2025 UJA論文賞 UJA Outstanding Paper Awardについて

本年度受賞者
インディアナ大学医学部 新堀 真希 博士 Maki Niihori, Ph.D

受賞内容:肺動脈性高血圧症における血管新生とミトコンドリアの機能
受賞分野:基礎医学 UJA論文賞

 

受賞内容スライドリンク
https://drive.google.com/file/d/1ZZqDPnnpL68ZgCinwo5uzdG3B-l_ujMb/view?usp=sharing

英語でのYoutube (有名雑誌のYoutubeで取り上げられています)
https://www.youtube.com/watch?v=hWj_B64qSpU

UJAホームページ
https://cheironinitiative.wixsite.com/uja-award

過去のUJA論文賞開催記事

https://gendai.media/articles/-/94998

審査コメント

新堀先生の研究では、ミトコンドリアの基礎研究から肺動脈性肺高血圧症への応用の可能性までExtensiveなデータをもとに明らかにされています。患者で変異が確認された遺伝子NFU1がミトコンドリア機能不全を起こし、リポ酸補填が機能不全及び血管新生不全が改善されることをラットモデル及び患者由来の細胞実験で示しています。高い可能性のある治療方法の確立が展望され、有意義な研究です。(増田久子 審査員)

NFU1というタンパク質が、ミトコンドリアの機能に関わる他のタンパク質の働きを調節していることを明らかにし、この仕組みの異常が肺動脈性高血圧症の原因となる肺血管新生の障害につながることを示した重要な研究です。特に、リポ酸を補充することでミトコンドリアの機能が回復し、病気の改善につながる可能性を示した点が注目されます。この発見は、体に負担の少ない治療法の開発に道を開く素晴らしい成果です。(今崎剛 審査員)

論文タイトル        Mitochondria as a primary determinant of angiogenic modality in pulmonary arterial hypertension

掲載雑誌名        Journal of Experimental Medicine

論文内容        肺動脈性肺高血圧症(Pulmonary Arterial Hypertension, PAH)は進行性で致死的な疾患であり、依然として臨床的ニーズが満たされていない病気です。PAHの主な原因は、心臓から肺へ血液を送る肺動脈が何らかの理由で狭窄または肥厚し、肺動脈圧が異常に上昇することです。その結果、右心室に過剰な負担がかかり、右心室肥大および機能不全が引き起こされ、最終的には心不全に至ることがあります。これがPAH患者の死亡の主な原因となります。肺血管新生障害はPAHの進行および死亡率において重要な役割を果たしますが、この過程を駆動する分子メカニズムは依然として不明です。

本研究では、PAHを非常に高い頻度で発症する患者において発見されたNFU1遺伝子変異を導入したラットモデルを用い、ミトコンドリア機能不全(Mitochondrial Dysfunction, MD)と顕著な肺血管新生障害との間に関連があることを明らかにしました。さらに、NFU1の下流ターゲットであるリポ酸(Lipoic Acid, LA)を飲料水に添加して補充することにより、MDおよび血管新生不全が改善され、NFU1ラットモデルにおける進行性PAHの症状も改善されることが示されました。加えて、特発性PAH患者の肺でもNFU1の発現および下流のシグナル伝達の不足が確認され、これによりNFU1遺伝子変異の有無にかかわらず、MDとPAHに強い関連性があることが示されました。PAH患者由来の肺動脈内皮細胞にLAを補充すると、ミトコンドリア機能の顕著な改善が認められ、LAが潜在的な治療アプローチである可能性が示唆されました。本研究は、PAHの発症におけるMDの新たな役割を明らかにし、NFU1/LAの欠乏がこれまで認識されていなかったPAH患者においてMDを改善する必要性を強調しています。