ファクトチェックガイドライン
このガイドラインは、日本ファクトチェックセンター設置規程(以下「設置規程」という)に基づき一般社団法人セーファーインターネット協会(以下「当法人」という)の下に設置された日本ファクトチェックセンター(以下「当センター」という)の活動のうち、インターネット上の情報に関するファクトチェックの実施における方法論及び基準について定める。
当センターは、国際ファクトチェックネットワーク(International Fact-Checking Network)が定める5つの行動規範(Code of Principles)を参照しつつ、非党派的かつ公平公正なファクトチェックを実施することにより、設置規程に定める目的の実現に貢献することを目指す。
当センターの業務の実施にあたっては、言論・表現の自由、インターネットを通じてSNSを含む多様なサービスが提供される情報環境、それらを通じて誰もが自由に情報を発信及び受信することができる権利を最大限尊重し、個人、集団及び組織による言論・表現活動の委縮を招くことがないよう、十分に配慮する。
用語の定義は、以下の通りとする。
(1)ファクトチェック
言説に含まれる事実について、客観的な事実により検証し、正確性を評価すること
(2)言説
言語により記述された意見、事実、説明など(動画、静止画、音声等により発信されたものを含む)
(3)対象言説
ファクトチェックの対象として定められた言説
当センターのファクトチェックは、その運営、案件の選択や検証をはじめとする方法論及び内容について、透明性をもって実施されなければならない。
当センターのファクトチェックは、調査、案件選択、検証、執筆、発信を含むいかなる側面においても、政府、政党及び政治家の統制を受けてはならない。
当センターのファクトチェックは、調査、案件選択、検証、執筆、発信を含むいかなる側面においても、資金提供を受けることにより、当該資金提供元から影響を受けてはならない。
政治的な資金源からの資金提供を受ける場合は、その提供元、提供金額、提供の目的及び使途について明らかにし、当センターのファクトチェックに当該資金による影響がないことを保証する方法に関して、当センターのウェブサイト上(当センター以外の者が運営するSNSプラットフォーム上を含む、以下同じ。)で説明する。
当センターは、広く一般からのファクトチェックの要請を受け付ける。
ファクトチェックのいかなる側面においても、言説の発信者が誰であるかにかかわらず、同等の言説に対しては、同一の高い水準を満たす基準及び方法論を適用する。
ファクトチェックにおいて、言説を肯定する証拠及び否定する証拠の双方が存在する場合は、検証の結論にかかわらず、その双方を公平に提示する。
引用する情報源の利害関係(政治的、商業的な利害関係を含む)が当該情報源から得られる証拠の正確性その他ファクトチェックのプロセス及び結果に影響を与えると合理的に判断される場合は、その内容についてファクトチェック記事の中で開示する。
当センターは、いかなる国家、政党及び政治家(公職の候補者を含む。)に対しても支持を宣言又は表明せず、また、公開の討論における透明性と正確性を除くいかなる問題についても、いかなる政策的立場に対しても賛否を表明しない。
当センターにおいてファクトチェック記事の作成に従事する者は、正確性と透明性の問題を除き、当センターがファクトチェックを行う可能性のある政策課題について、合理的な一般市民が当センターの活動を偏ったものと見なす恐れがあるかたちで、自らの見解を提言又は公表してはならない。
当センターにおいてファクトチェック記事の作成に従事する者は、在職中、設置規程に定める活動について、個人、集団又は他の組織において競業行為をしてはならない。
当センターは、ファクトチェックに対する訂正及び苦情処理の方針を定め、公開する。
当センターが広く一般からファクトチェックの要請を受け付ける方法については、当センターのウェブサイト上に分かりやすく掲示する。
当センターは、SNSや掲示板等インターネット上において意見の発信や情報交換が行われる公開の場を中心に、それぞれの場において流通する情報や利用者の意見等の他、誤りの可能性がある言説として当センター以外の者により提示されている言説についても調査し、ファクトチェックの対象とすることが設置規程に定める目的の達成に資するものと認められる言説を収集する。
1.当センターは、広く一般からの要請及び日常的な調査により収集された言説のうち、以下の条件を満たすものの中から対象言説を設定する。
(1)不特定多数に公開された言説であること
(2)事実に基づき客観的に証明又は反証が可能な内容であること
(3)当該言説の流布が、個人、組織、集団又は広く社会一般に対して影響を及ぼす可能性があること
(4)正確で公正な言説により報道の使命を果たすことを目指す報道機関として運営委員会が認める者が発信した言説ではないこと
2.前項の規定にかかわらず、運営委員会は、特に必要と認める場合には、対象言説を指定することができる。
1.当センターは、前条に基づき設定された対象言説の中から、以下の諸要素を全て考慮して、当該言説の範囲及び重要性に基づき、ファクトチェックを実施する。
(1)内容が真であることが明らかではないこと
(2)内容が真であるとして不特定多数に流布していること
(3)公共の利害に関連する内容であること
(4)可能な限り速やかに正しい情報を拡散する必要があること
(5)当該言説について、多様な主体による健全な議論がなされない可能性が高いこと
2.案件の選定にあたっては、特定の分野や対象その他いかなる側面においても、過度に集中しないように努める。
ファクトチェックの実施及び発信においては、対象言説の内容、発信元、検証に用いた情報源及び検証プロセスを可能な限り明示することにより、記事の読者がファクトチェックの内容を自ら再現出来るよう実施する。
ファクトチェックの実施に当たり、 対象言説に含まれる事実について、検証に必要な範囲で可能な限り一次情報を入手し、一次情報提供者と連絡を取るよう努める。多角的な検証を行うため、可能な限り複数の異なる情報源から情報を入手する。
収集した情報に基づく検証においては、下記の点に留意して行う。
(1)公正な検証となるよう可能な限り異なる立場の情報源を活用し、多角的に行う
(2)情報源の対象言説に関する利害関係に留意する
(3)対象言説を肯定する情報及び否定する情報の双方を入手した場合、その信頼性に留意した上で、読者の理解を助けると判断できる場合は、検証の結果にかかわらず、その双方を提示する
検証結果に応じ、下記のレーティング基準表にあるレーティングのうち、最も適切なものを、ファクトチェック結果として明示する。
(レーティング基準表)
レーティング | 評価内容 |
正確 | 誤りが無く、重要な要素が欠けていない。 |
ほぼ正確 | 一部に誤りを含んでいる が、重要な部分を含む大部分は正しく、概ね正確な言説である。 |
根拠不明 | 根拠がないか不十分であり、事実の検証ができない。 |
不正確 | 一部は正しいが、重要な部分に誤りや又は欠落がある、またはミスリード。 |
誤り | 誤りである、又は重要な要素が大きく欠けている。 |
ファクトチェックの結果について発信する記事の作成においては、下記の事項を含む、読者がファクトチェックの方法及び結果について十分に理解することが出来る内容とするよう努める。ただし、情報源となる者等に危害が及ぶおそれがある場合については、その旨の説明を付した上で、下記内容の一部について記載しないことがある。
(1)対象言説の発信元及び具体的内容
(2)レーティング及びその理由
(3)結論の根拠となる事実認定及びその情報源
(4)結論に至る具体的な検証過程
(5)発信者により対象言説が訂正等されている場合は、その旨
(6)情報源の利害関係等、読者がファクトチェックの結果の信頼性に影響を与えると合理的に判断し得る事項
(7)記事の作成者及び公表日
1. ファクトチェックの結果に関する記事は、当センターのウェブサイトの容易にアクセス可能な場所及び運営委員会が承認したその他のウェブサイトに、運営委員会が承認した方法及び範囲で掲載する。
2.対象言説の発信元や情報源その他読者の理解並びにファクトチェック結果の再現及び検証に必要な情報については、ウェブサイトのリンクの提供等の提示により明記する。
ファクトチェックの結果に関する記事は、事実に基づく客観的な真偽の検証のみを提示することとし、その他の意見、評論等を記事に混在させないようよう努める。
公表されたファクトチェックの結果について、合理的に検討すべき根拠を付した訂正の要求については、ファクトチェックの実施と同様の手順に従い検証を行い、当該訂正の要求の内容及び検証の結果について、公正に公表する。訂正があった場合、訂正前の記事も引き続き掲載し、読者が訂正の前後を比較検証することが可能となるよう努める。
公表されたファクトチェックの結果について広く一般から寄せられた訂正の要求及び苦情については、前条に則り公正かつ透明性をもって処理し、その内容及び処理の結果について、運営委員会に報告する。
1.運営委員会は、設置規程又はガイドラインに照らして必要と判断する場合、編集部に対して、ファクトチェック記事に対する修正、撤回又は補足のための追加的な記事の掲載等について勧告又は具体的な指示を行う。
2.運営委員会は、編集部において本ガイドライン第19条第1項(4)又は同2項に基づき運営委員会が定めた対象言説の取扱いに違反した場合、その他設置規程又はガイドラインに照らして編集長としてふさわしくない非行があった場合、当該編集長を解任するよう、理事会に勧告することができる。
本ガイドラインのほか、ファクトチェックの実施にあたって必要な事項については、設置規程第8条又は第15条に基づき、別途定める。
(以上)