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金融政策2

⑭量的緩和の出口戦略

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目次

  • 日銀のバランスシート
  • 量的緩和の損失
  • 損失の処理方法

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はじめに

2013年以降の量的質的緩和政策

⇒日銀のバランスシートを大きく膨張させる

(Q)経済が復調し量的緩和が終わるとき, 何がおこるか?

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はじめに

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出所:『消費者物価指数』(総務省)

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日銀のバランスシート

日銀のバランスシート(総資産)の推移

2013/4 174兆円

2015/4 333兆円 (+159兆円)

2017/4 498兆円 (+165兆円)

2019/4 562兆円 (+64兆円)

2021/4 720兆円 (+158兆円)

2023/4 740兆円 (+20兆円)

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日銀のバランスシート

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(兆円)

出所:『時系列統計データ検索サイト』(日銀)

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日銀のバランスシート

資産側の変化(2013年4月から2025年10月まで)

  • バランスシートは175兆円から696兆円へ(約4倍に増加)
  • 国債保有残高は134兆円から558兆円へ(4倍以上に増加)

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日銀のバランスシート

日銀のバランスシート(負債)の当座預金の推移

2013/4 66兆円

2015/4 210兆円(+144兆円)

2017/4 357兆円(+147兆円)

2019/4 398兆円(+41兆円)

2021/4 533兆円(+145兆円)

2023/4 553兆円(+20兆円)

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日銀のバランスシート

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(兆円)

出所:『時系列統計データ検索サイト』(日銀)

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日銀のバランスシート

負債側の変化(2013年4月から2025年10月まで)

  • 銀行券は85兆円から117兆円へ(約1.4倍)
  • 当座預金は66兆円から498兆円へ(7倍以上)

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日銀のバランスシート(まとめ)

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量的緩和によって日銀のバランスシートが膨張した

国債の保有残高は4倍以上に増加した

日本銀行当座預金は7倍以上に増加した

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量的緩和の損失

経済が復調し持続的に物価が上昇した場合

  • 金利を通じた物価のコントロールが必要になる
  • 日銀当座預金の供給量を減少させる
  • 国債の売りオペレーションを通じて資金を吸収する
  • 国債を売却することで国債価格が低下する
  • キャピタルロス発生する

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量的緩和の損失

(Q)ではどれだけの損失が発生するだろうか?

    • 深尾光洋 (2016)「量的緩和、マイナス金利政策の財政コストと処理方法」RIETI Discussion Paper, 16-J-032.
    • Fujiki and Tomura (2017) “Fiscal cost to exit quantitative easing: the case of Japan” Japan and the World Economy, Vol.42, pp1-11.

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量的緩和の損失

出口における損失計算

仮に, 準備預金制度で決められた法定準備まで日銀当座預金残高を戻す場合.

(現在) 498兆円 (※2025年10月末時点)

(法定準備) 13兆円

(差) 485兆円の国債の売却が必要

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量的緩和の損失

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S’

E’

P**

B**

S

D

P*

B*

E

国債価格

国債の需給

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量的緩和の損失

・日銀は量的緩和の出口で, 金融機関に国債を売る.

・国債の売却損が, 日銀にとっての損失になる.

・損失額は, 国債の残存期間によって変化する.

短期国債の場合⇒損失は小

長期国債の場合⇒損失は大

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量的緩和の損失

例)日銀の保有国債の平均残存期間が3か月の場合

(ただし, 市場金利は2%(=国債の価格低下)とする. )

損失額=0.25×0.02×国債の売却額

   0.25×0.02×485兆円

= 2.4兆円

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量的緩和の損失

例)日銀の保有国債の平均残存期間が6年の場合

(ただし, 市場金利は2%(=国債の価格低下)とする. )

損失額=6×0.02×国債の売却額

6×0.02×485兆円

 = 58.2兆円

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量的緩和の損失

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「日本銀行が保有する国債の銘柄別残高」(日銀)

「国債の入札結果」(財務省)

平均残存期間

=およそ6.3年

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量的緩和の損失(まとめ)

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経済が正常に戻れば金融引き締めが必要になる

日銀当座預金を適正な額に戻す必要がある

国債の売却損が量的緩和のコストになる

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現実の損失処理

補完当座預金制度の付利水準の引き上げ

日銀は従来のような市場金利ではなく, 超過準備に対する付利水準を引き上げて利上げを実施.

⇒ 2024/3:マイナス金利を解除し, 付利水準を0.1%に統一.

⇒ 2024/7:付利水準を0.25%に変更

⇒ 2025/1:付利水準を0.50%に変更

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現実の損失処理

付利水準の引き上げのメリット

          • 付利水準はコールレートの下限となるため, 市場の利子率を意図したとおりコントロールできる.
          • 国債の売却を必要としないので, 国債の評価損を負担しなくて済む.
          • 国債を急いで大量に売却する必要がないので, 時間をかけてバランスシートを縮小できる.

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現実の損失処理

付利水準の引き上げのデメリット

      • 超過準備に対する付利として, 年利0.5%の場合2.4兆円(0.5%×485兆円)の当座預金への利息支払いが必要になる.
      • 利息は, 付利水準に比例して大きくなる. たとえば, 金利2.0%ではおよそ10兆円となる.
      • バランスシートをうまくスリム化できなければ, 恒常的に利息支払いが収入(おもに国債の利息収入)を上回る可能性もある.

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現実の損失処理

「日本銀行の財務と先行きの試算」『日銀レビュー』(2024/12)

      • 補完当座預金制度における付利の引上げが, 日銀の収益や自己資本に与える影響を試算.
      • 長期国債の買入れが毎四半期4,000億円ずつ減少するように買入れを行い, 2026年以降はおよそ3兆円の買入れで変化しないと仮定.
      • ETF・J-REITの運用利回りは, 過去5年間(2019年度~2023年度)の平均と仮定.

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現実の損失処理

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『日銀レビュー』(2024/12)より抜粋

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現実の損失処理

試算結果の概要と懸念点

  • いくつかのシナリオのもとで, 最大でも収益としては一時的に2兆円ほどの赤字でおさえられている.
  • ただし, この赤字額は1)利上げスピードの上昇, 2)国債の買入れ減額ペースの鈍化, 3)株式の収益率悪化, によって大きく膨らむ可能性がある.

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現実の損失処理(まとめ)

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2024年にマイナス金利を解除し, 利上げをスタート.

補完当座預金制度の付利水準によって利上げを実施

今後は国債買入れの減額などの実行力が焦点となる