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なぜ、社会的排除に着目するのか?
作成:NPO法人Social Change Agency
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社会的排除とは、物質的・金銭的欠如のみならず、居住、教育、保健、社会サービス、就労などの�多次元の領域において個人が排除され、社会的交流や社会参加さえも阻まれ、徐々に社会の周縁に�追いやられていくことを指す。社会的排除の状況に陥ることは、将来の展望や選択肢をはく奪される�ことであり、最悪の場合は、生きることそのものから排除される可能性もある。
社会的排除の概念が、貧困の概念と異なるのは、貧困は「状態」を表すものであるのに対し、�社会的排除は、排除されていくメカニズムまたはプロセスに着目する点にある。
すなわち、社会的排除は、社会のどのような仕組みや制度が個人を排除しているのかに焦点を当てる。
出典:平成 24 年 9 月 社会的排除リスク調査チーム 内閣官房社会的包摂推進室
「社会的排除にいたる プロセス ~若年ケース・スタディから見る排除の過程~」
社会的排除とは?
私たちが現場で出会う方の多くは、
社会的に排除されている(されやすい)状況にある人と言えるのではないか?
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私たちが現場で出会う方の多くが、�社会的に排除されている(されやすい)状況にある人だとしたならば、
「社会のどのような仕組みや制度が個人を排除しているのか? 」という問いは、
個人を社会的に排除する仕組みや制度の変革を志向する実践を行う助けになるのではないか?
なぜ、社会的排除に着目するのか?
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社会的排除とは? -Aさんの事例の場合-
会社
(日雇い労働)
住まい�(ネットカフェ)
家族
(父)
会社
(正社員)
住まい�(マンション)
友人
プロセス
リストラ前
救急搬送直前
「会社」と「住まい」にギリギリ包摂は�されてるが、何かあれば排除されかねない状況
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社会的排除とは? -Aさんの事例の場合-
生活保護
住まい�(アパート)
医療
CW
会社
(日雇い労働)
住まい�(ネットカフェ)
救急入院直後
病気
排除
排除
退院時
SWer
生活保護の申請支援
病気により救急搬送
日雇い労働に行けない=会社からの排除
同時にネットカフェ代が払えない=住まいからの排除
保険証がなく、受診控え=�医療からの排除
医療
(救急搬送)
生活保護を受給した(制度に包摂された)
ことで、住まいや医療に「再」包摂された。
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家族、会社、コミュニティ等による包摂は、社会的排除による孤立を防ぐ機能を有す
家族
会社
(正社員)
住まい
親族・友人・知人
地域
病気
会社
(日雇い労働)
住まい�(ネットカフェ)
病気
排除
排除
日雇い・単身・ネットカフェ居住
正社員・家族・マンション
医療保険
社会的に排除されていると、
同じ病気であったとしても、
重複的な排除を受けやすく
なってしまう
社会的排除とは? -Aさんの事例の場合-
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社会保障制度による包摂はセーフティネットとして機能する(とされている)
家族
会社
住まい
親族・友人・知人
地域
家族、会社、コミュニティ等による包摂
会社
(日雇い労働)
病気
排除
排除
+社会保障制度による包摂
住まい�(ネットカフェ)
生活保護
社会的排除とは? -Aさんの事例の場合-
医療�(救急搬送)
制度からの排除 -Aさんの事例から-
受診控え
住居確保給付金を知らない
・医療費を払えない
・退院後、帰る家がない
でも、そもそも、過去、どこかのタイミングで制度やサービスを利用していたならば、ネットカフェでの生活に至ることもなく、受診を控え、救急車で病院に運ばれ、ソーシャルワーカーである私と出会うこともなかったのでは?
なぜ、Aさんは制度から排除されていたのだろう?
では、生活保護の申請、
退院後の住まいの確保を
お手伝いします。
健保から国保への
切り替えをしていない
生活保護を誤って理解していた
入院
Aさんが、救急搬送に至るまで、制度利用をしていなかったのはなぜ?
なぜ、Aさんは制度から排除されていたのだろう?
制度(社会保障システム)からの排除はなぜ起きるのか?
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制度からの排除 -Aさんの事例から-
目の前の個人の課題を
社会化する問いに変化させる
Aさんは、どのようなシステムから社会的に排除されていたのでしょうか?
なぜ、社会的排除に着目するのか?
Aさんの事例の場合、「Aさんの生活歴から、Aさんは、「制度」、「住まい」、「会社(労働市場)」、「家族」等から排除されていた」と表現することができます。
このように表現することで、私たちは、個人Aさんとの個別支援を通して、『 Aさんの困りごと/置かれている状況が「制度」や「住まい」や「会社(労働市場)」、「家族」が有する排除のメカニズムによって生じているのではないか? 』という問いを得ることができます。
この問いに対する解像度を高めていくことは、地域や社会構造上の課題に対してメゾ・マクロ実践を展開する際の焦点を検討することを助けてくれるのではないでしょうか?
そして、今まで関わってきたクライアントの方たちからもらったヒントを社会をよりよき変えるために活かすことになるのでは、と思っています。