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アジャイルネイティブな大学生と�コネクトしてみませんか?

-3時間スプリント白熱教室-

渡辺知恵美, 村上藍加, 日高拓真, 飯塚陸斗, 須田幹大

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自己紹介

渡辺知恵美(わたなべ ちえみ)

筑波大学 図書館情報メディア系 准教授

筑波技術大学 産業情報学科 准教授�

専門:データ工学、個人情報保護技術、暗号化DB

�2013年より教育プロジェクトenPiT専任教員として�筑波大にてチームによるシステム開発教育に携わる

AgilePBL祭り実行委員

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“大学におけるイマドキのエンジニア教育”

の講演者の一人、永瀬美穂さんに協力いただいて�アジャイル開発を導入してきた大学の教育プロジェクトの話です�

  • アジャイル開発を導入した大学教員からの視点�
  • 受講生の体験談�
  • これまでとこれから

Developers Summit 2019

33ページより

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このセッションで伝えたいこと

大学のプロジェクトベース学習(PBL)で�アジャイル開発を導入したら、��アジャイルネイティブな学生達が獲得する�学びの価値が高くてワクワクしたので紹介したい。��そして、この学びの場を大学の中に閉じず、�ともに “Agile PBL” を育てていきませんか?

前提

本題

提案

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大学の

プロジェクトベース学習(PBL)で

アジャイル開発を

導入して何が嬉しいのか

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PBL: Project Based Learning

  • 学生がプロジェクトに関わる中で、プロジェクトから派生する�学びを学生自身が主体的に獲得していく学習方法
  • 本発表では「ソフトウエア開発プロジェクト」を対象とする

Testing

Architecture

Performance

Tuning

Design

pattern

Team building

Product

Management

Critique

Positiontalk

Coding

technique

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enPiT : 成長分野を支える情報技術人材の育成拠点の形成

  • PBLを大学教育に導入し、�情報技術を駆使して�社会問題を解決できる人材を育成
    • 学生の育成
    • 教員の育成
    • コミュニティの形成�
  • 2012年より実施
    • 2012年度~ enPiT1 (修士1年を対象)
    • 2016年度~ enPiT2 (学部3年を対象)�
  • 全国167校が参画
  • 2020年3月時点

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enPiT : 成長分野を支える情報技術人材の育成拠点の形成

  • PBLを大学教育に導入し、�情報技術を駆使して�社会問題を解決できる人材を育成
    • 学生の育成
    • 教員の育成
    • コミュニティの形成�
  • 2012年より実施
    • 2012年度~ enPiT1 (修士1年を対象)
    • 2016年度~ enPiT2 (学部3年を対象)�
  • 全国167校が参画
  • 2020年3月時点

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筑波大 enPiT

  • 情報系の学部3年生と修士1年生が主な対象
    • 情報学群�(情報科学類,情報メディア創成学類,知識情報・図書館学類)
    • 大学院 システム情報工学研究群 情報理工学位プログラム�
  • 約1年間のプロジェクト

4月〜7月

7月下旬

10月〜12月

ソロ活動

�作りたいものを

1人で�好きに作る

夏合宿

�チームを組み

アジャイル開発の

リズムを体感する

開発

�授業の枠

(水曜3h+金3h)

で開発する

1月

発表会

�一般の人も

参加可能

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大学の授業でアジャイル開発を導入する意味

  • プロジェクトの目的は、顧客の問題を解決し価値を提供すること

問題の理解解決にとことん向き合うことで

深い学びの基礎を体で覚える

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私たちが大事にしていること (1/3)

なんとかしたい問題にチームが本気で取り組む

  • 困りごとを共有し�共感する人が集まって�チームを作る�
  • 一番情熱を持った�顧客がチームメンバーに�いる

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私たちが大事にしていること (2/3)

小さくたくさんチャレンジする

  • 授業1回分(3時間)を�1スプリントに
    • いかに問題を小さく分解するか
  • 細かく振り返り、�小さく前進する
  • やってみる、立ち止まる�の障壁を下げる

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私たちが大事にしていること (3/3)

「モノ」を手にとり、みんなで価値に向き合う

  • 体験によってのみ�価値を検証する
  • 誰のためのものかを�常に考える
  • 本物を手に入れたときの�目の輝きを大事にする�

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とっとと

アジャイルネイティブたちと

コネクトさせろ

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アジャイルネイティブたちにバトンタッチ

昨年度受講し、今年度メンター参加した学生達4名

学部3年生

学部4年生

修士1年生

Agile PBLの実施

学生メンター参加�

  • 客観的にチームを見る
  • メンターチームとして�運営に加わる

Agile PBLの実施

(2回目)

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受講生

による

PBL教育体験談

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自己紹介

日高 拓真

情報メディア創成学類 4年

趣味:スマブラ

須田 幹大

情報科学類 4年

趣味:スーパー巡り

飯塚 陸斗

情報メディア創成学類 4年

趣味:お笑い

村上 藍加

知識情報・図書館学類 4年

趣味:万博

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私たちの

PBL受講時

プロダクト

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latest. by 旬のどんぐり

webページにメモを貼り、�共有できるChrome拡張

  • 画面上の好きなところにメモ付箋!
  • 全てのwebページに対応!
  • グループ内や第三者と共有!

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Wal:l:lamp by 雨ニモマケs

退屈な雨の日を非日常に!

  • 雨が止まって見える空間を提供
  • ストロボ効果を使った筐体を作成
  • 晴れの日は常夜灯としても使用可!

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CatchApp by シスコーン

サクサクUI × 論文検索 Webアプリ

  • 論文画像を抽出
  • 要旨やタイトルを日本語訳
  • スマホで最新研究をキャッチアップ
  • 最速で読むべき論文を取捨選択

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いらすとや見る

PBL事件簿

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サングラスの�お兄さんに�レビューで詰められまくった事件

事件1

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筑波大学PBL講師

きょん氏 @kyon_mm

えっ

これ意味�なくない?

ある日のレビューのことだった...

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事件1:サングラスのお兄さんにレビューで詰められまくった事件

起こったこと

  • Qiitaなどの技術者向けwebページを対象にMVPのデモを実施した
  • きょん氏「コメント欄とこのプロダクトに情報が分散して悪では。コメント欄もあるので、このプロダクトを使う意味がまったく無い

作っていたもの

webページに付箋形式でメモを残し、共有できるプロダクト

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この事件を踏まえて

使用シーンやターゲット層を誤っていた

  • 当初は「技術者向けのWebページ」で使用することを想定していた

➡1スプリント使ってこのプロダクトの意味とターゲット層を考え直した

プロダクトの概要がわかるものを示すのが遅かった

  • もっと早くMVPを見せることができれば、�プロダクトに意味がないということが早い段階でわかったはず

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この事件を踏まえて

使用シーンやターゲット層を誤っていた

  • 当初は「技術者向けのWebページ」で使用することを想定していた

➡1スプリント使ってこのプロダクトの意味とターゲット層を考え直した

プロダクトの概要がわかるものを示すのが遅かった

  • もっと早くMVPを見せることができれば、�プロダクトに意味がないということが早い段階でわかったはず

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すべてのレビューが “真” ではない

あるチームでは...

  • 「既存の製品だ、新規性がない、面白くない」と�レビューでボロクソ言われた
  • しかし、自分たちの作っているものは間違っていないという確信があった

この事件を踏まえて

  • このレビュアーは我々のターゲットでは無いと判断
  • 気にしなくていいレビューは気にしなくていい

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絶対折れないプロダクトオーナー

vs

絶対折れない大学教員事件

事件2

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最新の研究を楽に追えます!

PBL担当の大学教員

プロダクトオーナー

研究者向けの�プロダクトです!

自分の研究分野を�追えない人は研究者じゃねーよ!!

またある日のレビューのことだった...

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事件2:絶対折れないプロダクトオーナー vs 絶対折れない大学教員事件

起こったこと

  • 対象を「研究者」としていたため、最前線の研究者である教員から�「自分の研究分野を追えない人は研究者ではない」と批判を受けた
  • スマホで使うことをメインとしていたため、�「スマホで論文を読みたい気持ちがよくわからない」と言われた

作っていたもの

最新の研究動向を簡単に追うことのできる研究者向けの論文検索Webアプリ

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この事件を踏まえて

ターゲット層が広すぎた

  • 当初は「研究者全般」が使用することを想定していたため酷評された

➡ ユーザ層の差は何かを考え、�ターゲットが「学生などの論文読みビギナー」と明確化された

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この事件を踏まえて

プロダクトオーナーが想定していた使用用途を上手く伝えられていなかった

  • 論文を「探す」プロダクトだが論文を「読む」ためのものだと受け取られた

➡ 結局、実物のプロダクトを使ってみないと何も伝わらない!

➡ 開発が進めば理解されると判断してレビューを取捨選択して押し切った

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再び絶対折れないプロダクトオーナー

vs

迷子の迷子の開発メンバー 事件

事件3

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一番のターゲットは�”俺”だ!!�俺が欲しい物を�作る!!

お前は結局何が�ほしいんだよ!!

プロダクトオーナー

メンバー

ある日のレビュー後のことだった...

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事件3:再び絶対折れないプロダクトオーナー vs 迷子の迷子の開発メンバー事件

起こったこと

  • プロダクトオーナー「一番のターゲットは “俺” なので俺が欲しい物を作りたい」
  • しかし、メンバーはプロダクトオーナーの欲しい物が上手く理解できなかった

作っていたもの

最新の研究動向を簡単に追うことのできる研究者向けの論文検索Webアプリ

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この事件を踏まえて

プロダクトオーナーと開発メンバーの間で認識を合わせることは大事

  • チームメンバーの大半が直接的なターゲットではなかったため、�課題を明確に把握できなかった
  • プロダクトオーナーは直接的なターゲットだったため、�逆に課題に対して言葉足らずだった

プロダクトバックログをプロダクトオーナーが責任を持って管理した

プロダクトの優先順位が明確化されたので、課題を共有して認識できた

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重要機能

そうでもない機能

具体的に機能�を列挙

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ひとり

de

スクラム事件

事件4

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ある日の開発中のことだった...

彼は進んでる�けど私たちは�ぜんぜんできない...

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事件4:ひとりdeスクラム事件

起こったこと

  • メンバーの1人がスプリント外で開発を進め、開発が属人化
  • 他のメンバーは開発に手出しをできない状態

作っていたもの

  • webページに付箋形式でメモを残し、共有できるプロダクト

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この事件を踏まえて

やりきれなかった部分を認識

  • 技術力の差を埋め、上手く開発のできるチームはどんな開発をしていたのかを知りたい

メンターを志す

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モブ・ペアプロの活用

あるチームでは...

  • やはりメンバーのうち1名が経験者だったため�開発で独走しかける

モブ・ペアプロチーム全体に知見を還元

この事件を踏まえて

  • 技術力に差があるチームでは�モブ・ペアプロが圧倒的に効果的
  • モブ・ペアプロではデキるメンバーが指示出し役
  • 全員がタスクチケットを説明できるようなチームに

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2020年度は�あまりにも最悪な年度すぎましたね事件

事件5

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2020年...

緊急事態宣言を�発出します

なにもかもが�オンライン

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事件5:2020年度はあまりにも最悪な年度すぎましたね事件

起こったこと

  • 新型コロナウイルスの流行により授業がすべてオンライン化
  • 自分たちも体験したことのないオンラインでのチーム開発をサポート

やっていたこと

  • 我々発表者はメンターとして、PBLのサポート業務へ
  • 受講生に対する相談役から教員に対するアイデア出しまで

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この事件を踏まえて

コロナ禍での取り組み

  • VS Code Live Shareを使用したモブプロ
  • Discordで共同作業
  • アーカイブ化しやすい情報整理
    • miroの活用
    • テキストチャットによるフィードバック
    • チーム間のドキュメント共有ツールを導入
  • 少人数でオフラインレビュー会

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この事件を踏まえて

コロナ禍での取り組み

  • VS Code Live Shareを使用したモブプロ
  • Discordで共同作業
  • アーカイブ化しやすい情報整理
    • miroの活用
    • テキストチャットによるフィードバック
    • チーム間のドキュメント共有ツールを導入
  • 少人数でオフラインレビュー会

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この事件を踏まえて

コロナ禍での取り組み

  • VS Code Live Shareを使用したモブプロ
  • Discordで共同作業
  • アーカイブ化しやすい情報整理
    • miroの活用
    • テキストチャットによるフィードバック
    • チーム間のドキュメント共有ツールを導入
  • 少人数でオフラインレビュー会

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この事件を踏まえて

コロナ禍での取り組み

  • VS Code Live Shareを使用したモブプロ
  • Discordで共同作業
  • アーカイブ化しやすい情報整理
    • miroの活用
    • テキストチャットによるフィードバック
    • チーム間のドキュメント共有ツールを導入
  • 少人数でオフラインレビュー会

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PBL教育の学びは

未来へ

結び

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社会人の道へ

研究者の道へ

結び:PBL教育の学びは未来へ

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就職 × PBL

企業選定の軸にPBL教育が影響

  • エンジニアがただの作業者ではなく、当事者意識を持ってプロダクトに参画できるような企業を軸に企業選び
  • (PBL教育の中で)プロダクト開発を通して企業との関わりを持つことができる

就職後に活かせる学び

  • 作りたいものを作るのではなく、必要とされるものを作ることの大切さ

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研究 × PBL

PassWork プロジェクト

  • 情報共有短期修正の性質を卒業研究に適用
  • 研究は基本的に個人の戦いだが、�チームの性質を導入

➡ 異分野のメンバー間で共通の課題を解決

まだまだ発展途上のプロジェクト

研究外にも応用の幅を広げる

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まとめ

PBL教育で学んだこと

  • チーム開発のいろは
  • プロダクトの価値とは何か?

今後の活かし方

  • 社会人・研究者として

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このセッションで伝えたいこと

大学のプロジェクトベース学習(PBL)で�アジャイル開発を導入したら、��アジャイルネイティブな大学生達が獲得する�学びの価値が高くてワクワクしたので紹介したい。��そして、この学びの場を大学の1授業に閉じず、�ともに “Agile PBL” を育てていきませんか?

前提

本題

提案

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教育プロジェクトとしての�一区切り

  • 文部科学省による教育プロジェクト�としての活動は本年度で終了
    • 補助金を使って体制を作り上げる期間は終了
    • 来年度からは大学での�自助努力による授業運営がはじまる�
  • 特にプロジェクトの支援で�成り立っていたもの
    • 企業連携・協力�(非常勤講師、企業メンター)
    • 教員コミュニティ
    • 受講生が学びを共有する場

※大学の運営状況によって異なります

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いち教員の思い:このままで終わっていいのか

  • いろんな人・コミュニティの協力を得て毎年改善してきた
    • 教員・企業メンター・学生メンターで構成される�メンターチームによる学びも大きかった�
  • 大学のいち授業として価値のあるPBLを�自信を持って提供できるようになった
    • 産業界などでも認知されるようになってきた�
  • まだまだ、いろんな人やコミュニティの協力を得て�Agile PBLをパワーアップして行きたい�

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これから何をしたいと思っているのか

  1. 「大学のいち授業なんでしょ?業務とは違うよ」に対峙する�
  2. 「学び方を身に付けた」という土台を共有する�
  3. 多様な環境・人による多様な学びを共有する

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その1:「大学のいち授業でしょ。業務とは違うよ」

  • それはそう
  • 授業だからこその良さと、乗り越えていきたいことがある

授業だからこその良さ

乗り越えていきたいこと

  • 一番欲しい人は自分たち
  • 失敗しても死なない
  • 一番大事な事は「学び」
  • 同じ状況・過程にいる仲間が�周りにいる
  • 時間と場が用意されている
  • 一番欲しい人は自分たち
  • 同じ状況・過程にいる人たち�しかいない
  • 業務とは違うことに対して、�「それがいいんじゃん」と�いえるほど知らない

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その2:「学び方を身に付けた」という土台の共有

  • Agile PBLで身に付けた学び方のスキルは今後大いに役に立つ
  • 土台を共有する人がいないと、途端に難易度が上がる�

開発者の道

研究者の道

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その3: 多様な環境・人による多様な学びを共有

  • 大学の中だけでも�毎年・チームごとに�いろんなドラマがあり学びがある��
  • 少しずつ違う多様な環境での�ドラマを共有し、多くの学びを�追体験できるようにしたい�

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現在の活動:Agile PBL 祭り 2021

  • 2021年3月7日(日) 9:45 - 16:45
  • 会場:沖縄県那覇市 オンライン開催
  • 発表 9件
    • 学生チーム 7件, 企業チーム 1件, 一般発表 1件
  • http://bit.ly/agilepbl2021

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おわりに

  • 私たちが所属する筑波大学におけるAgile PBLと�その後の展望について話しました
    • 他の大学ではまた別の特色あるPBLを実施しています
  • これまでのこと、この先のことについて、�いろいろな方とコネクトしたいです
    • ask the speaker
    • 懇親会など
    • その他どこかでお会いした時
    • Agile PBL 祭り2021
    • enPiTの成果発表会 2021年2月22日(月) 13:00- http://bit.ly/enpit2020ws