日本の農牧業をカントリーマアムでみる!
―物産地理に抗う―
・もしお使いになられる先生方はストーリー展開の順番や伝えたい内容の過不足があろうかと思いますので、適
宜改変してお使いください。ただし、カントリーマアムのロゴや商品パッケージは不二家のHPの許諾に基づい
て使用しているため改変や転載などはできません。また原材料の説明はカントリーマアムの商品自体のものでは
なく、一般論として地理の教材用に筆者が作成したものです。商品にはリニューアルや終売があります。
・なお、教材を改変してお使いになっても、全地研への許諾請求等は一切不要です(詳しくは クリエイティブ
コモンズ CC BY 4.0 で検索を)。
・教科書などに載っているような基本的な説明や図はあまり掲載しない方針です。必要な基礎基本の知識・技能
は教科書や資料集でご確認ください。
・作成内容は作成者の所属組織とは一切無関係です。社会貢献活動として所属先の授業とは関係なく独自に作成
等を行っています。様々な権利や立場の方への配慮により、所属組織の関係者から得た特別な情報・資料などは
使用していません。
©髙橋裕/全地研 CC BY 4.0
カントリーマアムとは
・不二家(FUJIYA)が製造・販売しているクッキー
・子どもから大人まで人気のロングセラー商品
・日本各地の特産品を扱ったものや、地域限定
商品が多数ある。
・大半を神奈川県秦野
で製造
・アメリカの田舎のお母さん
が手作りしたクッキーをイメ
ージして作られた。
不二家HP(https://www.fujiya-peko.co.jp/contact/faq/faq01/s009.html)
・過去にはアメリカのテレビドラマ「大草原の小さ
な家」の母役カレン・グッラスル氏をCMに起用。
・クッキーは小麦を主原料にした焼き菓子。
※米国では西経100度付近の年降水量500mm程度の広大な土地で小麦栽培
→上述のドラマの舞台とも重なるか(カンザスやミネソタ等)
・アメリカの家庭ではクッキーをよく手作りする。
米国でホームステイした当教材作者の経験では、その家庭が作るクッキーはカントリー
マアムより甘くしっとりしていたが、カントリーマアムを食べると当時を思い出す。
※原材料の記述は、カントリーマアムの商品自体の説明ではありません。また商品自体はリニューアルや終売がありえます。
【キー概念】
「物産地理」
各地域の地名や産物(物産)などを単に知識として覚えるというような、かつて流布していた地理学習。
地名や産物を知っているのは重要。
しかし、それらを暗記するだけの地理学習に、どれだけの意義があるのか。
背景知識として、事象を場所的・空間的・地域的に考察
したり、人間と自然との関係を論じたりせねばならない。
※以下のスライドで紹介する背景知識はすべてが必ずしも高校地理で必須の内容という
わけではありませんが、物産地理に抗う意味で高校地理に必須でない情報も記します。
カントリーマアムでみる各地の特産品
1.北海道のミルクソフト
2.青森のりんご
3.信州の巨峰
4.京都の抹茶
5.福岡のイチゴ(あまおう)
※原材料の記述は、カントリーマアムの商品自体の説明ではありません。また商品自体はリニューアルや終売がありえます。
1.北海道のミルクソフト
根釧台地で酪農が発達した背景
・寒冷地・泥炭地のため耕作に不向き
※牧草などしか育ちにくい
※暑さに弱い乳牛(ホルスタイン種)の飼育に適する
※冷涼であることから生乳・乳製品が腐りにくい。
・殺菌・冷蔵技術の向上による酪農地域の広域化
※生乳は腐りやすく、都心部など限定的な地域でしか行えなかった。
・歴史的政策(北海道開拓・パイロットファーム・新酪農村など)
※パイロットファーム(1955~1965)…世界銀行の融資による実験
農場。近代的な経営を行う。
※新酪農村…1973年から国家プロジェクトとして整備。
※原材料の記述は、カントリーマアムの商品自体の説明ではありません。また商品自体はリニューアルや終売がありえます。
1.北海道のミルクソフト
※北海道チーズ味もあります!
生乳は腐りやすく重量もあって、消費地から遠い地域(北海道など)ではチーズやバターに加工して出荷。
新酪農村https://earth.google.com/web/search/%e6%96%b0%e9%85%aa%e8%be%b2%e6%9d%91/@43.32112016,145.14678723,39.3269251a,187.22746557d,35y,178.47732482h,75.31945657t,0r/data=CigiJgokCcKitSb7tEdAEQHlLDhyd0dAGRYlPYpUTGJAIY6V883nL2JA
画像は不二家HPより
※原材料の記述は、カントリーマアムの商品自体の説明ではあ りません。また商品自体はリニューアルや終売がありえます。
北陸農政局Webサイト
https://www.maff.go.jp/hokuriku/seisan/engei/tokusan201811.html
岩木山東麓のGoogle earth
https://earth.google.com/web/@40.63994588,140.36945737,162.17697591a,11036.89394225d,35y,0.00000001h,72.55052895t,0r
2.青森のりんご
・冷涼地である
※栽培適地は寒冷地(原産地は中央アジアの山岳地帯)
・明治初期に国から苗木が配られて栽培開始(殖産興業)
・冷害の回避による稲作以外の必要性
※リンゴは高価になるため収入源にしやすい
画像は不二家HPより
※原材料の記述は、カントリーマアムの商品自体の説明ではありません。また商品自体はリニューアルや終売がありえます。
青森県でのりんご栽培の背景
・りんごは日持ちが良い=消費地から遠くても輸送可
近年は品種改良などで、より多くのりんごを栽培。
3.信州の巨峰
・降水量が比較的少なく年較差も大きい
→糖度が増して果樹栽培に適する
・明治時代以降、殖産興業のためりんご
を栽培していた。養蚕も元々盛んだった。
→WWⅡ後の養蚕業衰退、他果樹・他地域との競合
激化、価格低迷、腐らん病の多発で巨峰へ転換。
→巨峰生産が日本一になる
※ぶどう生産量は山梨県に次ぐ2位(2017年)
参考文献
市川康夫・市村卓司・村田裕·仁平尊明 2009.長野県中野市における果樹園芸の地域的特色.地域研究年報31:21-44
内山幸久 1995.長野県小布施町における果樹生産と共同組織の変化.立正大学人文科学研究所年報32:51-63
画像は不二家HPより
※原材料の記述は、カントリーマアムの商品自体の説明ではありません。また商品自体はリニューアルや終売がありえます。
長野県での巨峰栽培の背景
3.信州の巨峰
ぶどうの豆知識
日本の果物は高品質で海外に販路を広げている。
ぶどうは品種が豊富
4.京都の抹茶
・歴史的な茶栽培と喫茶などの文化
※鎌倉時代、栄西が中国から日本に茶を伝える。
→明恵が宇治に茶を伝える。
→高級文化・ブランドとして根付く。
・十分な降水量があり、年較差が大
きめで霜が降りにくい。
栽培適地の丘陵地も多い。
※京都府内では特に南部の宇治田原や山城地域
で生産。京都府の茶生産は日本で5位(2017年)
宇治地域の茶(出典:Wikipedia)
画像は不二家HPより
※原材料の記述は、カントリーマアムの商品自体の説明ではありません。また商品自体はリニューアルや終売がありえます。
京都府での茶栽培の背景
5.福岡のイチゴ
福岡県での「あまおう」生産
命名の由来は「あかい・まるい・おおきい・うまい」
・福岡県で開発、福岡県限定で生産
=ご当地ブランドとしての付加価値
※これまでは「とよのか」があったが、着色がよく
光沢のある「あまおう」開発で急速に品種切り替え
・日本の気候が全体的にイチゴ栽培に適する。
※栃木県や熊本県など各地で生産。福岡県は生産量2位(2017年)。
画像は不二家HPより
※原材料の記述は、カントリーマアムの商品自体の説明ではありません。また商品自体はリニューアルや終売がありえます。
「あまおう」の豆知識