パラノイアRPGにおける私的解釈
文責:lemoncola
反逆的なアドバイザー: ナスカ(Nazka)、白河 日和
連絡先:Twitter @lemoncolajp2
本ドキュメントは筆者の主観が少なからず含まれており、必ずしも一般的でない場合がございます。
また、日本語翻訳されているパラノイア【トラブルシューターズ】【インターナルセキュリティ】【ハイプログラマーズ】を対象としており、その他のパラノイアの版では内容が異なる場合があります。
Paranoia-Oで誤解されていることを改めて見直すことが目的です。
特段の記述がなければクラシックスタイルを前提とした記述とします。
まずはパラノイア日本語版の出版社(公式サイト)のチェックをオススメします。
Downloadsにて、パラノイア【トラブルシューターズ】ルールブックのサンプルページ(第1章イントロダクション)としてルールブックの2~7頁が全市民に公開されているほか、基礎知識や基本用語集がありますのでご一読されますようお願いします。
http://paranoia.newgamesorder.jp/
またPARANOIA-Oに関する出版社の見解がFAQに掲載されましたので。こちらもお読みください。
http://paranoia.newgamesorder.jp/faq
◆本文で登場する略語
パラノイア【トラブルシューターズ】:TS
パラノイア【インターナルセキュリティ】:IS
パラノイア【ハイプログラマーズ】:HP
PARANOIA xp(日本語版公式では2004年版):xp
赤外(インフラレッド):IR
紫外(ウルトラバイオレット):UV
内務公安局(InternalSecurity):IntSec
ゲームマスター(GameMaster):GM
◆トラブルシューティングについて(TS3、16頁)
PCたちがトラブルシューターに抜擢されたのは、一般的に「友人を反逆者として売り渡し、赤市民へ昇格した」のが理由となっています。
すなわち、反逆者を見つける能力が認められたのです。
トラブルシューティングはコンピューターへの「奉仕」ですが、割り当てられたのはPCたちであるため、他の市民への強制力はほとんどありません。
「俺たちはコンピューターからの命令で〇〇をしなきゃいけないんだ。」
「俺たちのブリーフィングオフィサーは〇〇クリアランスだ、それに逆らうのか?」
といった殺し文句は
「そもそも割り当てられたのは俺ではなく君たちだ。」
「俺もコンピューター/自分の上司の指示で働いているんだが、それを邪魔するのか?」
という主張で返されます。
コンピューターからの命令で事足りるならばコンピューターが直接指示を下しています。
トラブルシューティングは幸福を与えるためのボーナスの一環でもあるのでトラブルシューターが率先して解決する必要があります。
◆パラノイアをプレイする上で最も重要なこと(TS7頁)
前述した公式ホームページで公開されているルールブックの記述をご確認ください。
パラノイアをプレイする上で最も重要なことは、反逆者や他のプレイヤーを処刑したり、出し抜いたりすることではなく、他のプレイヤーやGMを楽しませ、その結果として自身も楽しむことです。
キャラクターとしては、誰かを処刑したり、出し抜いたりすることが勝利かもしれません。
ですがパラノイアのセッションとしては、最も人を楽しませたキャラクターの勝ちです。
キャラクターとして勝利しても、人を楽しませられなければ負けと言っても過言ではありません。
これを推進するために、他のプレイヤーやGMを楽しませたプレイヤーに「ご褒美」として与えられる横車ポイントというルールがあります(横車ポイントについては後述)。
セッションとしてはGMもセッションに参加しています。そこでGMもプレイヤーを楽しませることが最高の楽しみであろうとルールブックに明記されています。
◆セキュリティクリアランスについて(TS8,20頁)
セキュリティクリアランスは、建前上はコンピューターからの信頼を表すものです。
信頼を受けたものが、信頼に値する重要な役割を与えられ、そのことに尊敬を得ているに過ぎません。
そのうえで、信頼されている人物に従わないのは、悪意を疑っていることにも繋がりますので、反逆的であるとされたり、不服従として扱われたりすることも多々あります。
クリアランスは下から、IR(赤外,黒)、R(赤)、O(橙)、Y(黄)、G(緑)、B(青)、I(紺)、V(藍)、UV(紫外,白)となっています。
これは電磁スペクトル(画像検索してください)の色に基づいたクリアランスです。
時々クリアランスの1番下が黒で1番上が白なのは、人種差別を揶揄したものであると言われていますが、可視光線外の赤外線は黒、紫外線は白で表現されているだけです。
市民の名前はBob-R-ABC-1のようにクリアランスのイニシャルを用いますが、IRとUVは省略します。
具体的にはIRはBob-ABC-1、UVはBob-U-ABC-1となります。
ときどき紫外市民のイニシャルとして Bob-UV-ABC-1 といった記述がファン作品の中で見受けられますが、イニシャルは1文字で表現するものです。
ごく稀ですが少市民のイニシャルとしてJCが使われることがあります(HP18頁)。
◆サービスグループについて(TS8,16,163頁 IS7~18頁 HP29~32頁 xp115~140頁)
サービスグループは軍部局(Army)、中央処理省(CPU)、住環境精神統制局(HPD&MC)、内務公安局(IntSec)
動力局(Power)、生産搬送配給局(PLC)、研究設計局(R&D)、技術局(Tech)の8つ存在します。
彼らサービスグループは仕事のほとんどを、目的別に細分化されている(そして数が膨れ上がっている)サービスファームへと委託しています。
サービスグループはコンピューター直下の組織、サービスファームは利益目的で個人が立ち上げた企業です。
サービスファームがどんな仕事を請け負っているかは想像力を働かせてみましょう(でっちあげてください)。
また、パラノイアISやHPや過去のルールブックにサービスグループやサービスファームの記述があります。
◆クローンについて(TS9,25,54~56頁)
全ての市民はクローンタンクで生育されます。
そして、死亡した市民は「クローン素体」から急速に生育され出壜(しゅつびん。クローンタンクから出ることを指す)します。
注意しなければならないのは、クローンの素体はアルファコンプレックスの資源の1つですし、クローニングにも手間がかかるということです。
不必要な処刑は、資源の浪費に他ならず反逆とみなされるということです。
たしかにIRはクズかもしれませんが、だからといってむやみやたらに処刑していいものではないのです。
クローンナンバーの1のみ例外として、プライムと呼びます。
◆強制ボーナス任務(MBD)について(TS25,141~155頁)
MBDには隊長、忠誠担当官、衛生担当官、通信記録担当官、ボット・武器・車両及び各種装備修理維持担当官(通称装備屋)、幸福担当官の6つが存在しています。
隊長(チームリーダー)は、トラブルシューティングにおいての責任を負います。
そのため彼は他のトラブルシューターよりも(本当に)ちょっとだけコンピューターに優遇されます。
また、戦闘においては彼が戦術指揮官となります。
チームリーダーにはその権威を振りかざすように推奨すべきです。
彼に指示を仰ぎ、彼の指示に従いましょう。
忠誠担当官(ロイヤリティ・オフィサー)は、チーム内の反逆および反逆的思想を抑制し、記録することが求められます。
彼には反逆者を見つけるために「コミーの反逆思想に関する10の初期兆候リスト」というものが与えられます。
この兆候に基づいて「超絶的偏見でもって処刑」を行うようルールブックは忠誠担当官に勧めています。
彼にはILTRと呼ばれる特別な装備が支給され、ミッション中での反逆的な行いを記録することが求められます。
また「途方もない巨悪」のため「途方もない武器」を与えられることもあります。
ミッション中の反逆的な行いを記録および報告するのが忠誠担当官です。
彼が反逆的である、または避けるべきとリスクを認めたものは(ほぼ)全てそのとおりです。
衛生担当官(ハイジーン・オフィサー)はチームの清潔を保つことが求められます。
そのため彼は個人衛生検査を行うことができます。
また、とある条件下ではチームリーダーに代わり一時的に指揮権を握ります。
その条件下では彼には必ず従わなければなりません。
通信記録担当官(コミュニケーション&レコーディング[C&R]・オフィサー)は2つのことが求められます。
1つめはコミュニケーション、つまりコンピューターとの通信です。コンピューターとのセキュリティ回線の維持を担当し、コンピューターへの報告やコンピューターからの連絡を受けます。
2つめはレコーディング、つまりミッション中の記録を撮影することです。
この場合の記録とは「面白く、動画として映え、ドラマチック」な記録を指します。
そのため必要であれば市民にレフ板を持たせるよう指示することも構いませんし、銃撃戦のさなかに英雄的な名乗りあげを指示することも構いません。
反逆的な行いの記録は彼ではなくロイヤリティオフィサーの役目です。
もっとも「反逆的な行い(とその結末)を、トラブルシューティングのアピールに使う」というのであれば、この限りではないかもしれません。
実況もしくは監督としてチーム内の英雄的行動を記録しましょう。
装備屋(エクイップメント・ガイ)はチームに割り当てられた装備の保全と管理が求められます。
彼は無作為抜き打ち点検を行うことでチーム内の装備の安全な運用を保証します。
幸福担当官(ハピネス・オフィサー)はチーム内の士気水準未満の兆候をチェックすることが求められます。
彼には士気水準未満の初期兆候リストというものが与えられます。
◆反逆について(TS28,75,198頁)
パラノイアでは反逆的な行為をした市民を即ZAPするものと誤解されがちですが、クラシックスタイルには反逆点、
ストレートスタイルには反逆ダメージというものが存在しています。
あくまでも処刑すべきは反逆者であり、反逆的な市民ではないことに留意してください。反逆的な市民は適切な"処置"をもって更生の機会が与えられます。
反逆ポイント・反逆ダメージの処刑基準値以下での処刑は反逆です。
ザップスタイルも反逆点が採用されています(TS198頁)。
しかし認定される上限が著しく低いためトリガーが軽すぎる状態になっています。
またザップスタイルのプレイヤーは、自分もすぐに反逆者となり処刑されるので、相手の反逆ポイントを気にすることなく「反逆者(コミー)め」とレッテルを張って処刑にかかろうとする傾向にあります(そして自分も処刑されます)。
市民、あなたはIR市民がR区画へ立ち入ったとの理由で彼を処刑しましたが、その程度の軽度の反逆であれば親愛なるコンピューターか内務公安局への告発をすべきではありませんか?
彼がコミーでミュータントな反逆者だったと…。ではコミーやミュータントと判断した根拠はなんですか?
処刑許可証の発行は当然済んでいるんでしょうね?内務公安局への提出は済ませましたか?
なんと!それを発行する時間が惜しいほどの緊急性を有する処置であったと…。ではそれを証明する証拠や証人は?
ミッション中にそういった反逆を暫定処理するのが忠誠担当官の仕事の1つです。
クラシックスタイルの場合、IR市民は「クリアランス上許可されていない場所にいること」の反逆ポイントを科されます。
一方あなたは、「無許可の処刑」によって反逆ポイントを科されます。
当然ながら、「無許可の処刑」のほうがより多くの反逆ポイントの賦課となります。
もし、誰かから告発を受けた場合、「反逆の告発を受ける」が追加されます。それも告発した人数分。
さらに本当に「クリアランス上許可されていない場所にいる」かどうか、それを誰が見ていたかは、あなたの他に「緊張レベル」(後述)というもので判断されることもあります。
ストレートスタイルの場合、IR市民は「クリアランス上許可されていない場所にいること」の処罰を受けます。
一方あなたは「許可や証拠もなく、低クリアランスの市民を処刑する」という処罰を受けます。
ストレートスタイルの場合は出目によって処罰が変わりますが、最悪の場合あなたは処刑となります。
それからIR市民のクローンを実費で補填しなくてはなりません。
もちろん誰かを処刑することはパラノイアの楽しみの1つです。
処刑するのであればそれなりの理由や証拠、もしくは犯罪をなすりつけるといった保身を忘れずに。
◆横車ポイントについて(TS29~31頁)
横車ポイントは自分のダイスロールまたは他者のダイスロールの目標値に上方もしくは下方修正を加えることが可能です。
横車はシーンに登場していない人でも自由に投入できますが。そのポイントに応じた「理由付けや演出」が必要となります(例:レーザーピストルを構える君がクシャミしたことにしよう)。
さらに横車は「相手の癖の発動を強要する」ことにも支払えます。相手は提案を拒否するために同等のポイントを失います。
横車ポイントはGMの気まぐれで配布されます。
面白いことをしてセッションを盛り上げたなどGMが気に入るようなことを心がけると気前よく渡してくれるでしょう。
◆判定について(TS46頁)
パラノイアはダイスロールの結果を成功度で決定します。クリティカルとファンブルは存在しません。
バイオレンス4の市民1とバイオレンス10の市民2が腕相撲したとしましょう。
市民1が成功度1、市民2が成功度0の場合は市民1が勝利します。
ファンブルは存在しませんが、出目が20の場合は暴発(バックファイア)と呼ばれる現象が発生します。
出目が20の場合は、たとえ成功していても(横車ポイントを使用し、技能値を20以上に引き上げる)、成功と同時に大変困った事態も引き起こされます(武器の場合はTS88~92頁の不具合)。
筆者がGMを行うセッションの基準ではありますが、成功度5以上で素晴らしい結果、失敗度5以上で目も当てられない結果になるという裁定を取っています。
◆緊張レベルについて(TS49~50頁)
PARANOIA-Oでよくある遊び方は、反逆的な行為の前に必ず「隠密」を組み合わせるプレイヤーが多く見受けられました。
プレイヤーの行動を見張る目はそこかしこに存在しています。
反逆的な行動をする際の判定で、現在の緊張レベル以下の出目を出してしまった場合、誰かに見つかってしまいます。
重要な区画や施設ほど緊張レベルは高く設定され、監視の目が光っています。
◆戦闘について(TS51頁)
パラノイアにはドラマチック・タクティカル・アクション・システムという単純明快な戦闘システムがあります。
イニシアチブ順やDEX順といったものは存在しません。ターンごとにPC・NPCの行動が同時に解決されます。
他の楽しくないTRPGと違い、したいことが自由にできるのです。
◆少市民(ジュニア市民)について(TS79頁)
全ての市民は、少市民の間に教師ボット(ときには人間の管理者)から教育を受けます。一定の年齢になると世間へと出荷されます。
少市民はアルファコンプレックスの未来を左右する人物になるかもしれないという理由から、コンピューターの最大の保護を受けています(UV市民ですら手出しが難しいほどです)。
表現を問わないのであれば「生意気で傍若無人なガキンチョ」として生活しています。
ときおり保護区から脱走し一般セクターへ迷子となることもあります。
◆秘密結社について(TS126~140頁)
FCCC-P(救世主コンピュータープログラマー第一教会)は、コンピューターから唯一認められている秘密結社と思われがちです。
ですがコンピューターを称えている秘密結社だからと言っても秘密結社である時点で関与は反逆的です。
他の秘密結社と同様に所属していることが判明した場合は処罰の対象となります。
何故コンピューターを称えている秘密結社なのに反逆とされるのでしょうか。
FCCC-Pは宗教団体であり、現実の宗教と同じようにいくつもの派閥に枝分かれしています。
その中には派閥争いや過激な宗教裁判を行っている者もいます。
あなたがそのような反逆的な行為に加担していないと誰が証明してくれるのでしょうか。
と、そんなわけで反逆とみなされます。
詳しい経緯などはHP74頁を参照してください。
サイオンは無条件でミュータントパワーを2つ持てると思われがちです。
持つことはできるのですが、結社での階級(TS19頁)が上がると上司に伝授してもらえることがある(TS137頁)程度です。
もちろんGMが許すのであれば開始時点でミュータントパワーを2つ持ってても構いません。
◆コンピューターについて(TS83~85頁)
コンピューターは基本的に善意の存在であり、常にアルファコンプレックスが安全で幸福であるように尽くしています。(HP7頁)
ですが、コンピューターは完全にイかれています。
イかれているものの、善意の存在であるコンピューターは市民への協力を惜しみません。
惜しみはしませんが、様々な事情により協力ができないことはあります。
◆名称について
パラノイアではゲームマスターのことをUV(ウルトラバイオレット)と呼ぶと思われがちですが、実際にはGM(ゲームマスター)が正しい名称になります。それでもGMのことをUVと呼びますか?
よろしい。では、あなたのPCがUVと口にしたとき、たまたま目の前を歩いていたUV市民が機嫌悪そうに振り返ります。
コンピューターは、あなたの友人です。彼(彼女)のことは友人コンピューター、親愛なるコンピューターと呼んでみましょう。
上位市民であっても必ずしも様を付けて呼ぶ必要はありません。
セキュリティクリアランスの上下関係は、たしかに社会的なヒエラルキーの象徴ですが名前がわからなければ「クリアランスのカラーコード+市民」、わかるのであれば「名前+様(もしくはさん)」でも問題はありません。もちろん「クリアランスのカラーコード+様」でも結構です。
◆アルファコンプレックスに存在し、反逆として扱われないもの
中には旧算世界的なものも存在しますが、基本的には検閲されているため、市民の娯楽として提供されています。
ゲーム、ビデオショー(テレビ)、映画
紙(書類)、雑誌(187頁 シナリオなので注意してください)
上位市民が飲食しているリアルフードに関する知識(TS27頁)
また非日常的(例えばロッククライミング)な数々も、反逆技能のように、それらしい理由付けで正当化が認められる場合もあります(TS19頁)。
パラノイアは楽しい。他のゲームは楽しくない。パラノイアを買いなさい。