COVID経済危機の軽減:

すぐに動け、必要なことは何でもやれ[1]

(ダイジェスト版)

2020/03/18版

原文:https://voxeu.org/content/mitigating-covid-economic-crisis-act-fast-and-do-whatever-it-takes

リチャード・ボールドウィン&ビアトリス・ウェーダー・ディマウロ編

山形浩生hiyori13@alum.mit.edu による端折り&翻訳

訳者要約

発表時期もあり、話はヨーロッパ政府が何すべきかがほとんど。で、主張はみな同じ。

  1. とにかく財政出動をなりふりかまわずやれ。
  1. 財政出動して、まずは保健医療を底上げしろ
  2. 次に弱者から始めて補助金や現金給付でボトルネック支援
  3. さらに中小企業から始めて、信用供与、返済期限延長、徳政令なんかでとにかくつぶさない
  4. その他社会サービスを継続させる。ここまでとにかく財政出動。
  5. (あと、イタリアがんばってるからいじめないで)

  1. 次に金融政策もなりふりかまわずやれ。特にECB!!  
  1. 財政出動のお金は中央銀行が出せ。とにかく出せ。つべこべ言わずだせ。
  2. 特に欧州各国は財政ナントカで制約かかってるけど、そんなのはずせ。ECBはそんなの無視して各国にとにかくお金を供給しろ。
  3. 銀行にも流動性を供与してつぶすな。

  1. 政府は透明性の高い情報提供で社会の安心感を醸成しろ

これ以上のことを言っている論説はアジア諸国の対応解説と最後の二本以外はない。

目次

訳者要約        1

はじめに        1

1. いまのところ、まずまず:そしてこんどはモラルハザードを恐れるな        4

2. パンデミックと不景気の曲線を平らにする        5

3. 的を絞った大規模施策でコロナウイルスの経済的影響を抑える        7

4.   イタリア、ECB、そしてユーロ危機再演回避の必要性        9

5. EUはコロナ危機の中心にいる加盟国を絶対支援しろよ        10

6. 今こそヘリマネを!        11

7. コロナの影響について株式市場が物語ること        12

8. コロナとその経済パンデミック撃退の鍵十個        14

9. 中国をコロナと経済メルトダウンから救う:経験と教訓        15

10. 中国での経済優先度変化とコロナの影響        19

11. コロナに対するシンガポールの対応        20

12 韓国のコロナ体験        21

13. COVID-19: ヨーロッパに危機救済プランを        23

14 ヨーロッパの雇用にCOVID-19バズーカを        24

15 金融政策パッケージ:分析フレームワーク        25

16 コロナウイルス不景気への対処に大胆な政策が必要        26

17 ヨーロッパの震源地イタリア        27

18 コロナ危機がドイツにとって持つ意味と経済対策        29

19 COVID-19時代のファイナンス:次は何だ?        31

20 コロナは世界金融危機と同じかもっとひどくなるかも        32

21 いまは人々を保護して経済回復は後回しに        33

22 コロナウイルス時代の政策        34

23 国際協調で経済ナショナリズムウイルスを抑えよう        35

24 永続的景気刺激策を訴える        36

はじめに

リチャード・ボールドウィン&ビアトリス・ウェーダー・ディマウロ

光学蛙殿の全訳は以下にあるので、いい加減な要約を信用しない賢者たちは以下を参照:

https://econ101.jp/%e3%83%9c%e3%83%bc%e3%83%ab%e3%83%89%e3%82%a6%e3%82%a3%e3%83%b3-%e3%83%87%e3%82%a3%e3%83%9e%e3%82%a6%e3%83%ad%e3%80%8c%e3%82%b3%e3%83%ad%e3%83%8a%e3%82%a6%e3%82%a4%e3%83%ab%e3%82%b9%e7%b5%8c/

もうコロナは中国やイタリアだけの問題ではなくなってきた。感染者の推移は以下の通り。G7では日本だけ例外チックな動き。

あと、なんか押さえ込めたように見えるところも安心しちゃだめみたいよ。いろんなシミュレーションやると、第二波がくる可能性は結構大。中国とか、それをきちんと心配して手を打ってるよ。シンガポールも警戒してる。

で、重要なのは、山をならして平準化して、医療キャパを超えないようにすること。キャパ超えると、いまのイタリアみたいな見殺しトリアージの地獄になるよ。でも、病気をおさえこむとその分だけ経済を止めることになって、不景気の山は大きくなっちゃう(グリンカス論考参照)

で、コロナの経済ショックは以下の通り。

  • 医療面
  • 抑制のための経済統制からのもの
  • 期待(不安)からのもの

それに対処するには、とにかくあらゆる手を尽くさないといけない。基本は

  • 財政政策
  • 金融政策
  • 金融規制
  • 社会セーフティネット
  • 産業政策
  • 貿易政策

それぞれについて本書に論考あるから見てね(訳者:……どの話も同じことしか言わないけどね)。最も大胆なのは、6章のヘリマネの提案(訳者:でも思いつきレベルだよなー)

 すでに財政出動は各国いろいろやってる。いちばんすごいのは香港でGDPの4%超もやった(訳者:それにひきかえ、いちばんやってないのは日本。桁がちがう、それも二桁ちがうって情けなや。)

で、ヨーロッパどうする?やることとしては

  • 目先の医療インフラとその費用負担は惜しむな
  • 封じ込めや休校とかの費用も負担しろ
  • EUもその費用を支援しろ

ではEUはどうやって負担するの?

  • EU予算を見直せ
  • それ以外でもEU諸国協力
  • パンデミック債を出せ
  • ユーロ安定を目指したOMTとか

まだまだ話は終わりじゃないし、今後も展開は続くよ。続報待て!

1. いまのところ、まずまず:そしてこんどはモラルハザードを恐れるな

Charles Wyplosz

 これまでの各国の対応は、最初は尻込みだったけれど、突然大胆になって、だいたい専門家の提言に沿ったものになったので、まずます。でもその導入方法が重要。特に、多くがモラルハザードを抱える手法だから批判うけやすいけど、恐れるな。

 とにかく様々な支援は必要になる。それはボトルネックに集中させるべき。たとえば医療保険のない貧乏アメリカ人とか。モラルハザードとか言ってないで支援すべき。現在直面しているのは、経済危機であって金融危機ではないけれど、金融危機にならないよう中央銀行が支援しろ。

二重底の危機は避けたい。特にヨーロッパ。たとえば2008年金融危機の後でユーロ危機がきたみたいなのはいや。国際協調はいいけど、国内ボトルネックには効かないから注意。でも国内対応に必要な資金のための国際的な融資やユーロ債をモラルハザードのために拒否するのは愚か。ECBは無条件で各国に資金提供すべき。

おしまい。


2. パンデミックと不景気の曲線を平らにする

ピエール=オリヴィエ・グリンカス

今回、医療崩壊起こさないように感染曲線のピークを平準化しろって話は聞いてるよね。

で、平準化できた場合のマクロ経済的な含意は? 実は感染曲線が平準化したら、それだけマクロ経済的な不景気曲線は急なものになってしまう。平準化させるための在宅勤務とかできない人も多いし、経済全体に急ブレーキがかかるから。金融危機ですら、失業率のピークは10%。いまの経済完全ストップは、ヘタするとそれよりひどく、50%くらいの人が働けずに実質失業になりかねない。これですら楽観シナリオ。

だから不景気の曲線も平準化が必要。次のようなイメージね。

さっき言った通り、この両者は背反するのよねー。

で、心配すべきかってことだけれど、そうでもない。

中央銀行が流動性提供できるし、家計や企業の苦境は救える。すると景気曲線は青に近づく。やるべきことは:

1. 労働者が失業せず、給料もらえるようにしてね。そのために企業に補助金を!

2. おなじことだが企業が破産しないように、返済猶予とか考えろよ

3. 不良債権が増えるから、それで金融危機にならないようにしろよ。

いろいろ制約あるけれど、なんとかなるんじゃないか、とは思う。そもそも、各種施策のためのお金を借り入れる金利は死ぬほど安い。ドカドカ借り入れして支援するなら、今でしょー! 財政赤字なんかどうでもいいよね。

あとヨーロッパ人は、「これだからイタリアは」とかいうのやめれ。そのうち他にも広がるよ。ユーロ債出して金を調達しろ。そのためのヨーロッパ安定化メカニズム(ESM)だろ。「コロナ債」とか出して欧州の団結を強調しようよ。GDPの1-2割くらい出そうぜ。

おしまい。


3. 的を絞った大規模施策でコロナウイルスの経済的影響を抑える

ギータ・コピナス (IMF)

すでにコロナの影響のでかい国では経済被害が目に見えるものになってる。サービス部門のほうが影響でかそう。

コンテナ船のキャンセルも相次いでるし、航空会社は大打撃を受けてる。的をしぼった支援が必要。

  • 社員の病欠とかについて企業は目くじらたてるな
  • 中央銀行は流動性提供を
  • もっとでかい金融刺激や財政出動も必要

IMFも、できる限りの支援ができるようがんばりますわよ。

おしまい。

(訳者:Yer, right…)


4. イタリア、ECB、そしてユーロ危機再演回避の必要性

オリヴィエ・ブランシャール

イタリア政府はすっごいがんばってるからいじめないで。すでに大量の財政出動してるけど、別に債務の持続性は脅かされません。そこらへん、ECBがイタリア財政を支援してあげてね。無条件で。

直接の資金補助(OMT)とかもあるし、これも使って欲しいけど、時間かかるからね。ECBだけだよ、ここで踏ん張れるのは。ECBは一国の負債は33%しか持てないという規制があるけど、そんなの踏みにじろう。そうしないとまたユーロ危機の再演だよ。

おしまい。


5. EUはコロナ危機の中心にいる加盟国を絶対支援しろよ

アルベルト・アレシナ&フランセスコ・ジアヴァッツィ

イタリア、がんばってるしツキの問題もあるけど、やっべーっす。まずは病院のキャパ増やしましょう。それから経済危機なんとかしよう。

コロナで失業する人はいない、とイタリア財務大臣が言ったけど、もし失職したら転職まで失業手当一杯出そうぜ。世帯にも何らかの保証して消費を維持させよう。でもイタリアは財政きついから、ECBが支援しよう。TLTROプログラム復活とかはいい方向だね。

イタリアは財政的にきついけど、EUはそれでとやかくいわずに支援しようぜ。

おしまい。


6. 今こそヘリマネを!

ジョルディ・ガリ

まずは減税とか補助金とかで直接支援だよね。でもそれで政府の財政がきつくなるから、EUの出番かな。ECBは金融支援しないとダメだよ。最後の手段だ、といって尻込みする人がいるけど、今はまさに最後だろうに。

おしまい。


7. コロナの影響について株式市場が物語ること

Stefano Ramelli and Alexander Wagner

コロナに関する話はやたらに増えてきた。

でもって、株式市場もそれなりの反応を示して、1月から2月にかけて暴落してます。

こう見ると、産業別に勝ち組と負け組が出てきてるよね。エネルギーとか輸送は下がり、ヘルスケアとかテレコムとかはむしろ上がってます。

あと中国との関係によっても株式市場の反応ははっきりしてる。

てなことで、株式市場の反応は早いね。しかも、そんなパニックはなくて、一応冷静にセオリー通りの反応になってる。あと、今後の不安拡大には懸念があるみたいね。

おしまい。


8. コロナとその経済パンデミック撃退の鍵十個

Shang-Jin Wei

中国のコロナウイルス拡大の鍵が二月第二週か第3週だと予言したけど、その通りだったでしょ、うっしっし。で、教訓十カ条。

  1. まず広がる前に予防措置をしとけよ。
  2. 国内の医療キャパが限られてるなら、中国、日本などからそうしたキャパを輸入しとけよ
  3. 大規模発生にそなえた病床確保はしとけよ。
  4. 感染を抑える手法について世間に早めに、はっきり、きっぱり伝えておけよ
  5. 社会的な隔離の強制について、伝染発生と同時に早めにきっぱり対応しろよ
  6. 労働者や企業や金融機関に緊急支援をすぐにやれ。
  7. デジタル情報を活用しろ。
  8. インターネット利用を、長期的な経済成長の足がかりにするようにしろ。テレワークとかの基盤をこの機会に整えろ。
  9. 国際的に協調した刺激策をしたほうがいいね
  10. 関税や非関税障壁を引き下げて不景気に対応しよう。

おしまい。


9. 中国をコロナと経済メルトダウンから救う:経験と教訓

Yi Huang, Chen Lin, Pengfei Wang and Zhiwei Xu1

中国は経済を救うためにいろいろやりました。新規の件数推移はこんな具合:

中国国内の分布を見ると、まあ武漢がでかいよな。

で、すぐに武漢とかの各地の都市封鎖までやったよ。それ以外にもいろいろやってる。

  • 減税や補助金など財政出動
  • 信用緩和、金利引き下げ、負債の延長などの金融政策
  • 保険料支払いの締め切り延期など社会保障政策

また発生後にもいろいろやった。

  • 株式市場再開
  • 減税、料金減免、補助金とか財政政策
  • 信用供与、中小企業融資など金融政策
  • 大規模インフラ投資やサプライチェーンなどの産業政策
  • 貿易や投資安定のための貿易政策

特に中小企業は売上半減とかざらだったので、要望に添っていろんな施策をやった。要望もたくさん聞いた。中小企業からすればこれはForce Majeure なので国がいっぱい支援した。

  • ビッグデータによる信用スコアなどでSMEの同定
  • ビッグデータやブロックチェーンで債務者のリアルタイム把握
  • 地域格差のない融資
  • オンラインでの信用取引

また産業部門ごとにもいろんな差がある。宿泊業とか最も影響が大きい。

中小企業向けには景気回復までの時間稼ぎが重要。中国では三月くらいに影響が衰えてくるので、4月には平常営業に戻るはず。それまで食いつないでもらう施策をする。

国際的には反グローバリズムがこれで加速したりするとやべーので、すばやく、透明性のある活動をして、マクロ経済的にはとにかく手段を選ばない。

おしまい。


10. 中国での経済優先度変化とコロナの影響

ジョナサン・アンダーソン

中国での経済活動は明らかに衰えてる。活動指数と公式GDPの推移を見て。

問題は、すでに国内がかなり債務付けになっていること。また経常黒字もかなり下がってきている。将来的な景気回復も、かなりヨタつくだろう。各種政府の施策はあるけれど、効果は怪しいことがデータからうかがえる。それにまだ不確定要因がいろいろあるよ。

おしまい。


11. コロナに対するシンガポールの対応

ダニー・クワ

シンガポールの対応成功は、経済政策、しっかりした政治リーダーシップ、専門的な証拠に基づく知識の組み合わせによる。

1月2日                保健省が警告を出し始めて、翌日から空港で体温スクリーニング

1月23日        最初の症例、その後2月頭までにすべての症例は武漢と関連あり

1月末                濃厚接触者は隔離、低リスクの人は自主休職など自主隔離

2月4日                初の域内感染

2月7日                疫病発生対応状況が、黄色から赤に格上げ。隔離その他の新しい対応

経済面では、ものの数週間で2020経済成長見通しが1%引き下げ。

2月半ば        コロナ関連休職による企業や自営業の収入補償

2月半ば        予算案に緊急で史上空前の40億シンガポールドルの対策予算が組み込み

  • 3ヶ月にわたり地元労働者の賃金8%を支払う
  • シンガポール人労働者の賃上げ分の3割を政府負担
  • 21歳以上のシンガポール人全員に100-300シンガポールドルの現金給付
  • 企業の法人税リベート25%まで、運転資金の支援、商業賃料支払い支援、観光や運輸などの産業部門支援
  • 閣僚全員が給料1ヶ月返納、保健労働者の1ヶ月ボーナス

1月以来        保健省はウェブサイトでずっと明確なメッセージを公表

                全症例の詳細な追跡実施

2月7日                首相がテレビでアナウンス、その後も一貫した情報提供

おしまい。


12 韓国のコロナ体験

Inkyo Cheong

韓国の推移

政府は大規模検査と追跡アプローチで対応。検査キットの生産体制も急速に整えた。おかげで検査件数は他国に比べてきわめて多い。

経済的な影響は大きく、商業その他がほぼ停止。政府は低所得世帯の生活費負担、中小企業むけに「緊急マネジメント」基金を設立。ただし申請から補助取得まで2ヶ月もかかるので、あまり成功していない。予算は手当したが施行は4%。

工業の崩壊を避けるために手を尽くす必要がある。金銭支援とともに新産業への投資促進を行う規制緩和が必要。また輸出企業には外貨流動性支援も必要。また外為の支援も必要。医療対応と同じくらい活発な経済支援しないと。

おしまい。


13. COVID-19: ヨーロッパに危機救済プランを

Agnès Bénassy-Quéré, Ramon Marimon, Jean Pisani-Ferry, Lucrezia Reichlin, Dirk Schoenmaker and Beatrice Weder di Mauro

コロナに対してヨーロッパはまともな対応できてないし、ヨーロッパ全体の傘も、不十分とかいう以前にそもそも存在していない。今回の危機はいくつかフェーズがある。

フェーズ1:中国ショック(1-3月)。中国がヤバいことになってGDPの4%くらいがきつい。

フェーズ2:特定産業の乱れ(2月-)。観光、航空業、ホテルなんか。せいぜいGDPの5%

フェーズ3:面的な騒乱(イタリアでは3月頭から、その他欧州は1-3週間後) 学校閉鎖とか鎖国とかのでかい対応で経済社会全体が大混乱

フェーズ4:回復(5-6月から) V字回復だろうけれど対応にもよる。

適切な政策対応はこのフェーズにもよる。第1フェーズなら一部に補助金出せばいい。第2フェーズは、納税期限を遅らせたり部分的な失業対策とか。第3フェーズはもっと全面対応で中小企業の資金援助や失業対策や家計の直接補助やあれやこれや。

第4フェーズは、ショックが定常化しないようリバウンドを大きく助けないと。

で、第2フェーズまでは流動性供給が重要、第3フェーズからはそれに加えて倒産防止をがんばらないと。

こんな状況だと、EU経済金融問題評議会は、コロナ問題対応の公共支出を2020年公的支出から除外すべき。また各国がGDPの数パーセントもの金額を借り入れられるよう危機救済プランを実施すべき。各種の緊急対応についてEUが負担するような総合的緊急パッケージを用意すべき。その資金は既存EU基金、EU予算の再配分、EU予算外の加盟国の協力。

またバックアップ計画として一部の国で金利が上がりかねないので、ECBのOMTを活用しよう。

おしまい。


14 ヨーロッパの雇用にCOVID-19バズーカを

Luis Garicano

ヨーロッパはいろいろヤバくなってきて、各種債務デフォルトの可能性が高まり、ヨーロッパ企業のクレジット・デフォルト・スワップの価格をみるとデフォルト確率38%だって(3/12)

だから、5千億ユーロのパッケージ(ドイツ財務相の表現だとバズーカ)を提案。ウイルス対応、ヨーロッパ経済安定、雇用維持を狙ったもの。

(訳者注:中身同じなのでもういいでしょ。医療支援、生活と失業対策、倒産対策のための財政出動です。数字の中身についてもあまり細かい詰めはなし。)

その財源としては

  • ECBが目下の規制をかなぐりすてて支援しろ
  • ヨーロッパの安全資産として新規の債券発行しろ
  • 欧州安定化メカニズム(ESM)をEUに取り込み、Eu版IMFを作って支援しろ

おしまい。


15 金融政策パッケージ:分析フレームワーク

フィリップ・R・レーン(ECB)

状況はかなり厳しいけど、一時的なものと見ている。だからECBとしての対応は三つ。

  • まず銀行システムの流動性確保を、長期リファイナンスオペ(LTRO)で確保
  • 的を絞ったさらに長期のリファイナンスオペ(TLTRO)で実体経済への信用フローの継続を保護
  • 資産購入プログラムを増して(1200億ユーロくらい)、経済が景気循環を促進(緊縮を促進)するのを防ぐ

今回の一件は短期だと思ってるから、それで慌てて金利下げるようなことはしません。

おしまい。


16 コロナウイルス不景気への対処に大胆な政策が必要

Christian Odendahl and John Springford

(訳注:絵に描いたように同じことしか言ってないので割愛)


17 ヨーロッパの震源地イタリア

Ugo Panizza

イタリアはいろいろ突出してます。

でも症例が増えるにつれて財政パッケージもいっぱい投入してるのよ。

学校の閉鎖とかも集会禁止とかもかなり急いでいれたんだけどね。

イタリアはもともと経済的にヤバくて、そこへコロナがきてかなり苦労してる。財政的にもきついし、観光業がでかいので打撃も大きい。また経済の中で中小企業比率や自営業者比率が高いのもきついんだ。銀行システムとかもヤバい。

だからEUがもっと助けたほうがいいと思う。ECとECBもっと助けろ!金融危機が起こらないようにしてくれ!

おしまい。


18 コロナ危機がドイツにとって持つ意味と経済対策

Peter Bofinger, Sebastian Dullien, Gabriel Felbermayr, Clemens Fuest, Michael Hüther, Jens Südekum and Beatrice Weder di Mauro

今回の危機は中国発ながら世界的な需給ショックに発展した。その相互関連はこんな感じ。

(訳注:日本のお役所が好きそうなポンチ絵だけど、大した中身はないので細かく見る必要なし。需給がいろいろつながってます、というだけ)

状況がもとに戻れば金融危機よりはすぐに回復しそう。だけど未知数と課題は大きい。

医療の機能維持が最優先。ウイルスを抑えるのが重要。そのためには、退職した医療関係者を呼び戻せ。医療関係者の子供の面倒をみてあげろ。医療関係の生産を見直せ。公共部門の人々を医療に投入しろ。

経済政策は、企業への流動性供給を優先。景気刺激は、ウイルス拡大を促進しないように。危機が終わったら、景気刺激パッケージをやろう。

ECBは最後の貸し手役をがんばれ。銀行の流動性を確保しろ。株式の直接購入で株式市場の底上げしてもいいぞ。ヘリマネはむずかしいよね。

ドイツは財政赤字少ないから、いまこそ緊急事態ってことで財政均衡にこだわるな。ドイツ政府は無制限の流動性供給にコミットしてる。

さらに倒産防止も必要。法人税減税とか、損失先送りとか。消費税下げてもあまり意味はなさそう。

企業救済やってもいいけど、中小企業多いから事務費用がかさむよ。でも大企業相手ならやる必要もあるかも。

おしまい。


19 COVID-19時代のファイナンス:次は何だ?

ソーステン・ベック

積極的にファイナンスもがんばって、金融規制が循環促進にならないようにしよう。今年後半になると銀行が資本不足に陥りそうなので、そこであんまり厳しいこと言わないようにしたい。いまこそヨーロッパの結束をみせて、ECBがんばれ。

おしまい。


20 コロナは世界金融危機と同じかもっとひどくなるかも

Nora Lustig and Jorge Mariscal

 今回の危機は2008年世界金融危機と似たところがある。世界的広まり、各国とも最初は甘くみてたけどすぐに巻き込まれたところとか。だから金融危機の後と同じようなすごい対策が必要になりかねない。

  • アメリカ政府は、検査して治療を頑張ろう。アジア諸国のお手本をよく学んで。
  • 金融緩和はたぶんあまり効かない。
  • 的を絞った財政政策のほうがいい。

おしまい。


21 いまは人々を保護して経済回復は後回しに

Jason Furman

目先の対応を惜しまず医療対応をがんばろう。

おしまい。


22 コロナウイルス時代の政策

ピネロピー・ゴールドバーグ

医療対応がんばろう。その後で経済政策しよう。

でもコロナのおかげでテレワークとかeコマースとかが普及してよい結果もあるかも。あと、プライバシー面では悪化するけど、株価が暴落すると金持ちの資産が減って格差は減るかも。ただしリモートワークできる人とできない人の格差は広がるかも。

おしまい。


23 国際協調で経済ナショナリズムウイルスを抑えよう

アダム・ポーゼン

コロナを口実に経済ナショナリズムが台頭している。国内でも各種買い占めがひどいし、国際レベルでも排外主義的な話が平然と出ている。そんなのを許してはいけない。そのためにいくつか国際協調の余地がある。

  • 金融政策では、みんなでインフレ目標を上げよう。
  • 銀行の各国監督機関は相互の負債ロールオーバーを容認して自国の囲い込みをしないこと
  • 相互報復的な措置とか買い占めとかはしない
  • 近隣窮乏策はみんなが不幸になるので制限しよう

おしまい。


24 永続的景気刺激策を訴える

ポール・クルーグマン

コロナみたいなものがいずれくるのはわかっていたはず。その目先の対応策はさておき、長期的にこうした事態の再演をさけるための施策を考えよう。それは以下の通り。

  • 広義の公共投資(インフラや研究開発、教育など)に永続的にGDPの2%を財政支出する——そしてそのお金を返済しない。

これは基本的に、長期停滞の話。長期停滞を避けるために、低金利のいまこそ大規模投資をしろ、というのがサマーズらの話だった。それをやっておけば、コロナに対処するだけの余裕がアメリカにはあったはず。景気も回復し、金利もあがって対応余地ができる。

これまで長期停滞と低金利には非伝統的な金融緩和で対応してきたけれど、イマイチ効果がない。だから大規模な永続的財政投資をしよう。

なぜ返済しなくていいのか? だって日本はGDPの200%の債務を抱えてもデフォルトの気配がないし、金利も上がっていない。アメリカだって何も問題ないはず。流動性の罠にはまっているので、それはまったく問題にならないし、この財政支出で流動性の罠から抜け出せれば万々歳。この支出で長期停滞のヒステリシスを避けられて生産性が上がったら、それだけで元がとれる。

これは日本がお手本になる。昔の日本さん、バカにしてすみませんでした。流動性の罠はアメリカも欧州もまともに対応できてない。ここらでアメリカがドーンと抜けだして、コロナみたいな問題が今後繰り返し起きても大丈夫なようにしておくべきでは?

おしまい。


[1] 許可?権利?とってねえよ。チクれば?