1 of 27

森林環境譲与税を活用した事業が�経済・環境へ与える影響

1

林業経済学会 2022年 秋季大会

滋賀県立大学院 環境科学研究科 森一真

滋賀県立大学 環境科学部 高橋卓也 

-経済波及効果と環境便益の推定-

2 of 27

2

森林管理の現状と改善

2019年4月 森林経営管理法が施行

市町村が経営に適さない森林管理が可能

2019年4月 国税・森林環境税が創設

市町村の取組は森林環境税を財源として充当

森林経営管理法

国税・森林環境税

3 of 27

3

国税・森林環境税・森林環境譲与税について

森林環境税:2024年から年額1000円の納税

森林環境譲与税:一定基準に基づき按分

納税者

6200万人

特別会計

全国

1741

市区町村

森林環境税

森林環境譲与税

4 of 27

4

新たな税負担「森林環境税」をめぐって

地方税

国税

国税・森林環境税追加

2019年に地方税・森林環境税が37府県で導入済み 

そして国税を導入することで新たな税負担が追加

地方税

5 of 27

5

地方税

国税

税創設で実施した事業の妥当性が求められている.

そのために税活用による事業効果を評価が重要

事業の

妥当性

事業効果の評価

税負担の追加

応じる

新たな税負担「森林環境税」をめぐって

6 of 27

6

森林環境譲与税の評価方法について

事業効果

経済面

評価方法

環境面:森林の多面的機能の向上

経済面:雇用の創出による地域活性化

環境面

7 of 27

7

先行研究の整理

信州信濃町癒しの森事業を対象に森林セラピー事業の経済効果について分析し,波及効果を算出.(横山ら,2018)

木造駅舎改修事業を対象に多摩産材の利用による経済効果について分析し,波及効果を算出.(森井ら,2020)

しかし森林環境譲与税を活用した事業による経済効果を算出した研究は見当たらない

8 of 27

8

研究の目的・意義・研究方法

目的:税導入により実施される4事業を想定し,経済効果や多面的機能を算出・評価し,経済効果について市町間比較で比較する.

意義:森林環境譲与税の活用において事業選択時の参考になる.

研究方法:1)文献調査 2)地域選定 

3)データ収集 4)産業連関分析  5)費用便益分析

9 of 27

9

地域選定

本研究の対象地域は林業が盛んでなく,

都市部でない都道府県内の市町村と設定

山村地域

森林管理

都市部

木造化

それ以外

事業選択の議論

明確な税用途を持つ

持ちにくい

10 of 27

10

地域選定

下記の条件を満たす都道府県は4県.

地方税との棲み分けを解決している滋賀県19市町を選定.

都道府県別の私有林人工林面積1haに対しての林業統計を計算した.うち2項目で下位10位以下の地域

全域の人口に対する人口集中地区の人口割合,全域の人口密度が共に全国平均以下である地域

林業が盛んでない

都市部でない地域

11 of 27

11

事業選定

本研究はモデル事業として下記の4事業を参考に想定した.

高島市の境界明確化事業の委託料にて

試算

滋賀県の

やまのこ事業費にて

試算

大津市の里山防災・緩衝帯整備事業にて試算

東近江市の園児用木製椅子の購入事業費にて試算

境界明確

森林教育

森林整備

木材利用

12 of 27

① 各市町村のタテ列とヨコ行の合計値である市内生産額を求める.

② ①で求めた市内生産額に都道府県産業連関表に対応する産業部門の投入係数を乗じて中間投入額を求める.

③ ②と同様に投入係数を乗じて粗付加価値額を求める.

④ 市町村の地域内需要を求める.

⑤ 市町村の各産業の移輸出額を推計する.

⑥ 最後にバランス式⑤=②+③+④-①から移輸入額を推計する. 

108部門表から37部門表に統合をする.

12

産業連関表の作成の流れ

13 of 27

13

(1)対象年次の設定

2015年の経済構造で森林譲与税の税収に基づく活動があった場合を想定

イメージ図

(2)部門の新設

森林環境譲与税の4事業を仮設部門として新たに設けて産業連関表を作成

中間投入の需要は0と仮定した.

産業連関表の中間需要部門

事業費の内訳を部門別に整理し割り当てる.

分析時は事業

1つに着目して算出した.

産業連関表の設定

14 of 27

14

ΔX0:直接効果,ΔX1:第一次間接効果ΔX2:第二次間接効果,[I-(I-M(^))A]-1:逆行列係数行列,(I-M(^)):自給率係数行列,ΔFd:域内最終需要の変化(列ベクトル),C:民間消費支出構成比(列ベクトル),M(^):移輸入係数行列,k:消費者支出額合計である.

経済波及効果の推定

ΔX0= (I-M^)ΔFd,ΔX1=[I-(I-M^)A]-1(I-M^)AΔX0

ΔX2=[I-(I-M^)A]-1(I-M^)Ck

ΔX=ΔX0+ΔX1+ΔX2

経済波及効果倍率の推定

経済波及効果倍率は生産誘発額合計を各事業の需要額で除して算出

推定計算式の変数である産業別の自給率及び投入係数列和と倍率との相関関係を算出.

推定計算式

経済波及効果倍率を用いて標準化し,滋賀県19市町で比較

15 of 27

15

経済波及効果倍率の差異の原因の特定

 差異の原因について相関分析

経済波及効果倍率の変数:自給率係数行列,逆行列

逆行列は投入係数を変数として考えて,その列和に着目して相関分析

経済波及

効果倍率

自給率

中間需要までの

投入係数列和

産業分類

対象事業

固定

相関関係

経済波及

効果倍率

16 of 27

16

環境効果の推定

森林整備事業のみ定量評価をし,それ以外の事業は先行研究の結果を参考に定性評価をした.

分析対象・内容

森林整備事業の定性評価をする際に林野公共事業の費用便益分析を用いた.

環境効果の推定

17 of 27

17

ただし,U: 治水ダムの単位雨量流出量当たりの年間減価償却費(㎜/h),f1: 事業実施前の流出係数,f2: 事業実施後,T年経過後の流出係数,T: 事業実施後,流出係数が安定するのに必要な年数,α: 100年確率時雨量(㎜/h),A: 事業対象区域面積(ha),360: 単位合わせのための調整値,t: 経過年数,i: 社会的割引率(0.04).

洪水防止便益の推定

 

推定計算式

流域貯水防止便益の推定

 

U: 開発流量当りの利水ダム年間減価償却費(円/m3/S),D1: 事業実施前の貯留率,D2: 事業実施後,T年経過後の貯留率,P: 年間平均降雨量(㎜/年) T: 事業実施後,流出係数が安定するのに必要な年数,α: 100年確率時雨量(㎜/h),A: 事業対象区域面積(ha),365: 1年間の日数,t: 経過年数,i: 社会的割引率(0.04),86400:1日の秒数,10:単位合わせのための調整値,Y: 評価期間

18 of 27

18

QX: 全貯留量のうち生活用水使用相当量,QY: 全貯留量- QX,D1: 事業実施前の貯留率,D2: 事業実施後,T年経過後の貯留率,P: 年間平均降雨量(㎜/年) T: 事業実施後,貯留率が安定するのに必要な年数, A: 事業対象区域面積(ha),10: 単位合わせのための調整値,t: 経過年数,i: 社会的割引率(0.04),86400:1日の秒数,UX:単位当たりの上水道供給単価(円/ m3),UY: 単位当たりの雨水浄化費(円/ m3),Y: 評価期間

水質浄化便益の推定

 

推定計算式

土砂流出防止便益の推定

 

ただしU:1m3の土砂を保全するために要する単位当たりの砂防ダム建設コスト(円/ m3),V1: 事業実施前における1ha当りの年間浸食土砂量(m3),V2: 事業実施後,T年経過後の貯留率,T: 事業実施後,貯留率が安定するのに必要な年数, A: 事業対象区域面積(ha),10: 単位合わせのための調整値,t: 経過年数,i: 社会的割引率(0.04),Y: 評価期間

19 of 27

19

ただしU:1m3の土砂を保全するために要する単位当たりの砂防ダム建設コスト(円/ m3),V1: 事業実施前における1ha当りの年間浸食土砂量(m3),V2: 事業実施後,T年経過後の貯留率,T: 事業実施後,貯留率が安定するのに必要な年数, A: 事業対象区域面積(ha),10: 単位合わせのための調整値,t: 経過年数,i: 社会的割引率(0.04),Y: 評価期間

炭素固定便益の推定

 

推定計算式

20 of 27

20

結果 経済波及効果

多くの市町で森林整備事業の経済波及効果が高い

上から順に木材利用,森林整備,森林教育,境界明確化

21 of 27

21

結果 経済波及効果

木材利用:愛荘,守山,多賀 森林教育:野洲,彦根,栗東,大津

上から順に木材利用,森林整備,森林教育,境界明確化

22 of 27

22

運輸の自給率

結果 経済波及効果倍率の差異の原因

境界明確化

相関係数=0.700

相関係数=0.780

相関係数=0.972

農林水産業の

自給率

森林整備

農林水産業の

投入係数列和

森林整備

23 of 27

23

※ただし評価期間は10年と設定した.これは本来の林野公共事業の費用便益分析の規定の設定とは異なる.また今回は試行的に環境効果を分析することを目的としたため樹種をスギと想定した.

大津市の間伐事業(0.86ha)を対象に

費用便益分析を実施.

分析の結果,

費用便益比が0.54

結果 森林整備事業の場合

24 of 27

24

目的1:経済・環境効果の算出及び経済効果の比較

境界明確化事業

森林整備事業

森林教育事業

木材利用事業

該当なし

野洲市,彦根市,栗東市,大津市

滋賀県12市町

守山市,多賀町,愛荘町

事業名称

経済波及効果倍率が最大の市町

環境効果

定性効果あり

B/C0.54

結論

定性効果あり

定性効果あり

25 of 27

25

経済波及効果倍率の差異の原因

境界明確化事業

森林整備事業

「運輸・郵便」の自給率が高いほど,経済波及効果倍率が高くなる.

「農林水産業」の自給率,投入係数列和が高いほど,経済波及効果倍率が高くなる

経済波及効果倍率

「運輸・郵便」の自給率

経済波及効果倍率

「農林水産業」の

自給率・投入係数和

農林水産業」の投入係数列和が高いほど,経済波及効果倍率が高くなる.

森林教育事業

経済波及効果倍率

「農林水産業」の

投入係数列和

結論

26 of 27

1つ目に境界明確化事業,森林環境教育事業等のソフト面の要素が主体となる事業の環境効果を定量的に算出できなかった点である.林野庁事業評価マニュアル以外での定量的な算出方法を考える必要がある.

2つ目に対象地域を滋賀県19市町という狭域のみでしか扱えていない点である.国税・森林環境税及び森林環境譲与税は滋賀県19市町以外でも実施されており,より広範な対象地域を対象に研究する必要がある.

26

今後の課題

27 of 27

林野庁:森林環境税及び森林環境譲与税<https://www.rinya.maff.go.jp/j/keikaku/kankyouzei/kankyouzei_jouyozei.html>,2020-11-30

横山 新樹・他:森林セラピー事業の経済波及効果信州信濃町癒しの森事業を対象に,林業経済,70(11),pp.1-20 (2018)

森井拓哉・他:多摩産材の利用による経済波及効果の推計:東急池上線戸越銀座駅木造駅舎改修事業の事例,林業経済研究,66(1),pp.45-50(2020)

27

参考文献・謝辞

・本研究を進めるにあたって,約1年半に渡って丁寧にご指導頂いた指導教員の高橋卓也先生及び中間発表会を通じて,適切なご指導を頂いた諸先生方には深く感謝申し上げます.

・お忙しい中森林環境譲与税についてのヒアリング調査のご協力して頂いた大津市役所,高島市役所,東近江市役所,滋賀県の担当者様には心より感謝申し上げます.

参考文献

謝辞