世界のエネルギー事情から見る地下資源
~どのようにエネルギー問題と
向き合っていくべきなのか?~
①国によって発電の構成が違うのはなぜだろう?
②統計資料とどう向き合っていくのか?
これからの発電の主役は?
グループワークのお題
はじめに
今回は日本のエネルギー事情を題材に、資源・エネルギーについて、また諸問題についても扱います。
統計資料と主体的に向き合えるための投げかけにも触れました。
本スライドの統計は、注記がない限り、データブック オブ・ザ・ワールド2022(二宮書店)を参照しています。
スピーカーノート(パワーポイントではノートにあたる箇所で、画面下のメモ欄)に補足や教材に対する考えを記載しています。スライド内でリンクの設定がなされているもののURLもこちらに記載してあります。
何気なく使っている電気はどこからくるの?
日本の電力構成比を見てみよう(2019年)
火力発電 71.9%
水力発電 8.3%
原子力発電 6.1%
再生可能エネルギー 11.9%
何気なく使っている電気はどこからくるの?
日本以外の国はどうなのだろうか(2019年)
どのようなことが読み取れるだろうか?
| 火力発電 | 水力発電 | 原子力発電 | 再生可能エネルギー |
日本 | 71.9% | 8.3% | 6.1% | 11.9% |
アメリカ合衆国 | 62.5% | 7.1% | 19.2% | 11.1% |
ドイツ | 45.5% | 4.2% | 12.3% | 37.7% |
フランス | 9.0% | 10.8% | 69.9% | 10.3% |
中国 | 67.9% | 17.4% | 4.6% | 10.0% |
サウジアラビア | 99.9% | - | - | 0.1% |
ブラジル | 14.7% | 63.5% | 2.6% | 19.1% |
それぞれの発電の特徴について見てみよう
①水力発電(1)
早くから活用されてきた発電方法。一般には川をダムでせき止め、高低差を利用して発電を行う。自然エネルギーであることや、発電時に二酸化炭素の排出がないことがメリット。
一方、自然を大きく改変する必要があることや、地形の制約があり立地が市場から遠くなりやすいことがデメリットである。
それぞれの発電の特徴について見てみよう
①水力発電(2) ― 揚水発電
揚水発電は、電力が余っている時間帯に水をくみ上げ、不足する時間に発電することを繰り返す発電方法である。日射量によって発電量が左右される太陽光発電と有機的に結びついている。
参考:九州電力webサイト
それぞれの発電の特徴について見てみよう
②火力発電
長年、発電の中心を担い続けている。水力発電のような地形の制約があまりないため、市場の近くに立地させられる。発電の過程で冷却を要するため臨海部に立地させることが多いが、市場は臨海部に位置することが多く、都合がよい。
一方で、化石燃料を必要とするため、環境負荷が大きくなりやすいことや化石燃料が有限であることが課題。そのため、多くの国はいかにして火力発電の割合を減らすかに思案することになる。
それぞれの発電の特徴について見てみよう
③原子力発電
火力発電への依存をいかに縮小するかという課題に対する対応策の1つとして先進国を中心に発達した。原子力のエネルギーを電力へと転換するが、火力発電と同様、冷却を要するため臨海部、ないしは河川沿いに立地する。
安全面に関する課題が大きく、過去に大規模な事故が発生している。また、今回のウクライナ問題にもあるように、有事の際に標的となるリスクが顕在化した。
火力発電に注目してみよう
火力発電の特徴は?
・化石燃料を用いて電力を生み出す
・発電方法の中では容易に導入しやすい
↓
多くの国で火力発電がメインとなっている(世界平均62.9%)
大きく分けると、
・自国で化石燃料を調達可能な国
・化石燃料を輸入することで調達している国
火力発電に注目してみよう
化石燃料を輸入することで調達している国
化石燃料の安定確保の必要性
オイルショックのような供給不安に対応する必要がある
↓
逆に考えると、化石燃料産出国は外交的優位性をもつ
ex.ウクライナ問題で一枚岩になれない西側諸国
まさに今、生活に影響を与える原油価格の高騰
そんな視点で化石燃料の産出国を見てみよう
火力発電に注目してみよう
化石燃料の産出上位国
| 石炭(%) 2018年 | 原油(%) 2019年 |
1位 | 中国 (54.4) | アメリカ合衆国 (15.4) |
2位 | インド (10.7) | ロシア (13.4) |
3位 | インドネシア (8.1) | サウジアラビア (12.4) |
4位 | オーストラリア (6.0) | イラク (5.9) |
5位 | ロシア (5.3) | 中国(4.9) |
6位 | アメリカ合衆国 (4.8) | カナダ(4.8) |
7位 | 南アフリカ共和国 (3.8) | アラブ首長国連邦 (3.9) |
8位 | カザフスタン (1.5) | ブラジル (3.6) |
9位 | コロンビア (1.2) | クウェート (3.5) |
10位 | ポーランド (0.9) | イラン(3.0) |
火力発電に注目してみよう
化石燃料を輸入することで調達している国
代替エネルギーの確保
・20世紀後半 原子力発電
・20世紀末以降 再生可能エネルギー確保への模索
地球全体としての課題
気候変動、そもそも有限である(可採年数)
一方で、増大し続けるエネルギー需要
火力発電の現状を踏まえて考える
火力発電の現状を踏まえて考える
これからの主役はどれだ? その答えは・・・
国によって異なります
(自然・社会条件により得意となる発電方法が異なるため、絶対的な答えはないと思います。)
つまり、
「日本にとって」と考える時に地理的な視点が大切です
再生可能エネルギー
再生可能エネルギー(水力除く)の発電量上位国
2019年 2009年
1位 中 国 7524億kWh アメリカ 938億kWh
2位 アメリカ 4876億kWh 中 国 464億kWh
3位 ド イ ツ 2295億kWh ド イ ツ 452億kWh
4位 イ ン ド 1531億kWh スペイン 438億kWh
※ 日 本 1210億kWh 日 本 86億kWh
まとめ
・水力発電は無尽蔵に増やすことができない。
・不足する分は火力で賄うことになるが、資源供給に不安を抱える国もある。地球環境に対して負荷が大きいことも懸念。
・火力発電の課題を克服すべく原子力発電の実用化が進んだが、安全面への不安が大きい。
・以上のことから新エネルギーの普及が進められている。新エネルギーの発電量は自然条件に影響を受けるため国による差が大きい。
地理的な視点をもって、エネルギーの将来像を考えてみてほしい
加えて考えてほしいこと
今回は電力をもとに考えを進めたが、実際は、石炭は製鉄に、原油は現代の生活を便利にしている多種多様な製品に(参考)にも使われている。
エネルギー資源だけではなく、様々な地下資源が我々の生活を豊かにしてる。スマホをはじめとした便利な機器も、「地球にやさしい」を実現するための高性能な機器もレアメタルなしには作れない。
そんな地下資源について、地理の学びを通して主体的に考えられるようになってほしい。
発展編
発展編①
水力発電の割合が大きな国はどんな特徴があるだろう?
ノルウェー 93% ブラジル 64% カナダ 59%
・
・
・
発展編①
水力発電の割合が大きな国はどんな特徴があるだろう?
ノルウェー 93% ブラジル 64% カナダ 59%
・安定した降水が得られる
・広大な国土に恵まれる
・国内需要が(比較的)小さい
発展編①+α
こんな国もあるよ(統計年次は2019年)
・アイスランド 水力69%、地熱31%
人口は約35万人 国内需要が小さい火山国だとこうなる
・デンマーク 風力55%、バイオ燃料23%
人口は約580万人 やはり国内需要が小さい
国土が半島と島からなる+偏西風
発展編②
アルミニウム工業が盛んな国はどこだろう?
(アルミニウムの製錬には大量の電気が必要である)
発展編②
アルミニウム工業が盛んな国はどこだろう?
(アルミニウムの製錬には大量の電気が必要である)
安価に電力を得られる(つまりは自給できる)国
代表例は①にもあるノルウェー
サウジアラビアでも行われている
発展編③
改めて国別の発電構成を見てみよう
気付くことを挙げてみよう
あらためて確認!
| 発電量 (億kWh) | 火力発電 | 水力発電 | 原子力発電 | 再生可能 エネルギー |
日本 | 10450 | 71.9% | 8.3% | 6.1% | 11.9% |
アメリカ合衆国 | 43918 | 62.5% | 7.1% | 19.2% | 11.1% |
ドイツ | 6091 | 45.5% | 4.2% | 12.3% | 37.7% |
フランス | 5708 | 9.0% | 10.8% | 69.9% | 10.3% |
中国 | 75041 | 67.9% | 17.4% | 4.6% | 10.0% |
サウジアラビア | 3855 | 99.9% | - | - | 0.1% |
ブラジル | 6263 | 14.7% | 63.5% | 2.6% | 19.1% |
麻生慶彦(富山県立富山中部高等学校)
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