バランワンダーワールド選評
検証 Switch版 Ver1.01 (参考検証 PS4版 Ver1.01)
「BALAN WONDERWORLD」
販売元 スクウェア・エニックス
発売日2021/3/26
対応機種 switch,PS4,PS5,XboxOne,XboxSeriesX/S
価格 通常版7678円 限定版15400円 税込(各機種、パッケージ版、DL版共通)
1概要
公式より
まだ誰も体験したことのない、「ワンダーアクション」の舞台が、ここに開演!
『バランワンダーワールド』は、舞台ミュージカルをモチーフとした3Dアクションゲームです。主人公は、ステージ上にある個性豊かな衣装能力を駆使しながら、現実世界での思い出や風景、大切なものなどが入り混じった不思議な心象世界「ワンダーワールド」を冒険します。
「ワンダーワールド」に存在する12の物語は、それぞれ違った特徴を持って主人公を待ち受けています。迷宮のように入り組み、様々なギミックが配置されたステージをすみずみまで踏破することで、物語は核心へと迫っていくでしょう
ソニックシリーズの中裕司、大島直人氏の元セガの2名が携わったアクションゲーム。
世界観を生かさない演出や、シンプルを通り越して不足する操作方法、ストレスを感じさせる衣装システム、ゲーム内でのあらゆる説明を放棄するといった問題がある。
2 操作説明
本作の操作は非常にシンプルであるが、故に大きな問題となっている。
A・B・X・Y・ZL・ZR 決定/アクションボタン
左スティック 移動
右スティック カメラ移動
+ メニュー
基本的にはジャンプしか出来ず、衣装の能力によって攻撃が可能となるが、その際にはジャンプ不可になる場合がある。詳しくは衣装の項目で
また、A決定/Bキャンセルのような使い分けがない。この為、メニューを開いた際に戻るにカーソルを合わせて選択といった操作になり、Bで戻ろうとすると決定されてしまう。
3 ゲームシステム
全12章+ラスボス戦となっており各章は2面+ボス戦で構成される。各面で衣装の能力を駆使しながらゴールを目指すというシンプルなゲームとなっている。
道中で隠されたバランスタチューを一定数獲得することで次の章が解放される。要するにマリオ64におけるスターみたいなもの。
エンディング後は高難易度のステージが各章に1つ追加される。
まず、オープニングムービー後にいきなりティムズエリアという場所に飛ばされる。この場所はステージ選択画面兼ティムの育成エリアとなっている。ゲーム内では特に説明はされない。
各ステージに進むにはティムズエリアで数字の書いた円の上で静止すると入口が出現する。当然その説明はされない。
各ステージは別々の人物の心理状態を表現した多彩なものではあるが、浮島だらけで古臭いマップデザインとなっている。
各ステージに1~3個の帽子のアイテムがあり、これを取るとバランチャレンジというQTEが始まる。
このQTEはバランのムービーに合わせて決定ボタンを5~6回押したり連打するだけの単調なもので難しくは無い。
しかし最高評価の場合のみバランスタチューを獲得できるのだが、その場でのリトライは無く、ミスした場合は一度ステージをクリアして再度帽子を拾う羽目になる。
なおムービーは使い回しばかり。
道中最も拾うことになるドロップはティム育成用アイテムでしかないので無理に取る必要は全く無い。(参考:PS4版であれば1000個でトロフィー有)
ティムはプレイヤーの後ろについてくるお手伝いキャラである。期待するほどは手伝いもせず、気が付くとパックンフラワーのような奴に食われている。
ティムは各ステージで拾ったドロップを与えることで変化する。ティムが巨大化した際は他のティムを拾って投げ当てることで産卵し小さくなる。なお、拾うも投げるもジャンプも例によって同じボタンとなっている。
餌やりの方法は花の近くでボタンなのだが、一定数まくと表示出来無くなる為、食事ペースに合わせる必要がある。
ティムは食事をするとティムズエリアの建築作業を始めるが特にステージ攻略には影響しない。
ボス戦は3打で倒すことができ、ダメージの与え方も3パターンある。倒すとバランスタチューが手に入るが攻撃パターン数に応じた数が入手出来るようになっている。
各章のボス戦では一定時間で鍵と衣装が出現する為、足場が変化する系のボス戦以外は比較的簡単。
ラスボス戦は2ラウンドで最初のラウンドは衣装持ち込みとなっている。衣装が出現しないため3機で倒さなければならず、最も難しい場面となる。
2ラウンド目は一定間隔で衣装が与えられるためさほど難しくない。しかし3打与えるとボスが倒れこんで来るのだが、これに当たると負け判定となる。またこの状態で頭部に1撃与えなければならないが、ジャンプの出来ない衣装のみ場合は一定時間後爆発して負け判定となる。
また本作はメタAIなるものが実装されプレイ内容に応じて敵の配置や量が変わりアイテムの位置も変更される。
Switch版でプレイした際にはそもそも複雑なステージでは動作がもっさりしており、敵が大量に出現するとより酷くなる。結果、積極的に敵を倒すプレイスタイルだと敵の出現頻度が上がるため、よりストレスを感じるようになってしまう。
(参考:PS4版の場合はゲーム速度への影響は少ない。メタAIによってハードモードに切り替えられた時のみ出現する敵を倒すトロフィーがある)
章の開放に必要なスタチューは概ね半分程度なので、エンディングを目指すだけならバランチャレンジや苦手な面を隅々まで探索する必要はない。とはいえある程度は探索しなければならない為、各章を周回しカメラをぐるぐると回すことになる。
なおキャラの動きはやや硬いうえに、カメラワークも悪く酔いやすく引っかかりやすい。(Ver1.01のアプデは一応カメラの修正も含まれている)
BGMは比較的好評だが11章の曲はゴーストバスターズのパクリ疑惑がある。
3 衣装
すっぴんの主人公ではジャンプのみで何も攻撃ができない。まず鍵を拾い衣装を拾うことで攻撃などが出来るようになる。
衣装は3つまで持つことができL/Rで切り変わり、ダメージを受けたり落下死すると失われる。要するに残機でもある。なお衣装切り替え時に毎回くるくる回るがこの時は無敵状態になっている。
またジャンプ中には衣装切り替えは出来ない。
4つ目の衣装を手に入れると1つはストックされる。ストックされた衣装はスタート地点やチェックポイントで暫く立ち止まると衣裳部屋に行けるようなり、ストックの衣装を装備できる。当然、衣裳部屋の開け方は説明されていない。
ステージの途中にはそのステージで手に入る衣装では動かせないギミックや、届かない位置にバランスタチューが設置されている。これらは他のステージの衣装を持ってくることが前提となっている。一周では全てのスタチューを取ることは出来ない。
衣装は80種ほどあるが、上位互換があるものも多い。
また特定の場面でしか使わないものも多く、パズル的な組み合わせて使う要素は少ない。
衣装の数は各ステージ6~7種程度あるが、基本的にはそのステージで登場する2~3種を使わなければクリアはできない一本道の構造となっている。
例えば蜘蛛の巣を移動したければウェブラングラー、レールがあったらレールランナー、キャンバスがあったらインキーブラスターといった具合で決まった場所で決まった衣装を使うだけとなってしまっている。
本作の代表的な問題としてデインティドラゴンやシクルスリンガーなどはボタンで遠距離攻撃が出来るようになるが、なんとジャンプが不能となる。
一応、これらの衣装が出る場面ではジャンプが無くても進めるようになっているが、当然他の場面では積んでしまう。
また他にも問題があり、レーザーランチャーやクアッドキャノンは立ち止まると攻撃するというものだが、こちらは立ち止まっているので敵には当てづらい。
テレポーターは薄い壁の向こう側へ行けるというものだが、薄い壁の場面が限定的なうえにジャンプが出来ない。
スピーディチーターという衣装は一定間隔で勝手に急加速する為、非常に落下しやすい。
中でも最悪とされているのがボックスフォックスである。立ち止まって一定時間で無敵箱になるというものだが箱になると操作が出来なくなる。
出現するステージが空のステージであり、箱状態で坂道を滑り落ちて落下死するというのが定番となっている。
この衣装でしか倒せない敵を倒すとバランスタチューが手に入る場面があるが、攻撃方法は箱状態で坂から滑り落ちることであり、落下死や箱化する前に敵と接触し衣装を失いやすい。
後半になるとハイジャンプ系の衣装が充実しギミックを飛び越えられる場面も多くある。ハッキリ言ってしまえばゴリ押しが可能になってくる。
性能の良い衣装は当然多くストックしたくなるが、鍵もその分必要となる。キーマウスの衣装で鍵が不要となるので、良い衣装出る場所で待機し、衣装が再出現したら回収という退屈な作業を行うことになる。
4 ストーリー、世界観
登場人物
男主人公レオ ダンス好きのボッチ
女主人公エマ デカい家に住む
バラン 屋敷にいるテンション高いやつ
ティム バランから貰う毛玉の生物
ランス 闇落ちさせるやつ
その他 12人の病んでる人
一応、主人公2人分オープニングとエンディングがある。後は同一。
レオ編
公園で一人でダンス。声掛けられても無視。公園を去る。
エマ編
屋敷でメイド達が陰口を言っているのが不愉快なので家出。
共通オープニング
変な屋敷に迷い込んでバランに出合い、歓迎のダンスとティムのプレゼント。2人はバランワンダーワールドへ飛ばされてしまう。
ボス戦前後のムービー
基本的にはワンパターンの流れとなっている
前 闇落ちしてボスモンスター化
後 ボス戦の後に元の姿になりミュージカル、その後ムービー
1章 前 とうもろこし農家のおっさんが嵐で作物やられる。
後 とうもろこしが一本残っててニッコリ。
2章 前 イルカが暴れてダイバーが溺れる
後 イルカと仲直り。
3章 前 虫好きの少女がキモがられる。
後 蝶を見せて友達出来る。
4章 前 機械好き少年が飛行機作れない。
後 飛行機作れた。
5章 前 自然大好き女の近くで都市開発。
後 街路樹とか屋上緑化とかやってもらう。
6章 前 猫好き少女が猫の事故死を見てしまう。
後 やっぱり生きてた。
7章 前 チェスのチャンピオンが負ける。
後 ガチ勢からエンジョイ勢へ。
8章 前 親が死んだ後の結婚に悩む。
後 結婚する。
9章 前 ピエロが姫に惚れる。
後 プロポーズする。
10章 前 おばさん画家がスランプ。
後 いい絵が描けた。
11章 前 消防士が火にビビる。
後 救助活動頑張る。
12章 前 ゴミ拾い爺さんが気付いてもらえない。
後 気付いてもらえた。
ラスボス戦前ムービー
それぞれの主人公が冒頭のトラウマを思い出す。
エンディング
主人公と各章のキャラでバランを囲い挨拶してそれぞれの出口へ。
バランは帽子を取ってイケメンになり主人公に挨拶。
レオエンディング
公園でダンスやってる人に声を掛けて友達になる。
エマエンディング
家に帰ったらサプライズパーティーでした。
ストーリーはゲーム内ではこの程度しかわからない。理由は2つある。
まずキャラが喋っているのは架空言語であるがセリフ字幕がほぼ無い。オープニングムービーで少々とエンディングの一言しか字幕が無い。各章のムービーには一切字幕が無い。
最後の一言が「どんな時間も無駄ではなかった」なのだが一体、急に何を言い出しているのか。皮肉かなにかなのだろうか。
本作はミュージカルを意識して作られているが、当然歌にも字幕は無い為、踊りをダラダラ眺めるだけの意味不明シーンとなってしまっている。(一応、隠し要素として全てのバランスタチューを獲得することで字幕が出現する)
また各ステージにはキャラクターや闇落ちした人があちこちにいるが、近づくと消滅する。つまりここでも字幕が無い。ただただ不気味
もう1つの理由が描写不足である。ざっと挙げると
この屋敷は何か
こころのかけらとは
バランとは何者か
ティムとは
ティムが作っている建物は何か
ワンダーワールドとは
各ステージにいる近づくと消えるキャラクターは何者か
この世界の衣装とは
敵(ネガティ)とは
ランスとは
ボス戦後に歌って踊る理由は
こういったストーリーの根本的な部分が描写も説明も無いため、ハッキリ言ってゲーム単体では理解不能となっている。
本作のストーリーを理解したい場合は小説版が必須となっている。
まとめ
操作説明にしろストーリーにしろ最低限の説明にしようとして不足してしまっている。
特にストーリーは想像で補うにも情報が不足しすぎている。ミュージカルを意識するなら歌詞で心理描写を補うべきだが字幕の無い架空言語の為、全く理解不能。
それに農家のおじさんの状況は何も良くなってない。
シンプル操作を目指すのは良いとしてもアクションゲームでジャンプまで制限するのはいかがなものか。衣装は逆に増やし過ぎて活かすことも出来ていない。
中氏、大島氏が20年ぶりにタッグを組んで製作された本作だが、残念ながらクオリティも20年前となってしまっている。マップデザイン、操作感、カメラワークどれを取っても古臭い。
20年前ならパッケージに取説も入っていた時代。説明不足もここまで酷く無かったかも知れない。
そしてSwitch版は処理落ち頻度が高く、最適化されていない残念なクオリティで世に送り出されてしまっている。
残念ながらこのゲームをやることは「こんな時間は無駄では無いか」という疑問を抱くことになる。