一人称構文や、その元となった願望・悩みマンダラを眺めると、内容によって2パターンに分けられることが分かります。それは「他者」が登場するか・しないかです。
さまざまな悩みや願望の多くは人間関係の中で生まれるため、一人称構文には「私は、同僚に私のことを認めさせたいという願望がある。」「私は、私を捨てた恋人が憎いと思っている。」など、他者が多く登場することになります。そしてそこには必ず、相手に対する私の一方的な感情が乗っています。
感情という意識の偏りを解消するため、問題に対する視点の階層を一つ上げます。それが「他者」の視点に立つということであり、第二階層の意識レベルを表す他人称構文とは、 問題の対象である相手の心情を記述するものです。(他者が登場しない場合については後述します。)
例として、「妻が私に素っ気ない。」という一人称構文を考えます。
そして他人称構文を書くために妻の心情を考えるのですが、「何か悪いことしたっけ?」「私の仕事が忙しいから怒っているのかな?」「友人と喧嘩でもしてイラついているのかな?」などと、他者である妻の心情をいくら考えてもきりがありません。
「他者を含む構文」で学んだように、ロゴスプログラミングでは、基本的に他者を主語にして構文を作成しません。これは、他者が何を考えているのか、どのような気持ちなのかは、究極的には分からないからでした。
そこで、他者のことが「分からない」という立場に立つために、他人称構文と呼ばれる五階層の構文であっても、他者のことをあれこれ推測して書かないことです。「妻は私が構わないので怒っている」という予測は常に間違っている可能性を含みます。
ですから、相手の心情として次のように記述します。「妻には、私に素っ気ない態度を取るだけの理由と心情がある。」
上記のように、むしろ「分からない」という前提に立つことで、他者のことを誤解せずに済みますし、間違っていないので結果的には「分かっている」ことになるのです。
そして、悩みと願望は表裏一体、対の存在ですので、「妻が私にそっけない。」という悩みに対して、他人称構文ではその裏の願望である「妻との関係を最適にしたい。」も付け加えます。
(例)一人称構文:私は、妻が私に素っ気ないという悩みがある。 (悩み)
他人称構文:妻には、私に素っ気ない理由と心情がある。 (相手の心情) :私は、妻との関係を最適化したいという願望がある。(悩みに対する願望)
相手の心情を想像することは単なる妄想に陥りがちです。そして相手が何を考えているかが分からないために悩みは際限なく生まれ、永遠に終わりません。しかし、「(相手)には、~する理由と心情がある。」という表現を用いることによって、それを終わらせることができるのです。
さらに、「同僚に私のことを認めさせたい」という場合の一人称構文を考えてみましょう。ロゴスプログラミングの大原則は自由意志。これは私と同様、相手の自由意志もまた尊重されるものであるということでした。
よって、「私のことを同僚に認めさせたい」という私の意志に対して、「同僚が私のことをどう思うかは、同僚の自由である」ということになります。
(例)一人称構文:私は、同僚に私のことを認めさせたいという願望がある。(願望)
他人称構文:同僚が私のことをどう思おうが、同僚の自由である。 (相手の心情) :私は、同僚から認められていないという悩みがある。 (願望に対する悩み)
もし、一人称構文に「他者」が登場しない場合は、その一人称構文の内容が悩みと願望のどちらなのかを考えます。そして、一人称構文で願望を書いているなら、それと対になる悩みを他人称構文では書きます。
(例) 一人称構文:私は、新しい車が欲しいという願望がある。 他人称構文:私は、今の車が古くて恥ずかしいという悩みがある。
前項目のワークのように、願望や悩みを生み出した元となっている自分の思いや思考のパターンが見つかれば、それをペアにして書くことも有効です。
(例)(なぜ自分は「今の車が古くて恥ずかしい」という悩みを持つのか?) 一人称構文:私は、今の車が古くて恥ずかしいという悩みがある。 他人称構文:私は、人から馬鹿にされたくないという思いがある。
【他人称構文の書き方】
①一人称構文に「他者」が含まれる場合・一人称構文で 「願望」を書く場合は、他人称構文では「相手の心情+自分の悩み」を書く・一人称構文で「悩み」を書く場合は、他人称構文では「 相手の心情+自分の願望」を書く
②一人称構文に「他者」が含まれない場合・一人称構文で「願望」を書く場合は、他人称構文では「悩み」を書く。・一人称構文で「悩み」を書く場合は、他人称構文では「願望」を書く。
③願望や悩みを生む元の思いが見つかったとき・一人称構文で「願望(悩み)」を書き、他人称構文で「元の思い」を書く。