単元7 食と私たちのくらし
河野 晋也
大分大学大学院教育学研究科
2021年9月7日
テーマ【食】�~課題を見つけて、発表しよう~
〇私たちの食生活を現代社会の諸課題と結びつけて見直そう。
本日のテーマ
今日は発表会
1.今日の進め方
・発表前の最終確認を15分とります。チームごとに打ち合わせを。
・3チームごとに集まって発表会。
1チーム15分(=発表10分+質問や感想5分)×3チーム
・「これはおもしろい!」というチームを1つ選んで、おきましょう。
・発表が終わったら、お互いの発表を聞いて気づいたことや感想、学んだことをシェアしていきましょう。(30分)
2.レポート
構造化授業サマリ
設問1 [事実としての根拠]得られた新しい知識
※今回知ったことをまとめます。聞いた言葉を使って「根拠」を明示してください。
設問2 [自己の振返り]浮かび上がってきた課題
※自分ごととして「振返り」ます。浮かび上がってきた自分の課題を書いてください。
設問3 [論拠の創造]自分の未来への意味
※自分にとっての意味を考え、自分の未来につなげる「論拠」を創ってください。
各テーマの例
テーマ例(1)地産地消・輸送にかかるエネルギー
テーマ例(2)食品ロス・廃棄物による地球への負荷
テーマ例(3)資源の枯渇・なぜマグロは絶滅する?
テーマ例(4)農薬と化学肥料の影響・食の安全とは?
テーマ例(5)食料不足
おまけ(3)
参考資料:松永和紀(2010)「食の安全と環境」日本評論社,シリーズ地球の人間の環境を考える⑪
テーマ例(1)
地産地消・
輸送にかかるエネルギー
なぜ地産地消が地球にやさしいのか
日本の食料自給率
なぜ低いとダメなのか。
食料自給率=我が国の食料供給に対する国内生産の割合
カロリーベースの食料自給率
基礎的栄養価であるエネルギー(カロリー)に着目
�カロリーベース総合食料自給率(令和元年度)�=1人1日当たり国産供給熱量(918kcal)/1人1日当たり供給熱量(2,426kcal)�=38%
生産額ベースの食料自給率
経済的価値に着目
�生産額ベース総合食料自給率(令和元年度)�=食料の国内生産額(10.3兆円)/食料の国内消費仕向額(15.8兆円)�=66%
https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/zikyu_ritu/011.html
※世界の奥の国では生産額ベースで計算している。
カロリーベースの場合、輸入された餌で育った牛や豚や鶏、卵などは、国内で育てられたものだとしても算入しない。また、カロリーベースでは、廃棄された食品も分母に含まれるため、日本では、必然的に自給率が低くなる。
※野菜などは、カロリーが低いのでたくさん国産を生産しても、カロリーベースでは自給率は上がらない。
食料自給率の例(カロリーベース)
米 97% 小麦16%
大豆 6% 牛肉38%
農林水産省「令和元年度食料自給表」
なぜ地産地消が地球にやさしいのか
でも、安定供給という意味では、
国内外はあまり関係ないかもしれない。
ただし遠くから運ぶということは…
資料
自身で撮影した写真2枚(災害等の理由で流通が止まってしまったため,商品が並べられず空いてしまっているスーパーの陳列棚の写真)
なぜ地産地消が地球にやさしいのか
農業の価値とは?
2.水を保つ=土砂災害・洪水を防ぐ
3.水を保つ=適温を保つ
4.生き物の住処をつくる
5.地域の人々を文化的に結び付ける
さらに地産地消を実現することができれば…
1.経済を活性化させる
6.CO2の削減(輸送)
7.新鮮な食料の確保
8.旬の食料の確保
資料
自身で撮影した写真1枚
(道の駅等にある奈良県産地場野菜の陳列棚のようす)
参考資料:松永和紀(2010)「食の安全と環境」日本評論社,シリーズ地球の人間の環境を考える⑪
なぜ地産地消が難しいのか
なぜ地産地消が地球にやさしいのか
2.肉を食べる文化
3.安価
4.小規模の農場での大量生産の難しさ
5.地域の農家の減少
1.洋食文化の広がり。
6.土地の不足
7.販売ルートの不足
参考資料:松永和紀(2010)「食の安全と環境」日本評論社,シリーズ地球の人間の環境を考える⑪
なぜ地産地消が地球にやさしいのか
輸入品の負荷はそんなに高い?
確かに日本のフードマイレージは高い。
ただし、
・航空機で運ぶか燃料効率の良い大型船で運ぶか
・国内をどのように移動させるか
・生産方法にビニルハウスを使うか
・農薬や化学肥料はどれくらい使うか
などによって環境負荷は大きく変わる。
“Food Miles”運動
食料の量×輸送距離(単位はt・km(トン・キロメートル))に着目し、 地域内で生産された食料を消費することにより 環境負荷を低減させる
製品の原材料調達、輸送、生産、流通から廃棄、リサイクルまでの全体から環境負荷を考える「ライフサイクルアセスメント(LCA)」
(もちろん近い方がCO2排出量が少ないことは確かだろうけれど)
日本は湿気が多いため、輸送には燃料が必要ないが、有害なカビを防ぐための乾燥に燃料を使うため、小麦のCO2 排出量に大きな差はないという研究もある。
参考資料:松永和紀(2010)「食の安全と環境」日本評論社,シリーズ地球の人間の環境を考える⑪
テーマ例(2)
食品ロス・
廃棄物による地球への負荷
どれくらいの食品ロスが?
日本のフードロス
食品ロス(フードロス)
本来食べられるのに捨てられてしまう食品
日本の食品廃棄物等 年間2,550万t
内、「食品ロス」の量は年間612万t(平成29年度推計値)
1人当たり1年で約48kg
(日本人1人当たりが毎日お茶碗一杯分のご飯を捨てている計算)
事業活動を伴って発生する食品ロス・・「事業系食品ロス」
各家庭から発生する食品ロス・・・・・「家庭系食品ロス」
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/recycle/syoku_loss/161227_4.html(農林水産省HP,食品ロスとは,2022年1月7日確認)
世界中で飢餓に苦しむ人々に向けた世界の食料援助量の約2倍
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201303/4.html(政府広報オンライン,もったいない!食べられるのに捨てられる「食品ロス」を減らそう,2022年1月7日確認)
家庭のフードロス
毎年注目される
クリスマスケーキ
おせち料理
恵方巻
…などなど
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_policy/information/food_loss/pamphlet/pdf/pamphlet_181029_0004.pdf(消費者庁HP,食品ロス削減について行動する,啓発用ポスター平成30年10月版「捨ててしまう理由編」,2022年1月7日確認
どれくらいの食品ロスが?
伝統的な行事と考えると、むげに否定しにくい気もする…
どれくらいの食品ロスが?
食品ロスを生む1/3ルール
製造してから賞味期限までを3つに区切る
○ 最初の3分の1の期間を「納品期限」
…最初の3分の1の期間までに納品しないと、小売はない。
○次の3分の1の期間を「販売期限」
…小売は賞味期限の3分の1手前で商品を撤去する。
「仕組みが悪い」と
言い切って大丈夫だろうか
安全をもとめてきたのは私たちじゃなかたっけ?
松永和紀(2010)「食の安全と環境」日本評論社,シリーズ地球の人間の環境を考える⑪
テーマ例(3)
資源の枯渇・
なぜマグロは絶滅する?
テーマ例(4)
農薬と化学肥料の影響
食の安全とは?
農薬と化学肥料の影響
そもそもなんのための農薬?
なんのための化学肥料?
《過去》
作物の伝染病や飢饉による飢餓(享保の飢饉、ジャガイモ飢饉、戦後の日本)
《現在》
爆発する人口を支えるために不可欠になりつつある農薬、化学肥料・・・。
「化学肥料なし、無農薬で70億人をまかなうことができるか」
農薬と化学肥料の影響
農薬の目的
・病害虫から農作物を保護し、収量を確保する。
・農作物の品質を保つ。(虫食いの野菜を防ぐ)
・雑草を取り除く手間を軽減する。
・カビ毒を防いで、食べる人の健康を守る。
等
1943年 DDT販売開始(難分解性)
1962年 レイチェル・カーソン「沈黙の春」
・・・生物濃縮によって鳥に蓄積、卵が孵らなくなったり殻が薄くる。DDT使用農家が発がん、肝臓への影響。
農薬の全てが問題なのだろうか
今も問題なのだろうか
食糧は確保できるのだろうか
品質はどこまで許容できるか
農薬について考えることをあきらめていないか
参考資料:松永和紀(2010)「食の安全と環境」日本評論社,シリーズ地球の人間の環境を考える⑪
農薬と化学肥料の影響
農薬の全てが問題なのだろうか
当初は食糧増産を目的に比較的毒性の大きな農薬が多用されたが、
・人やほかの動物などへの毒性が低く、ターゲットとなる病害虫や雑草などにのみ効果を発揮する選択毒性の研究も進みつつある。
・現在の農薬の多くは分解性が高く、使われても農産物が店頭に並んだ段階で不検出になっている場合も。
※ 一方で、自然環境中にいる昆虫や微生物への影響が軽視される傾向にあったことは否めない。(松永p40)
※ 同じ農薬を使い続けていると、虫や微生物、雑草などの中からその農薬に抵抗性を持つ者が現れてくる。そうした個体はほかの個体が死ぬ中で増殖できるため爆発的に増え、生産者を苦しめる。(中略)そのため意外なことだが、農薬メーカーも近頃は減農薬を否定していない。(松永p41)
今でも問題なのだろうか
参考資料:松永和紀(2010)「食の安全と環境」日本評論社,シリーズ地球の人間の環境を考える⑪
農薬と化学肥料の影響
※ 農家になる人が少ない中で、農薬に頼れないということはそれだけ農家に負荷がかかる。
→無農薬や減農薬野菜を求めるならば、それに見合った支払いをすることが不可欠(高くても買うという消費者の価値観が不可欠)
→農薬を使わない分、ガソリンを使って除草する・・・全体として考える必要がある。
※ 作物が障害もなく生長したときに得られる収量を100%とする
・病害虫や雑草を全く防除しない場合:34.2%
・農薬などを用いて防除した場合:61.9%
食糧は確保できるのだろうか
品質はどこまで許容できるか
スーパーに並ぶ野菜は、すべて同じ形、傷のないきれいな野菜
その品質を求めているのは、消費者
食べるのにはまったく支障のない、虫による小さな食害などを避けるために農薬が使われている
参考資料:松永和紀(2010)「食の安全と環境」日本評論社,シリーズ地球の人間の環境を考える⑪
農薬と化学肥料の影響
窒素化学肥料とは何か
・植物は窒素(N)やリン(P)、カリウム(K)などの無機物、水から、有機物を合成する。
・ただし、空気中の窒素を取り込むことはない・・・
↓
空気中の窒素をアンモニアを作る
「ハーバー・ボッシュ法」
第二次世界大戦以後の人口の急増
※ 懸念される富栄養化による
土壌、水系の汚染
参考資料:松永和紀(2010)「食の安全と環境」日本評論社,シリーズ地球の人間の環境を考える⑪
農薬と化学肥料の影響
※ 懸念される富栄養化による土壌、水系の汚染
●作物のうち「食べられない部分」に含まれる養分が流出
●飼料(トウモロコシなど)に含まれる養分が糞尿として流出
・・・特に日本は飼料(窒素)を輸入し、国内に貯め続けている状況
・・・どんどん富栄養化、水系の汚染が進む
※ 消費者がもとめるサシの入った
軟らかい肉をつくるためには、牧草
などの粗飼料ではなく、栄養豊富な
濃厚飼料が必要
現在は畜産から出るたい肥に加え、食品廃棄物を肥料化する取組・・・
肥料が余るのは当たり前
↓
農地を食品廃棄物のゴミ捨て場ではない
参考資料:松永和紀(2010)「食の安全と環境」日本評論社,シリーズ地球の人間の環境を考える⑪
テーマ例(5)
食料不足
MDGs(ミレニアム開発目標)の成果と課題
1.貧困と飢餓の撲滅
2.普遍的初等教育の達成
3.ジェンダー平等の推進と女性の地位向上
4.乳幼児死亡率の削減
5.妊産婦の健康
6.HIV/エイズ、マラリアその他の疾病
7.環境の持続可能性
8.開発のためのグローバルパートナーシップ
Goal1 2015年最終報告書における成果
Goal1 残る格差・課題
国・地域・性別・年齢・経済状況などの様々な格差
"取り残された人々“
→ 途上国の問題?
本当に食物は足らないのかな?
https://www.unic.or.jp/activities/economic_social_development/sustainable_development/2030agenda/global_action/mdgs/(国際連合広報センターHP, 2015:グローバルな行動のとき, MDGsの8つの目標,2022年1月7日確認)
2000年9月国連ミレニアム・サミット(ニューヨーク)で採択
2015年までに達成すべき8つの目標
しかし実際には、穀物生産量は世界の人が
必要とされている量の2倍近く生産されている
それにもかかわらず、
世界の人口の8.9 %
11人に1人が
飢餓に陥っている。
これまで減少していたが、
近年は上昇しつつある。
https://www.fao.org/3/ca9692en/online/ca9692en.html#chapter-1_1(The State of Food Security and Nutrition in the World 2020,PART 1 FOOD SECURITY AND NUTRITION AROUND THE WORLD IN 2020,FIGURE 4 PoU IN LATIN AMERICA AND THE CARIBBEAN BY SUBREGION, WITH PROJECTIONS TO 2030. PROJECTIONS POINT TO CONVERGENCE BETWEEN CENTRAL AMERICA, WHERE UNDERNOURISHMENT IS PROJECTED TO INCREASE, AND THE CARIBBEAN, WHERE IT IS PROJECTED TO DECLINE ,2022年1月7日確認)
本当に食物は足らないのかな?
十分な食料が生産されているのに、なぜ飢餓がうまれるのか?
食料問題の要因と考えられる例
● 気候変動による自然災害が多発し、洪水・干ばつ・土砂災害・気温の上昇などによって、特定の地域で生産被害を受ける。
●紛争が起これば、食料は生産できなくなったり食料の輸送ができなくなる。
●輸送によって生産物の価格が上がり、購入できない。
●全穀物の40%が、日本やアメリカ、ヨーロッパなどの工業先進国(全人口の約1/5)で、消費されている。…穀物が家畜のえさとして消費されている。
なぜ飢餓がうまれるのか?
https://www.jica.go.jp/tsukuba/topics/2010/docs/110202_01.pdf(独立行政法人国際協力機構 MDGs エム・ディー・ジーズを知っていますか? ミレニアム開発目標(Millennium Development Goals)<飢餓の原因>,2022年1月7日確認)
おわり