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シビックテックにおける技術者と非技術者の間の協働を促進する要素に関する研究

北陸先端科学技術大学院大学

先端科学技術研究科

◯大西翔太・小林重人・橋本敬

1

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2

5374.jp

  • ゴミの分別をサポートするアプリ
  • 金沢の市民コミュニティによって開発
  • 国内で100以上の地域に拡散

さっぽろ保育園マップ

  • 保育園の空き情報を一目で確認
  • 札幌の市民コミュニティによって開発
  • 国内5都市以上に拡散

身の回りにある「シビックテック」の事例

市民が主体となった「シビックテック」による成果物

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3

知識の新たな活用手段としてのシビックテック

ITテクノロジーの発達により変わりつつある市民活動

  • 市民による地域課題解決のためのハッカソンやサービス開発(Johnson et al., 2014)

Civic technology(Omidyar network, 2015)

  • 海外で多くの地域課題解決事例(Lee et al., 2015; 野村, 2017)

  • 震災を契機とした日本での「シビックテック」の盛り上がり(白川, 2018)
  • 多くの市民団体が立ち上がり、草の根活動として多様な活動(福島, 2017)

→市民が持つ知識の新たな活用手段

毎週100人以上の多様な市民が集まり議論や開発をするChi hack night

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4

シビックテックの立ち位置

内容

市民の声の反映

透明性

参加のハードル

委員会

決められたことを

遂行

一部の人の声

だけが反映

低い

議事録の操作

低い

話を聞くだけでも大丈夫

ワークショップ

舵取りの仕方で

議論が深化

トピック設定の仕方

によって多様な声の反映

高い

ログが残せる

中程度

議論が苦手な人やトピックと

相性が悪い人には難しい

シビックテック

実際に作る

アプリケーションなどの形で反映

高い

  • データを活用
  • 自分たちで作る

高い

専門性が必要と認識(野村, 2017)

技術者(技術に関する知識を有する人)と非技術者(地域に関する知識を有する人)が

実際に課題解決を行うということが新しい?

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5

日本のシビックテック参加者の偏り

  • 一部の技術者のみが活動(原他, 2015)
  • 技術者が活動に不足(榎並, 2018)

国内のシビックテック現場での問題点

問題解決の困難さ(庄司, 2015)

  • ハッカソンやアイデアソンの開催

→短期的なイベント等に終止

技術者と非技術者の間の長期的な協働の難しさが存在?

協働に関する認識の調査(大西他, 2017)

  • 国内の主要な実践者が集まるイベント

協働の価値を認識していながら、実現できていない

図1 協働の必要性

図2 協働の実現度合い

協働の定義(中村他, 2010)

異なる主体が長期的に協力すること

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6

シビックテックにおける「協働」に関する問い

協働がもたらす価値

  1. チームワーク向上(中村他, 2010)
  2. 海外では協働によって地域の課題解決が促進されると認識(Lee et al., 2015)
  3. 日本では課題の性質取組み方に違い

海外

日本

課題の

性質

行政の改善�(Lee et al., 2015)

身近な課題解決

(稲継, 2018)

課題への

取組み方

中央集権型ネットワーク

(Omidyar network, 2016)

地域分散型活動

(白川, 2018)

表2 海外と日本の課題と取組み方の比較

身近な課題解決を目指す地域分散型の活動においては協働はどのような価値をもたらす

協働を促進する要素

  1. トップダウン型組織を基にした協働の�既存理論(荒木, 1990; Barnard, 1938)
    • 理念の共有や離脱防止(中村他, 2010)
  2. シビックテックには一部適用できない

異なる知識基盤を持つ人同士が水平につながるコミュニティでは何が協働を促進する要素となる

トップダウン型組織

シビックテック

メンバー間の関係性

リーダーが

メンバーを管理

水平なつながり

目的意識

共通の目的

異なる知識基盤

異なる目的意識

表1 トップダウン型組織とシビックテックの比較

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7

本研究の目的

  1. 日本のシビックテックにおける技術者と非技術者の協働に影響する要素協働が生み出す価値の解明
  2. 協働によって価値が生み出されるプロセスを示すモデルの作成

研究目的の設定

  • シビックテックによる価値生成の促進(社会的意義
  • 既存の協働に関する理論の拡張(学術的意義

シビックテックにおける下記の要素の解明

  • 技術者と非技術者の協働を促進する要素
  • 技術者と非技術者の協働が生み出す価値
  • 協働を促進する要素と協働が生み出す価値の関係性

シビックテックにおける協働と価値生成の関係性の解明

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8

1. 協働に関する仮説と仮説から想定されるモデルの作成

  • 既存の協働に関する理論(中村他, 2010; 藤田他, 1993)
  • 水平コミュニティにおける協働に関する理論(朴, 2003)
  • 協働が実現しているシビックテックコミュニティ代表者へのインタビュー調査

協働に影響しうる要素協働の構成要素協働が生み出す価値の関係を推測

研究の方針

2. 質問紙調査の実施

  • 各仮説の要素を計測可能なものへと変換し、指標化
  • 全国のシビックテックコミュニティ代表者への質問紙調査

3. 調査結果の分析による仮説検証とモデルの作成

  • 仮説で想定した要素間の関係性との比較

→協働に影響する要素の解明(研究目的1)

  • 協働に影響する要素が協働を高め、価値が生み出されるプロセスの解明

→協働の発生・促進と価値生成プロセスを表すモデルの作成(研究目的2)

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本研究で用いる仮説モデル

協働の構成要素

技術者・非技術者

それぞれの定期的参加

技術者と非技術者の足場かけ関係

技術者・非技術者

それぞれの参加姿勢

  1. 集団間協働の指標として利用(Gajda, 2004; Frey, 2006, Himmelman, 2002)
  1. 朴(2003)が指摘、岡田他(2006)が指標化
  1. インタビュー調査結果から想定

既存の協働の理論

本研究で想定する理論の拡張部分

仮説4

長期的に運用される

アプリケーションの数

協働が生み出す価値

  1. 活動内容(瀬戸他, 2018)から想定

仮説1

仮説2

仮説3

  1. 中村他(2010)が影響する要素を整理
  1. 櫻井(2009)が影響する要素を整理

外部団体との関係

いつでも集まれる場所

課題の相互依存性

コミュニケーションと調整

関係の持続性

ソーシャル・キャピタル

自律性向上

協働に影響しうる要素

導出方法

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10

質問紙調査の実施

調査の概要

調査日:2018年4月

調査対象:国内のシビックテックコミュニティ代表者もしくは幹部(1組織1回答)

  • 回答を全て確認し、代表もしくは幹部でない場合は削除
  • 重複回答があった場合は原則として代表を優先

質問紙:仮説に示した要素を定量的に分析可能な形に指標化

配布形式:Google formを利用したWebアンケート

配布数:アンケートの送付が可能な連絡先を見つけることができた90組織

回収数:50組織

分析対象としたコミュニティの条件

  1. 地域の課題解決に取り組んでいる組織であること(シビックテックの定義より)
  2. 半年以上活動している組織であること(協働が生み出す価値の測定のため)
  3. 技術者の非技術者の両方がメンバーにいる組織であること(片方では協働できない)

→条件を満たした36組織のデータを分析に使用

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分析1:協働に影響しうる要素の再検討

要素名

特徴

α係数

協力的な関係性

メンバーの協力的な関係ができている程度

0.93

持続的な関係構築

長期的な参加と協力関係の形成をするための工夫の程度

0.88

協働のための場づくり

協働をするための場や関係を作るための工夫の程度

0.86

協働の場における協力関係の強化

協働の場において協力関係を高めるための工夫の程度

0.91

外部との関係とその強化

外部との友好な関係性と関係構築のための工夫の程度

0.80

表4 因子分析によって見出された協働に影響しうる要素

影響しうる要素の構成を再編

  • 「協働に影響しうる要素」を構成する質問の回答傾向にばらつき
  • 協働に影響しうる要素の質問項目44項目を用いて因子分析を実施

→下記の5因子を新たな協働に影響しうる要素として今後の分析で使用

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分析2.1:協働に影響しうる要素が協働の構成要素に与える影響

仮説

分析方法

従属変数

有意な影響

1

順序回帰分析

技術者と非技術者の

足場かけ関係

  • 協力的な関係
  • 協働の場における協力関係の強化

2

順序回帰分析

技術者の参加姿勢

無し

非技術者の参加姿勢

  • 外部との関係性とその強化
  • 協働のための場づくり
  • 協力的な関係性

3

重回帰分析

技術者の定期的参加

  • 協力的な関係性

非技術者の定期的参加

  • 協力的な関係性

結果から判明したこと

  • 参加姿勢は非技術者のみが協働に影響しうる要素から影響を受ける
  • 定期的な参加は技術者と非技術者で協働に影響しうる要素との関係に差がない

表5 協働に影響しうる要素を独立変数、協働の構成要素を従属変数とした回帰分析の結果

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13

図4 協働に影響しうる要素と構成要素の関係を示すパス図 

協働の第1段階

持続的な関係と協働の場づくり

協働に影響しうる要素に以下の2段階の存在が示唆

  1. 「持続的な協力関係の構築」と�「協働のための場づくり」
  2. 「協働の場における協力関係の強化」と�「協力的な関係性」

分析2.2:パス解析による分析結果の深堀り

下位尺度の多くが協働の場や持続的な関係の構築を前提とする工夫

第1段階から第2段階へのパス

協働の第2段階

協力的な関係構築

協働の場における

協力関係の強化

協力的な関係性

持続的な協力関係

の構築

協働のための

場づくり

外部との関係と

その強化

非技術者の参加

姿勢(R2=.39)

.45***

.39*

.38*

.35*

.69***

.36**

.25†

技術者と非技術者の

足場かけ関係(R2=.36)

.36*

.36*

非技術者の定期的な

参加(R2=.26)

.51***

技術者の定期的な

参加(R2=.20)

.44**

p<.1, *p<.05, **p<.01, ***p<.001

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14

分析2.3:事例との比較による協働の段階存在の検証

比較対象としたコミュニティChi hack night

  • アメリカで活動するシビックテックコミュニティ
  • 市民が100人以上参加するイベントを毎週開催(Chi hack night, 2015)
  • 市民協働により多くの地域課題を解決(野村, 2017)

協働の第1段階の存在(メンバーが協働するイベントの定期的な開催)

  1. 参加者がプロジェクトを持ち込み、目的達成に向けて他の参加者と協業(野村, 2017)

→課題解決の場づくりを下位尺度に持つ「協働のための場づくり」に該当

  1. 毎週同じ時間と場所で開催して継続的な参加の場を構築(Chi hack night, 2015)

→メンバーが抜けにくくする仕組み作りを下位尺度に持つ「持続的な関係性の構築」に該当

協働の第2段階の存在(協働の場におけるメンバーの活躍の場や相互依存的な関係構築)

  1. 非技術者をプレゼンする場づくり、メンバーのプロジェクト立ち上げを推奨(インタビュー結果)

→メンバーが成功体験を得られる支援を下位尺度に持つ「協力関係の強化」に該当

  1. 非技術者が技術者の開発物をテストするグループが存在 (野村, 2017)

→技術者と非技術者が互いを必要にしているを下位尺度に持つ「協力的な関係性」に該当

協働の第1段階が起きてから第2段階が起きることを支持する事実

  • 1や2は類似する事例が多く存在するが、3と4はほとんど無い(インタビュー結果)

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6 構成要素間の相関分析結果

分析2.4:協働の構成要素同士の相関関係

参加姿勢、定期的参加共に

技術者・非技術者間に高い相関

足場かけ関係とその他の多くの要素との間に高い相関

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16

分析3:協働が生み出す価値についての新たな示唆

協働できている

と認識している群

協働できていないと認識している群

成果物が多い群

図5 協働の実現程度によるクラスター

  分類結果(Ward法)

多様な視点対話の場

協働の価値であると認識

  • 実現できている場合は活動に価値が反映

アウトプットの量や質向上を

価値とする群も存在

  • 外部との関係性や参加者に対する報酬提供が高い

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17

仮説と検証結果のモデルに現れた多くの差異

図7 協働の促進と価値生成の検証結果モデル

検証結果1

検証結果2

検証結果3

検証結果4

仮説1

仮説2

仮説3

仮説4

図6 協働の促進と価値生成の仮説モデル

仮説ごとの検証結果について考察

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18

足場かけ関係(仮説1)についての考察

仮説1

課題の相互依存性、コミュニケーションと調整、関係の持続性、ソーシャル・キャピタルが高い、または高める工夫をしているコミュニティは技術者と非技術者が深い足場かけ関係を構築

結果

協働の第2段階にあたる「協力関係の強化」と「協力的な関係性」のみが影響

考察

「足場かけ関係」の裏にある前提の存在

  • 協働の場や継続的な関係が既に存在する環境での協働の程度を図る指標(Frey, 2006)

協働の場作りや継続的な関係ができた後に協力関係が築かれることで高まる

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19

参加姿勢(仮説2)についての考察

仮説2

参加者の自律性向上の工夫をしているコミュニティは参加者が自ら率先して参加

結果

  • 非技術者の参加姿勢は多くの要素が影響
  • 技術者の参加姿勢は協働に影響する要素とは無関係
  • 技術者の参加姿勢と非技術者の参加姿勢は非常に高い相関(r=0.66)

考察

技術者の「課題の保持者である非技術者」への依存

  • 技術者の参加目的を聞いたところ、多くのコミュニティが「課題解決」と回答
  • 技術者メンバーの平均年齢は30代中盤(白川, 2018)

→スキルを持った技術者が社会貢献などを目的に参加していることが示唆

非技術者が抱えている「不安」の存在

  • 非技術者の参加目的も多くのコミュニティが「課題解決」と回答
  • 初参加の非技術者の多くが活動に対して不安を抱えている(Onishi et al., 2018)

→非技術者は課題解決をしたいと考えながらも「不安」を抱えて参加している

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20

定期的参加(仮説3)についての考察

仮説3

協働の場や外部団体との関係ができている、もしくは高める工夫をしているコミュニティは、より多くの参加者が活動に定期的に参加

結果

技術者、非技術者ともに「協力的な関係性」のみが影響

考察

「定期的に参加する」ということのハードルの高さ

  • 組織が成り立つための「誘引」の重要性(Barnard et al., 1968)
  • メンバーは「課題解決」を目的に参加

→「協力的な関係」が高まることで課題解決ができるようになり誘因を提供できる

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21

協働の価値(仮説4)についての考察

仮説4

技術者と非技術者の足場かけ関係が構築され、メンバーが自ら率先して参加し、定期的に参加するメンバーが多いコミュニティは運用期間の長いアプリを多く開発

結果

協働の価値を運用期間の長いアプリケーション数で測定できないことを示す結果

  • アプリケーション開発数と協働の構成要素の間に有意な関係は無し
  • 多くの実践者が多様な視点対話の場を協働の価値と認識
  • 協働の価値を成果物と捉えているコミュニティでは成果物を多く作成

考察

「協働」が目指す方向性や指す意味のコミュニティによる違い

  • 定められた目的を達成するための協働と、目的の共創を前提とした協働(朴, 2003)
  • 日本のシビックテックコミュニティの活動は多様(福島, 2017; 白川, 2018)

→協働に対する価値観にコミュニティによる差異, それが活動内容にも影響

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22

結論

本研究の目的

  1. 日本のシビックテックにおける影響する要素協働が生み出す価値の解明
  2. 協働によって価値が生み出されるプロセスを示すモデルの作成

協働に影響する要素非技術者へのサポートが協働に与える影響

  • 協働の複数段階に分かれた発展と、非技術者の参加姿勢向上からの始まり
  • 協働のための場づくりや外部との関係強化による非技術者の参加姿勢向上
  • 非技術者の参加姿勢を高めることによる技術者の参加姿勢向上

→場づくりや外部との関係構築で非技術者の「不安」減少が協働の発展につながるという示唆

協働が生み出す価値多様な協働の価値観がもたらす活動の多様性

  • 「半年以上運用したアプリケーション開発数」による協働の価値測定の失敗
  • 視点の多様化や対話の場といった活動への内的な影響を挙げる多くの意見
  • 協働の成果を効率的な開発と認識しているコミュニティは多くの成果物を開発

→多様な協働に対する価値観と、それに対応した多様な価値共創の形

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今後の課題

協働の理論拡張

代表の認識とメンバーの認識、現場の状況の差異

  • 本研究ではあくまで「認識」を確認したことに過ぎない

→メンバー視点での認識や実際の活動現場との差異を把握する必要性

協働がもたらす価値

  • 価値が多様であるという示唆

→価値の具体的な中身について明らかにする必要性

協働発展の具体的な中身

  • それぞれの段階が存在することと、その中身についての示唆

→段階の変化が起きる原因や、その変化について把握し、モデルの精緻化を行う必要性

シビックテック以外の活動との関係性

  • オープンソースやファブラボといったような、ITを活用した市民活動の事例

→他活動への応用可能性や関係性を見出すことによる理論の一般性向上

シビックテックによる価値生成の促進

現場での実装

  • 実際に協働を構築するための方法まで示さなければ現場での実装は困難

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協力的な関係性(下位尺度得点)

技術者と非技術者の足場かけ関係の程度

4.00

5.00

3.00

2.00

1.00

1

2

3

4

5

6

図8 足場かけ関係と協力的な関係の関係を示す箱ひげ図

0.00

議論:足場かけ関係の深堀りによる協働の第3段階についての示唆

一元配置分散分析によって協働の第3段階が示唆

  • 独立変数は足場かけ関係、従属変数は協働の構成要素(量的変数)、協働に影響しうる要素
  • 協力的な関係性:ほとんど全ての下位尺度が最大値(下位尺度得点の平均値が4.7、分散0.17)
  • 技術者・非技術者の定期的な参加:9割近くのメンバーが定期的に参加(平均値87.50、分散15.00)
  • 「協働の場における協力関係の強化」ではそのような傾向が見られず

工夫のみでは到達できない段階が存在する?(再検討の必要性)

技術者と非技術者の足場かけ関係の程度

1

2

3

4

5

6

100

80

60

40

20

0

技術者の定期的な参加(%)

図9 足場かけ関係と技術者の定期的な参加の関係を示す箱ひげ図

突出して高い値に集中

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参考文献

Barnard, C. I. & Andrews, K. R. (1968). The Function of the Executive. Harvard University Press. (山本安次郎・田杉競・飯野春樹訳 (1968)『新訳 経営者の役割』ダイヤモンド社.)

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Frey, B. B., Lohmeier, J. H., Lee, S. W., & Tollefson, N. (2006). Measuring collaboration among grant partners. American Journal of Evaluation, 27(3), 383-392.

Gajda, R. (2004). Utilizing collaboration theory to evaluate strategic alliances. American journal of evaluation, 25(1), 65-77.

Gilbert, N., & Troitzsc, K. G. (2003). Simulation for the social scientist. Open University Press.

Himmelman, Consulting (2002). “COLLABOLATIONFOR A CHANGE(revised January 2002) Defines, Decision-making models, Roles, and Collaboration Process Guide”. https://depts.washington.edu/ccph/pdf_files/4achange.pdf. Retrieved 4 February 2019.

Johnson, P., & Robinson, P. (2014). Civic hackathons: Innovation, procurement, or civic engagement? Review of Policy Research, 31(4), 349-357.

Lee, M., Almirall, E., & Wareham, J. (2015). Open data and civic apps: first-generation failures, second-generation improvements. Communications of the ACM, 59(1), 82-89.

Omidyar Network Report. (2016). “Engines of change what civic tech can learn from social movements”. https://www.omidyar.com/sites/default/files/file_archive/Pdfs/Engines%2520of%2520Change%2520-%2520Final.pdf. Retrieved 4 February 2019.

Onishi, S., Kobayashi, S., & Hashimoto, T. (2018). Skill Combination Game for Resolving Acceptance Concern in Civic Tech Collaboration. The 49th Conference of the International Simulation and Gaming Association (ISAGA '18),Nakhon Pathom, Thailand,2018/07/09-13.

Putnam, R. D., Leonardi, R., & Nanetti, R. Y. (1994). Making democracy work: Civic traditions in modern Italy. Princeton university press.

荒木昭次郎. (1990). 『参加と協働: 新しい市民・行政関係の創造』, ぎょうせい.

稲継裕昭. (2018). 『シビックテック ICT を使って地域課題を自分たちで解決する』, 勁草書房.

榎並利博. (2018). シビックテックに関する研究: IT で強化された市民と行政との関係性について. 富士通総研経済研究所 研究レポート, 452.

大西翔太, 小林重人, 橋本敬. (2017). 日本国内のシビックテックにおける技術者と非技術者の協働促進に関する研究. 地域活性学会研究大会論文集, 9, 26-29.

岡田涼, 中谷素之. (2006). 動機づけスタイルが課題への興味に及ぼす影響. 教育心理学研究, 54(1), 1-11

櫻井茂男. (2009). 『自ら学ぶ意欲の心理学』, 有斐閣.

庄司昌彦. (2014). オープンデータの定義・目的・最新の課題. オープンデータ, 国際大学 CLOCOM, 4-15.

白川展之. (2018). 日本におけるシビックテック・コミュニティの発展ー国内外のネットワーク形成とCode for Japanー. 経営情報学会普及紙誌, 27(3).

瀬戸寿一, 関本義秀. (2018). 地域単位でのシビックテック活動の波及と持続可能性に関する研究. 都市計画論文集, 53(3), 1515-1522.

中村和彦, 塩見康史, 高木穣. (2010). 職場における協働の創生: その理論と実践. 人間関係研究, (9), 1-34.

野村敦子. (2017). 公共分野におけるデジタル変革をいかに進めるか: アメリカにみるシビックテックの動向と課題. JRIレビュー, 2017(3), 2-36.

原亮, 関治之, 古川和年, 宮田正秀. (2015). シビックテクノロジーは地域経済を活性化するか. 調査季報, 176, 38-45.

福島健一郎. (2017). オープンデータとその利活用に関する最近動向. 電子情報通信学会誌, 100(1), 47-52.

藤岡奈美, 小野富美子. (1993). 『グループ・プロセス集団内行動と集団間行動グループ・プロセス集団内行動と集団間行動』, 北大路書房.

朴容寛. (2003). 『ネットワーク組織論』, ミネルヴァ書房.

松崎太亮. (2017). 『シビックテックイノベーション 行動する市民エンジニアが社会を変える』, 株式会社インプレスR&D.

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議論したい内容

  • シビックテック以外の組織における「協働」と本研究の結果との関係性
  • どのように非技術者の支援を進めていけばいいか
  • 協働の第3段階が発生しうる要因
  • 日本と海外の市民コミュニティの特性の違い

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27

付録

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28

足場かけ関係を測る指標

  • 技術者と非技術者の協働は集団間協働(藤岡ら, 1993)の特性を持つ
  • 集団間協働の程度は「主体間の統合度合い」によって測定(Himmelman, 2002; Gajda, 2004; Frey, 2006)

→協働の構成要素の1つとして「技術者と非技術者の足場かけ関係

表7 本研究で用いる足場かけ関係の指標(Frey, 2006)

(※)実際の調査ではこれに加え、両者が全く関係ない「Nothing」を加えた6段階評価を使用

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参加姿勢を測る指標

企業と水平コミュニティの協働の違い

  • あらかじめ決められた目的の達成を目指す企業における協働(Barnard et al., 1968)
  • 相互作用による目的の変容を想定した水平コミュニティの協働(Mayo, 2014)
  • 後者は協働主体に上から目標を与えられず、主体に自律性が存在している(朴, 2003)

→協働の構成要素の1つとして自律性の程度を示す「メンバーの参加姿勢

表8 自律性の程度を測る指標(岡田他, 2006; 櫻井, 2009)

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30

インタビュー調査結果の概要

シビックテックに関する文献調査

  • 市民が協業する場があり、多くの成果物が作られているChi hack night(野村, 2017)
  • 技術者と非技術者が協働により課題解決をしているCode for Kanazawa(稲継, 2018)

→Chi hack nightとCode for Kanazawaの代表者に向けたインタビュー調査を実施

インタビュー調査

Chi hack night(2017年2月)

  • 自治体や地域の他団体との関係構築
  • 毎週のイベント開催による、市民がいつでも来ることができる環境作り

→市民の参加を増やすため

Code for Kanazawa(2015年9月)

  • 毎月1回市民が集まり協業するイベントを開催

→地域を知り、市民の意識を上げるため

協働主体が定期的に参加する企業では上記のような取り組みは行われない

  • 協働の構成要素として頻繁に来る参加者の比率である「メンバーの定期的参加
  • 定期的参加は「外部との関係」と「いつもでも集まれる場」によって高まる

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31

仮説をもとにした指標の作成

協働が生み出す価値(質問:2項目)

  • 半年以上運用したアプリケーション数(比例尺度)
  • 協働がもたらす価値 (名義尺度、自由記述)

協働の構成要素(質問:5項目)

  • 足場かけ関係:Frey(2006)の6段階指標(順序尺度)
  • 参加姿勢:岡田他(2006)の5段階指標(順序尺度)
  • 定期的参加:0〜100%の10%刻み(間隔尺度)

参加姿勢と定期的参加は技術者と非技術者に分割

協働に影響しうる要素(質問:44項目)

  1. 文献を元に測定可能な下位要素に分割
  2. 状態」と「工夫」を示すものに分類
  3. 技術者非技術者に分割できるものを分割

→5段階のリッカート尺度(順序尺度)

表3 関係の持続性の質問項目

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因子分析の概要

因子分析による協働に影響しうる要素の新たなまとまり作成

  • 天井・フロア効果と要素間の相関を確認し、10項目を排除した34項目で因子分析
  • 主成分法、Promax回転を使用
  • 固有値は70%
  • 解釈可能性と単純構造の観点から5因子構造を選択

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因子分析の結果

図10 因子分析結果

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下位尺度一覧

9 下位尺度一覧

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分析手法:重回帰分析

独立変数:協働に影響しうる要素のまとまり(比例尺度)

従属変数:技術者の定期的参加(間隔尺度)

分析結果

「協力的な関係性」のみが技術者の定期的参加に影響

表10 協働に影響しうる要素が技術者の定期的参加に与える影響(重回帰分析)

協働に影響しうる要素が技術者の定期的参加に与える影響

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分析手法:重回帰分析

独立変数:協働に影響しうる要素のまとまり(比例尺度)

従属変数:非技術者の定期的参加(間隔尺度)

分析結果

「協力的な関係性」のみが非技術者の定期的参加に影響

定期的参加は技術者・非技術者の違いよって協働に影響しうる要素との関係が大きく変わらない

協働に影響しうる要素が非技術者の定期的参加に与える影響

表11 協働に影響しうる要素が非技術者の定期的参加に与える影響(重回帰分析)

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分析手法:順序回帰分析

独立変数:協働に影響しうる要素のまとまり(比例尺度)

従属変数:技術者と非技術者の足場かけ関係(順序尺度)

分析結果

「協力的な関係性」と「協働の場における協力関係の強化」が技術者と非技術者の足場かけ関係に影響

協働に影響しうる要素が足場かけ関係に与える影響

表12 協働に影響しうる要素が足場かけ関係に与える影響(順序回帰分析)

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分析手法:順序回帰分析

独立変数:協働に影響しうる要素のまとまり(比例尺度)

従属変数:技術者の参加姿勢(順序尺度)

分析結果

本調査で測った協働に影響しうる要素の中に技術者の参加姿勢に影響を与えるものは存在しない

協働に影響しうる要素が技術者の参加姿勢に与える影響

表13 協働に影響しうる要素が技術者の参加姿勢に与える影響(順序回帰分析)

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協働に影響しうる要素が非技術者の参加姿勢に与える影響

分析手法:順序回帰分析

独立変数:協働に影響しうる要素のまとまり(比例尺度)

従属変数:非技術者の参加姿勢(順序尺度)

分析結果

「協力的な関係性」「協働のための場づくり」「外部との関係とその強化」が非技術者の参加姿勢に影響

参加姿勢は非技術者のみが協働に影響しうる要素から影響を受ける

表14 協働に影響しうる要素が非技術者の参加姿勢に与える影響(順序回帰分析)

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アプリケーション開発数と協働の構成要素間の相関関係

協働の構成要素とアプリケーション開発数の間に有意な相関関係が見出されなかった

  • 協働の価値はアプリケーション数では測定できないことが示唆

→回答者の協働の価値についての認識を用いたテキスト分析によるアプローチの検討

表15 アプリケーション開発数と協働の構成要素の相関分析結果

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クラスター4

クラスター3

クラスター2

クラスター1

協働の実現度合いによるクラスター分析結果

協働の構成要素の相関分析を行い、多くの要素と相関が高かった「足場かけ関係」を協働の代替変数として、足場かけ関係と因果関係が見出された2つの因子でクラスター分析(Ward法)

  • 足場かけ関係が高い群と低い群に分類
  • 有意に成果物が多い群も出現

アプリケーションの数に有意差

足場かけ関係に有意差

表16 協働の実現程度による一元配置分散分析

図11 協働の実現程度によるクラスター分類結果

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自由記述回答結果

クラスター

特徴

実際の記述

1

成果物多い

  • 手段で考える技術者とコンサルフェーズができる非技術者の協働でより効率的になる
  • コミュニケーションやアウトプットのクオリティが上がる
  • 「誰のため、社会のため」という観点で問題解決ができるようになる

2

協働の認識低い

  • 様々な価値観を生かして地域課題の解決を進めることが大切
  • 課題の当事者である非技術者とITスキルを持つ技術者の対話によってITによる課題解決方法が見つかる可能性がある
  • 課題や解決方法は技術者だけでは見えないため協働が必要

4

協働の認識高い

  • 技術者が使われないアプリケーションを自己満足で作らないようになれる
  • 多様な視点で課題を見ることができるようになる
  • 地域課題をITで解決できるから
  • 予算的な問題や解決までのスピードが短縮される
  • クラスター1は技術者と非技術者のスキルが組み合わさることで成果物の質や効率が上がると認識
  • クラスター2とクラスター4は、技術者と非技術者が持つ異なる価値観や対話を重要視した回答が多く、非技術者を課題の当事者と捉えている
  • クラスター2は予測や抽象的な記述が多く、まだ協働が実現していないと思われる
  • クラスター4は具体的な記述や断言するような表現が多く、協働が実現していると思われる

表17 協働の価値に対する認識の自由記述回答結果

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協働の促進と価値生成のモデル

協働の促進と価値生成プロセス

  1. 持続的な関係構築と協働の場作りによる参加姿勢向上
  2. 協力関係の強化による足場かけ関係と定期的参加の向上

→多様な視点や対話の場などの価値

モデル生成に至る分析

分析1:協働に影響する要素の分析

  1. 要素名(α係数、因子分析)

分析2:協働の構成要素の分析

  1. 因果関係(回帰分析、パス解析)
  2. 共分散関係(パス解析)
  3. 協働の発達段階(パス解析、事例との比較)

分析3:協働の価値の分析

  1. 協働の価値(テキスト解析)

図3 協働の促進と価値生成のモデル

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研究室で主催したシビックテックイベントの概要

シビックテックイベントにおいて発生する「懸念」とその解消方法について調査をするために実施

表18 イベント開始前と後での自身のスキルの活用に対する認識の変化