エンジニアカフェマガジン2022
目次
はじめに
福岡市エンジニアカフェには平素「コミュニティマネージャー」が日替わりで在席しています。
今回は、様々なバックグラウンドを持つコミュニティマネージャーの目線で語る、エンジニアリングやそれを取り巻く環境についてお伝えします。
コミュニティマネージャーとは :
その名の通り、エンジニアカフェを訪れるエンジニアのコミュニティのイベントやミートアップの開催支援、エンジニアの方のコミュニティへの参加をお手伝いする他、各種イベントの実施などコミュニティのハブとしてお力添えをする業務に従事しています。
様々な相談が寄せられるなかで、ものづくりについてのレクチャーを行ったり、難しい課題に対して一緒に悩んだりしています。
コミュニティマネージャー田中です。
田中はWebアプリケーションに関する相談などに応じ、「一緒に悩む係」をしておりますが、個人としては、Webアプリ/ネイティブアプリ、とりわけWebを活用した地図に関するプロダクトに心引かれています。
皆様、普段「地図」使っていますでしょうか?
今や一人1台以上の普及率となったスマートフォン端末より、地図に触れる機会が多くなり、また、コロナ禍も落ち着いて、外出の機会が増えるとよりお世話になっているのではないでしょうか。
Webで使われる地図には大きく分けて3種類の地図があると思っていて、
まず、GoogleやAppleなどビッグテックが著作権を持つ地図が個人・ビジネスの利用を問わず1番見る機会が多いと思います。前述のスマートフォンからお世話になることが多いでしょう。
次に国が管理している地図、日本では地理院地図(https://maps.gsi.go.jp/)が良く使われている他、各国政府機関や省庁によって国家プロジェクトとして作成されることが多いです。基本的にこれらの地図も無償で利用できる規約になっている傾向にあります。
最後に、この記事でフィーチャーしたいのはオープンソースで公開されている地図であるOpenStreetMap です。(以下OSMと略します。)
OpenStreetmapは2004年から続く、誰でも自由に地図を使えるサービスです。
[サイトURL]
https://www.openstreetmap.org/
みんなで作る地図、いわばWikipediaの地図版といえます。
-note-
ちなみにWikipediaとは協力関係にあって、例えば国や地域について書かれるページに記載される地図はOpenStreetMapが利用されます。ウクライナの首都キーウに関する記事などを参照してみてください。-> https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AD%E3%83%BC%E3%82%A6)
OSMは個人や非営利での利用のみならず、ビジネスユースがなされることが少なくありません。
Pokémon GO! (©Niantic) など の基盤地図は当初はGoogleMapを使われていたそうですが、現在では諸々の理由からOpenStreetMapが選ばれています。
そんなOSMは地図を利用するのが自由なだけではなく、我々で地図を作ることができます!作成や改修も含めて「オープン」なのです!
技書博の会場である東京都産業貿易センター 台東館周辺の地図
「えー、でも、会社が作っているわけじゃないんだし十分に記載がなされていない地域もあるんじゃないの?」
という疑問を持たれるのは最もだと思います。
地図もオープンソースソフトウェアやオープンデータの類に漏れず、誰かが作らないと持続させることはできません。
ただし、それは大きな会社組織が作る地図でも同様で、Googleやそういったビッグテックと協力して地図を作成している企業でもかなりの人手が割かれて日夜作成や更新がなされています。
そう、なので、OpenStreetMapでは常に自ら街や野山へ繰り出し、空白に地図を書き出す造り手を募集しています!
日本地域で行われるイベントの多くはこちら(https://openstreetmap.jp/eventlist)に記載されますので、もしお近くでイベントが行われていればあなたよりちょっとだけ先にOSMをつくりはじめた先輩があなたの背中をおしてくれるはずです。
あなたの普段使っているPCを持っていくといろいろなTipsが舞い込んで来ます。
また、近年は先に上げたような地図に関わる大企業もOSMに対してデータを提供してくれているほか、国内でも、国土地理院の航空地図の利用や国土交通省管轄の Project Plateauからのデータインポートが始まり、多くの人を巻き込んでより良い地図を作っていこうという姿勢が強化されています。
OSMに関わる人達の動きも感染症への対応を経て活発になってきており、
今年は国内外でイベントがオフラインで実施されていた様子がSNSなどを盛り上げていました。
世界的なイベントとしてはイタリアのフィレンツェで OSMに関わる人々の祭典、State of the Mapが行われたほか、
今年は地図の描画、あるいは解析を行うことができるフリーでオープンなGIS(地図情報ソフトウェア)の祭典 FOSS4Gも同時期同地域で行われ日本からも多くの企業、研究者、個人、の方々が参加されていました。
日本ではFOSS4G Tokaiが夏に行われたのを皮切りに、去る11月中頃にFOSS4G Japanが東京で一部オンラインで行われていた他、
来たる12月3日(土)には兵庫県加古川市において State of the Map Japan 2022が行われます。
https://stateofthemap.jp/2022/
日本においては学術の場としても議論は盛んで、例えば、地理学会、地図学会、地理情報システム学会、地理教育学会など、盛り上がっていますし、国土交通省主催のG空間EXPOも開催を控えており(12月6-7日)、産学官民一体となって地図に関わる方が大勢いらっしゃいます。
[G空間EXPO 2022]
地図や地理の分野は旅行ジャンルとも肉薄しており、同人誌即売会でも
私も個人として地図をモチーフにしたハンドメイド品を展示・販売しているので、そういったものづくりの場所でも地図好きな方々とお会いできるのを楽しみにしています。
自作の地図コースター (レーザーカッター製)
地図とエンジニアリングに興味を持ったあなた、次は「地図を作る」あるいは「地図を使ってものづくりをする」側になってみませんか?
引き続き田中が担当します。
日本発のプログラミング言語Ruby、触ったこと、あるいは聞いたことありますでしょうか?
Rubyは1993年にまつもとゆきひろ氏(Matz)によって開発を始められたRubyは今や世界中で使われており、私達の身近でも沢山利用されています。
何かしらプログラミング言語の経験がある方には「動的型付け言語」といえば伝わるでしょうか?
スクリプトの書き味で、言語仕様レベルでオブジェクト指向に合わせた書き方がしやすいような工夫がなされています。
非常に導入もかんたんで、お手持ちのWindowsでもMyms2を導入後すぐRubyのインタープリタを利用することができます。
puts ‘Hello Wolrd!’
これだけで 「Hello, world」できますし、あるいはMacであればデフォルトでRubyは入っています。
ruby -v でそのバージョンを確認することができるかと思います。
(なにより、パッケージマネージャーのHomebrewはRuby製のツールです。)
Rubyの嬉しいところとして、〇〇.rbというファイルを ruby 〇〇.rb とコマンドを打ち込むだけで簡単にコンパイル、および実行できますし、
irbを使うとPythonやshell、Javascriptなどと同じように対話式のシェルを以てRubyの機能を使うことができるようになります。
近年では、ECサイト構築のためのプラットフォームであるShopifyなどがRuby製のWebフレームワーク Railsを利用していることを始め、名だたるビッグテックのインターネットを利用するサービスにおいてRubyは私達の生活を力強く支えています。
また、2022年度はRubyのイベントが目白押しです。
三重で行われたRuby Kaigi 2022 を皮切りに、
Ruby World ConferenceもMatzのお膝元松江で行われました。
Ruby Kaigiの会場となった三重県総合文化センターの様子
福岡市エンジニアカフェでは随時、スタッフが参加したカンファレンスの様子をホームページに掲載しておりますので、よろしければご覧ください。
https://engineercafe.jp/ja/topics/category/report
[URL]
Ruby Kaigi -> https://rubykaigi.org/2022/
Ruby World Conference -> https://2022.rubyworld-conf.org/ja/
福岡には「福岡県Ruby・コンテンツ産業振興センター」が博多区に構えており、市だけでなく県のエンジニアコミュニティやIT企業へのサポートも手厚い土地柄です。
[福岡県Ruby・コンテンツ産業振興センターHP]
福岡で盛り上がる組み込み実装系のmrubyのイベント「Fukuoka mruby Kaigi」が10月15日に行われ(https://mrubykaigi.hp.peraichi.com/2022JP)、年明け2月にはFukuoka Rubist会議が行われる予定で、技書博実施時点で絶賛プロポーザルを募集中です!(https://regional.rubykaigi.org/fukuoka03/)
さて、これからRubistとして歩みを進めるにあたってはコミュニティがあなたの大きな力になると思います。
オンラインでも勉強会が行いやすくなった昨今ですが、やっぱり最初は直接話を聞いてみたい!と思う方も少なくないと思います。そんな方にはこちら、地域Rubyの会のページがおすすめです。
RegionalRubyistMeetUp · ruby-no-kai/official Wiki
https://github.com/ruby-no-kai/official/wiki/RegionalRubyistMeetUp
アクティブに活動されているコミュニティさんを掲載しているページで、お近くの集まりが見つけやすいと思います。
Rubyコミュニティでは、コロナ禍になってから転職を考えてRubyを学び始めた方々も積極的に発言しておられて、技術者として新しくコミュニティに入ってきた人たちが成長できる環境が整えられている印象があります。
このコラムを目にしたあなた、プログラミングを新しく始める際にRubyはいかがですか?
一人でもプレイヤーが増えたら嬉しく思います。
Rubyのアイコン。ちなみにRubyのライブラリはgem(宝石)と呼ばれています。
エンジニアカフェのMAKERSスペースの機器を使ったものづくりをご紹介する「MAKERSスペースでデジファブろう!」が役目を終えて、同じ時間帯に新しく「水曜プロト」というイベントが開催されています。
「水曜プロト」では機材使用にこだわらず、プロトタイピングを楽しむ話題のTipsをご紹介しています。
昨年度から今年度10月まで開催されていた『MAKERSスペースでデジファブろう!』は、レーザー加工機、3Dプリンター、CNCなど、エンジニアカフェのMAKERSスペースの機材を使用してデジタルファブリケーション(略してデジファブ)の楽しさ・作例などのTipsをオンラインで紹介するイベントです。
第1回は「エンジニアカフェのCNCを使えるようになろう①」で、2021/11/24(水)15:00 〜 16:00に開催されました。
クリスマスオーナメントを作ろうということで、Fusion360で3Dデータを作成したあと、CNCが読めるようにデータ変換して、MDFという木材をCNCで削りました。第1回から第16回までは、エンジニアカフェのCNCを使えるようになろう!ということで、「大さじ1/2の木製スプーンを作ろう」や「アルミを削ろう」という内容を実施しています。
第1回のYoutube配信アーカイブはこちら>>> https://youtu.be/Ri5VnBnmBvM
MAKERSスペースでデジファブろうを担当しているのはエンジニアカフェのコミュニティマネージャーの鈴谷さん(左)と、VTuberとして登場している、わたくし山田(右)です。
2022/05/18に実施した第17回の「レーザーカッターでフェルト細工を作ってみよう!」では、Adobe Illustratorを使ってカットデータや彫刻データを作り、フェルトをカットするのはもちろん、2mmのフェルトをギリギリ切れないように型をつけるパラメータや文字が見やすい彫刻のパラメータを検討しました。
最終的にカットしたフェルトを組み合わせて紫陽花の飾りを製作。
この回から「今日の教訓」を書き残すことにしたのですが、この日の教訓は「文字はアウトライン化を忘れない!」でした。文字のレーザーカッターデータを作る時は、皆さんアウトライン化を忘れないようにしてくださいね。
第17回のYoutube配信アーカイブはこちら>>> https://youtu.be/SL3qN5B4tkk
2022/06/01・6/8に実施した第18回と19回は「3Dプリントして塗装しよう!」ということで、エンジニアカフェに新しく導入された塗装ブースを使用しました。
CADでミニてるてる坊主を作成し3Dプリンターで出力したものを、ひたすら研磨する配信になったのですが、塗装前に下準備はとても重要ですよね!3種類の粗さの紙やすりを使って曲面をどう研磨するのが良いのか検討したり、塗装前にどう準備するのか試行錯誤したり、この回はゲストにとり子さんをお迎えして3人で賑やかな配信となりました。
この配信の様子を、とり子さんがブログにまとめてくださっていますのでご覧ください。とり子さん、どうもありがとうございました。
とり子さんが書いてくださったブログ>>>https://siroitori.hatenablog.com/entry/2022/06/10/235242
第18回のYoutube配信アーカイブはこちら>>> https://youtu.be/_RcLmmpy618
2022/07/13に実施した第23回は「グラスに彫刻しよう!」ということで、観葉植物を飾るのに購入していた四角いグラスにエンジニアカフェのマークを彫刻しました。ガラスにレーザーで彫刻する際は、薄い書道で使用するような半紙を水で濡らして貼ると良いということで、半紙の替わりにキムワイプに霧吹きで水をかけてグラスの上に貼ってカットしてみました。
実際に比べてみると、水を充分含ませたほうが彫刻データがより綺麗に見えましたので、この日の教訓は「半紙じゃなくてキムワイプでも有効。水はヒタヒタに!」と書かせていただきました。この回は完成品がとても綺麗で、配信後にエンジニアカフェでグラスに彫刻してくださった人がいました。配信後に良い反応があるのはとても嬉しいですね。
第23回のYoutube配信アーカイブはこちら>>> https://youtu.be/PeJNUBuEPs4
2022/07/20に実施した第24回の「アルミを電ノコで切って曲げてみよう!」では、以前イベントで組み上げたORIGINALMINDさんの折り曲げ機 MAGEMAGEを使用してアルミを曲げてスマホスタンドを作ってみました。折り曲げ機のレバーの傾きを調整しながら好みの角度に綺麗に曲がるので割と簡単にちゃんとしたモノが作れます。
この回は同じコミュニティマネージャーの田中さんが最後に遊びに来てくださって盛り上がりました。(あの時に話していた工場見学も来年度には実施できたらいいなあ。)
第24回のYoutube配信アーカイブはこちら>>> https://youtu.be/pTcMq8355bA
2022/07/27・8/3・8/17で実施した第25回と26回と27回では「アクリルをカットして曲げよう!」ということで、エンジニアカフェに新しく導入されたアクリルを曲げる機械を使って曲げ加工を実施しました。
アクリルをレーザーカットしたあと、完成品だとばかり思っていたアクリルを曲げる機械が組み立て部品だというのがわかって次回までに組み立て方法を販売元にお尋ねすることになるアクシデントもありました。
第26回でアクリル曲げ機の取扱説明書を送ってくださっただけでなく、アクリル専用接着剤のアクリサンデーがなぜ「アクリルサンデー」じゃなくて、「アクリサンデー」なのか?という素朴な疑問にも快く答えてくださったアクリサンデー株式会社の皆様ありがとうございました。その質問の答えは・・・
ぜひ第26回の配信アーカイブでご覧ください!
ちなみに、この時の教訓は「アクリル曲げ機を使う時はヤケドに気をつけよう!」です。皆さんお気をつけください!
第25回のYoutube配信アーカイブはこちら>>> https://youtu.be/oIracn-mDQo
第26回のYoutube配信アーカイブはこちら>>> https://youtu.be/S2Zu2KSr_xA
2022/08/31・8/3に実施した第28回と29回では「アクリルを接着しよう!」ということで、アクリルを接着して立方体を製作しました。やってみるとアクリルの接着剤を上手く塗布するのはとても難しいので、ぜひ試行錯誤する姿をみていただけたらと思います。
第28回のYoutube配信アーカイブはこちら>>> https://youtu.be/f4N83F3dF1c
最後に2022/10/05・10/19に実施された第30回・31回は「革をレーザーカットしよう!」ということで、レーザーカッターで革をカットしAirTag入れを製作しました。革はカットしている最中にタンパク質が硬化して反ってしまうので、マスキングテープでハニカムごと固定するのがお薦めです。2〜3mmのレザープリセットで大丈夫なので、ぜひ製作してみたい!という人はエンジニアカフェのコミュニティマネージャーの山田までお尋ねください
エンジニアカフェWebサイト>>> https://engineercafe.jp/ja/
第30回のYoutube配信アーカイブはこちら>>> https://youtu.be/HDZ3i0SCD0c
MAKERSスペースでのイベントが進化して、話題のプロトタイピングのTipsをお届けする「水曜プロト」を開催しています!2022/11/16開催予定の第2回「話題のOpenAI whisperで囁き声をテキストに!」は只今参加者募集中です!オンラインでもオフラインでもOK!ご興味のある方はぜひご参加ください!
イベント申し込みページはこちら>>> https://engineercafe.connpass.com/event/265302/
水曜プロトの第1回「m5stackのスタックってなに?」のYoutube配信アーカイブはこちら>>> https://youtu.be/WSgJNae6fyo
エンジニアカフェ コミュニティマネージャー
河島晋 - Kawashima Susumu
コミュニティマネージャーの河島と申します。学生の頃からロボットコンテストに参加するのが大好きな人で、肩書きとしては「ロボティクスエンジニア」を名乗っております。普段はデジタルアート作品をはじめとしたハードウェア制作をしたり、それらの技術に関連して電子工作系メディアの記事を書いたり、大学で非常勤講師をしたり…といろんなことにチャレンジしております。
本稿では、河島が運営しているコミュニティ「薬院Make部」について、2022年1月に活動をスタートして間もなく”まん防”に突入してからの足跡をご紹介いたします。
電子工作・ロボット・デジタルファブリケーションなどに取り組むハードウェアものづくり愛好家が集まって、一緒に制作活動をしたり、技術的な情報交換をしながらものづくりを楽しむコミュニティです。
メンバーはエンジニア、主婦、ものづくり関連施設スタッフ、学校の先生など多様な背景の方々所属しており、月に2~4回の頻度で活動拠点に集まってものづくりをする「オープンラボ」を実施しており、作品コンテストにも積極的に作品を応募しております。2022年8月にはものづくり関連の展示会に出展し、メンバーが製作した作品を多くの親子に楽しんでいただきました。
2022年1月13日に薬院Make部の活動が開始し、週1回のオープンラボがスタートしました。これまでのコロナ禍で人が集まることが極端に少なくなったこともあり、「一緒にものづくりができる」というのはとてもワクワクするものだなと。帰り際に「また来週!」と言い合って帰るのが不思議な感じがして、こういうのが部活だったよなと懐かしい気持ちにもなりますね。
しかし、新型コロナウイルスの「第6波」が急拡大し、活動拠点がある福岡県でも2022年1月27日から県内全域でのまん延防止等重点措置が発令されました。薬院Make部の活動もまん防の発令に伴い、オープンラボを中止してその代わりとしてZoomによるオンライン座談会を定期実施することを決定しました。
2022年1月27日から3月3日の期間は、Zoomでの通話によるオンライン座談会を毎週木曜日に実施。工作機械や工具を使ったものづくりがメインとなっている以上、オンライン活動だとできることは限られますが、雑談をしつつ3D-CADのFusion 360やプリント基板設計用CADのKiCadなどのソフトウェアの使い方の勉強会にもチャレンジしてみました。
レーザーカッターで加工するデータを3D-CAD(Fusion 360)で設計する練習
座談会で雑談をしている中で「はやくなんか作りたいね~」と話していた中、「そういえば、こんなコンテストがあるんですよ~」とメンバーからご紹介いただいたのがこちら。
https://protopedia.net/event/33
Seeed Technology Co.,Ltd. と Seeed 株式会社が開催する、電子工作の作品を募集するコンテストで、「reTerminal(リターミナル)」というコンピュータデバイスを使って、その機能を拡張するモジュールを開発して作品投稿をするというルールになっています。
reTerminalは、昨今のIoTプロダクト開発でも話題のRaspberry Piのモジュールが内蔵されており、タッチパネル付きディスプレイやインターネット接続機能が標準搭載されているとても便利なコンピュータデバイスです。
このコンテストの面白いところは、「作品はアイデアのままでも、完成されてなくても構いません」と書かれているところ。こういうものづくり系のコンテストは完成品を応募するのが一般的ですが、未完成でも参加できるというのはとてもやさしいですね!
なんと、メンバー2名が「応募してみようと思ってたんですよ~」とのこと。筆者(河島)もここ数年はコンテストに向けての制作をお休みしていたこともあって、重い腰が上がらない状況でしたが、お二人が参加するなら…と流れに身を任せ便乗しちゃうことにしました。
reTerminal、ついつい買ってしまいました
コミュニティや部活のいいところってこういうところだなと思います。一人だと「大変だし…今回はやめとこうかな…」と諦めがちなことが多いですが、「なんかやるの?…じゃあ一緒にやる!」とポジティブな判断が自然にできるようになることがありますね。”日本人的”といえばそうですが、乗っかる波をつくったりつくられたりする関係っていいなとしみじみ感じます。
ちなみに薬院Make部はコンテストに出場するかしないかはメンバー各自の自由なので、コンテストに出る人もいれば、各自の制作活動に取り組む人もいたり、おしゃべりを楽しむ人もいたり、全員マイペースに楽しんでおります。
2022年3月10日、ついに「まん防」が解除され活動拠点でのオープンラボが再開されました。ひとつのテーブルにreTerminalや安定化電源が並んでいる”普通じゃないかんじ”がとても好きです。
”普通じゃないかんじ”のテーブル
同じ場所に集まって作業をしているときにいいなって思うのは「気軽に話しかけられること」ですね。
「これ初めに何したらいいとかあります?」
「安定化電源ってどうやって使うものなんですか?」
「ちょっとテスター貸してください~」
「おっ、できました!(ドヤァ」
質問したり、助けを求めたり、作品をドヤったり、褒め合ったり、こういうコミュニケーションがとれるのはすごく楽しいですし、一人だけだと大変なことも不思議なくらいサクッと進捗が出てしまいます。
今回、薬院Make部からは3名がコンテストに向けて作品を制作しました。作品投稿順にご紹介します。(紹介文は作品投稿ページより引用)
◆ reTerminal DoorLock
reTerminal でドアロックする拡張モジュール。パスワード・指紋・RFIDカード認証ができます。画面のアプリを工夫することで「リアル脱出ゲーム」も楽しめます。
https://protopedia.net/prototype/2940
◆ reCoder(リ・コーダー)
Scratchでプログラミング可能な電子楽器『reCoder』。reTerminalに拡張モジュールを取り付け、楽器の演奏を楽しんだり、リズムマシンのような動作をさせることもできます。
https://protopedia.net/prototype/2955
◆ PareTerminal(パリターミナル)
異常検知を光ってお知らせ!工場でよくみるパトライトのシグナルタワーをreTerminalで制御できる拡張モジュールです。家でノイズキャンセリングイヤホンをしていても、宅配の訪問を見逃しません!
https://protopedia.net/prototype/2974
薬院Make部からは3作品を応募した…つもりでしたが、「PareTerminal」については応募フォームからの応募が締切日時を過ぎてしまっていたようで、今回のエントリーは「reTerminal DoorLock」と
「reCoder」の2作品となりました。ちょっぴり悔しさは残ってしまいますが、作品をここまで作り上げたのはグッジョブでした!
作品制作はそれぞれができる範囲でやりたいことを実現してきました。「親子で制作したい」「ラズパイにチャレンジしてみたい」「パトライトを光らせたい」と多種多様なモチベーションから作品が生まれてきたわけですが、この自由な制作活動こそ私たちが継続していきたいことだなと感じました。Maker本人が楽しめるのが一番です。これからもコンテストへのチャレンジは続けていきたいですね。
Seeed reTerminal 拡張モジュールコンテストにて、薬院Make部から2作品が受賞しました!!(めでたいですね!!)
【入選】reTerminal DoorLock
【佳作】reCoder(リ・コーダー)
今後もコンテストに積極的にチャレンジしながらスキルアップを重ねていきたいと思います。
(CAMPFIRE コミュニティ)
https://community.camp-fire.jp/projects/view/463282
河島 晋 - Kawashima Susumu
エンジニアカフェ コミュニティマネージャー
1991年、福岡県北九州市生まれ。北九州高専在学中、ロボット製作に熱中し高専ロボコン全国大会に出場。九州工業大学大学院を卒業後、電子工作キットの開発、ロボット競技会の運営、電子工作系Webメディアのライティング、大学非常勤講師、デジタルアート作品の制作などを手掛けてきた。2022年1月からデジタルものづくりコミュニティ『薬院Make部』を主催。ロボット競技会・作品コンテスト・展示会に多数参加。代表作品『論文まもるくん』『アトゴフンダケ』は各種メディアで注目を集めた。第2回タカハソレノイドコンテスト「ソレコン大賞」受賞。国際ロボット競技会 RoboMaster 2018 世界大会ベスト16。
全自動論文保存機『論文まもるくん』
全自動二度寝支援装置『アトゴフンダケ』
エンジニアカフェコミュニティマネージャの河野です。
私のエンジニアカフェでの担当は「キャリア&教育」に関する相談対応とイベントの運営です。
技術書博覧会向けとして「教育」かつ「新人教育」について、過去に行ったイベントの資料をもとに、つらつらとまとめていきます。
エンジニアカフェ主催のイベントで、過去に「失敗しない新人教育〜現世代への教育ポイントを知るセミナー〜」を実施したことがあります。
これは私河野が、長年担当してきた新人研修での教育データをもとに、教育に関わる現場の方に、
今時の新人の人たちのことを理解してもらうためのイベントです。
今回はそのイベントでお話しした内容「現場でおさえるべきポイント」からの抜粋です。
まず、過去のIT業界であれば、IT業界に就職する人たちは、大部分がPCが好きな人たちであったと思います。
私もそうでしたが、そもそも家にPCがあって、比較的日常でもPCを触っていた人が多いのではないでしょうか。
来るべき人が来てた業界というか、誰もが目指す業界ではなかったと思います。
そういった人たちが、IT業界でキャリアを積んで
いった現在は、
「AR/VRすごいよね、面白い!」
「ドローン欲しいなぁ」
「新しいiPad買いました?悩んでいるんですよ〜」
のような感じで、最新のテクノロジーやデバイスに
一喜一憂するように(私も含めて)多くの方がなって いると思います。
そんな状況に対して、現在の新人の人たちは、趣味や興味対象が多種多様な状況、かつPCがメインの趣味・興味になってない人たちが多くIT業界に就職してきています。
(もちろん昔と同じくPCやテクノロジーが好きな人もいますが)
これはIT業界がこれまでの特定の人が選ぶ、特別な業界ではなく、ITが趣味でない人たちも選択してくれる業界になったからだと考えます。
※過去はITはPCを持っている人、趣味の人が触れるものだったのが、現代においてはスマホやWebサービスが「IT」となり、誰もが日常的に触れるものになった結果でしょう。
そういった新人の人たちは、IT業界に就職したとしても、多くは業界に入る前の趣味・興味のまま、特にPCやテクノロジーに興味を強くもつことないままになります。(一部は過去の人たちと同じく、 「AR/VRすげ〜たのし〜!」となる人もいますが)
現場でおさえるべきポイントはまさにここで、新人の人たちが何に興味をもっているのか?を把握しなければならないのです。
例として、VRヘッドセット、ドローン、液晶タブレット、スマートスピーカー、などなど、新人研修では新人のみんなに、最新のテクノロジーを体験して興味をもってもらうためのものを、毎年多く用意してきました。
しかし、2021年の新人研修では、受講生は71名参加でしたが、実際にドローンやVRを体験してくれたのは、上の写真の3名だという結果でした。
(ちなみに新型コロナウイルス感染症対策として、VRヘッドセット装着時につける目マスクを200枚用意したのですが、結局使ったのは3枚だけという・・・)
IT業界の企業に就職したのだから、IT技術・最新テクノロジーに興味あるよね!?と思う方が多いのですが、実際は前述の例のように、いくら講師陣(現役エンジニア)が技術の楽しさや、すごさを説明しても響かないのが現状です。
そんな新人の人たちの中に、海外旅行が趣味の人がいました。
新型コロナウイルスのせいで、卒業旅行にもいけず、当然ながら趣味である海外旅行にもいけてない状況でした。
そんな新人の人に、
「GoogleマップをVRヘッドセットでみて、
旅行気分になれるVRアプリあるよ!」
と教えたところ、非常にVRに興味を持ってもらえました。(それまでまったくVRには
興味をもってくれてなかったのに!)
企業の方から「社内で技術勉強会を実施しても、若い子はきてくれないし続かない」というお悩みを聞くことも多々あります。
これはまさしく同じで、「技術」を軸として興味をもってもらおうと思っても、今の多種多様な興味範囲をもつ人たちには響かないのです。
ということで、教育において現場でおさえるべきポイントは
ということだと考えています。
今の新人の人たちは何に興味をもっているのか?その興味内容+テクノロジーで考え、
「あなたたちの興味あるもの(趣味等)はこういったテクノロジーでもっと面白く、便利になるよ!」
というスタンスで技術教育に繋げていく必要があると考えます。
ちなみに今回のお話は、技術大好き!な学生を採用しています、という企業にはあまり当てはまらない内容かと思います。
どちらかというと、幅広く採用を行っている企業向けでしょうか。
もちろん技術大好き!な学生を採用できれば良いですよね。
とはいえ現代においてはスペシャリストのみならず、ゼネラリストへのキャリアパスも踏まえての採用も、必要であるのは間違いないと思います。多様性のある採用というのも重要だと考えます。
そんな中で、せっかく採用した将来のコアメンバーである新人の人たちへの教育を良い方向に持っていくために、今回の内容が少しでもお役に立つのであれば幸いです。
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みたいな話をエンジニアカフェでは行っていますので、興味ある方はぜひエンジニアカフェまでお問合せ&ご来館ください!
以上、コミュニティマネージャの河野でした。
コミュニティマネージャーの國武です。
エンジニアカフェではネットリテラシーに関するイベントや勉強会を実施しています。
小学校や中学校に1人1台のタブレット端末が配備され、教育現場ではインターネットの活用が急速に進んでいます。エンジニアカフェがある福岡市では市内の小中学校の児童・生徒全員に1人1台のChromebookが導入されています。加えて新型コロナウィルス感染症の影響で学校が臨時休校になり、子供たちがインターネットに触れる機会はますます増加したように感じます。
インターネットを活用すれば、どこにいても有益な情報をすぐに探し出すことができます。
文部科学省も学習指導要領で、情報活用能力を、言語能力と同様に「学習の基盤となる資質・能力」と位置付けています。「言語能力と同様」と言っていますので、「読む・書く・話す」と同じくらい大切な能力ということになります。インターネットを使わないという選択肢は無さそうです。
しかし、そんなに有益なインターネットも使い方次第では、「便利なもの」から「危険なもの」になってしまうかもしれません。
ネットリテラシーは数学のように、「このやり方が正解!」という明確な答えがあるわけではありません。なぜなら、家庭環境や兄弟の有無、性格など、子供1人1人違う背景を持っているからです。ある子供には効果的なやり方であっても、ある子供には効果が出ないやり方になってしまうことは多々あります。難しいですね。
そこでエンジニアカフェでは、保護者同士で交流・意見交換してもらうことで、自分の家庭に合ったやり方や、子供たちとの接し方など、新しい発見をしてもらうべく、ネットリテラシーに関するイベントを実施しています。
今年(2022年)実施したイベントの一部をご紹介します。
様々なデータやリテラシー教育の事例を見ながら、座談会形式で気づいたことを話し合いました。
イベントを通して様々な意見がありました。
・家庭内ルールは必要、ルール改定も必要
・ルールは子供と一緒に決めることが有効
・子どもたちの常識と大人の常識の違いを知ることが大切だと再認識できた
・たくさんの人と話をすることが明確な答えがないネットリテラシーでは有効だと感じた
・朝ごはんを食べることは大事! など
参加者の数だけ子どもたちとの向き合い方を知ることができたことは、とてもありがたかったです。
大炎笑( https://daienjo.theshop.jp/ )というカードゲームを使って炎上を疑似体験するイベントを実施しました。
炎上を見たことはあっても、炎上に巻き込まれたことがある人は少ないと思います。なぜ、炎上させたくなるのか?炎上したときの気持ちは?など、ゲームを通して体験しました。
イベントを通して様々な発見がありました。
・炎上させることは楽しい
・承認欲求から自ら炎上させたくなった
・意外な発言から炎上が始まった、など
今後も、ネットリテラシーの伝え方でもっといい方法がないか、子供達に対してもっといい接し方がないかなど、日々考えて過ごしていきたいと思います。
いいアイデアがありましたら、ぜひエンジニアカフェで共有していただけると幸いです。