1 of 56

佐賀県唐津地区広域地域リハ研修会2025/07/03(木)済生会唐津病院

     口腔内を意識しよう

 ~咀嚼と認知症の関連性やオーラルフレイルなど~

本多知行(ゴックン先生)

  • 大阪保健医療大学言語聴覚専攻科客員教授
  • 日本嚥下医学会認定嚥下相談医
  • 日本リハビリテーション医学会専門医・臨床認定医
  • 日本摂食嚥下リハビリテーション学会評議員・嚥下認定士
  • 日本嚥下障害臨床研究会顧問

2 of 56

  • (摂食・)嚥下障害の開始頃
  • 摂食機能療法の成り立ち 
  • 口腔ケア・誤嚥性肺炎について
  • 医科歯科連携・認知症について
  • フレイル・オーラルフレイルについて

本日の話題

3 of 56

1996年

(摂食・)嚥下障害

私の嚥下障害治療は1988年から始まった!

嚥下障害に対応する重要性

(摂食・)嚥下障害

【先行期・準備期・口腔期

  →歯科医・医師

【咽頭期・食道期】

   →医師

2000年

4 of 56

5 of 56

会場:東京都リハビリテーション病院の理学療法室

1994年 第0回摂食嚥下リハビリテーション学会

摂食嚥下リハビリテーション

脳卒中患者の口の中のことは誰も知らないでいました.

歯科は摂食嚥下障害の口腔相の専門科として期待しています.            佐賀社会保険病院 本多知行氏

植田 耕一郎先生 提供

6 of 56

    リハビリテーション

  “かかわりの医学”である

         

             本多知行氏

植田 耕一郎先生 提供

7 of 56

80歳以上人口の比較表(日本)

年    総人口(概数)    80歳以上(概算)   80歳以上(推定)

1989年   約1億2,295万人       約2〜3%  約250〜370万人

2024年   約1億2,400万人前後     約10.4%      約1,290万人以上

1989年

2016年

2022年

 約7%

51.2%

51.6%

劣悪な口腔!!

8020運動

上田敏雄先生提供

8020運動

8 of 56

摂食機能療法

歯科から摂食嚥下リハ概念はスタートしていた!!

口唇口蓋裂は先天的な構音・哺乳・嚥下障害を持つため、歯科(特に口腔外科・矯正・小児歯科)が初期から中心的に介入。治療管理料的な内容ですでに摂食嚥下リハビリがなされていた。つまり歯科は「形態修復+機能訓練(構音・嚥下)」を一体として診療しており、総合治療の一部として評価されていた(1982年~

医科の摂食機能療法

脳血管障害などによる嚥下障害に対して摂食嚥下リハを実施:1996年に算定開始(185点月4回まで)→2006年に改訂3か月間毎日算定に改定された。

9 of 56

口腔ケア

10 of 56

劣悪な口腔環境

口腔内はゴミ箱!!

上田敏雄先生提供

11 of 56

食べていない人

  経口摂取していなくて肺炎を発症

  • グラム陰性嫌気性桿菌は口蓋・舌に生息→舌・口蓋の粘膜ケア
  • 口腔乾燥による口腔内細菌の繁殖が常である

食べていても

不十分な人

口腔ケア

12 of 56

口腔ケアは誤嚥性肺炎の予防になる

  ~ 佐賀県伊万里市からも発信 ~

 1999年 特別養護老人ホーム「長生園」

 伊万里・有田歯科医師会:上田歯科上田先生

 THE LANCET (1999年) Oral care and pneumonia

口腔ケア

13 of 56

伊万里上田歯科 上田先生提供

佐々木英忠先生

米山武義先生

森田知典先生

14 of 56

研 究 班

対 象 施 設

協 力 機 関

仙 台 班

社会福祉法人 無量壽会

特別養護老人ホーム 寶樹苑

社団法人仙台歯科医師会

郡 山 班

社会福祉法人 愛星福祉会

特別養護老人ホーム 星ヶ丘ホーム

奥羽大学歯学部歯科保存学第一教室

葛 西 班

社会福祉法人 清音会

特別養護老人ホーム 暖心苑

医療法人星秀会

東京都歯科衛生士会

府 中 班

社会福祉法人 一誠会

府中市立特別養護老人ホーム よつや苑

社団法人府中市歯科医師会

府中市福祉部健康課

与 野 班

社会福祉法人 明日栄会

特別養護老人ホーム きりしき

与野市歯科医師会

与野市保健センター

浜 松 班

社会福祉法人 聖隷福祉事業団

特別養護老人ホーム 森町愛光園

浜松医科大学歯科口腔外科学教室

静岡県歯科衛生士会西部支部

伊 豆 班

社会福祉法人 十字の園

特別養護老人ホーム 伊豆高原十字の園

POHC研究会

掛 川 班

社会福祉法人 和松会

特別養護老人ホーム 松寿園

有海歯科医院

静岡県歯科衛生士会西部支部

尼 崎 班

社会福祉法人 阪神共同福祉会

特別養護老人ホーム 園田苑

社団法人尼崎歯科医師会

社団法人兵庫県歯科衛生士会尼崎支部

広 島 班

社会福祉法人 双樹会

特別養護老人ホーム 陽光の家

広島大学歯学部歯科補綴学第一講座

伊万里班

社会福祉法人 長生会

特別養護老人ホーム 長生園

伊万里・有田地区歯科医師会

同地区歯科衛生士有志

全国11か所

15 of 56

16 of 56

期間中の

発熱発生率

期間中の

肺炎発症率

  • 366名(口腔ケア群184名:平均82.0歳)対照群182名:平均82.1歳
  • 口腔ケア:①「施設介護者もしくは看護婦による毎食後の歯磨きと1%ポピドンヨードによる咳嗽②週1回の歯科医師あるいは歯科衛生士による専門的・機械的な口腔清掃

17 of 56

口腔ケアをしないとどうなる?具体的に何をどうする?

  • バイオフィルムには多種多様の細菌が存在

  →持続的感染症

  • 粘液性の多糖がバリア→消毒液や抗生物質が細菌まで到達しない   難治性感染症

18 of 56

  • 歯周ポケット内面に微小潰瘍

 →細菌やその成分   が血液中に入る

→血管を巡り全身

歯周病

呼吸器疾患

動脈硬化

心臓病

早期低体重児 出産

糖尿病

歯周病が全身に及ぼす影響

19 of 56

口腔ケアシステム(5分/日で行う)角保徳先生

  1. 口腔粘膜から歯茎の清掃(バイオフィルムを破壊し細菌を遊離させる)→口腔ケアスポンジで1分
  2. 舌の清掃(舌苔をこすり除去する)→舌ブラシで30秒
  3. 歯面、義歯の清掃→電動歯ブラシで2.5分
  4. 咳嗽(1~3の清掃で遊離した細菌を口腔外に排出する)→うがい薬または給水・吸引(吸引器を適宜使用)で1分

何か抜けていない??

20 of 56

  • 食後4時間以上経過、ブラシの直前、直後、汚染物除去後、 除去後1時間後、舌・口蓋・歯肉頬部(移行部)の細菌数を測定
  • 汚染除去方法:①注水洗浄②口腔用ウエットティッシュ(WT)での拭き取り③スポンジブラシ(SB)での拭き取り
  1. 洗浄:移行部において有意に減少、しかし舌・口蓋では細菌数の有意な減少なし
  2. WT舌・口蓋・移行部すべてで有意に減少口蓋・移行部ではブラシ直後と比較して1時間後でも有意に減少
  3. SB:移行部有意に減少舌では有意差なし

池田真弓ら:口腔ケア後の汚染物質除去手技の比較ー健常者における 予備的検討-.日摂食嚥下リハ会誌17(3):233-238,2013

21 of 56

「汚染物の回収」が重要

  • 誤嚥させないように口腔・咽頭を洗浄
  • 口腔・咽頭を的確に吸引
  • 歯ブラシ

 -吸引しながら

 -歯磨き剤:抗菌、ジェル(飛散しにくい)

  • 汚染物の清拭
  • 口腔湿潤剤(抗菌性)

22 of 56

口腔ケア= (バイオフィルムの)破壊と回収       

破壊      -歯みがき・機械的清掃

回収(歯垢など)-吸引

        -不織布での清拭

口腔ケアーシート

口腔ケアガーゼ

サクションスワブ

サクションブラシ

23 of 56

舌苔の消失

一口でも経口摂取の機会を得ることで,舌苔は消失していく

誤嚥性肺炎(口腔内細菌由来)は、食べながら治す

(日本大学歯学部摂食機能療法講座 植田耕一郎先生提供)

24 of 56

初診時の所見

b 口腔内所見

歯肉腫脹が目立つ.

歯肉からの易出血にて口腔内環境の悪化

 a 全身像

ADLは全介助

(日本大学歯学部摂食機能療法学講座 植田耕一郎先生提供)

25 of 56

車椅子操作訓練開始時の所見

a この時点で食事行為は自立

b 新義歯の装着となった.

歯科医療従事者による口腔清掃は継続していたが,これ以上の歯肉状態の改善はみられない.

(日本大学歯学部摂食機能療法学講座 植田耕一郎先生提供)

26 of 56

歩行訓練実施時の所見

a 日常生活活動が全般

自立にむかっている

b 歯肉状態は腫れが消えて改善した

全身機能の回復とともに、口腔内環境の改善が認められ、さらに全身機能への好循環となった.

(日本大学歯学部摂食機能療法学講座 植田耕一郎先生提供)

27 of 56

医科歯科連携

28 of 56

欧米1980年~

日本2000年~

咀嚼と認知症・認知機能に関する論文数

日補綴会誌12巻2号(2020)

29 of 56

食べること(咀嚼能力)と認知機能

口腔機能と認知機能の関連についての近年の研究

  • 1500名対象で5年間の前向き研究(Takeuchiら2017)

 現在歯数が少ないほど認知症の発症リスクが高くなる

  • 4400名対象で4年間の前向き研究(Yamamotoら2012)

現在歯がほとんどなく義歯未使用の者は、現在歯数が20本以上の者と比較して認知症発症リスクが約1.9倍高くなる。現在歯がほとんどなくても、義歯を使用することで認知症発症リスクを下げることができる可能性がある

30 of 56

日本人対象の大規模疫学調査

1)愛知老年学的評価研究(AGES:Aichi Gerontological Evaluating Study) 約4000人・4年間前向きコフォート研究

歯がほとんどなく義歯を使用しない者は認知症のリスクが高い②しかし、歯がほとんどなくても義歯使用により認知症のリスクは20歯以上の有歯顎者とほぼ同等

2)九州大学久山町研究(久山町の住人はほぼ平均的な日本人の集団:50年以上の調査)→歯の喪失は認知症・アルツハイマー病のリスクと相関する

3)大阪大学と東京都健康長寿医療センター研究所調査(SONIC研究)3000名が参加(複数の地域に在住70・80・90・100歳の人たちを対象)→咬合力は認知機能と直接関係している、臼歯部サポートの欠如は認知機能減退に影響している

31 of 56

咀嚼と認知症に関するレビュー:         木本克彦、Ann Jpn Prothodent Soc 12:135-143,2020

疫学調査研究(横断研究・コフォート研究:前向き研究)

①横断研究ー支持(15編)・支持しない(6編)☜ある時点の調査

②コフォート研究ー支持(14編)・支持しない(4編)☜前向き原因結果が判明

③システマティックレビューやメタ分析ー咀嚼が認知症・認知機能の危険因子であるという結論はない

結論咀嚼と認知症・認知機能との関連性については支持する 報告が多いものの、その根底にあるメカニズムは解明されていない→医科歯科連携研究体制、包括的な調査研究の展開、神経画像研究の進歩が寄与

32 of 56

今後の課題と研究展開

1.疫学調査では

  • 咀嚼機能の評価が十分されていない→咀嚼能力・咀嚼効率・咬合力
  • 認知機能の評価:学習・記憶中心→注意・遂行機能・視空間認知・ 言語・計算。HDSRやMMSE→MOCA-JもMCIなら必要
  • 交絡因子の調査:認知症は多因子疾患(中年期:聴力低下・高血圧・肥満、高齢期:喫煙・うつ・運動不足・社会的孤立・2型糖尿病が 認知症の独立危険因子:Lancet2017:390:2673-2734)
  • 長期的な追跡調査:正常な老化や加齢現象は運動機能や認知機能の低下を伴う

33 of 56

  •  Onozuka et al.(2002)による fMRI研究             「Mapping brain region activity during chewing」

  1. 対象:20〜31歳の健康な成人17名内容
  2. 方法:ガムを噛むときと噛まないときを比較したfMRI実験
  3. 結果:両側の 体性感覚・運動皮質, 補足運動野(SMA), 島皮質, 視床, 小脳 のBOLDシグナルが増加 。噛む硬さ(中硬度 vs 高硬度)でも、硬さによってシグナル強度が異なる領域あり。
  4. 結論:噛むという動作は、単なる「口の運動」にとどまらず、  感覚・運動連携ネットワークを活性化。小脳や補足運動野など、 協調運動制御に関わる領域も動員。

医科歯科連携

34 of 56

神経画像研究(ニューロイメージング):機能的共鳴画像解析(fMRI)

感覚の情報経路の視床一次体性感覚野、運動を筋肉に 指令する一次運動野、円滑な運動を指令する補足運動野、運動学習・記憶を担当している小脳、口腔顎顔面領域からの感覚情報を統合し情動や 身体感覚の認識に関わる島皮質、認知機能にも深く関連する前頭前野が活性化した。

35 of 56

  • Padmanabhan et al.(2021)

「Comparison of conventional and implant-retained overdentures on brain activity...」

  1. 対象:義歯使用高齢者10名内容
  2. 方法:通常義歯 vs インプラントオーバーデンチャー(総入れ歯vsインプラントを埋め込んだ土台に固定する義歯)でガムを噛み、fMRI比較
  3. 結果:運動野, 前頭前野, 海馬, 島皮質など複数の領域で活動を確認
  4. 結論:義歯の安定性・効率的な咀嚼が脳機能の活性に良い影響を与える可能性があるIOD(インプラント義歯)は、単なる咀嚼効率の改善だけでなく、認知機能の維持にも貢献するかもしれない

医科歯科連携

36 of 56

咀嚼能力低下から認知機能の低下につながる2つの経路(Miquel Sら;2018)

1)咀嚼能力低下による脳血流量の減少

咀嚼によって前頭葉の血流増加15%あり(Sessay Mら;2000)

弾性アプライアンスを義歯に装着して咀嚼様運動を行うことでも前頭葉の血流増加(山本悠ら;2018) 

2)咀嚼能力低下による栄養状態の悪化

☞咀嚼能力が低下することで摂取可能食品の制限、食事摂取量減少、栄養不足や体重減少引き起こし、食品摂取の多様性の低下が認知機能の低下につながる(Otsuka Rら;2018)

咀嚼能力低下→認知機能低下となる経路?

医科歯科連携

37 of 56

口腔機能低下から認知症発症への予想経路(山本龍生ら;2017)

認知症発症

う 蝕

歯の喪失

義歯の未使用

歯周病

慢性炎症

咀嚼能力の低下

脳の認知領域の変化(血流低下

食品選択の変化

栄養状態の変化

かかりつけの歯科医院の役割

  • 治療
  • 口腔保健活動

38 of 56

オーラルフレイル

39 of 56

  • 加齢に伴う予備能力の低下・ストレスに対して対応しきれなくなり、生活機能障害、要介護状態、死亡などを引き起こす状態
  • 身体的問題(筋力低下)のみならず、認知機能障害やうつなどの精神・心理的問題、独居や経済的困窮などの社会的問題を含む概念
  • しかるべき介入により再び健常な状態に戻る可能性あり

フレイルとは

40 of 56

年齢(Aging)

予備能力

No Frailty

(健康)

Frailty

(フレイル)

Disability

(身体機能障害)

要支援・要介護の

危険が高い状態

要支援・要介護の状態

100

病気・ストレス

健康寿命

生物学的寿命

41 of 56

オーラルフレイルとは

オーラルフレイル(口の脆弱化)定義 Oral +Frailty の造語(2013)

老化に伴う様々な口腔の状態(歯数・口腔衛生・口腔機能など)の変化に口腔健康への関心の低下心身の予備能力低下も重なり、口腔の脆弱性が増加し、食べる機能障害へ陥り、さらにはフレイルに影響を与え、心身の機能低下にまでつながる一連の現象及び過程。

42 of 56

43 of 56

オーラルフレイルとは

☞ 口腔機能低下症(2018)保険診療

口腔衛生・口腔乾燥・咬合力・舌口唇の運動・舌圧・咀嚼機能・嚥下機能

44 of 56

オーラルフレイルのチェック項目(Oral frailty 5 items Checklist:OF-5)

45 of 56

46 of 56

OF-5の結果

  • 地域在住高齢者の約4割がオーラルフレイル

  • フレイル、食品摂取の多様性(DVS)、社会交流  (LSNS-6)、要介護認定、死亡と関連する

  • より早期の段階から住民に対して口腔機能の「軽微な衰え」を認識
  • 医科歯科を中心とした多職種協働によるオーラルフレイル対策の底上げ

多様性の低い食事

オーラルフレイル

身体的フレイル

社会的孤立

×

47 of 56

48 of 56

49 of 56

50 of 56

オーラル

フレイル

日本老年歯科医学会HP提供

51 of 56

提供;日本歯科医師会HP:日歯8020テレビより

(7分)

(5分)

52 of 56

53 of 56

日本老年医学会HPより

54 of 56

55 of 56

日本老年医学会HPより

56 of 56