビジネス環境の大きな変化により、まず現在の事業を継続すべきか廃業すべきかを検討することが必要である。
イノベーションにより新しいビジネスができない限り、廃業したほうがよいと考えられる中堅・中小企業も多く見受けられる。
承継ありきではなく、まず「続ける価値があるかどうか」をフラットに見ることから始まる。
仲人としての示唆
会員さんのご家業について、「続ける前提か、選択肢を広く見ているのか」をお聞きすることで、家業の置かれている段階が見えてくる。
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(1)-② 承継者の選定
テキスト29ページ
01
親族内承継
子どもなどファミリーの中で承継者がいればそれに越したことはない
02
MBO
Management Buyout 有力な従業員に会社を売却
03
M&A
会社を第三者に売却
いずれの場合も急に承継者を選ぶことは難しいので、余裕をもって決めておく必要がある
仲人としての役割
婿養子というご縁組みは、親族内承継の最良の選択肢を増やす役割を果たしている。
事業承継結婚アドバイザーは、この最も上流の段階にお仕えしている。
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(2) 事業承継・相続対策の4つの目的
テキスト29〜30ページ。承継すると決まった後の対策。
①
承継者への株式の集中
法務対策
②
納税額の引き下げ
税務対策
③
納税資金の確保
④
相続争い回避のための
不動産活用
不動産対策
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(2)-① 承継者への株式の集中 (法務対策)
テキスト29ページ
商法上の特別決議ができるよう
全株式の 2 / 3 以上 を後継者に集める
これは「贈与すれば終わる」話ではなく、商法・相続法・会社法を組み合わせた精緻な設計が必要。
達成困難なときの対策
経営承継円滑化法の利用
議決権制限株
自社株取得
ストックオプション 等
株式が分散している場合、他の相続人に遺留分が残ってこれが達成できないことがある。その場合に上記対策が検討される
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(2)-② 納税額の引き下げ (税務対策)
テキスト29〜30ページ
主な節税対策
■ 株式評価額の低減化、株式の贈与税・相続税の納税猶予制度(経営承継円滑化法)
■ 相続時精算課税制度
■ 不動産:相続税路線価が公示価格の80%水準、小規模宅地の評価減、配偶者控除、3,000万円控除
【重要警告】 安易な相続対策にはリスクがある
■ 節税のみに注目すると、不動産事業が成り立たなくなる可能性が大きくなる
■ 相続直前での節税対策は無効になるリスクがある
判例:最高裁 令和4年4月19日判決 ── 都心の中古マンション2棟を借入で購入し相続税ゼロ円とした事案。「実質的な租税負担の公平に反する」とされ、納税者敗訴・追徴課税。
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(2)-③④ 納税資金の確保 / 相続争い回避のための不動産活用
③ 納税資金の確保
相続税は原則
相続後10カ月以内
に納付
■ 流動性の高いキャッシュ等の準備が必要
■ 物納の要件は近年厳しくなっている
■ 売却しやすい不動産を事前に準備しておく
④ 相続争い回避のための不動産活用
流動性の低い不動産を、流動性の高い完全所有権に変えておく
■ 借地権・底地、共有不動産などを整理
■ 事業承継しない相続人にも分配しやすくする
■ そのために CRE戦略 が必要
第1節と第2節がここで一本につながる
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本日のまとめ
01
CRE戦略は経営戦略の一部
企業不動産を、経営戦略段階・取引実行段階・維持管理運用段階の3つで能動的に運営する
02
事業承継には2段階の課題
対策以前(続けるか/誰に継ぐか)と、対策段階(株式集中・節税・納税資金・相続争い回避の4目的)
03
節税のみ追求するリスク
節税のみに注目すると不動産事業が成り立たない。直前対策は無効リスクあり(令和4年最高裁判例)
04
流動性の整理が要
流動性の低い不動産を完全所有権に変えておくこと。これが相続争い回避の有効な手段
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次回予告
第 4 回
ファミリービジネスにおける
不動産活用 後半
貸家経営の課題 / 老朽化・建て替え / 借地権・底地 / 共有不動産 / 空家問題 / ケーススタディ
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