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201408041710 マンガン電池 テキスト
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はじめに

北高の皆さん、こんにちは。山形大学工学部へようこそ。こちらは仁科・立花・伊藤研究室です。C1ラボラトリーと呼んでください(http://c1.yz.yamagata-u.ac.jp/)。恩師から弟子へと山形大学工学部で50年以上の長きにわたって電気化学を研究している研究グループです。このたびは北高の皆さんのようなやる気に満ちた生徒さんといっしょに勉強することができてとても嬉しく思います。フォトサイエンス物理図録の裏表紙見開きに紹介されている有名なノーベル賞物理学者リチャード P.ファインマンは「チェスのルールを知っていても、チェスを楽しめるとは限らない」と言っていますが、ぼくはこれをもじって「サッカーを見たことがあっても、サッカーをやれるとは限らない」と言ったりします。さらに言い換えれば化学の教科書を読んだことがあっても、化学の実験をやれるとは限らないし、電池の仕組みを理解していても電池を作れるとは限らないのです。ご承知のとおり工学部はモノづくりを学ぶところです。北高の皆さんが見学ではなく実験を希望されたことをお聞きして今回のお世話役を引き受けました。モノづくりの触りだけでも感じていただければ嬉しいです。

さてフォトサイエンス化学図録のp.96をご覧ください。イラストにあるように日常生活ではたくさんの電池が利用されていますね。イラストの中に何個の電池が使われているか数え上げることができますか?このように工業製品とは人の役に立ってこそ本物です。本当にすぐれた工業製品は使っている人にその存在を意識させたりしません。乾電池の仕組みなんか理解しなくてもふつうに乾電池を使っているでしょう?実生活に溶け込んで役に立つモノづくりこそ工学部の研究といえます。

とは言え、使う側とちがって作る側は、やはり仕組みを理解することは大切なことです。今日は日常ふつうに使っているアルカリマンガン乾電池に注目して、その実験装置を作り、その仕組みを理解してみたいと思います。フォトサイエンス化学図録pp.94-95にはダニエル電池、鉛蓄電池、燃料電池などの実験装置の様子が記載されています。これらのように電位の高い正極と電位の低い負極を1対含む電池を「セル」と呼びます。セルをいくつも直接につないだものを「バッテリー」と呼びます。

まずは電池に関する動画をご覧ください。なおこの動画はYouTubeから何度でも閲覧できます。またC1ラボラトリーのページでは脚本を閲覧することもできます(http://a.yamagata-u.ac.jp/amenity/Laboratory/C1/Ncv.aspx?vol=27)。

動画はいかがでしたか?さて動画の中ではテスターを使って電池の起電力を測定していますが、せっかく大学に来たのですから電池の起電力の測定をポテンショスタット・ガルバノスタットという機器で測定してみたいと思います。この機器はフォトサイエンス物理図録のp.99にある標準電池の機能や電流を流さないで測定するための回路が内蔵されていて正確な起電力を測ることができます。電池の仕組みの理解に必要な知識は化学も物理も高校程度で十分ですが、両方とも必要になることを覚えておいてください。入学試験に関係ないからと思って勉強しないでいると入学後に大変苦労をすることになりますからね。

それでは早速アルカリマンガン乾電池の実験装置を作ってゆきたいと思います。もっともさいしょにお話したとおり電池の仕組みを理解したからと言って電池を作れるとは限りませんよ。でも今日は作れなくてもいいのです。せっかく初体験のチャンスが訪れたのですから、大学生のお兄さんお姉さんといっしょにモノづくり経験とこの素敵な出会いを楽しんでください。

アルカリマンガン乾電池の仕組みとLEDの点灯

電池の構成

図にアルカリ乾電池の仕組みを示します。電池の電極には正極(プラス極)と負極(マイナス極)があります。ボルタによって電池が発明されたとき(フォトサイエンス化学図録, p.95)貴重な金属である銅の方を正極と呼ぶことにしました。それ以来、その呼び方がずっと使われています。アルカリマンガン乾電池の正極は二酸化マンガンの粉と炭素材料の粉を糊で混ぜ合わせて正極ケースに納めてあります。ここで二酸化マンガンが化学反応を起こすことで外部回路に電気が流れます。このように電池の中で化学反応を起こす物質を活物質と呼びます。二酸化マンガンは正極の反応物質なので正極活物質と呼ばれます。正極活物質は電池が放電するときに酸化剤(フォトサイエンス化学図録, p.95)として働きます。負極活物質には亜鉛が使われます。負極活物質は還元剤(フォトサイエンス化学図録, p.95)として働きます。実用電池では亜鉛の粉末をゲル状にするのですが、今回使うアルカリマンガン乾電池では亜鉛の棒を使っています。電池の起電力(フォトサイエンス物理図録, p.99)はこれらの正極活物質と負極活物質の組み合わせで決まります。1800年にボルタが電池を発明して以来、多くの活物質の組み合わせが試されてきました。現在使われている電池の正極と負極の組み合わせは、その歴史を生き残ってきたつわもの揃いであり、乾電池に使われる二酸化マンガンと亜鉛の組み合わせはその中でも130年間も電池の世界に君臨し続けた最強の組み合わせです。電池には正極活物質と負極活物質のほかに電解液という材料があります。今回は水酸化カリウム水溶液を電解液に使います。電解液には電気は流すけれども電子(フォトサイエンス物理図録, p.122)は流さないという大切な役割があります。電子は流さないのに一体どうやって電気を流すのか?それは電解質(フォトサイエンス化学図録, p.56)が電離してイオン(フォトサイエンス物理図録, p.86)が存在しているからです。

酸化マンガン():正極活物質

酸化マンガン()は二酸化マンガンとも呼び習わされます。二酸化マンガンはイオン結晶です(フォトサイエンス化学図録, p.27)塩化ナトリウムのようなイオン結晶では固体のままでは電気を導きません。このようなイオン結晶では化合物の中の元素の割合は簡単な整数比になります(フォトサイエンス化学図録, p.45)。しかしマンガンは価数をいくつもとります(フォトサイエンス化学図録, p.149)。マンガンのよう元素を含むイオン結晶では元素の割合が整数比からずれることがよくあります。このような化合物を非量論的化合物と言い、半導体的電気特性を示します(フォトサイエンス化学図録, p.154)。また同じ組成でも結晶構造が異なると異なる電気特性を示します。さらに粉体材料では粒子の直径や形状、さらにはその表面の性質なども電池の性能に大きく影響を与えます。二酸化マンガンはマンガン団塊として天然にも算出しますが、今回使う二酸化マンガンは電解法で製造された電解二酸化マンガンで結晶構造はラムスデライト構造をとるものです。同じ二酸化マンガンでも試薬として売られている硝酸マンガンを熱分解して得た二酸化マンガンでは電池に組み立ててもほとんど電気が流れません。

黒鉛:正極導電助材

黒鉛は炭素の同素体のひとつです(フォトサイエンス化学図録, p.120)黒鉛は天然にも産出し石墨(グラファイト=書く)と呼ばれます。黒鉛の層は共有結合です(フォトサイエンス化学図録, p.28)。一般に共有結合からなる化合物は電気を導きません。しかし黒鉛の網目状の平面構造の共有結合には二重結合が含まれるため(フォトサイエンス化学図録, p.180)、黒鉛には電気伝導性があります。黒鉛のような炭素材料も完全な単結晶ではなく粉体材料となります。二酸化マンガン同様、炭素材料も粉体材料なので粒子の直径や形状、さらにはその表面の性質なども電池の性能に大きく影響を与えます。

CMC:バインター

セルロース(フォトサイエンス化学図録, p.207)は植物の細胞壁の主成分となる多糖です。そのセルロースのヒドロキシ基の一部にカルボキシメチル基を導入した化合物がカルボキシメチルセルロース、略してCMCです。増粘剤としてアイスクリームなどの食品添加物として使われます。二酸化マンガンやグラファイトのような粉体材料はそのまま電極に塗布することができないので、CMCのような結着材(バインダー)使って粉体を分散しやゲル状にして塗布します(フォトサイエンス化学図録, p.62)。

亜鉛:負極

亜鉛(フォトサイエンス化学図録, p.134)はイオン化傾向が大きく標準電極電位が-0.76Vと低い上(フォトサイエンス化学図録, p.93)、水素化電圧が大きいので(フォトサイエンス化学図録, p.101)電池の負極として最もよく使われます。今回は亜鉛の金属板を使いますが、実際のアルカリマンガン乾電池では亜鉛も粉末としてゲル化して電池のパッケージ内に充填します。

水酸化カリウム:電解質

水酸化カリウムは溶解度の大きい化合物です(フォトサイエンス化学図録, p.244)。重量あたりではなくモルあたりに換算するともっとよくわかります。電解液ではイオンが電気を運ぶので溶液中にイオンがたくさん存在していると電気が流れやすくなります。

ニッケル:集電体

ニッケル(フォトサイエンス化学図録, p.143)はアルカリ水溶液中で表面に皮膜が出来て溶けなくなります。溶けなくなることを不動態化といいます。言い換えれば錆びなくなることで、この性質は耐食性を高めたステンレス鋼などに応用されます(フォトサイエンス化学図録, p.155)。危険なアルカリ溶液を漏らさないために、実用電池ではメタルジャケットが使われています。

電池の起電力

電池は電極間に電位差(起電力)を作り出します(フォトサイエンス物理図録, p.199)。電池には内部抵抗があるので、電流が流れると正しく起電力が測れなくなります。そういうわけで電圧計は内部抵抗が大きいものが重宝されますが、今回はポテンスタット・ガルバノスタットに内蔵されているエレクトロメーターという機能を使って電池の起電力を測ります。

発光ダイオード

発光ダイオード(フォトサイエンス物理図録, p.101)(フォトサイエンス化学図録, p.154)はpn接合を持つ半導体素子で、順方向の電圧を加えると電流が流れますが、逆方向の電圧を加えても電流が流れません。また順方向の電圧を加えてもある程度以上の電圧を加えないと電流が流れず、光りません。このように半導体では電流と電圧が比例せずオームの法則(フォトサイエンス物理図録, p.94)が成り立ちません。今回使用する赤色の発光ダイオードの場合、順方向に加えた電圧が1.8V程度にならないと電流が流れないので、点灯するにはアルカリマンガン乾電池を2個作って直列つなぎにする必要があります。

図 アルカリマンガン乾電池の仕組み

\\yzdn\dfs\share1\C1-MRI\anytime\Daily\20140805-北高\実験 画像\IMG_3788.JPG

図 完成イメージ

準備されているもの

アルカリマンガン乾電池

表1.準備されているもの詳細

準備されているもの

メーカー

型番

備考

白衣

持参

保護メガネ

持参

酸化マンガン(Ⅳ)

I.C. NO.21

黒色粉末

黒鉛(グラファイト)

LONZA

KS-44

黒色粉末

カルボキシメチルセルロース

関東化学

白色粉末

水酸化カリウム

白色固体結晶

ニッケル金網

ニラコ

縦1.5㎝×横1㎝×2

亜鉛線付ダブルクリップ

ニラコ

ワイヤΦ2×40mm×2

100mLビーカー

×

10mLビーカー

×3

ディスポカップ

合材混練用×1

ガラス棒

×1

電子てんびん

×1

薬さじ(スパチュラ)

アズワン

×4

洗瓶

×1

コード付みのむしクリップ

赤×2、黒×2

わに口クリップ付ダブルクリップ

×2

やすり

亜鉛研磨用×1

両面テープ

×1

発光ダイオード

×1

試験管

×6

試験管立て

×1

廃液カップ

×1

この実験は、1グループ4人で行います。

4人の中で、2人一組となって、電極の作製する組と電解液を調製する組に分けて実験を行ってください。

実験前に白衣と保護メガネを着用してください。ご安全に。

実験操作

・電解液の調製(Aさん、Bさん)

白衣と保護メガネを着用しましょう。

注)水酸化カリウム水溶液は濃アルカリ溶液なので失明の危険性があります。

  保護メガネでしっかり目を守りましょう。

  1. 電子てんびんの上に100mLビーカーを乗せてゼロ点調整をします。次に、水酸化カリウムを5g(約40粒、100mLビーカーの底が埋まるくらい)薬さじですくい取り100mLビーカーに入れはかり取ります。同様に別の100mLビーカーに洗瓶で水を10mLはかり取ります。

\\yzdn\dfs\share1\C1-MRI\anytime\Daily\20140805-北高\実験 画像\IMG_2553.JPG

図 水酸化カリウム5g (約40粒)

使い終えた薬さじは、試験管の中に入れて試験管立てにたてかけましょう。

C:\Users\Measurement\Desktop\DSC_0808[1].JPG

図 試験管に立てられた薬さじ

2) 次に、水酸化カリウムの粒の入った100mLビーカーに、100mLビーカーに入った水を加えます。最初にひたひたに水を入れて発生した熱で溶解させます。それから少しずつ水を足します。

注)熱が発生するので、水は2、3回に分けてビーカーに入れましょう。

水酸化カリウムが水に溶けきるまで待ち、溶けきったら電解液の完成です。

(Cさん、Dさん)が正極を作っている間に、亜鉛線をやすりで磨いておきましょう。

・電極の作製(Cさん、Dさん)

  1. 電子てんびんの上に100mLビーカーを乗せてゼロ点調整をします。次に酸化マンガン(Ⅳ)を0.5g(小さじ2杯分くらい)薬さじですくい取り100mLビーカーに入れはかり取ります。同様に、グラファイトを0.5g、カルボキシメチルセルロースを0.5g、それぞれスパチュラで100mLビーカーにはかり取ります。水3mL(3g)を洗瓶で10mLビーカーにはかり取ります。

使い終えた薬さじは、試験管の中に入れて試験管立てにたてかけましょう。

注)取り出した試薬は、試薬瓶にもどさないようにしましょう。

 1つの薬さじで、二種類の試薬を扱わないようにしましょう。

参考書の試薬を取り出すときの注意点と電子てんびんの使い方を参考に行ってください。

参考書:視覚でとらえるフォトサイエンス化学図録 数研出版、 p.6 「2 質量と体積の測定法」

  1. カルボキシメチルセルロースをポリカップに入れます。

次に、はかり取った水を加え、ガラス棒でだまが無くなるまでよく混練します。

注)ここでの混練があまいと電池がうまく動きません。よく混練しましょう!  

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図 カルボキシメチルセルロースと水の混練の様子

だまが無くなったら、黒鉛をポリカップに加え、ガラス棒でさらに混練します。

最後に、酸化マンガン(Ⅳ)をポリカップに加え、ガラス棒で混練します。

  1. 縦1.5㎝×横1.0㎝のニッケル金網の先端部分をわに口クリップで挟みます。クリップで挟まれていない方のニッケル金網の先端部分に、2)で作った混練物をガラス棒で両面に塗り、正極とします。

\\yzdn\dfs\share1\C1-MRI\anytime\Daily\20140805-北高\実験 画像\IMG_3774.JPG

図 ニッケル金網への混練物の塗工の様子

4) 10mLビーカーの縁に、正極をダブルクリップで挟み、固定します。

注)ダブルクリップを開こうとして、わに口クリップを開かないように気を付けましょう。

  折角、取り付けた電極が落ちてしまいます。

10mLビーカーの縁に、負極の亜鉛線をダブルクリップで挟み、固定します。

注)正極と負極がお互い接触しないように固定しましょう。

注)マンガン乾電池を2つ作成するのでビーカーと電極を2組用意しましょう。

\\yzdn\dfs\share1\C1-MRI\anytime\Daily\20140805-北高\実験 画像\IMG_3779.JPG

図 電解液を入れる前のセル

・アルカリ乾電池の作製(4人全員)

両面テープを2cmに切り出して、実験台の中央に貼りつけます。その上から電極の固定されている10mLビーカーを乗せて、貼り付けてビーカーを固定します。

\\yzdn\dfs\share1\C1-MRI\anytime\Daily\20140805-北高\実験 画像\IMG_3778.JPG\\yzdn\dfs\share1\C1-MRI\anytime\Daily\20140805-北高\実験 画像\IMG_3781.JPG

図 実験台への両面テープの貼り付け(左)、固定された10mLビーカー(右)

固定した10mLビーカーに、作成した電解液が電極の混練物に浸かる程度入れます。

注)水酸化カリウム水溶液は濃厚アルカリ溶液なのでこぼさないように慎重に入れて下さい。

\\yzdn\dfs\share1\C1-MRI\anytime\Daily\20140805-北高\実験 画像\IMG_3783.JPG

\\yzdn\dfs\share1\C1-MRI\anytime\Daily\20140805-北高\実験 画像\IMG_3785.JPG

図 電解液注入の様子(左)、完成したセル(右)

・アルカリマンガン電池の電圧を測定

まずはひとつずつのアルカリマンガン電池の電圧を測定しましょう。これを電池の起電力といいます。

電池式

Ni|酸化マンガン(Ⅳ) 黒鉛 CMC|KOH・H2O|Zn

・電池の直列つなぎで発光ダイオードを点灯させよう。

次にアルカリマンガン電池を直列つなぎにしたときの電圧を測定しましょう。

みのむしクリップを使って、作成した二組のアルカリマンガン電池のニッケル金網側と亜鉛線側のリード線を挟んでつなぎます。そして、つながれていないリード線にテスターをつないで電圧の測定を行います。

C:\Users\Measurement\Desktop\DSC_0805[4].JPG

図 直列接続したセルの接続

最後に発光ダイオードを点灯させたときの電圧を測定しましょう。

 発光ダイオードは順方向に電圧をかけなければ電流が流れないので、ニッケル金網側のリード線と発光ダイオードの長い方のリード線に、みのむしクリップを挟みます。そして、発光ダイオードの短い方のリード線から、亜鉛線側のリード線にみのむしクリップを挟んでつなぎます。これで、回路の出来上がりです。発光ダイオードは光ったでしょうか?直列つなぎした電池の電圧と発光ダイオードをつないだときの電圧を比較してみましょう。

 発光ダイオードが点灯することで電圧が下がっていることを確かめることができましたか?これを電池の内部抵抗による電圧降下と言います。

C:\Users\Measurement\Desktop\DSC_0806[2].JPG

図 LED点灯時のセルの接続

終わりに

アルカリマンガン乾電池の組み立てはいかがでしたか?感じていただけたと思いますが、ひとつの工業製品を作り上げるのは総力戦です。化学だけとか物理だけとかいうわけにはいきません。さらに言うなら、安く早く大量に作らなければ商品としてなりたちません。コンビニでふつうに売っているアルカリ電池は工場では1秒間に10本ぐらいの目にも留まらぬ早業でしかも正確に同じものをつくりあげています。工業を学ぶというのはそういうことです。

そしてこれからは持続可能な社会、つまり環境やエネルギー資源に配慮した生産が求められています。100円で売られている単3のアルカリ電池1本にはおおよそ9グラムの二酸化マンガンと7グラムの亜鉛が使われています。この9グラムの二酸化マンガンは電解によって作られ、そのときに使われる電力は14ワットアワー、二酸化炭素排出量にして8グラムです。また7グラムの亜鉛も電解によって作られ、そのときに使われる電力は20ワットアワー、二酸化炭素排出量にして11グラムです。そして電池から取り出すことのできる電力は4ワットアワー、二酸化炭素排出量にして2グラムです。つまりわたしたちはアルカリ電池1本使うごとに21グラムの二酸化炭素排出をしていることになります。ちなみにコンセントから電力は4ワットアワー取り出したときは二酸化炭素排出量にして2グラム、価格は8銭程度になります。電池という便利さを手に入れるためにわたしたちはそれだけ環境に負担をかけているということです。今回の実験を通して電池の便利さを手に入れるために支払う代償について思いをはせていただければ学びの場としての大学の末席を汚しているものとして望外の喜びです。

謝辞

今回ご協力ご尽力いただきました4年生、大学院生、広報係、諸先生方、材料提供や経済的にご支援いただいた民間企業の方々、貴重な税金を裂いていただいた山形県民の皆様に感謝申し上げます。

連絡先

山形大学大学院 理工学研究科

仁科・立花・伊藤研究室(C1ラボラトリー)

准教授 伊藤 智博 (いとう ともひろ)

〒992-8510 山形県米沢市城南4丁目3-16

3号館(物質化学工学科棟) 3-3301

電話  0238-26-3021

FAX 0238-26-3461

メール c1@gp.yz.yamagata-u.ac.jp

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