問題2　次の文章を読んで、文章全体の趣旨を踏まえて、（1）から（5）の中に入る最もよいものを、1・2・3・4から一つ選びなさい。

　日本の女性たちの多くは長らく、短い勤続、定型的または補助的な仕事、そして低賃金という、それぞれが他の原因でも結果でもあるような三要因の連動する職場のなかを働き継いできた。

　この<三位一体の仕組みには、まぎれもなく社会的・文化的な意味での性差、すなわちジェンダーによる性差別がある。（1）<三位一体>はもちろん、職場では「ビジネスの成否をきめる判断業務に携わる男」と「男の仕事を陰で支えて作業する女」の協同、そして家庭では主要な稼ぎ手の夫と家事を担いながら補助的に稼ぎもする妻の協力という、それなりの男女共生システムと相互に補強し合う関係にあった。（2）女性たちが伝統の「女の規範」に従ってこの「それなりの共生」観をみずからの考えともしているかぎり、男性優位のこの仕組みも、性差別と意識され糾弾されることをまぬかれてきたのである。

　（3）私たちは今、この<三位一体構造にも、それと整合的な「それなりの共生」システムにも、はっきりとゆらぎを見ることができる。（4）高度経済成長の終焉以降ゆっくりとあらわれ、20世紀最後の10年間には加速度を加えて進行した。<三位一体>を構成する要因のいくつかはすでに変貌をとげ、仕組み全体の安定性をゆるがせている。一方、職場の仕事においても充実したい、一人ででも生きてゆけるよう職業人として自立したいと願うようになった一定比率の女性たちは、これまでの世帯単位のそれとは異なる「（5）」の男女共生をようやく求めはじめている。

(熊沢誠『女性労働と企業社会』による)

　(注)　終焉生命が終わること。死を迎えること。