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こども基本法と�こども家庭庁について学ぶ

弁護士 佐藤 力

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子どもをとりまく現状

  • コロナ禍でこどもの成長が奪われた(黙食、イベント中止)
  • 子どもの声を聞かない(ブラック校則)
  • 子どもは発達途上人???「ことな」???
  • 人格無視、虐待(性教育の歯止め)
  • うつ症状と過去最大の自死数
  • 精神的幸福度ワースト2位(ユニセフ)
  • (尾木ママ講演会2023年3月18日「子ども新時代がやってくる」より)

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子どもの権利を考える

  • 子どもを権利の主体と認め、ひとりの人間として扱う
  • 「子女」→「子供」→「子ども」→「こども」
  • 慈恵的な保護の対象・客体から、基本的人権を享有する主体的な存在へ
  • 子ども自身の選択・決定を大切にする

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子どもの権利を考える

  • 「みずから学習することのできない子どもは、その学習要求を充足するための教育を自己に施すことを大人一般に対して要求する権利を有する」
  • 「個人の基本的自由を認め、その人格の独立を国政上尊重すべきものとしている憲法の下においては、子どもが自由かつ独立の人格として成長することを妨げるような国家的介入、例えば、誤った知識や一方的な観念を子どもに植えつけるような内容の教育を施すことを強制するようなことは、憲法26条、13条の規定上からも許されない」
  • →学校の主役は「子ども」
  • (旭川学テ事件最高裁判決・昭和51年5月21日判タ336号138頁)

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子どもの権利を考える

  • 「児童の権利に関する条約」( United Nations Convention on the Rights of the Child「子どもの権利条約」ともいう)
  • 日本国内では1994年5月22日から効力が発生
  • 締約国は児童の最善の利益のために行動しなければならない(第3条)
  • 国連から繰り返しの勧告
  • →条約は法律よりも効力が上のはず
  • →しかし、29年間無視

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こども基本法制定まで

  • 令和4年4月4日自由民主党・公明党から衆議院に議案提出
  • 議案提出者:加藤勝信議員ほか10名
  • <衆議院内閣委員会における審議>
  • 令和4年5月17日衆議院において可決
  • 賛成会派:自由民主党、立憲民主党・無所属、日本維新の会、
  • 公明党、国民民主党・無所属クラブ、有志の会
  • 反対会派:日本共産党、れいわ新選組

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こども基本法制定まで

  • <参議院内閣委員会における審議>
  • 令和4年6月15日参議院において可決、成立
  • 賛成会派:自由民主党・国民の声、立憲民主・社民、日本維新の会、
  • 公明党、国民民主党・新緑風会
  • 反対会派:日本共産党
  • 令和4年6月22日公布
  • 令和5年4月1日施行

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こども基本法

  • 第1条 この法律は、日本国憲法及び児童の権利に関する条約の精神にのっとり、次代の社会を担う全てのこどもが、生涯にわたる人格形成の基礎を築き、自立した個人としてひとしく健やかに成長することができ、心身の状況、置かれている環境等にかかわらず、その権利の擁護が図られ、将来にわたって幸福な生活を送ることができる社会の実現を目指して、社会全体としてこども施策に取り組むことができるよう、こども施策に関し、基本理念を定め、国の責務等を明らかにし、及びこども施策の基本となる事項を定めるとともに、こども政策推進会議を設置すること等により、こども施策を総合的に推進することを目的とする。
  • →こどもまんなか社会?

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こどもまんなか社会

  • 「常に子供の最善の利益を第一に考えて、子供に対する取組、政策が我が国社会の真ん中に据えられる社会」
  • 「子供が保護者や社会の支えを受けながら自立した個人として自己を確立していく主体、言い換えれば、権利の主体であることを社会全体で認識すること」
  • 「子供の意見を年齢、発達段階に応じて尊重し、そして、子供の権利を保障し、子供を誰一人取り残さず、健やかな成長を後押しする」
  • (第208回国会衆議院内閣委員会会議録2022年4月22日野田国務大臣答弁)

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こども基本法

  • 第2条1項 この法律において「こども」とは、心身の発達の過程にある者をいう。
  • →年齢で定義しない
  • →「未成年者」、「若者」、「児童」、「少年」、「青少年」
  • 第2条2項「こども施策」
  • ① こどもに関する施策=こどもの健やかな成長や就労、結婚、妊娠、出産育児の各段階に応じて行われる支援
  • ② 一般的に講ずべき施策=家庭に関する支援、若者に関する支援

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こども基本法

  • 第3条 基本理念
  • 差別的取扱の禁止(1号)
  • 生命、生存、発達の権利(2号)
  • こどもの意見の尊重(3号及び4号)
  • →子どもの権利条約の一般原則を示す
  • →「家庭」(5号及び6号)?

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こども基本法

  • (国の責務)
  • 第4条 国は、前条の基本理念(以下単に「基本理念」という。)にのっとり、こども施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。
  • (地方公共団体の責務)
  • 第5条 地方公共団体は、基本理念にのっとり、こども施策に関し、国及び他の地方公共団体との連携を図りつつ、その区域内におけるこどもの状況に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。

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こども基本法

  • (事業主の努力)
  • 第6条 事業主は、基本理念にのっとり、その雇用する労働者の職業生活及び家庭生活の充実が図られるよう、必要な雇用環境の整備に努めるものとする。
  • (国民の努力)
  • 第7条 国民は、基本理念にのっとり、こども施策について関心と理解を深めるとともに、国又は地方公共団体が実施するこども施策に協力するよう努めるものとする。
  • →ワークライフバランスの実現

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こども基本法

  • こども大綱(9条)
  • 地方こども計画(10条)
  • こども政策推進会議(17条)
  • →国・地方公共団体において、こども施策を策定・実施・評価するに当たり、施策の対象となる「こども」や「子育て当事者等」の意見を幅広く聴取して反映させるために必要な措置を講ずることを定めている(11条)
  • →「国」には行政府のみならず、立法府や司法府も含まれる

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弁護士からのアドバイス

  •  児童の権利に関する条約第12条では、個々のこどもに直接影響を及ぼす司法上・行政上の決定・措置に関する手続において当該こどもに対して意見を聴取する機会が与えられることが定められています。この趣旨を踏まえ、本法第3条第3号が規定されており、こども基本法11条においてもこどもの意見の反映を規定しています。
  •  こどもから意見を聴くためのSNSや居場所造りなど、様々な手法を組み合わせ、脆弱な立場に置かれたこどもをはじめ様々な状況にあるこどもや低年齢のこどもを含めて、多様なこどもの声を聴くように努めることが重要となります。
  •  こどもの参加(参画)

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こども基本法

  • 関係者相互の有機的な連携の確保等(13条・14条)
  • →都道府県及び市町村は、こども施策が適正かつ円滑に行われるよう、前項に規定する業務を行う関係機関及び地域においてこどもに関する支援を行う民間団体相互の有機的な連携の確保に努めなければならない(13条2項)
  • →協議会の構成員として民間団体の参加(13条3項)

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こども家庭庁

  • 政府の中のこども政策全体のリーダー
  • →縦割り行政の排除
  • 新しい課題への対応
  • →こどもの目線を大切にし、地方自治体、民間団体(NPO)との協力、連携

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こども家庭庁

  • こども家庭庁の所掌事務(こども家庭庁設置法4条)
  • ① 育成部門(妊娠、出産、母子保健など)
  • ② 支援部門(こどもの包括支援、貧困対策など)
  • ③ 企画・立案・総合調整部門

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今後の課題

  • 「家庭」????
  • 「こども政策推進会議」、「こども家庭審議会」、「こどもまんなかフォーラム」、「こども未来戦略会議」????
  • 子ども家庭庁には、教育行政が移管されていない
  • あくまで一般原則に止まる
  • 子どもの意見をどのように反映させるか
  • 子どもコミッショナー(子どもの権利を監視、評価する独立の機関)

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弁護士からのアドバイス

  • 子ども新時代がやってくる(尾木直樹)
  • →生徒指導提要改訂(2022年12月)
  • 多様な施策において、子どもの意見を反映(11条)させるためには、民間団体の活動が不可欠
  • →子どもはしゃべってくれない
  • 民間団体相互の有機的連携(13条2項)の意義
  • 「こどもまんなか社会」と「異次元の少子化対策」
  • 弁護士とも連携を

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参考資料

  • 日本弁護士連合会子どもの権利委員会編「子どもコミッショナーはなぜ必要か 子どものSOSに応える人権機関」(明石書店・2023年2月20日)
  • 日本弁護士連合会子どもの権利委員会編著「子どもの権利ガイドブック〔第2版〕」(明石書店・2021年1月15日)
  • 内閣官房こども家庭庁設立準備室「こども基本法説明資料」