1 以下のうち正しいものはどれか。2つ選べ。
a グラム染色で、肺炎球菌の莢膜は抜けて見える。
b 墨汁法でクリプトコックスを観察すると、莢膜は濃染されて見える。
c 血液から分離される肺炎球菌は、4つ以上連鎖して見えることがある。
d 抗酸菌染色で、結核菌は青く染色される。
e グラム染色は、細菌感染症以外には応用されない。
解答a,c
莢膜は、グラム染色でも墨汁法でも、不染帯として観察される。抗酸菌染色で、抗酸菌は赤く染まる（背景は青[メチレンブルー]）。グラム染色で、ピロリン酸カルシウム（偽痛風の原因）を確認することもできる。

2 グラム染色について正しいのはどれか。2つ選べ。
a モラクセラ・カタラーリスは、貪食されていることが多い。
b 結核菌は染まりにくいが、染まる場合には赤く染まる。
c ピロリン酸カルシウムの血症を認めれば、痛風と診断できる。
d 抗菌薬投与後の検体では、大腸菌はフィラメント化している事がある。
e Geckler分類G5の喀痰で、グラム陽性双球菌を認めた場合、モラクセラ・カタラーリスを強く疑う。

解答a,d
モラクセラは貪食されやすく、しばしば貪食増を認める。結核菌は通常グラム染色で染まらないが、染まる場合には青く染まる。ピロリン酸カルシウムは痛風ではなく、偽痛風の原因である（pseudogout、シュードガウト）。抗菌薬投与後の菌は、変形していることがあり、フィラメント状を呈することがある。

3 染色法と病原体の組み合わせとして誤っているのはどれか。
a アニリンブルー染色 ― アスペルギルス
b ギムザ染色 ― ニューモシスチス・イロベチー
c 抗酸菌染色 ― 放線菌
d ラクトフェノールコットンブルー染色 ― ムーコル
e ヒメネス染色 ― マイコプラズマ
解答e
糸状菌では、ラクトフェノールコットンブルー染色やアニリンブルー染色が用いられる。また、放線菌は抗酸菌染色で観察した方がよい場合もある。ニューモシスチスは、グロコット染色で嚢子が染まりやすく、栄養型は染まらない。一方、ギムザ染色では嚢子が染まりにくく（嚢子内小体は染まる）、栄養型がよく染まる。ヒメネス染色は、レジオネラの代表的な染色法。

4 Listeria monocytogenesについて正しいのはどれか。
a 本菌による髄膜炎では、第一世代セフェムが第一選択となる。
b グラム陰性桿菌である。
c 芽胞を形成する。
d 耐塩性があり、低温での発育も可能である。
e 新生児の髄膜炎の原因菌として最も多い。
解答d
グラム陽性桿菌で、芽胞は形成しない。セフェムに自然耐性を示す。第一選択はペニシリン系であり、耐性もほぼないと考えてよい。新生児の髄膜炎の原因となりうるが、頻度は低い。冷蔵庫でも増殖することがあり、チーズ等の乳製品はしばしば汚染されている。ただし、感染症を起こすことは稀。

5 Corynebacterium jeikeiumについて正しいのはどれか。
a 本菌による菌血症にはペニシリン系が第一選択となる。
b ほとんどがバンコマイシンに耐性を示す。
c グラム染色上、モラクセラ・カタラーリスとの鑑別が困難である。
d 亜急性心内膜炎の原因菌として最多である。
e グラム染色で、くの字（もしくはハの字）に見えることがある。
解答d
グラム陽性桿菌で、2つの菌がくの字を描いたように見える。バンコマイシンとテトラサイクリン以外の抗菌薬には耐性を示すことが多い。感染性心内膜炎を起こすことがあるが、頻度は低い。

6 Enterococcus faeciumについて正しいのはどれか。
a 血液培養では、好気でのみ陽性となる。
b 感染性胃腸炎患者の便から分離された場合には、原因菌の可能性が高い。
c 本菌による菌血症には第2世代セフェムが第一選択となる。
d グラム染色で、ブドウ球菌との鑑別はできない。
e Enterococcus faecalisに比べて、耐性化傾向が強い。
解答e
グラム陽性連鎖状球菌で、通性嫌気性である。消化管の常在菌の一つであるため、便から分離されても病原性は明らかではない。リステリアと同様、セフェム系には自然耐性を示す。グラム染色でブドウ球菌との鑑別が難しい場合もあるが、鑑別できないとまではいえない。E. faecalisに比べて、耐性化が進んでいる。

7 感染性心内膜炎の原因菌として、考えにくいものはどれか。2つ選べ。当てはまるものをすべて選択してください。
a Haemophilus influenzae
b Moraxella catarrhalis
c Streptococcus sanguinis
d Staphylococcus aureus
e Coxiella burnettii
解答a,b
f Streptococcus sanguinisは緑色連鎖球菌の一つであり、感染性心内膜炎の原因となりうる。Staphylococcus aureusは感染性心内膜炎の原因菌として最多である。Coxiella burnettiiも、培養は難しいが感染性心内膜炎の原因として知られる。

8 HACEKに該当しないものはどれか。
a Haemophilus influenzae
b Aggregatibacter actinomycetemcomitans (Actinobacillus actinomycetemcomitans)
c Cardiobacterium hominis
d Eikenella corrodens
e Kingella kingae
解答d
最初のHはHaemophilus spp.であるが、H. influenzae以外の弱毒菌である。
感染性心内膜炎（IE）の原因菌の数%（Wang A et al. JAMA. 2007. 297(12):1354-61.）

9 SPACEに含まれないのはどれか。
a Shigella dysenteriae
b Pseudomonas aeruginosa
c Acinetobacter pittii
d Citrobacter freundii
e Enterobacter cloacae
解答a
院内感染の原因菌として知られるグラム陰性菌で、病原性の低いものである。SはSerratia marcescensである。

10 ESKAPEに含まれないのはどれか。
a Enterococcus faecium
b Streptococcus pneumoniae
c Klebsiella pneumoniae
d Acinetobacter baumannii
e Pseudomonas aeruginosa
f Enterobacter cloacae
解答b
耐性菌が問題となる菌である。SはStaphylococcus aureus、特に、MRSAである。