言語の盛衰
中央大学理工学部物理学科4年 植田楓基
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○発表の概要
世界の言語数は減少していて、世界で話されている約6,500言語の多くが、消滅の危機にさらされている。
1つの集団で、2つ以上の言語が話されている国では、強力な措置を取らない限り、片方の言語だけが生き残る。
この発表では、ある社会で2つの言語が話されているときに、
その言語の話者の割合が、時間とともにどう変化していくかを
2つの文献を基に紹介していく。
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・消滅危機言語の例[1]
海外
・アチョマウィ語(米国):ネイティブアメリカンの言語。
・カミラロイ語(オーストラリア):アボリジニの民族言語。
・満州語(中国):満州族の言語。かつての清朝の公用語。
日本
・アイヌ語:アイヌ民族の言語
・八重山語:八重山列島で話されている言語の総称。
・与那国語:与那国島で話されている言語。
(八重山語、与那国語は琉球諸語の一つ)
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○扱う文献
・Modeling the dynamics of language death [2]
・Interlinguistic similarity and language death dynamics [3]
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○この研究の背景
世界の言語のうちの多くが絶滅の危機に瀕しているという状況は、研究者たちの関心を集め、言語ダイナミクスの分析がなされてきた。
その中で、AbramsとStrogatzが提案した、単純で創造的なモデルに注目する。
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○AbramsとStrogatzのモデル
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このモデルについて簡単にまとめると
・実際にいくつかの言語の衰退に関するデータにうまく適合して
いる。
・結果として、競合する言語のいずれかが必然的に消滅すると
予測されるものになっている。
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実在の二言語社会は、ほとんどの場合、かつては大きな交流もなく、事実上別々の単一言語社会で人々が暮らしていたが、近年になり、コミュニティが混ざり始めたことで、言語の競合が生じ、不安定な状況に陥ったと考えられている。
その例として挙げられていたことを紹介する。
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・ケチュア語の例
ペルー中央部に位置するワヌコという地域には、ケチュア語の
話者がまだ多くいる。
しかし、ケチュア語は地位の低さからスペイン語への移行が
急速に進んでいる。
そのため、子供が祖父母とコミュニケーションを取れないという状況につながっている。
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・ケベックフランス語の例
言語の衰退を政策、教育、広告などの戦略によって遅らせることができることを示している。
こうした戦略によって、絶滅の危機に瀕している言語の地位を
本質的に高めている。
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・ケベックフランス語の衰退を遅らせるための政策の例
2022年5月24日にケベック州議会で
「ケベックの公用語・共通語のフランス語を尊重する法律」
が採択された。その内容は、
「裁判所や公共サービスでの英語の使用を制限し、中小企業や自治体に対して、より厳しい言語要件を課すとともに、教育分野で英語による大学基礎教養機関(CEGEP)の学生数に上限を設ける一方、CEGEPでのフランス語による受講義務付け科目を増やす。」
といったもの。[4]
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AbramsとStrogatzのモデルを基に、次のことを提案している。
・安定した二言語併用が可能であること
・それが起こるかどうかは、競合する二言語間の類似度に
依存する可能性があること
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AbramsとStrogatzのモデルでは、バイリンガルが存在せずに、2つのモノリンガルの集団が共存している状況を考えている。
このモデルでは、例えば、スペイン北西部のガリシアのように、
ガリシア語とカスティーリャ語のモノリンガルの少数派と、
それらの言語のバイリンガルの多数派が存在する状況は説明できない。
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AbramsとStrogatzのモデルでは、競合する言語間に大きな相違があると、バイリンガルを無視することがもっともらしく思える。
対照的に、似ている言語、例えばガリシア語とカスティーリャ語の場合、どちらもラテン語から発生した言語であり、この2つの言語のモノリンガル同士では、限られた会話であれば可能。
また、文法や語彙が似ているため、片方の言語が分かれば、
もう片方の言語の学習も容易になる。
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以上のことから、
社会的に意味のあるバイリンガル集団の出現と存続は、
競合する言語間の類似性に依存する可能性がある。
このことを受けて、AbramsとStrogatzのモデルを拡張していく。
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○Abrams-Strogatz モデルの一般化
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これをガリシアの実際のデータと比べると、予想通り両言語間で高い類似性が得られることが示された。
そのグラフを次のスライドに載せる。
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左のグラフは文献[3]から引用したもの。
▲:ガリシア語話者の割合
✖:カスティーリャ語話者の割合
◇:バイリンガルの割合
曲線は、
修正したAbrams-Strogatzモデルによるもの。
Fig1. ガリシア地方における話者の割合と時間
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○一般化したAbrams-Strogatzモデルに� よる研究のまとめ
・言語が競合するモデルにおいて、二ヶ国語併用を扱えることを
示せた。
・類似性は、二ヶ国語併用の安定を可能にする重要な要因である
と思われる。
・Abrams-Strogatz モデルの改良によって、二言語間の
類似係数を推定できる。
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○参考文献
[1] 消滅危機言語の一覧 - Wikipedia
アクセス日:2023/02/06
[2] D. M. Abrams and S. H. Strogatz, Modeling the dynamics of language death, Nature 424 (2003) 900.
[3] J. Mira and Á. Paredes, Interlinguistic similarity and language death dynamics, Europhysics Lettes 69 (2005) 1031.
[4]カナダ・ケベック州でフランス語使用強化法を可決、連邦法相は法廷闘争の可能性示唆(カナダ)| ビジネス短信 ―ジェトロの海外ニュース - ジェトロ
https://www.jetro.go.jp/biznews/2022/06/be8e5183f41bc23b.html
アクセス日:2023/02/06
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