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アニメーションタイムシートの書き方と役割
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タイムシートのお話

タイムシートってなんじゃらホイ

ここでは、セルアニメーションの作画/仕上げ及び合成(撮影)指示票のことをお話します。

日本では慣例的に「タイムシート」又は「アニメーション・タイムシート」と呼びます。

「撮影伝票」と呼ばれることもあります。

英語では"animation exposure sheet"又は"exposure sheet"と呼ぶことが多いようです。

アニメーション・タイムシートはカット内の素材や構成を細部にわたって記述する書類です。

ここでは書類としてのアニメーションタイムシート(以下単にタイムシートと表記します)一般書式とその書き方を説明します。


用紙

タイムシート用紙のサンプルです。

日本のアニメ業界では一般にほぼこんな見た目をしています。

ほとんどの用紙には薄い地色がつけてあります。

用紙が白いと動画や原画と区別がつきにくくて紛らわしいからです。

色味は作品や現場単位で変わります。

 

(図版)タイムシート

こちらで、A3原寸のepsがダウンロードできます。

実際にお仕事で使ってるものです。

印刷して現物を確認したい方はドゾ。

epsデータダウンロード(6秒タイムシート/A3サイズ)

epsデータは、透明の背景にグレーの罫線が配置してあります。

薄い(白っぽい)色で70~90kgぐらいのA3の色上質紙に印刷するとほぼ現場で使用しているものと同じになります

用紙最上部(ヘッダー)

最上部は現場や作品ごとに少しずつ違いはありますがもっぱら以下のような事柄を記録しておくために使用されます。

(タイムシートの上部欄)

タイトル/サブタイトル

どの作品のカットであるか、タイトルを書きます。

話数

制作番号を書きます

シーン番号/カット番号

カット番号を書き込んで、どのカットのタイムシートであるかわかるようにします。

シーン方式を採用している作品では、S1-C1, S12-C1 等の様にシーン番号を組み合わせてカットを指定することもあります。

時間

カットの占有時間(カット尺)を書きます

慣例的にカットの長さは "3+12","1+0","0+18" のように 「数字+数字」の形式で書かれます。

前の数字は秒数、後ろの数字は端数のコマ(フレーム)数です。

省略しないで書く場合は、3秒+12駒 又は 3s+12k 等となります。

"3+12" は「さんビョウじゅうにコマ(フレーム)」又は「さんびょうじゅうに」などと読みます。

時間の書式としては他にも

00:00:03:12 (タイムコード)/ 116fr (ひゃくじゅうろくフレーム コマ数のみ)/ 4f8fr(よんフィートはちフレーム)

等の表記方法もあります。

正確に書かれていれば、書式は実はどんな形式でも構いません。

が、特にその書き方が必要な場合以外は慣例に従い(秒+コマ)形式で書きましょう。

ちなみにこの書き方が一般的なのは、ほとんどアニメ業界だけです。

アニメ以外の映像業界の方とお話するときは、他の形式のほうが通じやすいカモです。

必ず総コマ数のはっきりわかる形で記述します。

2.6秒 などの小数点形式はあまりおすすめできません。

アニメーター

シートを構成したアニメーターのサイン

通常そのタイムシートを最初に書いたアニメーター(原画担当者)が自分の名前を書きます。

カットの構成・作画をした責任者を明確にするための欄です。

余談:最近ここに名前を書いてないタイムシートをすごくよく見かけます。

そういうシートが発生する理由は…知っているのですが、見かけるとやっぱり悲しいです。

シート番号/枚数欄

タイムシートのページ番号を書きます。

参考のタイムシート用紙には、6秒分のカット内容が記入できます。

カットの長さが6秒以上で複数のタイムシートがある場合は、ここにシート番号と全枚数を書き込みます。

例えば「1/3」と書いてあれば、それは「全部で3枚のタイムシート用紙があって、このタイムシートは1枚目です」という意味になります。

最後のシートには「3/3」又は「end/3」など書き込むのが良いでしょう。

書き順が逆(3/1 3/2 3/3 , 3-1 3-2 3-3 等)でも良いです。

はっきりわかる書き方ならいずれでも構いません。

====重要な注意点====================================================

ここまでの記述は複数枚のタイムシートを記述する場合 全ての用紙に対して行います。

これはアクシデントによって書類が分散した場合の保証となります。

同一カットのタイムシートをホチキス等で分散しない様にしっかりと綴じた場合は最初の1枚だけに記述しても良いのですが、その場合、綴じ合わせを解く際には各葉に転記を行なうことが必要になります。

まとめてカットを運んでいて何らかの理由で書類がまぜこぜになった時などカット番号をちゃんと書いてないシートはその場でゴミになっちゃうと言っても過言ではありません。

そういう事故は…実は時々あります。

アニメーションの作業では同一作品に対して非常に良く似た見た目の書類が大量に存在するので基本的な心得として、「全ての」書類・原稿に明確な肩書きを付けることがとても大切です。

==================================================================

制作本数が多い作品では作品名があらかじめ用紙に印刷されている場合もあります。

単発の作品を制作する場合は「話数」欄がない場合などもあります。

作品や現場によっては、この説明以外の記述をすることもあります。

transitionSample.jpg

メモ欄

一般的には最上段部分と本体部分の間に空白のメモ欄が設けてあります。

「NOTE」「伝達事項」「特記事項」などと書いてある用紙もあります。

「メモ欄」ってことになってますが、実際にはここにタイムシート的に重要な事柄をすべて書きます。

ここしか書く場所がないです。

タイムシート本体は、(後でふれますが)フレームに直結したことを書きます。

メモ欄には、「カット全体に係る指定」「カット内での特徴的な撮影指定」「注意事項」などなどを「すべて」書き込みます。

特殊撮影(効果)・トランジション効果・カメラワーク・動画注意事項・仕上注意事項・撮影注意事項・その他イロイロです。

次行程の作業者に対する申し送り事項があれば、それもこの欄に書き込みます。

要するに、このカットの作業者が「知っている必要のあること」をすべて書き込むようにします。

用紙が狭くて書ききれない場合は、別紙に伝達事項を書いて、タイムシートには「別紙指定あり」と別紙の指示が存在することをシート上に書くようにします。

作業者は、カットの内容が「ごく簡単」で「標準的である」と感じても必ずタイムシートを確認して、特殊な指定が存在していないかどうかを確認するよう習慣付けてください。

タイムシートが複数枚ある場合は、極力1枚目だけに指定を書き込むようにします。

別紙に書く代わりに2枚目3枚目に書きこむのは避けたほうが良いです。

もしも書く必要がある場合は、「2枚目(X枚目)にも指定あり」との注釈を1枚目に入れるようにしましょう。

これは、指定の見落としを防ぐための処置です。

指定の見落としを防ぐためには、全体が一瞥できるのがベストです。

…撮影指定などの用語の詳しい解説は 「別紙参照!」(今回はありません)

タイムライン(タイムシート本体部分)

タイムライン(*)

注(*)===================

「タイムライン」という呼称はアニメーション業界では一般的ではありません。

ここのタイムシート本体部分に関して、業界内での統一呼称はありません。

業界内では「タイムシート」、又は「タイムシートのコマ」などと呼ぶしか無いのが現状ですが、

一般的なビデオ合成ソフトでも、同様のデータ並びを「タイムライン」と呼びますので

このマニュアルでは、この部分を便宜上「タイムライン」と呼びます。

=========================

タイムラインは、上記のような見た目をしています。

基本的に縦方向に時間が進行します。

上から順に開始フレーム、時間が進むにつれて下方向へ1行あたり1フレームの時間進行です。

横方向に、素材{レイヤ}の指定を行ないます。

原則として左側が下です。

右方向へ向かうにつれカメラ(視点)に近づき、表示プライオリティがあがります。

現在、一般的なビデオ合成ソフトでは、時間軸を横(x軸)、表示プライオリティを縦(y軸)にとるケースが多いようです。

(Adobe AfterEffects)

模式図的には、右のようになります

フィルムの画並び

アニメーションのタイムシートで縦方向に時間が流れているのは、フィルム時代の習慣によります。

映画のフィルムを実際に見てみると、左図の様に縦方向に画(フレーム)が並んでいます。

編集の際、脇にタイムシートを置いて音声や画像のタイミングを調整する際にフィルムとシートの方向が一致していたほうが圧倒的に作業がやりやすかったため、シートの縦方向に時間軸をとって実際のフィルムとの対比を行いやすくしているのです。

これがアニメーションタイムシートが時間を縦軸にとる最大の理由です。

タイムシートの書式のかなりの部分(トランジションや効果の書式)は編集用のタイムシート(又はフィルムの指示書き)を参考にして作られています。

カットの長さをフィルム時代の名残でカットの尺という呼び方をしたりします。

フィルムは、扱い時にフィート(尺)単位で認識されていたのでこういう呼び方が残っています。

今はまず見かけないですが、昔の古いタイムシートには16mm又は35mmフィルム換算のフィート数が書き込まれていたものもありました。

イロイロと習慣の異なる各国のアニメーション業界ですが、編集(フィルム)と一対一に対応しているので、タイムシートはすべて時間軸が縦方向にとられています。

日本以外のアニメーションタイムシートの参考

http://www.google.com/search?q=animation+exposure+sheet&hl=ja&client=safari&rls=en&prmd=imvns&source=lnms&tbm=isch&sa=X&ei=UF9oUKD-K4memQXTioHoBg&ved=0CAoQ_AUoAQ&biw=1012&bih=620

サンプルの用紙には、1枚あたり6秒分のカット内容を記述できます。

左右のカラムは同じもので左側には、0秒から3秒目まで、右側には3秒から6秒目までの内容を書きます。

1つのカラムは更に小さな4つのエリアに分かれています。

左から「アクション(原画)シート」「台詞(音声)カラム」「セル(動画)シート」「カメラワーク(撮影)シート」と呼ばれることが多いです。

順番が違う場合もありますが、この4つのエリアで構成されていることがほとんどです。

音合わせが重要な作業では、台詞カラムに相当する部分の幅がとても広くとってあるシートを使用することもあります。

基本の書き方(動画シート)

端から順番ではありませんが、まず最初に基本となる動画シートの書き方から説明してゆきます。

先に書いたように、タイムシート上では時間は上から下へ流れます。

シートの1行(1段)が1コマに相当します。

フィルム時代なら実際のフィルムを想像してもらうとわかり易かったのですが、今はフィルムをみることもなくなっちゃいました。

動画番号について 

タイムシートに書いてある番号は、そのカットで使用する動画(セル)につけられた動画番号です。

動画番号はタイムシートと一緒にカット袋に入っている動画の肩に書き込まれているものです。

例えば Aセルの12番動画には動画用紙の肩に A12又はA-12等と書いてあり「えーじゅうに」などと読みます。

(図版)

cellNumber.jpg

動画番号をつけるのはそのカットの動画作業担当者です。

動画番号の付け方には、簡単なルールがありますので覚えておくとタイムシートを読むときの役に立ちます。

動画番号付け方ルール

1.動画はセルごとに分けて書きます。

動画(セル)にはグループごとの「セル名」があります。

Aセル Bセル などと言う「アレ」です。

通常は重ねの下側から順に A,B,C,D,E…という風につけてゆきます。

2.動画番号は、セル名と番号をつなげて書きます。

例えばAセルの3番動画は 「A-3」です。

セル名と番号の間のハイフンは、あっても無くても良いです。

3.番号はできる限り連続番号で、タイムシートに「出現する順番」につけます。

番号の重複はもちろん禁止です。

同一カットで別の絵に同じ番号をつけてはいけません。

飛び番号は極力避けます(基本的に禁止です)

どうしても飛び番号が発生するときには「A-12 欠番」等、の申し送りを前後の動画と

タイムシートに書き込みます。(書いてないヒトは反省しましょう)

原則として、小数点表記(A-3.5)なども禁止です。

読み間違いをおこしやすいからです。

リテイクなどで後から挿入した画がある場合は、連番の最後から番号を増やしてゆきます。

4.原画番号は、◯で囲む

元になる原画から作成した絵は動画番号を◯で囲んで区別が付くようにしてあります。

その他の動画は数字だけを書きます。

5.1番の動画番号は、◯で囲む

通常のケースでは動画番号1番は原画相当です。

先のルールで丸囲みされている場合が多いのですが、稀に1番が原画でない場合もあります。

この場合でも1番の番号は丸囲みします。

これは数字の1単体が別の記号と読み間違いやすいためです。

6.一番最後の動画にはendマークをつける。

「おわり」「終」「了」 などの表記でも構いません。

一連の動画の最後の番号にはオシマイの印をつけます。

アニメのお仕事では各作業ごとにバラバラの枚数のカットがたくさんあります。

一連の絵の最後には終了の印をつけ、書き漏らしや塗り漏らし等を防ぐようにします。

以上の6点が動画番号を命名するルールです。

つまり動画番号は正式には「A-(1)」「B-(3)end」の様にセル名や、補助記号のついたものです。

ただしタイムシートに記入する時は、カラムの一番上の見出しに書いてあるものと一致している限りセル名は省略して数字の部分だけをタイムシートに書き込みます。

endマークもシート上は省略します。


1秒間、繰り返しなし、すべてのコマに1枚づつ絵を書いた場合は以下の様なタイムシートになります。

singleFrame.jpg

1コマあたり1枚の絵を描く、このような動画を「1コマ撮り」と呼びます。

1コマ撮りがシート表記の基本です。

★コマには動画番号を書き込む

1枚の絵を一定時間「止め」で使用したい場合があります。

止めの区間だけ番号を繰り返し書いては、大変読みにくくなります。

同じ番号を書いて有るコマは、わざわざ書き込まないで省略します。

省略区間が長いとこれはこれで読みにくくなりますので、

省略した部分は例のように棒線を引いて省略であることを示します。

6k.jpg

書き込み省略

★省略は棒線

棒線をあまり乱雑に描くとどのコマが最終コマなのか、わかりにくくなります。

棒の先端は記入を省略したコマの中にきちんと納めて下さい。

badsheet.jpg

参考 良い例・悪い例・棒線の端の処理

棒線の先端には、「ここまで」という印に横線や矢印を書いても良いです。

「1コマ撮り」は実際の現場ではあまり使用されません。

全部一コマ撮りで絵を書いてゆくと 30分番組で最低でも3万枚以上の動画を使用することになります。(これはすごくたいへん)

よくあるのは、1枚の絵を3コマ又は2コマづつ連続して使用する「3コマ撮り」と「2コマ撮り」です。

それぞれ以下のように書きます。

(図版)2コマ・3コマ撮り

この場合、いちいち棒線を引くとかえって読みづらくなります。

2コマ撮りと3コマ撮りの時は、省略記号の棒線も省略します。

何も書きません

★2・3コマ撮りの時は、棒線を省略

余談:2コマ撮りベースの作品の場合は、3コマ止めの出現頻度が低くなるので、読み間違い防止の為3コマ撮りの棒線を引きます。

昔の作品などではありました…が、今は…ありません。

2コマ撮りベースの作品自体がない。

4コマ撮りベースの作品があれば、4コマ撮りも棒線を省略したほうが作業効率が良くなります。

3コマ撮り主流の現在の状態では、4コマ止めには棒線を書いたほうが読み間違いが減ります。

動画を重ねる場合は、基本的に左側が下側です。

★重ねは左から右

重ねたセルをヨコに並べて、右側から見ているとイメージするとカンジをつかみやすくなります。

タイムシートの1列を一組として扱って、左から重ね順にA,B,C…と名前をつけて区別します。

★セル名は(基本)A,B,C… ”A”が下側

Photoshopや他の画像編集ソフトを使った経験のある方は、この列組をレイヤと対応させるとわかりやすいと思います。

余談:昔々、Photoshopがレイヤに対応したとき「ヤッホー♪」と思いました。Ver.3でした

重ねで絵を作ることが出来れば「動く部分」だけを作画することができるので、飛躍的に作画の労力が減ります。

重ねの手法がない場合は背景まで全部書き込んだり、背景自体を省略するような手法が中心になるので、表現の幅が狭くなります。

英語では、この重ねの手法をスラッシュシステム(slash system)と呼びます。検索してみたい方はドゾ

ただ、今やこの手法以外のアニメーションは商業的にはほとんどないので…スラッシュシステムに対する記述自体も実は少ないのです。

「ジョーシキ」ってことですか、そうですか

この手法を使う場合、カット内で画面に出入りする(フレームイン・アウトする)被写体のために空っぽのセル(レイヤ)を準備しておいたほうが何かと便利なことがよくあります。

FfIO004.pngFfIO005.png

FrIN-OUTxps.jpg

(図版)フレームインとカラセル レイアウトとシート

これを「空(カラ)セル」と呼びます。

タイムシート上は、画のないセルとして「☓」マークを書き込みます。

★空(カラ)セルは「☓」

空セルは特殊なセルなので省略記号の棒線を波線で書いて、他の省略と区別できるようにしておきます。

★空(カラ)セルの省略は波線~

背景とBOOK

さて、ここまで読んだ方へ 何か大切なモノが無いのにお気づきでしょうか?

アニメの撮影素材は、むろんセルだけではありません。

セルだけだとこんな感じの画面になります。

(図 背景無し あり)

背景が無いと 実に寂しいですね

画面には背景を付ける必要がありますが、タイムライン上には背景を指示する場所がありません。

これは、背景が通常は1枚だけで、置き換えがなく一番奥(Aセルの下)に配置されることを前提として書類が構成されているためです。

タイムシート上、特に注釈がない場合背景の記述は省略されます。

★特別な場合を除き、背景に関しては記述なし

「BOOK(ブック)」と呼ばれる素材があります。

「BOOK」は(一般的に)背景素材の一部で、背景美術の一部分を別のレイヤに抽出したものです。

(図 BOOK)

これは画面を構成する要素としてセルやその他の素材の中間に配置されます。

カットにBOOKが存在する場合は以下のように、タイムラインの先頭に引き出し線をひいてBOOKの配置を指定します。

(図 BOOK指定)

複数のBOOKがある場合は、指定を繰り返します。

其々の素材が区別できるようにBOOK①・②のようにラベルを付けます。

 

(図 BOOK複数)

★BOOK指定は引き出し線


背景画やBOOKが複数あって、カット内で素材の置き換えが発生する場合があります。

この場合は引き出し線だけでなく、タイムラインの枠の隙間に素材に対応する指定用の線をひいて

素材の配置を指示します。

また、美術素材の置き換えはカメラワーク欄にコメントを入れるのが望ましい書き方です。

 

(図 色々な美術指定)

★美術素材の詳細指定は棒線

線を引く場合は、タイムラインのコマの間のすでに線のある部分に重ねて線を書くことになります。

太い線で地の印刷に紛れないように線を引きましょう。

色鉛筆を使って色分けした線を引くと読みやすいです。

カットによっては、背景が存在しない場合があります。

この場合メモ欄にカットに背景素材が存在しないという意味の注釈を書き込みます。

一般的な書き方は以下のようになります。

「全セル」

撮影素材が全てセルであるという意味です。

他に「背景ナシ」、「BG無し」 等の記述でもかまいません。

背景美術のみでセルの無いカットの場合、逆にセルが無いことをメモ欄に書き込みます。

「BG ONLY」と記述するのがよく見る書き方です。

「背景のみ」「セル無し」などでもかまいません。

★美術素材の有無はメモ欄に注釈

背景美術素材は、その性質上動画のセルに比べて置き換えの頻度が低いのでこのような記述になっています。

置き換え頻度が高い特殊な美術素材の場合は、セル欄を使用するためにA,B等のラベルを付けてセルとして扱ってください。

カットの記述が終わったら、最終フレームの後ろ側にそれ以降の記述が無いことを示すためにタイムラインの幅いっぱいにラインをひいて記述終了の印を付けます。

(図版)記述終了

2~3行塗りつぶして終了の印にする人もいます。

はっきりと「これ以降の記述はない」ことがわかれば書き方は色々あっても良いです。

★カットのおしまいには終了の印

以上が動画タイムシートの基本的な書き方です。


アクション(原画)シート

 

用紙の一番左端のエリアは、「アクションシート」又は「原画シート」と呼ばれるエリアです。

ここには原画のタイムシートを書きます。

原画番号

動画のタイムシートと原画のタイムシートは、基本的には同じものです。

動画番号のかわりに原画番号をタイムシートに書き込みます。

        動画記号

原画作業時点では、「動画作業で描かれる予定で、まだ描かれていない画」があります。

これを表現するために、「動画記号(中割記号)」と呼ばれるものがあります。


例えば、上の様な原画(1)-(2)に対して、最終的に動画(1)-(5)を作成するケースの場合

タイムシートは以下の様に、原画番号と動画記号で書きます。

「動画記号」は、動画作業時点で補完作成する予定の画像を示すポイントです。

通常「・(点)」を打っておきます。

繰り返しや、同じ原画を使用した往復運動などの場合、動画記号が一種類だけだと紛らわしくなる場合があります。

その場合、「同じ絵を(兼用して)使って欲しい」又は「使って欲しくない」ポイントを指定するために

動画を区別できる記号を書く場合があります。

例を見てもらうほうがわかりやすいので例示。

例1

一組の原画に同じ動画で往復運動を指定する例

例2

同じ原画なのだが往復に別の絵を作って使用する場合

「動画記号」は原画番号と紛らわしくない記号ならば何を使用しても構いません。

ただし、読みやすさと一般的な作業上の習慣のため、特に他の記号をつかう理由がない方は単純な「・(点)」を打つ様にしておいて下さい。

点の打ち方は、人それぞれです。イロイロな点が打ってありますが、すべて同じ意味です。

動画記号の例

点のイロイロ

レ点・複点・図形など

★動画記号は「数字と紛らわしくない印」で

余談:「動画記号」のことを「中割(なかわり)記号」と呼ぶことがあります。

(「中割」という単語を「動画」の意味でつかう方がけっこうたくさんいらっしゃいます。)

「原画と原画の(時間的・空間的に)中を割って動画を作る」という意味で見ると中割=動画でも良いのですが作画手法的に言えば「中割(なかわり)」は、二枚の元絵から中間の絵を作成するための手法の名前です。

中割を使わずに動画を描くことも可能ですし、原画を作成する時に中割で原画を作ることもあります。

動画作業を飛躍的にスピードアップできるとても大切なテクニックなのですが、実は動画とイコールではありません。

人によって微妙に使い方の異なる言葉ですので、一寸だけご注意ね(今気してるのはわしだけかも)

原画番号の書き方代表的2種

原画番号は、間に動画記号が入ることもあって動画番号のつけ方より自由度が高くなります。

一般的に2つの作法があって、作業者の好み、又は作品ごとの取り決めで番号の付け方が変わります。

連番方式

動画番号のように原画のタイムシート上の出現順に原画番号を振ります。

5枚の原画には基本的に (1),(2),(3),(4),(5)end となります。

タイムシートには以下のように書かれます。

(図版)連番方式の原画シート

飛び番方式

原画時点で構成した動画番号に相当する番号で原画番号をつけます。

上記のサンプルの場合以下の様な原画番号とタイムシートになります。

(図版)飛び番方式の原画シート

この方式は、原画の時点で完成形に近い深い構成を行う場合や、動画担当者と原画担当者が同一のアニメーターである場合などで作業効率を上げることができる場合があります。

ただし、飛び番方式のシートは、中間での調整がやりにくく、修正シートが読みにくくなりやすい等の欠点があります。

日本のアニメーション業界では分業化が進んでいるので先にあげた連番方式の方が主流です。

(追記)

ロトスコープ作業の場合は、動画の下敷きとなる実写画像がすでに存在するので、連番方式にするほうが作業効率が上がります。

(追記終わり 位置を変えたほうが良いかも)

ダイアログ(音声)エリア

アクションシートの右側はダイアログ欄です。

ここには通常、台詞や音響の配置を書き込みます。

サンプルのタイムシートでは1列だけが音声エリアになっています。

業界全般に、このタイプの「セリフ1列のみ」のタイムシートが多いです。

音響作業が重要なカットや作品では、この部分を大きくとった用紙を使ったりします。

アニメーションの作画用タイムシートでは、台詞の書き込みが主な用途で補助的に音響効果や音楽のきっかけなどが書き込まれます。

例:台詞を書き込んだ例

音声の入る最初のコマの上端と音声終了のコマの下端に横線を書き込み、台詞のある区間を書き込みます。

上の横線の上部分に誰の台詞で有るか(名前)を書き込みます。音声そのものではないことを示すために丸囲いしてあります。

横線に挟まれた区間に目安となる様に台詞の内容を書き込むのが、一般的なやり方です。

音声のおまかな位置と口の形を合わせる(簡易リップシンク)ため台詞をひらがなで書いて配置をすることもできます。

本格的にリップシンクを行うためには、あらかじめ録音した素材からスポッティングシートを作成しますので、ひらがなでセリフを分かち書きするのはリップシンクのためには特に必須ではありません。

ただし、演技のタイミングを掴みやすくなるのでこの書き方をする人は多数います。

簡単な台詞の表記(1)

簡単な台詞の表記(2)

簡易リップシンクを意識した表記

音響効果の書き方もセリフと同様に書き込むことができます。

効果音の表記

この「ヨコ線による区間の指定」は、主にタイムシートがフィルムに対応して作成された事による指定の仕方です。

フィルム編集で目に見えない(磁気テープは磁気現像しないかぎり音像は見えません)、又は見えづらい(光学音声は音像が目で確認できますが、どんな音が入っているかは、音声ヘッドにかけてみないとわかりません)ので音声をフィルム上にマーキングをします。

その時のフィルムへの書き方を参考にして、タイムシートの書き方が発生したと思われます。

音声にかぎらず「区間の指定」は、基本的にその開始フレームから終了フレームまでが「指定区間」になります。

フィルムをイメージするとわかりやすくなります…昔からけっこうイメージしにくいんだよね。

アニメ業界って、「映画作ってるわりにフイルムみたことない」人多かったので…

今はフィルム制作自体が無くなっちゃったしねぇ

映画の時間は、基本的に「フレーム単位」なのである指定に「含まれるコマ」と「含まれないコマ」という意識は有効です。

画像的に縦に並んだフレームが意識できるとイロイロ便利なので想像してみると良いかもしれません。(無責任モード)

カメラワーク(撮影効果)

タイムシートのいちばん右側の残りの部分はカメラワーク(他各種効果)指定用のエリアです。

ここには音声の際に指定した要領で、区間を指定してイロイロな効果の指定を行います。

指定可能な効果は多岐にわたりますので、代表的な幾つかの効果はここでも解説しますが個別の効果の解説は他に譲って基本的な書き方を説明します。

全ての効果にはその効果の「開始フレーム」から「終了フレーム」までの「継続時間」があります。

この継続時間に相当するフレームに対して指定記号をタイムシートに書き込んで、読みやすい文字でその効果に対する説明を添えます。

PAN指定の書き方を例に効果の指定方法を説明します。

PAN とは 実写映画の”camera panninng”(カメラパン) から発生した用語です。

実写映画でパンニングをした時のような画面効果を作る場合によく使用されます。

アニメ撮影の場合は、実写映像のようにカメラをPANするわけでは無く撮影ステージの上で

平面の被写体をカメラに対して移動させて画面を作るのが主な手法となります。

(PAN原図)

ここでは上のような原図に対しての指定を書いてみます。

このカットのタイムシート

(参考シート1)

キャラクターのセルは止めセルです。

(図版)開始/終了フレームの指定方法

説明は継続時間が十分長ければ区間記号の「中」に書き込みます。

(図版)注釈

継続時間が短い場合は、記号が小さく(短く)なるので書き込めなくなります。

その時は記号のそばの空欄を使って書き添えます。

(図版)脇書き・引き出し線

書き込むべき説明が長くて、記号のそばに書き込めないような場合は、引き出し線を引いて説明を離れた位置に書いて下さい。

スペースが許す限り、1つの効果を一つのカラムに書き込むようにします。

(図版)良い例/悪い例

これは、読み間違いを減らすための工夫です。

アニメーションタイムシートは、かなり複雑な素材構成を一通の書類に記録するものです。

なるべく読み間違いを減らすよう、また自分でも書き間違いなどを素早く探せるようにわかりやすく丁寧な記述を心がけていただくと良いと思います。

カメラワークエリアに書き込む内容が多くて書き込むカラムが不足することがあります。

その場合は、記述が同じコマに重複しない限り同種の効果を同じカラムに書くようにするとよいでしょう。

(図版)F.I F.Oを同じカラムで書く例

コラム==================

セル重ねや効果が多くてどうしても書き込めないほど記述が多い場合は、複数のタイムシートに分割して書き込むこともできます。

ただこれは全体の見通しが悪くなって、間違いがおきやすくなるので、シートを複数作成した場合は、必ず2通目3通目が存在することをすべてのタイムシートに書き込んで、見落としを防ぐように心がけてください。

6秒記入用のタイムシートでなく、3秒記入用の記述欄の大きな用紙が使える場合は、そちらをつかうほうが分割したシートを書くよりも作業が楽でみとおしがよくなります。

6秒用紙を3秒用紙としてつかう方法もあります

===================コラム終わり

タイムシートに書き込む撮影指定は原画や動画と同じように、演出効果に識別する名前をつけて

その開始時間・終了時間をタイムシート上に書き込みます。

効果の名前

例えば 「PAN」(←これが名前 カット内で被らなければそれで良い)などと名前を与えて

タイムシートには、その効果の開始フレームと終了フレームを書き込みます。

先にあげたPANの効果は13コマ目から24コマ目まで継続していますので、

カットの撮影位置を順序良くすべて指定すると右側の黒い指定のように

[A]フレームFIX , PAN[A]-[B] , [B]フレームFIX

と、3つの効果を連続して指定することになります。

ただし、この書き方はあまり利用されていません。

一般的にはいちばん左側の赤で書いてあるようにFIX部分をすべて省略して記述されます。

PANを例にカメラワーク欄の書き方をあげましたが、他の撮影処理に関しても基本的には同様です。

「すべての処理には、それぞれの継続時間があります。

(継続時間の最小は1コマ。最大はそのカットのすべてのフレームです)

処理の継続時間を指示して、他の処理と区別できるよう指定を書き込むことがカメラワーク欄にかぎらずタイムシートの書き方のすべてになります。

」(この部分かぶってる だいじなことですので二回…)

個別の撮影処理とその書き方については、それぞれの解説をごらんください。