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細胞培養による食料生産

2021.03版

一般公開用

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「バイオ技術、培養肉、細胞農業の大衆化」

DIYバイオによる「オープンソース細胞培養肉」

教育・創作支援・国際連携・分野認知度の向上活動

バイオ技術の研究開発と細胞農業の社会コミュニケーション活動を

特定の大学や企業に属さない立場で行う、市民科学の有志団体

“Shojinmeat Project”紹介

監修: Dr.Ikko

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活動内容

自由研究で自宅細胞培養

DIY細胞培養の実証

DIY培養装置の開発

開発成果の公開と共有

DIYバイオ実験

実験機器の製作

DIY純肉開発

教育キット開発勉強会実施

国際学会発表

イベント登壇

メディア対応

創作活動

アート作品制作

デザイン製作

動画投稿 など

芸術・創作の支援活動

論文執筆・カンファ登壇

Creative Cells Kyoto, @CleanmeatKyoto

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「肉」

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←家畜

←飼料・水・土地

どこから?

※穀物栽培の約40倍の量が必要

羊:~50倍 牛:~40倍 豚:~20倍 鶏:~7倍

「肉」

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←家畜

←飼料・水・土地

牧草地の確保

森林破壊

豚コレラ・鳥インフル

薬剤大量投与

餌の耕作 

水源疲弊

Hoekstra, Mekonnen, PNAS 2012

http://www.pnas.org/content/109/9/3232

「肉」

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食糧か、飼料か、燃料か ⇒ 価格の連動上昇

農業資源

食糧

飼料

燃料

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代替蛋白源

食肉

大豆など

乳卵

食肉

乳卵

大豆など

新たな代替タンパク源

植物系

大豆

ミート

藻類系

昆虫系

微生物系

細胞培養

新たなタンパク源を提案

細胞農業:食肉・乳卵を新たな方法で生産

食肉・乳卵食材の同等品を植物から生産

現在

将来

※既存の蛋白源では賄えない

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細胞農業

Cellular Agriculture

技術は医療

目的は農業

本来は動物や植物から収穫される産物を、

特定の細胞を培養することで生産する方法

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細胞培養肉 / Cell-based meat

筋肉細胞

バイオリアクター

(大型タンク)

培養液

など

成形熟成

 ⇒出荷

純粋培養肉、「純肉」とも

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エネルギー変換効率

0.1%以下

(管理されていない)

微細藻類4~11%

人工光合成10%+?

https://aiche.onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1002/btpr.2941 Y.Okamoto et al. Biotech. Prog. 2019

今後も効率向上が見込まれる

4%

46%

50~90%

Alexander, Peter et al, Global Food Security

https://doi.org/10.1016/j.gfs.2017.04.001

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ある意味、夢の技術

※風味を似せた�”肉のようなもの”も製造可能

ドラえもん22巻「のら犬「イチ」の国」P181:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

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食料の生産方法

狩猟

栽培

飼育

醸造

合成

培養

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開発の歴史(第1波 ~2010)

1997

魚肉培養実験

@NASA

概念自体は19世紀から

SF作品には何度も登場

2004

NPO “New Harvest”設立

Jason Matheny氏が文献調査と聞き取り

2005

オランダが€2Mの研究費

2007

In vitro meat consortium

資金続かず停止

追加資金

2000

Oron Catts作品

@Harvard

中心人物

Willem van Eelen(故人)

1997年に特許出願

出典:

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開発の歴史(第2波 2010~)

2012

Goolge創立のSergey Brin氏がIn vitro meat consortiumの元会員に接触

2013

Mark Post教授

による試食会

2014

Shojinmeat Project設立

2015

Memphis Meats創業

2015

“Cellular agriculture”

(細胞農業)の単語誕生

2013

New Harvestが細胞農業VBに投資開始

(Clara Foods, Perfect Day)

2016

SuperMeat創業

2017

Finless Foods 創業

200gで3000万円

出典:

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その他の細胞農業製品の実例

Perfect Day(米) 牛乳

Clara Foods(米) 卵白

どれも「もどき」ではなく、分子レベルで本物と同じを作っている(目指している)

Wild Type(米)

魚肉

Ginkgo Bioworks(米)

香料・微量成分

IntegriCulture(日) フォアグラ

Shiok Meats

(シンガポール)

えび

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細胞培養肉の潜在的インパクト

科学/技術

・技術的課題は?

・再生医療への応用?

政治/経済

・世界の食糧市場?

・どんな業界構造に?

人文/芸術

・宗教や食文化との関係?

・倫理観はどう変わる?

https://toyokeizai.net/articles/-/56802

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技術的課題

¥28,000,000

製造コスト 200g

2013年・研究費込み

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実用化(商品化)に必要な技術要件

1. 安価な培養液

2. 大規模化と自動化

既存の食肉

味や食感が同等?

3. 高付加価値化

設備費人件費

培養液

¥2000万/kg

従来の生産コスト

¥200

設備費・人件費

培養液

具体的方策

  1. 食品グレード培養液の使用
  2. 大型培養プラントの開発/建設
  3. 味や食感の再現(生体組織工学の技術)

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従来の培養液の課題

Gospodarowicz D and Moran JS, 1976, Annu Rev Biochem Eagle H, 1959, Science

アミノ酸・糖・

ビタミン・無機物

\2000/L

アルブミン,インスリン,トランスフェリンなど

¥90000/L

細胞増殖因子、

細胞生存因子など

\45000/mg

基礎培地

血清成分

成長因子

細胞培養液

=スポーツドリンク?原材料に対して割高。

(医療グレードで作られているため)

高価で供給不安定。牛の胎児の血清を使うが、狂牛病やウイルスなどの感染症のリスクあり

遺伝子組み換え細菌を増やして成長因子を作るも、認可や抽出が高価

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従来方式の細胞培養(FBS使用)のコスト試算

一般的な培養液 DMEM(FBS10%) 500mlの場合

DMEM 450ml ¥1125

FBS 50ml ¥4900

Non essential amino acid ¥140

LIF  10 U/ml ¥225 etc・・・

培養液500mlで細胞1~2g分:6390~

100gで50万円+

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Essential 8® 無血清培地で筋芽細胞を培養する場合

An analysis of culture medium costs and production volumes for cell-based meat, Liz Specht, Good Food Institute (2018)

https://www.gfi.org/files/sci-tech/clean-meat-production-volume-and-medium-cost.pdf

基礎培地

DMEM成分

E8培地:TeSR培地を元に開発された$400/Lほどの培地。アルブミンや動物由来成分を含まず、成分が公開されている。Good Food Instituteはこれを価格試算のベンチマークとしている。

血清成分

ITS, AA2P

成長因子

FGF2, TGFβ

¥170

大量購入の場合

¥620

¥20000

AA2P:ビタミンC誘導体

ITS:Insulin, transferin, Na2Se(セレン化Na)

培養液500mlの価格

細胞100gの価格

¥20790

200万円~

筋芽細胞の場合はFGF2とTGFβという蛋白質が必要。蛋白質の他にも脂質やコレステロールなど様々な形態がある。

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参考:肝臓細胞やiPS細胞を100g培養してみる

基礎培地

血清成分

成長因子

肝臓細胞

iPS細胞(医療用)

DMEM 450ml 1125円

FBS 50ml 4900円

追加アミノ酸 140円

HGF 20µg 78000円

EGF 10µg 700円

培養液1Lの価格

細胞100gの価格

17.5万円

~900万円

~35万円

3000万円+?

専用培地500ml 50000円

不使用

多段階の手順で、bFGFなど様々

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原材料ごとでの低価格化の余地

[1]試算の詳細解説

https://shorturl.at/oyHR1

基礎培地

血清成分

&

成長因子

物質[2]

価格

目的

高額な理由

対応策

NaCl(食塩)

$56

培養液

大量に使う

培養液のリサイクル

グルコース

$50

肉の原料

大量に使う

より安価な調達方法の開発

アミノ酸

$395

肉の原料

大量に使う

より安価な調達方法の開発

HEPES

$3933

培養液

高価

代替物の利用、培養液のリサイクル

AA2P

$10,035

培養液

高価

代替物の利用、培養液のリサイクル

大量一括購入を想定した場合の、E8培養液20,000L(⇒培養肉3.5t)での内容物価格[1]

Insulin

$131,920

血清成分

高価

代替物の利用

Transferin

$85,600

血清成分

高価

代替物の利用

FGF2

$4,010,000

成長因子

極めて高価

代替物の利用

TGFβ

$3,236,000

成長因子

極めて高価

代替物の利用

[2] 培養液成分のうち、アミノ酸・グルコースは肉の質量となるが、食塩やHEPES, AA2Pなどは培養液中に残る。

[3] 血清成分や成長因子は極めて高価だが、肉の生産とともに消費されるため、リサイクルができない。

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血清成分と成長因子の低価格化方法①

高効率化

安定化

低価格化

代替物

取り組み

参考事例

Good Food Instituteによる研究助成プログラムにて、成長因子の低価格化に関する専門家インタビュー

Dr. Peter Stogios, Senior Research Associate, University of Toronto, Canada (2019):

https://www.gfi.org/dr-peter-stogios-growth-factor-research

GFI研究助成について

https://www.gfi.org/2019-competitive-research-grant-program

卵黄成分、脂質など、同等の効果を持つ代替物を使う

より少量で効くように成長因子の分子構造を設計し、消費量を減らす

大型のバイオリアクターで組み換え細菌を培養する、植物を使う、抽出方法を改善する、など

構造的安定性や耐熱性を持つ分子構造を設計し、安価に抽出できるようにする

血清成分&成長因子

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低価格化方法①での試算

培養液価格 培養肉の価格

$41/L $100/lb

$15/L $36.6/lb

$4.7/L $11.5/lb

$3.7/L $9.0/lb

$0.77/L $2.2/lb

シナリオA~E

A: 成長因子10倍に効率化

B: FGF2とTGFβが低価格化

C: AとBの両方を実施

D: すべての成長因子が$4/g

E: 基礎培地が$0.23/Lに

前ページの製造方法を想定

Good Food Instituteによる試算 (2019)

https://www.gfi.org/files/sci-tech/clean-meat-production-volume-and-medium-cost.pdf

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同時に培養される肝臓細胞などが血清成分と成長因子を中で作るため、外部添加が不要に

成長因子

&

血清成分

基礎培地

PCT/JP2016/067599 特許6111510号

Integriculture Inc. / Dr. Ikko 2016

低価格化方法②:血清成分と成長因子の内製化

インテグリカルチャー(株)が採用する還流培養方式

イスラエルAleph Farmsが採用する4種共培養方式

基礎培地

成長因子

&

血清成分

4種の細胞が相互に増殖を促進する。

脂肪細胞の分泌成分が筋肉細胞の増殖を促すなどの相乗効果を利用する。

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成長因子の内製化の実証

制御区(0%)

10% 調製培養液

25% 調製培養液

50% 調製培養液

制御区に対する全細胞数

マウス胎盤細胞

12日齢の胎児肝細胞(FBS 10%培養液)

7日

使用済培養液を移転する

成長因子の添加無しに、肝臓細胞が有意義に増殖

Dr. Ikko 2016

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肝臓細胞培養での実証:「君の肝臓を食べたい」

細胞増殖

形質変換

組織化

培養鶏レバー

Dr. Ikko 2016

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血清成分と成長因子の低価格化方法②での試算

DMEM  450ml  ¥1125

Non essential amino acid  ¥140

FBS 50ml ¥4900

HGF 40ng/ml ¥78000 (20µg)

EGF 20ng/ml ¥700 (10µg)

¥84865

コラーゲン細胞足場上の肝細胞塊

HGF/EGFを共培養で調達して培養

DMEM  450ml ¥1125

酵母エキス 50ml ¥182

¥1307

画像提供: インテグリカルチャー

還流共培養で調達できないFBS成分を補完する

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基礎培地も低価格化する場合(食品グレード化)

DMEM  450ml ¥1125

酵母エキス 50ml ¥182

(試薬として)

¥1307

一般飲料 450ml  ¥10

酵母エキス 50ml ¥1

(食品として)

¥11

基礎培地

=

スポーツドリンク?

アミノ酸・糖・ビタミン・無機物

培養液は一般飲料の原価へ

試薬ではなく、食品として販売されている酵母エキスを利用する

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食品グレード培養液の実証:スポーツドリンク培養液

60%

90% グリーンダカラ

80%

70%

0%

(DMEMのみ)

50%

経過日数

細胞分裂回数

DMEM/グリーンダカラ 10% FBS培養液でのマウスL6細胞の増殖 #pHと浸透圧はNaHCO3(s)と2M NaOHで調整した

商品名 浸透圧 pH

DMEM(-, hi glu) 345 7.4

ポカリスエット 338 3.4

アクエリアス 291 3.37

Amino-Value 4000 289 3.63

AminoVital Gold 186 3.33

Vitamin Water 302 3.3

Green ダカラ 322 3.28

アミールWater 249 3.4

まもるチカラSupli  546 3.58

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細胞培養液の自作 “DIY-DMEM”

糖分・アミノ酸・ビタミンB類・無機塩類を入手

混合濾過して細胞培養液を合成

鶏胚の初代心臓細胞を培養

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基礎培地の大量調達・低価格化・汎用品化に向けて

個別の成分を調合

ビール酵母残渣を分解?

藻類? 人工光合成? 電気合成?

大量調達で多少は安価にできる

全20種類のアミノ酸に加えてジペプチド、トリペプチドが混ざってもOK。

不純物があってもよく、最高効率でなくてもよいので、

細胞培養が可能で最安価な

最低スペック培養液?

分解

何十万tで調達可能か?

藻類

人工光合成

電力

水素細菌等

電気分解

最低スペック培養液

現在

ブリッジ技術

最終

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7.2億t

小麦・大麦

8.3億t

トウモロコシ

8.8億t

キャッサバ・

芋類 6.3億t

大豆

2.6億t

サトウキビ・甜菜 20.7億t

パーム

スターチ※1

0.4 億トン

粗糖

1.7億t

肉類 3.0 億t

(牛0.6豚1.1鶏※30.8)

バイオエタノール※2

1.0億kL

アミノ酸※4

0.06億トン

パーム油

0.4億t

食品

(炭水化物)

細胞培養肉

代替肉

(植物性タンパク質)

粗糖

残渣

食品

(脂質)

食品

(炭水化物)

数値は2011年世界の生産量:出典地理統計要覧2014年版(二宮書店) ※1農畜産業振興機構 調査情報部https://www.alic.go.jp/joho-d/joho08_000573.html   ※2農林水産省「海外食料需給レポート(Monthly Report) 2015年3月」 http://www.maff.go.jp/j/zyukyu/jki/j_rep/monthly/201503/201503.html  ※3 USDA「World Markets and Trade」   ※4 味の素試算

食品

(タンパク質)

食品

(タンパク質)

細胞培養肉の大量消費が実現すると、アミノ酸生産量は増大。安価なアミノ酸を大量生産するためには、発酵原料の見直し、新規原料の開発が必須。

出典: 知念秋人様

第2回細胞農業会議にて

原材料の数千万トン単位での調達方法

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最終形態:原料の循環系プロセスの構築

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より高度な生体組織を作る:「おいしさ」に直結

ひき肉

「細胞の塊」で十分

培養の低価格化技術

シート肉

一定の質感が必要

細胞足場技術

脂肪細胞の共培養

ステーキ

肉の質感の完全再現

細胞分化の制御技術

組織発生の制御技術

血管誘導技術

技術的到達状況

再生医療

「 生 体 組 織 工 学 」

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生体組織工学と再生医療と細胞農業

細胞培養

(動物)

販売流通

販売流通

再生医療

細胞農業

医療

農業

原料

調達

培養液の生産

根本的には細胞農業と再生医療は共通の技術

原料の純度やトレーサビリティー等の法規制で差異が出る

細胞培養

(ヒト)

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純肉製造に向けた技術の選択

低価格で大規模な細胞培養

生体組織としての完成度

成型肉相当

細胞ペースト

生体組織

細胞が配置されている

生体組織として機能する

細胞が分化している

血管新生

3Dプリントでの細胞配置

細胞足場の活用

どの順番でやっても良い

細胞がある

Aleph Farms, 2021

Maastricht Uni, 2013

各種の細胞の用意

文献:E.A. Specht, D.A. Welch, E.M.R.Clayton et al., https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1369703X1830024X

※可食であればよく、生体組織としては機能させないという選択も

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細胞足場による培養の効率化

カイメンのコラーゲン細胞足場

細胞足場で3次元培養した肝細胞

細胞の成長可能な領域が培養皿の底に限られなくなる

Dr. Ikko 2016 / Integriculture Inc.

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細胞足場のほかのメリット

キトサン,キチン,アルギン酸,セルロース,多糖類などの可食材料。

医療以外の材料も検討対象に

肉のスジを作り、

食感を再現できる

Aleph Farms (2019)

mm単位以上での形状を作れる

J.R. Gershlak et al., Biomaterials vol.125, pp13-22(2017) https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0142961217300856?via%3Dihub

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3Dバイオプリンティング・植物肉との混合

3Dプリンター

植物性細胞足場や植物肉

培養脂肪細胞や培養肉

・生体組織としては機能せずとも、食感を実現できる

・量産は今後の課題

2020~、3Dプリント植物肉の各社:

(NovaMeat, Redefine Meat等)

相次いで培養細胞を原材料に追加している。

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細胞足場を使わない全組織培養

※より将来的な方法

細胞と

細胞培養液

細胞増殖、血管新生

「細胞シート工学」

組織発生

原材料調達

インテグリカルチャー(株)が東京女子医大との共研にて開発中

文献:”In Vitro Engineering of Vascularized Tissue Surrogates”

(東京女子医科大学・清水et al)

https://www.nature.com/articles/srep01316

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「肉の向こう側」:デザイナーミート

(植物性)細胞

足場+動物細胞

2020前後

培養細胞の塊

2013

培養組織・

生体組織工学

2026?

デザイナー

・ミート?

2030?

ひき肉・

ソーセージ

ベーコン・

ジャーキー

ステーキ・

本物の肉

肉を超えた

何か

藻類・動物細胞共培養系

東京女子医科大学・原口et al

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大規模化:従来の培養方法そのままでは・・・

2013年の試食会での純肉ハンバーグは、こうやって作られた

⇒2800万円

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現時点で最大規模の細胞培養

食料生産にはまったくの規模不足

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細胞培養の目的と前提条件が変わる

これまでの細胞培養は、研究用に「極少量・超精鋭」

⇒2800万円かかる

これからの細胞培養は、産業用に「大規模・普及用」

⇒原価200円へ

研究室・大学病院

ビール工場・化学コンビナート

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大規模生産に適した培養方法

Dr. Marianne Ellis, 2017

ラボでの方法

大規模生産での方法

大規模生産方法の実装

⇒化学工学、“Plant Engineering”へ

必要体積(比率)

タンク攪拌

培養皿

フロー方式

中空糸膜

要素技術の統合とシステム化

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プラント化での検討事項の例

温度を一定にする方法?

タンクの攪拌方法?

パイプの太さと流速?

滅菌の頻度と方法?

フィルターの掃除方法?

魚純肉工場のイメージ

※ごく一部

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細胞農業プラントの運用方法と最終原価

A:バッチ方式

B:フェッドバッチ方式

C:還流培養方式

A:種細胞を~40日間培養し、タンクいっぱいになったら出荷

B:タンクに栄養を補充しつつ培養し老廃物が貯まるまで連続生産する

C:培養液のリサイクルと補充をしながら培養して連続生産する

←Cを想定した場合の細胞培養肉の原価試算(GFI 2019)

予想最低原価 150円/kg

試算の詳細解説https://shorturl.at/oyHR1

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本当にエコ?:ライフサイクルアセスメント(LCA)

総合的な経済性評価

「ゆりかごから墓場まで」

の環境負荷の定量評価

https://rationalwiki.org/wiki/File:LCA.PNG

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現時点でのLCAの不確実性

想定する製造方法でLCAの値は大きく変化するため、

細胞培養肉の環境負荷の定量化は未完状態にある。

LCAは今後の製造方法の国際標準化にて争点化される見通し。

2014年の調査では「タンクの洗浄」を計算に含めた。

Hanna Tuomisto 2011

Hanna Tuomisto 2014

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周辺も含めたLCA

畜産の副産物の代替

化学製品での代替[1]

細胞農業でのゼラチン製造[2]

主エネルギー源

電源を脱炭素化しない限り、CO2排出削減効果が限定的[3]

空いた土地の有効利用?

放牧地の他用途への転換[4]

[1]https://www.atkearney.com/retail/article/?/a/how-will-cultured-meat-and-meat-alternatives-disrupt-the-agricultural-and-food-industry (AT Kearneyレポート)

[2] https://geltor.com/ 培養ゼラチンを商品化する米Geltor社

[3] https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fsufs.2019.00005/full

1000年後も石炭発電を続けた場合での細胞培養肉の環境負荷

[4]https://drive.google.com/drive/u/0/folders/0B1yPiUX43toZY2sxUUtVRjlZTDA Tuomisto et al. 2017, Int’l Sym. Cultured Meat, (unpublished)

ほか、ゼラチン、肥料用の糞尿(耕畜連携)など

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細胞培養肉の潜在的インパクト

科学/技術

・技術的課題は?

・再生医療への応用?

政治/経済

・世界の食糧市場?

・どんな業界構造に?

人文/芸術

・宗教や食文化との関係?

・倫理観はどう変わる?

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タンパク源安全保障問題

日本の飼料

自給率: 14%

足りている?

保障されている?

持続

可能?

戦略資源

主に貧困国

( Economic and Social Research Institute, Dublin, Ireland, 2010 https://www.esri.ie/pubs/WP340.pdf)

(漁業も不安定・・・)

米国・豪州ですら疑問

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「食糧危機」?

長時間かけて値段が上がる

「ゆでガエル」

・数十年に渡ってずるずると食料価格が上昇していく

・気が付いたら生活水準が下がっており、内戦や暴動が増えている

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細胞農業の経済的意義

1

2

生活や文化を変えてサプライチェーン全体を減らす。

食文化は維持するも、持続可能なタンパク源にする

肉食のサプライチェーン

外部不経済

環境破壊と貧困が絡み合った困難な状況

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世界のタンパク源市場(予測)

主要因:新興国の

人口増加と中産化

市場規模は2030年

には200兆円到達?

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主要な細胞農業ベンチャーと目指す市場の規模

By Olivia Fox Cabane, https://newprotein.org/

※細胞農業に出資するVC、CVCも紹介。  

知財情報: https://www.culturedabundance.com/about

全リスト:

日本

5兆

水産 25兆

世界の食肉市場

200兆円

牛肉

70兆

段階ごとの市場規模

単位:10億ドル

飼料生産

食肉生産

「畜産業」

販売流通

食肉市場

出典 & 詳細:

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各スタートアップの事業化計画

具体的な商品化時期について(MosaMeat社 https://www.mosameat.com/faq

「数年以内の上市を目指していますが、科学的な未知や法規制など外的な要素が大きいため、確約は困難です。最初の商品は小規模ですが、数年かけて飲食店や小売に拡大の予定です。」

培養乳製品

アイス

クリーム

化粧品

コラーゲン

2019

2020

培養鶏肉ナゲット

化粧品・

フォアグラ等

https://integriculture.jp

培養鶏肉

2021

2022

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細胞農業製品の市場予測 (米A.T.Kearney社による予測)

細胞培養肉

従来の肉

植物肉

2030に1/3は代替肉に

植物肉は2035に成熟

培養肉は年率40%成長

この変化に原料や流通も対応を迫られる

↓より詳細、ソース等

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一般普及までの道のり

技術革新による低価格化で自営業者も参入、民主化

一過性の話題と幻滅期

従来肉との等価点に到達

製品や地域ごとに順次普及

巨大工場が必要で、垂直統合型で普及

2020~

2030~

従来肉

純肉

価格

時間

高級フォアグラ

牛肉

一般とり肉

純輸入国

半輸入国

生産国

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ほかの産業分野との関係

セルライン

バイオリアクター

細胞足場

サプライチェ

ーン・流通

培養液

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主要なNPO

米国

イスラエル

米国

日本

米国

New Crop Capitalが設立した、植物肉や培養肉を推進するロビー団体。

世界各地に支部があり、米国の各州政府、各国政府への働きかけや産業化支援を行う。

公式: https://www.gfi.org/

クラウドファンディングで運営、DIY細胞農業を推進し、細胞培養の方法を公開

公式: http://shojinmeat.com

https://camp-fire.jp/projects/view/20537 (参考)

細胞農業業界へのキャリア支援活動など

公式: https://www.cellag.org/

動物愛護運動から派生、SuperMeatとFM Technologiesを設立公式: https://www.futuremeat.org/

研究費

所属

など

Cellular Agriculture(細胞農業)の概念確立と研究助成を行う学術支援団体、兼シンクタンク。

FDAによる細胞農業の法整備での主要パートナー

公式:https://www.new-harvest.org

スピンオフ

NPO法人 日本細胞農業協会

官学を中心に、啓発活動やルールメイキングを主導

※2020.01現在、立ち上げ準備中

公式: https://cellagri.org

ロビー活動

など

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主要な会議・イベント

Smart Kitchen Summit (シアトル)やAgri-Food Innovation week(シンガポール)などのフードテック系イベントで代替たんぱく源の話題が出ることも多い。

9月ごろ・San Francisco・GFI主催・植物肉、培養肉の全般について。産業寄り

https://goodfoodconference.com

10月ごろ・オランダMaastricht・学術寄り・参加者は研究者が多い

https://www.culturedmeatconference.com/

7月ごろ・Boston・New Harvest 主催、研究者やDIYバイオ勢多い

https://www.new-harvest.org/new_harvest_2019

11月前後・San Francisco・細胞培養肉専門の業界イベント

https://2020.cmsymp.com/

2月ごろ・San Francisco・業界内勉強イベント・英Hanson Wade社主催

https://industrializingcellbasedmeats.com

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学術研究

New Harvestを支援

平成30年度採択「将来の環境変化に対応する革新的な食料生産技術の創出」

https://www.jst.go.jp/mirai/jp/program/sustainable/index.html

Nature誌は細胞農業ベンチャーが大型調達をする中で、基礎研究の少なさを指摘 https://www.nature.com/articles/d41586-019-00373-w

2019~ 上記以外からの参入も

https://www.nature.com/articles/s41538-019-0054-8#Abs1

EU(2020):Horizon2020の一環としてMeat4Allコンソーシアムに€2.7Mの研究助成

米国(2020):�国立科学財団よりUC Davisに5年で$3.5Mの研究助成

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各国の政治と法整備の動向(2020中期)

2019/03にUSDAとFDAの共同管轄が正式決定、具体的内容を策定中

https://www.fda.gov/news-events/press-announcements/usda-and-fda-announce-formal-agreement-regulate-cell-cultured-food-products-cell-lines-livestock-and

製品毎に販売許可を要し、FDAは早期の事前相談を勧めている。

2018/01施行の(EU)2015/2283にて、細胞農業製品を新開発食品として規定、欧州委員会からEFSAの認証手順を通る必要がある。

https://eur-lex.europa.eu/legal-content/en/TXT/?uri=CELEX%3A32015R2283

中国人民政治協商会議の高官が細胞農業の国家的な推進の必要性に言及も、具体的な動き無し。

今後の政府の意向次第で大きく動く可能性が指摘される。

2018年に官民ファンドA-FIVEが細胞農業ベンチャーに出資、2020年より農水省主催のフードテック研究会からのルールメイキングの動きがある。⇒P70

それぞれの国で新開発食品に関する規定があり、暗黙に細胞農業製品もカバーしている。安全性の証拠の要求(既存の規定)以上の規定の新設は、様子見状態にある。

Good Food Instituteが各国政府に培養肉推進の方向での制度整備のロビー活動中

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戦略技術としての細胞農業(食料安全保障)

食料自給率10% (2019)

ほぼ全土が都市化しており、食料は輸入に依存している

「水戦争」リスク

食料自給率は93%も、水源を巡って軍事的な緊張状態

食料自給率の向上(10%⇒30%)を目指すフードテック産業振興策を開始、Singapore Food Agencyを新設してフードテック製品に対応していく。

宗教と動物愛護による代替食への高い関心と、ベンチャー創業が活発な地域である背景から、政府系FoodTech支援体制があった。その後に政治が戦略価値を再認識し、2020末の首相による試食へと至る。

→様子見だった法制度整備の始動が推進派より期待されている

https://vegnews.com/2020/12/israel-s-prime-minister-becomes-first-head-of-state-to-taste-cell-based-meat

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ルールメイキングを巡る対立構図米国,2018

USCAなどの畜産団体:

植物や培養の肉(meat)を ”meat”と呼ぶことに、消費者を欺くとして規制を提言

細胞農業企業は

業界団体”AMPS Innovation”を設立してロビー活動

https://ampsinnovation.org/

動物愛護団体の影響

規制当局1:米国農務省

規制当局2:米国食品医薬品局

GFIの「対立を煽る」

活動に対して温度差

植物肉と培養肉の推進のためにロビー活動

植物肉会社とこの州法に対して違憲訴訟

従来肉の優位性と区別を示す食品表示を巡ってロビー活動

安全性の立証に向け、情報提供やデータ開示を交えたロビー活動

など

各々の立場で広く情報発信

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細胞農業の社会受容へ向け、誰も取り残さない包摂的な方針で進む

農家による細胞ライセンス業?

食品大企業と細胞農業ベンチャーの連携?

製品開発方針への消費者意見の反映方法?

など...

食品会社

農林水産事業者

細胞農業企業

学術関係者

政策関係者

一般市民

ほか細胞農業に

関連しうる団体

国内での動向

フードテック研究会2020.04~

培養肉の部会を引き継ぐ

細胞農業研究会

2019.07~

・投資環境なども含めた産業振興策の検討

・海外での先例を踏まえて、参加者は既存事業者を含む多様な業界業種から300人以上

・中間まとめ:https://www.maff.go.jp/j/press/kanbo/kihyo01/200731.html

ほか様々な官民協議会

提言書?

2021.03

日本細胞農業協会(事務局)

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呼称問題

当初は”clean meat”を提唱も、

Cultivated meat”へ

学術名である”cultured meat”を使うも、“cell-based meat”も支持

米国省庁はCell-cultured meat

産業界のCell-based meatも許容

純粋培養肉(純肉)、(細胞)培養肉

・実体を正確に表現している名称か?

・特定の思想に偏っていないか?

・景品表示法など、食品表示の視点

論点

Good Food Instituteによる調査結果(2017)

(日本語名称)

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細胞農業製品と食品安全に関する法規制(国内)

食品として販売可能なものは、食品もしくは食品添加物で、適正な工程管理の元に作られたものに限る。食品とは食経験のあるものを指す。食品添加物は認定リストがある。

細胞培養肉/

cell-based meat

大原則:

成長因子

原材料により、

食品になりえる

入れる場合は安全性試験と食品添加物登録が必要

・糖分

・アミノ酸

・ビタミン

・ミネラル分

などの食品/食品添加物

基礎培地

スポーツドリンクも可

基礎培地

HACCP,GMP等の適正な

工程管理

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細胞培養肉の食品安全衛生:リスクファクター

BSEプリオン?

想定外の細胞?

ウイルス混入?

遺伝子組換え?

成長因子は安全?

培養液の中身は?

雑菌の増殖?

細胞が癌化?

代謝物は安全?

普通の肉に混入?

“きれいすぎる肉”で免疫力低下?

肉食は健康的?

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細胞培養肉の食品安全衛生:対策例や争点

セルラインは使わず、動物細胞も直接使用すればOK?

ウイルスDNAの存在を監視すればOK?

BSE(狂牛病)プリオンが無い部位から細胞を抽出すればOK?

セルソーターを使って特定の細胞を分離すればOK?

成長因子を食添とみなし、既存の法律に則って安全評価すればOK?

そもそも成長因子を加えない製造法を使えばOK?

公知の培養液を使えばOK?変更点を公開?

https://www.sigmaaldrich.com/life-science/cell-culture/learning-center/media-formulations/dme.html

雑菌増殖などの異常を検知する監視システムが必要になる。

がん細胞や代謝物は通常の肉にも含まれるため、それとの違い(実質的同等性)が議論の入口に?

「牛肉(培養)」など、何らかの食品表示の規定が必要になる?

長期的安全性の評価は既存肉との実質的同等性が議論の入口に?

偏食や食べすぎの悪影響との相関分離が課題になる。

細胞取得

元の細胞

培養液

細胞培養

流通

消費

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細胞培養肉の認可基準・食品表示の海外事例

USDA

USDA/FDA[1]管轄合意(2019/03)

FDA

FDA

USDA

食品表示(係争中)

[1]USDA=米国農務省、FDA=米国食料医薬品局

食肉と鶏肉と鯰肉は例外的にUSDAが管轄する。

細胞抽出

細胞培養

肉の回収

最終製品

個体確保

シンガポール、培養鶏肉認可の事例(2020)

・元より食品の大部分を輸入していたため、2018年のSFA設立以前は輸入元国での認可状況をもとに国内販売認可していた。

・Novel Food(新規食品)の定義を制定中、うち細胞農業製品は新規食品と位置づけて認可を要求する方針。

https://www.sfa.gov.sg/docs/default-source/legislation/sale-of-food-act/first-public-consultation-on-proposed-regulatory-framework-for-novel-foo.pdf

・細胞農業製品については、種細胞のトレーサビリティ、培養中のゲノム安定性や残留成長因子を評価対象としている。

https://www.sfa.gov.sg/docs/default-source/food-import-and-export/Requirements-on-safety-assessment-of-novel-foods_23-Nov-2020.pdf

・細胞農業製品であることの食品表示を要求している。

食品表示

(意見募集中)

USDA/FDAの認可方針(2020)

・安全確保と産業振興の両立を目指している。

・残留成長因子濃度を除き、具体的な数値基準(prescriptive requirements)ではなく、製造プロセスの妥当性で評価する方針

・技術が発展途上であることを認識しており、情報収集も兼ねた早期の事前相談(pre-market consultation)を勧めている

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細胞培養肉の潜在的インパクト

科学/技術

・技術的課題は?

・再生医療への応用?

政治/経済

・世界の食糧市場?

・どんな業界構造に?

人文/芸術

・宗教や食文化との関係?

・倫理観はどう変わる?

https://toyokeizai.net/articles/-/56802

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文化・社会的インパクト

ベジタリアンは食べるのか?

ハラルなのか?

仏教が避ける「殺生」はしてない?

動物愛護団体は?

畜産業界は?

で、それ、おいしいの?

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国・宗教・社会集団ごとに違う論点

  1. 動物愛護・宗教

B. 食糧安全保障

C.食の安全

D.環境問題

欧米: A~D > C > B

日本: B~C > D > A

欧米の論点が世界的に主導している。

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欧米型ベジタリアニズム

・Vegetarian

・Pescetarian

・Vegan

が多い。

欧米諸国では

総人口の3~10%

※日本は4.7%で実は米国の3.3%より多い

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「功利主義(Utilitarianism)」

「最大多数の最大幸福を倫理性の基準とする」

※時間軸を短期に限定すれば「結果良ければすべてよし」という見方もできるが、実際の倫理判断では長期的で総合的な社会的影響が考慮の対象になる。

「5人よりは1人だけの方が最大多数の

最大幸福になる。」という主張について:

もしこうした判断基準が一般化すれば…

「多数派のためなら家族見殺しOK」

「多数派のためなら弱者切り捨てOK」

という判断が起こる社会になる。

⇒長期的に見てそんな社会は幸福?

功利主義の倫理判断結果は、時間軸や

対象の範囲によって大きく変わる。

「暴走ケーブルカー問題」

このままだと5人死ぬが、ポイントを切り替えれば1人で済む

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功利主義の延長としての動物愛護

◆動物は幸福/苦痛を感じる能力を持つ。

◆最大多数の最大幸福は1存在1票

◆生物学的な種の線引きは、倫理学では意味をなさない。

⇒動物も最大多数の最大幸福の頭数に入り功利主義的には苦痛を感じる能力を持つ存在を苦しめることは倫理的でないと考える。

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ベジタリアンである動機

健康や環境という副次的メリットも意識しつつ、メインは動物愛護(倫理観)

功利主義を根拠とした動物愛護の倫理観

自身の健康

環境問題

自然でいたい

食の安全

動物愛護

痩せたい

太りたくない

動物愛護

倫理

健康

環境

宗教

理由(複数回答可)

Vegetarian Society

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東洋型ベジタリアニズム

「 宗教」

細胞培養肉に「倫理的価値」があっても、東洋の「宗教的価値」には

必ずしもつながらない。

←系統だった論理体系を持つ動機のうちでは、功利主義や倫理ではなく、ほぼこれ。

東洋的

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精進料理(仏教料理)とは何か?

禅の修行での食事で、修行の一環という観点で作られている。

・仏教料理の総称で、定式はない。

・作る人(典座)には調理も修行のうち

・食材は七里四方(地産地消)が基本

・寄進されたものは無駄なく使う

・肉類(殺生)と五葷(煩悩)は原則不使用

※肉類であっても、もし寄進されたら使う。

中華圏では「素食」

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「禅の修行で細胞培養肉は有用か?」

・精進料理に使うのか?

 = 修行の役に立つのか?

・欲望の克服は修行の一環

・欲望には肉食欲も含まれる

・「もどき料理」は理想的な修行と肉食欲との妥協の産物

・細胞培養肉はもどき料理の

一種で、それ以上は不問。

細胞培養肉を使っても、「殺生してないから精進料理!」にはならない。

※”Shojinmeat”の名称は「環境破壊という無益な殺生を止めるために絶えず努力する」というメッセージ

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日本人と肉食:和食に肉?

大和時代以前:

普通に食べていた。脆弱な食糧生産体制の中、

今あるものを食べないと死ぬから。

675年、天武天皇による殺生禁断令:

国力を狩猟採取から稲作に振り向け、信仰の対象を土着の動物供犠から朝廷に変えさせるため

※同時期に仏教が伝来し、この教義も利用した

その後は明治まで肉食禁忌が定着し、庶民が肉の味を覚えたのは日清・日露戦争の戦闘糧食から。

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インドのベジタリアニズム

地域差が大きいが、総勢5億人とも

上位カーストに多く、ベジタリアン大富豪が細胞培養肉研究に資金提供する例も多い

ヒンズー教は肉食を禁じていないが、

解釈として肉食禁忌が定着している。

現・インド首相はベジタリアン

ベジ

非ベジ

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ハラルなのか?

「ハラル屠畜された動物の幹細胞を用い、血液や血清を使わず培養すれば『ハラル細胞培養肉』となる」

J Relig Health. 2018 Dec;57(6):2193-2206. (学術論文)

https://link.springer.com/article/10.1007%2Fs10943-017-0403-3

「豚や犬などハラル法で禁じられた動物の細胞でない限り、培養肉は『植物的』であり、ヨーグルトや漬物の類だ。」

Abdul Qahir Qamar, The International Islamic Fiqh Academy、サウジアラビア、ジッダ

https://gulfnews.com/going-out/restaurants/is-shmeat-the-answer-in-vitro-meat-could-be-the-future-of-food-1.1176127

未決着だが、争点は明確化されつつある

JAKIMによるハラル認証

(マレーシア政府公認)

比較的広く認められている

「ハラルである」の一点のみで、

イスラム圏では購買理由に?

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新たな倫理常識の台頭の可能性

2030年、代替蛋白のシェアが30%に上がり、従来肉を食べない人が増えたら?

出典:AT Kearney “How will cultured meat and meat alternatives disrupt the agricultural and food industry?”

・従来型の畜産業がバッシングの対象となり、政治問題化する?

・動物愛護を根拠に欧米主導でWTO等での貿易規制がかかる?

なぜ欧米では日本の捕鯨、中国の犬猫食、研究所での動物実験が問題化する一方、畜産・肉食はOKなのか?

⇒自分たちもやっているかどうかの差

(欧米の一般消費者)

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「フォルカスの倫理的な死」

小説投稿サイト「カクヨム」で公開されている、「新倫理常識」の世界を描いた作品:

「動物の肉を食べるシーンが「残酷」という理由でテレビで放映できなくなるまで、半世紀もかからなかったという。」

「伝統的な方法で生産される肉は、美食家や伝統的な料理を守ろうとする人たちのために存在する、特殊な、ホビーに近いものになった。そして世間の人は彼らを非倫理的なものと見なした。」

「先進的と呼ばれる地域で肉食が違法となるまでの時間は、さらに短かった。培養された肉しか食べたことのない若者たちは、肉を食べるために動物を殺すことがどういうことなのかうまく想像することすらできなかった。それは彼らにとってただ理解不能な行為で、ただ悪だった。」

「はじめ爬虫類や両生類の飼育が違法になった。なぜ禁止されるのか? なぜなら彼らは虫や小動物を食べるからで、それらを飼うことはそのエサを殺すことと同義だから。

問題は猫だった。正確に言えば、猫たちの一部は新しい肉に問題なく適応したが、少なからぬ猫たちはいっさい受け付けなかった。

フォルカスには魚の缶詰や家畜による肉の缶詰を与えていたが、ある日とうとう手に入らなくなった。違法品になったのだ。

フォルカスはどんどんやせ細っていった。

わたしたちはフォルカスを殺すことにした。

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「肉」観の根本的な変化の可能性

純肉第1世代

環境負荷、動物愛護などの理由で細胞培養肉を選択する。

味や価格で選ぶ人も現れる。

純肉第2世代

普段は安価な培養肉を食べており、たまに見る従来肉に対して倫理的な違和感を感じる。

家畜動物は食用、愛玩動物は非食用、野生生物はジビエか海産物が食用

30年

純肉第3世代?

具体的な動物を想起させるタンパク質食品の名称(豚肉・鶏肉)や外観(肉片)に対して違和感を感じる?

30年

動物は愛玩用か労働用に存在している。殺生は野蛮だ。

(培養)生肉は外見が怪我や痛みや死を連想させて辛い。

今の世代が培養人肉に感じるであろう違和感に相似?

「作り方はともかく、それは一般向けの食べ物ではない」

動物や生命を想起させない、“Quorn”のようなタンパク源のブランドが増えていく?

※根源的な価値観や感情が交わる激しい議論が予想される。

一般化&�前提化

一般化&�前提化

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肉食動物の倫理問題: “Captive Carnivore”

野生動物は人の管理能力外であり、倫理性は問われない。

ただし動物園やペットのような「囚われの肉食動物」は人の管理下にある

⇒倫理性が問われうる

??肉食動物の捕食行動の放置は倫理的なのか??

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新倫理常識での世界: 特許 vs. 倫理

・細胞培養肉の製造技術を持つ先進国は、技術を持たない(貧しい)国を動物虐待で非難できるのか?

・それらの国が(屠畜を避けるために)特許侵害をすることを認めるのか?

AIDSコピー薬訴訟:

欧米の製薬会社の特許により薬価が下がらず、

アフリカ諸国民が抗HIVを買えなかったため、インドの製薬会社が安価なコピー薬を製造販売した。

大きな訴訟に発展したが、人道的見地から特別立法がなされ、コピー薬は製造販売が認められた

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消費者受容

Chris Bryant (2017) 3rd Intl’ Conf. for Cultured Meat

様々な予備調査や仮説が発表されているが、

現物が市場にまだ無いため推測の域を超えず

調査の試行毎に結果が大きくばらついている

←食品の消費者受容におけるファクター群

細胞培養肉の消費者受容に関する調査事例の比較結果→

価格

便利さ

健康

安全

食体験

社会的

影響

透明性

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大企業独占による不信

遺伝子組み換え技術は特定企業の利益のためだけに使われ、技術の詳細も「企業秘密」として隠匿された

⇒科学的には安全であっても、不信感

により安心が醸成されず、政治問題化。

「細胞農業の社会受容:GMOからの教訓」

詳細論文レビュー

https://bit.ly/3xnT4T2

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DIYバイオ、尖った発想、SF/アート

大企業独占への対抗軸

スポンサー

個人の研究や活動の支援

有識者団体、大学との連携

思想リーダー、政策提言

産業化、生産技術開発

大規模化、社会実装

細胞農業のエコシステム

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シチズン・サイエンス

有識者団体、大学との連携

思想リーダー、政策提言

DIYバイオ、尖った発想、SF/アート

大企業独占への対抗軸

スポンサー

個人の研究や活動の支援

産業化、生産技術開発

大規模化、社会実装

(Shojinmeat Projectからのスピンオフ企業)

細胞農業のエコシステム(国内)

日本細胞農業協会

NPO法人

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民意主導の細胞農業のかたち

作り方そのもの ⇒ 公開

大規模化の方法 ⇒ 知財

需要量

個別化度

需要あれば商品化

市民科学の領域

産業の領域

企業

技術的透明性

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細胞農業では民意が意思決定に介在できるか?

学術研究がヒント

を示す

市民が積極的に

民意を形成する*

産業が大規模化と

社会実装をする

Wilsdon, James and Willis, Rebecca, why public engagement needs to move upstream (2004), Demos, London.

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DIYバイオで、細胞農業の技術開発へ個人も参加

=DIYバイオ手法を活用=

しみこんにゃく細胞足場

有精卵からの細胞抽出

防カビ剤としての卵白

FBS代替として卵黄

⇒台所で細胞培養が可能に

監修: Dr. Ikko

高校生による自宅細胞培養実験

NHK 2017.08.21放送

自宅細胞培養マニュアル

https://shorturl.at/dzAV0

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DIYバイオ実験機材の開発と従来品の代替

DIYインキュベーター

・おしぼりウォーマーの入力電圧を100Vから30V前後に下げると、温度が40℃弱になる。

・DIYインキュベーターは設計図をGitHubにて公開している。

・どれも最大予算1万円前後

(写真@okgw_ )

扇風機で遠心分離(1000rpmで ~100G)

卵白による抗コンタミ効果とDIYクリーンベンチ

(@earthlyworld

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DIY細胞培養のプロトコルの確立

ブログや動画、GitHub(ソースコード共有サービス)などで実験手順を公開、再現実験を促す。

Creative Cells Kyotoでのスポーツドリンク培養液の再現実験

https://cleanmeat-kyoto.hatenablog.com/

NHKクロ現・「るるまゆの実験ノート」

http://zacmayu.hatenablog.com/

http://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4149/

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開発成果の公開

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教育用・家庭用の細胞培養キットへ

国内SSHでの調査結果

学校教育用

細胞培養

キットを

開発する

(3万円以下)

調査  @thesow41

DIY細胞培養を高校にて展開、

生徒20人で資材費は1万円以下に

↑DIY細胞培養機材

←手順書(公開)

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DIY細胞培養(現状と課題)

他の種類の細胞

共培養系機器開発

と完全無血清化

細胞足場の使用

と生体組織工学

    ......等

どう発展していく?

DIY細胞培養実験

ブログで手順説明

動画で手順説明

細胞培養キット

他の人も細胞培養

実験結果を共有

色々穴あれど今ここ!

DIY培養プロトコル

安定した継代培養

細胞保存インフラ

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DIYなまものづくり

うまい肉

作ってみた

腎臓が作れた

ヽ(・∀・)ノ

復刻版・

マンモス

マンガ肉

創作食材:

こんな「肉」

作ってみた

グリーン・ミート

藻類栄養増強肉

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5282507/

・家庭用培養器の高性能化で、より複雑な「なまものづくり」が可能になる

・DIY生体組織工学があちこちで試され、

新発明も出てくる。

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個人や農家が製造できるようになったら

・地元農家や街の肉屋も独自の細胞培養肉を開発し、ブランドオーナーとなって地方名産品を作りだす。

・個人の肉愛好家も新たな肉を独自開発して新ブランドができる。

・牛舎にバイオリアクターが並び、

細胞提供元の牛は丁重に飼育する。

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従来の畜産と細胞農業での風景の違い

飼育頭数の減少

培養設備の併設

多数の家畜を飼育

牛の個体を出荷

細胞もしくは精肉を出荷

従来の畜産農家

細胞農業の農家

飼育頭数が少なく、清掃、給餌、糞尿処理などの業務が少ない。

機器管理、細胞提供、培養レシピ開発など、醸造業に近い。

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細胞農業での事業形態の例

ファブレス畜産農家

集約飼育農家

飼育

委託

培養工場

食品会社

細胞の

納品

精肉の出荷

ファブレスモデル

畜産農家

(飼育者)

細胞ライセンスモデル

細胞冷凍保存倉庫

細胞の納品

培養工場

食品会社

適宜

解凍

精肉の出荷

CookPad型

レシピサイト

細胞倉庫

肉愛好家

培養レシピの共有

家庭用培養器

ダウンロード

畜産農家

細胞の納品

細胞の提供

細胞農業メーカー

消費者

細胞農業メーカー

「新たな畜産農家」

消費者

精肉の出荷

詳細解説↓

https://bit.ly/39iGsVv

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個体ベースでのブランド化:アイドル牛

肉のパッケージの

QRをスキャン

細胞提供元の

牛のWeb中継

ベコちゃん

※存命

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将来像:大型純肉工場

200tスケールで

筋芽細胞を培養

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使い捨ての

純肉培養袋⇒

中で組織成長⇒

出荷間近⇒

ステーキ培養

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細胞農業による海産物

培養温度は室温付近

小規模養殖での細胞調達

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藻類による

培養液生産

地産地消

農業タワー

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広大な農地が

自然に還る

農業と製造業の

区別がなくなる

人工光合成での

バイオマス生産

細胞農業の田園風景?

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火星コロニー

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宇宙農業

藻類培養⇒

閉鎖系での細胞培養

限られた資源

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アーティスト・クリエイター支援活動

《シュレーディンガーの虎》 by 岡田未知

http://tobira-project.info/blog/2017_okada.html

http://michiokada.tumblr.com/

科学考証、バイオ技術支援、ネタ提供、海外発信 など

第66回東京藝術大学

卒業・修了作品展

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小説・漫画・創作支援活動

細胞農業について、自由に利用できる創作ネタの共有と無償提供

https://docs.google.com/presentation/d/1Du3KybiLrM-Iw42DErK9bWp_any61_espLsAjWiw8-8/edit

小説:壊蝕/エクスビボ カクヨム公開、by枳殻稲荷�https://kakuyomu.jp/works/1177354054922193035

宇宙由来の天災により国が海の底に埋没して数百年。人類は、万能培養細胞を造り出す創造炉心エクスビボによって“五つの国土”を生み出しそこで暮らしていた。

しかし、ある時より突如として培養細胞が腐り始める事例があちこちで発生。各国人類が生存の危機を余儀なくされていた。

そんな人類の生存を獲得し、権力を手に入れる為あらゆる機関・企業・団体が奔走。

そこに18歳の少年、等々力キソラも巻き込まれていく――。

漫画作品 by takaegu

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イメージキャラクター

みよ

Miyo-san

※”Myosin”から

姉・20歳・164cm

火星ホイゲンスクレーターの細胞農業プラントにて、

化学工学のインターン中。

羽織はディスプレイになっている

あこ

Aco-chan

※”Actin”から

妹・13歳・149cm

火星植民コロニーの中学の校外学習として、細胞農業プラントで姉の手伝い中。

帯は力場シールドでできている

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2.5頭身デフォルメ(みよ)

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2.5頭身デフォルメ(あこ)

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ノベルゲーム用素材

シナリオ執筆支援リンク(細胞農業・バイオ技術の創作ネタ帳)

https://docs.google.com/presentation/d/1r2X04PqnCGEs1RGU4h1wR17Uv_gFGI_RqUcvwzTalTc/edit#slide=id.p

※ 末ページ付近のネタは自由に使ってください。書き足して下さる方がいればなお嬉しいです。

素材置き場

https://drive.google.com/drive/u/0/folders/0B0ShPzNziL05THlwU2IwTTNueHM

※ 新キャラの作成、設定の改編や独自解釈OKです。

イメージキャラクターの「みよ」と「あこ」のキャラ立ち絵、

背景、表情などの、漫画・ノベルゲーム素材を公開しています。

みよ

あこ

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関連資料リンク

2019冬

自宅細胞培養マニュアル

https://shojinmeat.booth.pm/items/2361262

オンライン資料(Google Slides)

同人誌(コミケ、COMITIA、技術書典などのイベント頒布、Booth等での委託があります)

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Shojinmeat Projectでの活動参加について

メンバーはそれぞれの得意分野で活動(実験・勉強会・創作 etc.)

誰でも参加可能:

ご興味ある方は是非ご一報ください。研究、勉強会、執筆、創作など、色々な形での携わり方があります。

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よくある質問(FAQ) 1

Q: 参加したいです。

A: 「メンバーシップ」の定義は特にありませんので、そのまま何か活動してご参加ください。メールかTwitterでご一報お願いします。

Q: 理系知識は無いけど参加したい�A: イベント運営、創作、情報発信、アーティスト支援など文系・芸術系の活動も多々あります。

Q: 純肉培養の窒素や酸素はどこから?�A: 培養液の糖分・アミノ酸です。糖分は植物から、アミノ酸は酵母から作られており、酵母培養の養分は植物、さらに元をたどれば肥料です。将来は人工光合成や窒素固定が期待されます。

Q: 菌類やシイタケは細胞農業?

A: 細胞培養を行っているかによります。個体全体を育てるのは、養殖や栽培にあたります。

Q: 細胞培養肉はいわゆるGMOですか?

A: 細胞を増やすだけなのでGMOではありません。「アレルゲン抜き」などのデザイナーミートはゲノム編集が必要になるかもしれません。

Q: どんな味ですか?

A: 開発途上の現時点では、脂や血の味が無い、食感がペースト状などの課題がありますが、将来的には「なんでも作れる」になると見られます。

Q: どのぐらいで肉が育ちますか?

A: 細胞10万個程度から培養開始ならば、1~2ヵ月です。将来的に工場で大規模に連続培養されるようになると、待つ必要もなくなります。

Q: 家畜動物は今後どうなりますか?

A: 種となる細胞が必要なので、今後も必要です。ただし絶対数は減ると考えられます。

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よくある質問(FAQ) 2

Q: 温暖化ガス排出量はむしろ増える?

A: 化石燃料に依存し続ければ可能性ありです。�https://wired.jp/2019/04/02/confounding-climate-science-of-lab-grown-meat/ �電源の脱炭素化は重要です。

Q: 培養肉を食べる積極的理由は何ですか?

A: 最初期はベジタリアンや環境活動家など、特定の思想ベースで消費する方が多いでしょうが、最終的には価格と味が決め手になるでしょう。

Q: 細胞培養実験を子供にやらせてみたいです。

A: 機材と細胞あります。コンタクトください。実験手法も公開しております。

Q: 細胞培養では仔牛胎児血清(FBS)を使う以上、細胞培養肉は意味が無いのでは?

A: 高価で危険なFBSを使わない培養方法の開発が急務で、酵母由来、合成培地や共培養方式など、色々な代替手段が開発されつつあります。

Q: 畜産農家はどうなりますか?

A: 大手独占と畜産農家の消滅もありえるし、各地の畜産農家や肉屋もブランドオーナーとなり、様々な肉が出回る景色もありえます。細胞農業企業が将来取るビジネスモデルによります。

Q: 細胞培養肉はハラルなんですか?

A: 所定の条件を満たせばハラルになり得ます。ユダヤ教のコーシャも同様です。詳細については論文が出ています。 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28456853

Q: ビーガンですか?

A: 技術の発展度合いによります。現時点のDIY手法では卵白を抗カビ剤として使っているので、ビーガンではありません。技術が進んでも何らかの形での細胞取得は必要で、その手順がビーガンの要求を満たすかは現時点では不明です。

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「よく聞く話」の出典・参考文献

「8割以上の農地が何らかの形で畜産に使われており、これは世界の土地面積の2割である」・「畜産は温暖化ガス排出の18%を占め、これは船・飛行機・トラック・車全部合わせたぐらいである」

“Reducing food’s environmental impacts through producers and consumers” Poore, Nemecek, Science 2018 http://science.sciencemag.org/content/360/6392/987

「8割以上の農地が何らかの形で畜産に使われている。」

FAO www.fao.org/animal-production/en/

「真水の2~3割が家畜に使われている」

“The water footprint of humanity”, Hoekstra, Mekonnen, PNAS 2012, http://www.pnas.org/content/109/9/3232

「既存肉のカロリー変換効率は3%、蛋白源変換効率は4%」

“Energy and protein feed-to-food conversion efficiencies in the US and potential food security gains from dietary changes”, Shepon, Eschel et al, IOP Science 2016

http://iopscience.iop.org/article/10.1088/1748-9326/11/10/105002/meta

「牛肉1kgのために餌25kg、水15000Lが必要」

Hoekstra, Mekonnen, UNESCO IHE 2010 “The green, blue and grey water footprint of farm animals and animal products” http://waterfootprint.org/media/downloads/Report-48-WaterFootprint-AnimalProducts-Vol1.pdf

「大豆の90%と穀物の40%は餌用に消費される」

How to feed the world 2050 High-level expert forum, Rome 12-13 Oct.2009

http://www.fao.org/fileadmin/templates/wsfs/docs/Issues_papers/HLEF2050_Global_Agriculture.pdf

「動物のえさの分だけで、35億の人を養える」・「牛肉1kgのために餌12-24kgが必要」

“Redefining agricultural yields: from tonnes to people nourished per hectare”, Cassidy, West e tal, IOP Science, Environmental Research Letters, 2013, http://iopscience.iop.org/article/10.1088/1748-9326/8/3/034015/meta

「鶏肉1kgの生産に餌2-4kgが必要」

Meat or wheat for the next millennium? Alternative futures for world cereal and meat consumption

https://pdfs.semanticscholar.org/ae0c/a5b5556e57a2c4cf904b218d0edbac2c32d9.pdf

「畜産での抗生物質について。8割が畜産用に使われている。」

“The antibiotic resistance crisis: part 1: causes and threats.”, Ventola, NCBI 2015, https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4378521/

「オーガニック農法のほうが大きな土地面積が必要」

“Is organic really better for the environment than conventional agriculture?”, Ritchie, OWID 2017, https://ourworldindata.org/is-organic-agriculture-better-for-the-environment

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国・自治体・企業・大学等の方へ

“Shojinmeat Project”は有志団体/同人サークルです。

細胞培養肉に関する特許ライセンス、共同研究等をご希望の方は、スピンオフであるインテグリカルチャー(株) まで、市場情報収集、コンサル契約などはNPO法人日本細胞農業協会までご連絡ください。

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謝辞

過去に支援して下さった皆様

Shojinmeat Project参加者各位

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純肉開発、直接参加求む! http://shojinmeat.com

DIYバイオ実験・機器自作・情報拡散

毎週火曜日19:00

FabCafeTokyo 2F

&オンライン

@shojinmeat_jp