問題3　次の文章を読んで、文章全体の趣旨を踏まえて、（1）から（5）の中に入る最もよいものを、1・2・3・4から一つ選びなさい。

　そういう経験を重ねて、私として繰り返し感じたことは、（1）平凡なことなのですけれども、やはり日本文化というものの特殊性をあまりに強調することのもっている、（2）イデオロギー性ということです。もう少し具体的に申しますと、しばしばつぎのような言い方をする人が日本人の中におり、また時に日本文化を論じる外国人のなかにもあります。

　（3）日本文化というのは、あるいは日本語というのは世界のなかで非常に独特の孤立したものであるから、日本文化とか日本語の微妙なニュアンスはどうしたって外国

人には伝わりっこない、と。そしてそのことが、しばしば、日本人の愛国心とかナショナリズムと結びついていわれるのです。

　私自身、（4）、外国に出て、外国の学者たちと、外国の文化について、あるいは日本の文化について多く話し合う機会をもつ前には、やはり日本文化というのは非常に独特なものであって、そして日本語というのは非常に微妙なニュアンスをもっているので外国人にはわからないものであり、素晴らしいものだというような、一種盲目的な、（5）愛郷心のようなものを多分にもっていました。それだけ日本語が好きだったわけですし、その点は今でも変わりませんけれども、しかしそのことと、日本語の特殊性をあまりに強調しすぎるということは、おのずからまったく別なことです。

　具体的にいうと、たとえば「間」というようなことばは、しょせん外国人にはわかりっこないのだというような議論がしばしばなされてきました。

（坂部恵『鏡のなかの日本語』による）