はじめに

 名古屋市科学館は、1962年にプラネタリウムを含む「天文館」が、2年後に「理工館」、25年後に「生命館」が開館した総合科学館です。テーマは、「みて、ふれて、たしかめて」。展示室には、ボタンを押したり、ハンドルを回したり、歯車を動かしたり、匂いを感じたりしながら科学を学ぶ体験型展示物がたくさん設置されています。

 この名古屋市科学館の特徴は、プラネタリウムにあります。専門の学芸員が内容を考え、映像などを自分たちで作り、その上で星空や天文の話題を生で解説しているのです。もし、学童期を名古屋でお過ごしてあれば、1度は、このプラネタリウムに訪れた記憶を持っていることと思います。小学校4年生や6年生で、ほぼ100%の子どもたちが、学習投影に訪れるからです。プラネタリウムデビューをした子どもたちが大人になり、自分の楽しみとして、再びプラネタリウムや展示を見に訪れる。名古屋ではそんな循環ができているのです。入館者の大人率が60%を超えることからも、決して子どものためだけではない、地域におけるミュージアムとしてのポジションが見えてきます。

 プラネタリウムのプログラムは、いつも、夕暮れからスタートします。学芸員の「今日の太陽を見送り、今日の夜をむかえましょう」という合図とともに、名古屋の街のシルエットが徐々に黒い空に溶け込んでいきます。空が暗くなり、夜の訪れとともに登場するのが、今日の星空。名古屋市科学館では、必ず、街中での今日の星空を解説するところから始まります。それは、プラネタリウムの最大の目標が、本物の星空を見上げてもらうことだからです。今日、プラネタリウムで知ったこと、見たものを、家に帰ってすぐ、本物の夜空で見て欲しい。それが、名古屋市科学館プラネタリウムの一番の願いだからです。

 そんな名古屋市科学館ですが、開館から40年以上が経過した2010年。建物の老朽化、耐震性の低さ、バリアフリー未対応等の理由から、2010年に理工館と天文館が閉館し、2011年に新しく生まれ変わりました。プラネタリウムのドームの大きさは、今までの内径20mから35mへ。より本物の星空に近づけるために、最先端の光学式プラネタリウムを導入し、肉眼で見える6.5等星までを忠実に再現しています。さらに、目に見えない星や波長の世界、また、空間時空を超えた宇宙旅行を再現するために新しくデジタル式プラネタリウムも導入しました。

 新しく生まれ変わった名古屋市科学館プラネタリウム。5年経った今、この新しいプラネタリウムについてのお話を15話にわたって書き綴っていこうと思います。本物の星空に近づけるためにどんな工夫がバックヤードで行なわれているのか、また、どうやって毎月かわるプラネタリウムの番組が作られているのか、そして、新く導入した技術がどのようなもので、どのような役割をしているのか、みなさんに順番にご紹介したいと思います。

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毛利勝廣(もうりかつひろ):

名古屋市科学館学芸課天文係 主任学芸員(天文係長)。プラネタリウムでの解説、映像等の制作、天文事業に関する企画運営を行う。天文現象のCGによる可視化、光害の実態調査、オーロラ等の研究分野を持つ。

岩崎公弥子(いわざきくみこ):

金城学院大学国際情報学部 教授。科学館や水族館をフィールドに子どもたち向けデジタル教材開発やワークショップの企画・実施を行う。専門は、教育工学、情報メディア。

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