• 初版：2022年7月7日

改定：2023年2月6日
2023年7月改訂

2024年3月改訂

2024年10月改訂

BRA Data Preparation Manual

山川宏、田和辻可昌

本マニュアルで作成方法を解説するBRAデータは、BRA作成に必要となる資料の一部であり、必要な資料の全体像は脳型ソフトウェア設計ガイド _ver.2で、解説されている。よって、そのマニュアルを先に一読することを推奨する。

概要

本資料は、WBAアプローチを体現するBRA駆動開発において、BRA(Brain Reference Architecture)のデータを構築する方法を解説するマニュアルである。BRAは、脳の解剖学的構造のデータであるBIF(Brain Information Flow)と、それに整合した仮説的なコンポーネント図である HCD (Hypothetical Component Diagram) から構成される。

HCDとは、脳の解剖学的構造上で興味の対象となる脳領域（ROI: Region of Interest）が担うタスクや機能を達成できるように、そのBIFの構造に整合するように機能を分解した仮説的なコンポーネント図である（図１）^[1]。また、この機能の分解を行うにあたり、機能階層図である機能実現グラフ（FRG: Function Realization Graph）の設計を行う。本マニュアルでは、これらのBIFやHCD、FRGのデータ登録方法を説明する。これらの概念については、脳型ソフトウェア設計ガイド _ver.2、および論文[Yamakawa 21][山川 24]を参照されたい。

以下、HCDに対応するデータを記述するファイルを作業ファイルと呼ぶことにする。またHCDを作成する者をcontributorと呼ぶことにする。

図１：脳参照アーキテクチャ駆動開発の概要図

BRAの作成は、すでに作成されている解剖学的構造のデータ（WholeBIF）を参照して HCDを作成する場合もあるし、必要に応じて、解剖学的構造のBIFとして Circuit や Connection および、その妥当性をサポートする Reference のデータを追記することができる。

BRA駆動開発の詳細については、下記文献 [1] を参照のこと。日本語の概要は、上記論文のプレスリリース文「脳を参考としてヒトのような汎用人工知能を開発する方法論を標準化 」を参照のこと。

シートと各シートにおけるカラムについて

ドキュメント内で変数はイタリック表示としている。

作業ファイルのシート一覧

プロジェクトに対応する作業ファイルには以下のシートが含まれる。

表1: 作業ファイル内に含まれるシート一覧

カラム表記

シートごとのカラムの説明は以下の項目について行われる。

（本ドキュメント内の表の編集は、参照元のこちらのシートを利用すること）

• Col.：  シート上のカラム番号
• 属性： 説明する属性の名前
• 説明： 属性に対する説明
• 値の記述： 属性を記述値の形式
• 必須記述事項： 記述の必要性についての説明

属性は、記述の必要性に応じて以下の種類によって色分けされている。

• mandatory： 記述が必須である
• optional：   記述は任意。（但し、条件に応じて必須となる場合がある。）
• automatic： 自動的に計算されて値が表示される
• Admin Columns：  管理用のカラム群

• pull request：  WholeBIFへの統合をリクエストする際に利用
• review： レコードの内容を審査する際に利用

注意点： 様々なシートにおいてレコード（行）を追加する際には、automatic入力のための計算式が脱落する。その際には、周辺の行から計算式をコピーして補う必要がある。

カラム内で複数項目記述

カラム内で複数の項目を記述する際には原則としてセミコロン”;”で分割し、分割された各項目はカラム内では改行して表示する。

管理用の共用カラム群

レコード毎の管理のために、多くのシートで共通的に利用される管理用のカラム群は以下の属性をもつ。HCDの設計に貢献した活動はContributorとProject IDによって識別される。

表2: 管理用のカラム群（共通）

データ作成手順

HCDの構造を脳の解剖学的構造と整合させるため、HCDはすでに作成されている解剖学的構造のデータであるWholeBIFに記述された構造を流用して作成される。具体的には、HCD上のコンポーネントはWholeBIF上の特定のサーキットに対応づけられ、HCD上の依存関係はWholeBIF上のコネクションに対応付けられる。このHCDの作成では、注目する脳領域であるROI（Region of Interest）とROIで達成する（最上位）機能、すなわちTLF（Top-Level Function）を設定し、TLFを機能分解（FRGの作成）することで行う（詳細は脳型ソフトウェア設計ガイド _ver.2を確認のこと）。

HCDは基本的に WholeBIFを参照して作成する。しかし、必要に応じて解剖学的構造（CircuitやConnection）および、その妥当性をサポートするReferenceのデータを追記することができる。詳しくはBIFデータの作成を参照。

準備

記述手順

Step.1 準備

• HCDを設計するProject IDを決定する

• 参照：Project IDの命名規則

• Google Drive上での作業領域の確保

• 自身が作業を行うためのGoogle Drive上の作業領域を確保する。

Step.2 HCD作業ファイルの作成

作業領域に Template-v2-1-1.braをコピーし（[ファイル]→[コピーを作成]） 、ファイル名を「(プロジェクト名).bra」に変更する。

以下これを作業ファイルと呼ぶことにする。

Step.3 BIFデータの準備

必要に応じて解剖学的構造（CircuitsやConnections）および、その妥当性をサポートするReferencesのデータを追記する。詳しくはBIFデータの作成を参照。

Projectの作成(“Project”シート)

作業ファイルの “Project”シートにおいてProjectを定義する。

カラムの説明

本シートは以下のカラムを含むレコードによって記述される。

表3-1: Projectシートに含まれるカラム#1/2

記述手順

1. Contributorを記述する
2. Project IDを記述する

1. WholeBIFに登録済みのProject IDを登録した場合、エラー出力となる。

1. 但し、自身でWhole BIFにCircuitを登録済みの場合、エラーは無視する

3. 必要に応じてList of contributorsを記述する
4. 必要に応じてDescriptionを記述する

Project IDの命名規則

initial + year + runingTitle の形式を持つString。

特殊文字、空白などの文字は用いないでください。

ここで

• initilal :  アルファベット大文字5文字以内からなる文字列  (a string consisting of alphabets)

• 原則はContributorのイニシャル文字列とするが他の文字列でも良い

• year :  プロジェクト開始年の西暦の下二桁の数字
• runningTitle : 英数文字30文字以内。空白なしで各単語の先頭文字は大文字とする（upper camel case）

• このプロジェクトIDの文字列全体が、既存のプロジェクトIDと重複しないようにランニングタイトルを設定する必要があります。

例：
Example:

自動審査の対象レコード範囲の記述

Projectシートにおいて自動審査の対象となるレコードの範囲を設定する。具体的には、自動審査の対象となるSheet(References、 Circuits、 Connections、FRG)毎に、審査対象とする最終レコードの行数を、表3-2の以下のカラムに記入する。

カラムの説明

表3-2: Projectシートに含まれるカラム#2/2

記録手順

1. 最初の行にReferencesシートについてのReview End Lineを記述する
2. 2番目の行にCircuitsシートについてのReview End Lineを記述する
3. 3番目の行にConnectionsシートについてのReview End Lineを記述する
4. 4番目の行にFRGについてのReview End Lineを記述する

※Review End Lineを適切に設定しないとBRA Review Toolが正常に動作しない。

BIFデータの作成

BIFデータの作成は、本資料の以下の追記によって行うことができる。

• Referencesの追加 (“References”シート)

• BRAデータを作成に必要な参考文献を登録します

• Circuitsの追加 (“Circuits”シート)

• （必須）プロジェクトで対象としている ROI の登録
• 既にWholeBIFに登録されている Circuits 以外で必要なものがあれば登録します

• Connectionsの追加 (“Connections”シート)

• 既にWholeBIFに登録されている Connections 以外で必要なものがあれば登録します

機能実現グラフの作成 (“FRG”シート)

作業ファイルの“FRG”シートを用いて、機能実現グラフのデータ登録を行う。機能実現グラフや機能実現グラフに対する評価の詳細については以下の資料を参照のこと。

• 脳型ソフトウェア設計ガイド _ver.2

カラムの説明

表5: FRGシートに含まれるカラム記述手順

※カラムAEの「Circuit ID」を指定することでカラムのB~ABの値が自動的に計算される。

FRGの記述は、Node／Subnodeの情報、Circuit ID情報、投射情報、機能に関する情報の登録からなる。作業ファイル上の FRGシートを編集する。

※FRGの可視化ツールについて

FRG作成補助ツールとしてFRG可視化ツールが用意されている。Nodeの階層関係の確認などのために適宜利用いただくことを推奨する。可視化ツールについては可視化ツールXML-Viewの使用方法 ver2.0を参照のこと。

Nodeとその依存関係のデータ登録

Step.1 Node IDの登録

必須項目であるNode ID（AC列）の登録を行う。この列を記載することで、A列のNode IDにも同様の内容が自動で表示される。

• Node ID カラムには、Requirement／Capability／Assembly／Uniform Circuit のいずれかを記述し、以下の表の記法に基づき記入する。

• ただし、Requirement での記載が推奨される。

• Requirement名、Capability名にはケバブケース（Kebab-case）を用い、特殊文字やスペースなどを含めないようにする。

表.ew Node IDの構成概念

Step.2 Subnodesの登録

Subnodes列(AD列)に対して各行ごとにNode IDの直下のNode IDを登録する。登録順序は行が上になるほど、FRGの上位のノードになることが望ましい。NodeがLeaf Nodeの行の場合は記述せず、空欄のままにしておく。Leaf Node とは、FRGの末端のノードである（詳細は、脳型ソフトウェア設計ガイド _ver.2）。

複数の Subnode が含まれる場合は「;」で区切ってIDを登録する。このとき、分割された各項目はカラム内では改行して表示する。

記入例：

Step.3 Circuit IDの登録

※Node ID が Leaf Node の行にのみ、本Stepを実行する。

• プルダウンメニューに現れるCircuit IDを選択して、利用するサーキットを登録する
• プルダウンメニューに現れないサーキットを追加して利用したい場合には、Circuitの追加手順に基づいてサーキットの追加を行う。

Step.4 投射情報の登録

※Node ID が Leaf Node の行にのみ、本Stepを実行する。

Projected Circuits 列(AF列)に対して、各行ごとに、以下のカラム毎の情報について登録や確認を行う。

• Leaf Nodeにあたるコンポーネントから投射出力するCircuit IDをProjected Circuits列(AG列)に、項目ごとに改行しながら記述する（行末にデリミタセミコロン”;”を付加する）。

• ただし、Uniform CircuitのみにおいてProjected Circuitsを登録可能である。
• Uniform Circuitでない場合は、空欄のままにしておく。

この操作を終えると、Projected Circuits Valiadtion(AG列)／Uniform Circuits(AH列)／Input Circuits(AI列)／Output Circuits(AJ列)が自動的に計算され、表示される。以下の内容を確認する。

• Projected Circuit Validation 列(AG列)をみて、上記の出力投射がProjections列(Z列)に記述されていることを確認する。

• 表示が “-” の場合：登録は問題なく行われている
• 表示が“ｘ”の場合：登録内容に問題があり、多くの場合、これは登録されたProjected Circuitと当該Node leafに対応するUniform Circuitとの投射関係が、Connectionシートに記載されていないことに由来する。Connectionシートに間接的なConnectionの証拠 を参照をして修正を行う。

• Uniform Circuits 列をみて、以下の内容を確認する。

• NodeがLeaf Nodeの行の場合：

• Uniform Circuitsに表示されたCircuit IDがLeaf Nodeのコンポーネントに割り当てられるCircuit IDになっているかを確認する

• NodeがLeaf Nodeでない行の場合：

• Nodeに含まれている Circuit IDがすべて表示されているかを確認する

• もし、適切な Uniform Circuitが表示されない場合は、Subnodes列全体を見直し、記載漏れがないかを確認する。

• Input Circuits 列において、そのコンポーネントに必要な投射入力があることを確認する。

• この行のサーキットYに対して設計上必要とされる特定のサーキットXからの入力投射が不足している場合には次の対応を行う。
• サーキットXにおけるOutput Circuit 列において、サーキットYを投射先として追加する。

• 最後に、Output Circuits列を見て、特定のサーキットの機能を支える基本情報を確認する。

間接的なConnectionの証拠 (Output Circuit Validationでのエラー対応)

BRA駆動開発では、HCDの設計に利用される接続は解剖学的構造に裏打ちされている必要がある。しかしながら、HCDの設計においては現時点で知られている解剖学的な接続よりも細かいUniform Circuit間での接続を扱うか、より大きなサーキットを扱う必要性が生じる。

こうした事態に対応するために、より大きなサーキット間に接続関係が知られていれば、その部分構造となるUniform Circuit間での接続を許容する記述をConnectionシート上において記述したり、より大きなサーキット間における接続を記述したりする方法を提供している。

具体的には Connectionシート上において以下のように記述する。（Connectionsの追加(”Connections”シート) の「カラムの説明」を参照）

例えば送信側のサーキットでは以下のように記述する。扱いたい送信側のサーキット識別子 (Sender Circuit ID (sCID)) と、文献に記載されたsCIDに対応する回路 (Notation of sCID in Literature) カラムに記載された包含関係 (sCID relation) を記述する。

受信側のサーキットについても同様に、Receiver Circuit ID (rCID)カラム、rCID relationカラム、Notation of rCID in Literatureカラムを利用して記述する。

機能に関するデータ登録

FRGにおけるノードの機能に関連するデータである、Requirement / Capability / Interface / Implementation の記法について示す。各記述内容と記述形式は以下のとおりである。

表. Requirement / Capability / Interface / Implementation の記述内容と記述形式

※各機能属性の概念的な詳細は脳型ソフトウェア設計技術の再検討を参照のこと。

Implementation of Uniform Circuit カラムの記法

Implementationの登録は、Leaf Nodeを対象とする。記述先は「Implementation of Uniform Circuit」列。

対象となるレコード：

• Component のレコード

Implementationカラムでは、Node IDと伝達物質タイプの記法を用いて具体的な実装計算について記述する。記法は以下の通りである。

手順

 1.入力のUC："Input Circuits"(AI列)のリストを用意する

 2. 出力の"Uniform Circuit"(AH列)を取得する

 3. 1, 2で得られた Input Circuitsと出力のCircuit IDを用いて、

 [“Modulation type”(出力のCircuit ID), “Modulation type(I,E)”(出力のCircuit ID),...] = “関数表現” or NodeID(“Modulation type(I,E)”(Input Circuit), “Modulation type(I,E)”(Input Circuit), ...)

  と記述する。

擬似コードの記述例について示す。

関数表現を条件付確率で表す場合：

 ・[I(INAvm)] =  P(INAvm | INAvm, KeepFearState, BAE)

Mechanism カラムの記法

Mechanism カラムには、Neural structureと付帯情報（時定数などを含むパラメータなど）に基づいて、Capabilityを実現するための計算機構を記述する。ただし，文脈情報(Output semantics)を含めない。

記述対象となるレコード：

• すべてのレコード

記述例

• Iutput signal ( InputCircuit ) is modulated by gating motif (C.Gating-1). Gating-1 is modulated from two inhibitory signals (GPe in R.Goal-based-decision and STR) in the manner of OR operation. These two signals are orginated from the input singal ( dmPFC ). The modulated signal is output of this group component ( LHNl ).
• Calculation is conducted with the internally held matrix p(O|S).

Capability カラムの記法

Capability カラムには、機能ノード内部による Mechanismによって実現される機能であり、入力信号から出力信号への変換の記述をする。

• Motif などに代表される、回路の構造（Neural Structure: 興奮性細胞集団と抑制性細胞集団とその解剖学的な結合関係）から実現される文脈非依存の機能。このため、Output Semantics は Capability に記述してはならない。
• 「（複数の）入力信号を出力信号に変換する」は最も汎用的な Capability（※どのような Requirement であっても、この Capability に対応付けられる）であるので、より詳細な Capability がない場合はこれを用いる。

記述対象となるレコード：

• すべてのレコード

記述例

• To modulate input signal ( InputCircuit ) appropriately according to input signal ( dmPFC ) and output the modulated signal (LHNl).
• Generating particular inhibitory pattern signal (STR) from input signal (dmPFC)

Requirements カラムの記法

機能ノードに対する要求としての機能であるRequirementsを説明する。説明は Capability の説明に Output Semantics の情報を加えて記述する。

記述例：

• To generate modulated motor/decision signal (InputCircuit) under negative condition (LHNl)  according to signal of evaluative control (dmPFC)
• To generate motor action selection pattern (STR) from negative (evaluation) condition (dmPFC)

Output Semantics カラムの記法

記述対象となるレコード：

• すべてのレコード

Output SemanticsカラムにはNodeに対応する Group Componentから出力しているすべての Uniform Circuit の Circuit ID とそれらの「出力の信号の意味」を、以下の記述様式にしたがって記述する。

記法

 ”[Circuit ID] Output Semantics の説明;”

• 先頭が[Circuit ID]で始まり、説明文の最後に終端文字(;)を付ける。
• Output Semantics の説明の個所では、以下の文字の使用を禁止する

• [（大かっこ開き）
• ]（大かっこ閉じ）
• ;（セミコロン）

• 終端文字(;)までの間に[Circuit ID]を複数記載してはならない。

記述内容

• Nodeのrequirementの観点から、Node に含まれる Uniform Circuit の出力に対して 外部から与えた信号の意味（外部参照性）[必須]
• 空間的側面 [推奨]

• 座標系（例： 網膜座標系、身体部位中心座標系、外界中心座標系）
• 表現の形式（(例：ベクトル表現 、マップ表現）
• 有効な次元数

• 時間的側面  [任意]

• 神経活動の時間的性質（tonic/burst/phasicなど）
• モデル化に関わる時定数（Processカラムに記することも可能）

なお、参考文献を付記する場合には、適宜カラム内でReferenceを記述し、そのReference を Referenceシートに記述する。

記述にあたっての注意事項

Node には階層構造があるため、上位ノードと下位ノードには同一の Uniform Circuitが含まれることがある。ある Uniform Circuit に対して、上位ノードでの Output semantics の記述と下位ノードでの Output semantics の記述は、特殊ー具体の意味で一貫・整合的である必要がある。

Region categoryがoutputになっている uniform circuit については、必ずしもoutput semanticsを記述する必要はない。この場合は、”(Omitted as optional)”と記載する。

記述例

機能設計に関わる関係の評価に関するデータの登録

設計される機能に関わる関係の評価としては、以下の2つのデータの登録を行う。これらは英語を用いて各カラムに記述する。

• Requirement realization by interface
• Mechanism

Requirement realization by interface

記述内容：

• Interfaceにおける入出力の Output semantics に基づき Requirement を果たせることを説明する．先行する実現事例等を記載する。
• 実現事例は先行研究や先行事例を挙げて記載する。
• [Optional] 詳細なMechanismから実現性を説明できる場合は、「Detailed calculation is written in the column "Mechanism."」と記載し、Mechanismに詳細の説明を譲ってもよい。

記述例：

以下の Output semantics と Requirementsに対するRequriement realization by interfaceの説明例を挙げる．

• Output semantics: [ LHNl ] modulated motor/decision signal under negative (evaluation) condition
• Requirements: To generate modulated motor/decision signal (InputCircuit) under negative condition (LHNl)  according to singal of evaluative control (dmPFC)

Modulated motor/decision signal under negative (evaluation) condition can be calculated with two inputs of motor/decision signal and signal of evaluative control and motor/decision signal. Detailed calculation is written in the column "Mechanism."

Mechanism

記述内容：

• 機能ノード内の Subnodes による処理の相互作用によってCapabilityがどのように実現されるかを説明する．

記述例：

以下のCapabilityに対するMechanismの説明例を挙げる．

• Modulating input signal ( InputCircuit ) appropriately according to input signal ( dmPFC ) and output the modulated signal (LHNl).

Iutput signal ( InputCircuit ) is modulated by gating motif (C.Gating-1). Gating-1 is modulated from two inhibitory signals (GPe in R.Goal-based-decision and STR) in the manner of OR operation. These two signals are orginated from the input singal ( dmPFC ). The modulated signal is output of this group component ( LHNl ).

Region Category列

(Must be in or connected to ROI)が表示された場合の対応方法

このエラーが出た場合は、以下のいずれかの対応を行う。

Referencesの追加 (“References”シート)

“FRG”シートで利用するReference情報が “References”シート内に列挙されている。

このシート内では予め WholeBIFファイル内の “wbReference”の情報が参照されているが、さらに追加したい参考文献をレコード毎に独自に追加することができる。

カラムの説明

Referenceシートは以下のカラムを含むレコードによって記述される。

表7: Referencesシートに含まれるカラム

Referenceの追加手順

本データ内のAカラムにある赤色のセル以降は、WholeBIFのwbReferencesに対する参照である。

よってレコードの追加は、その赤色セルより上の部分に対して行う。

行数が不足する場合には、赤色セルより上に行を挿入して計算式を複製する。

DOIが得られる文献の場合：

文献のDOIが既知であれば、doi2bibサイトの機能を利用して簡単に文献登録を行える。

手順：

1. 追加したい文献のDOIを取得する
2. DOIカラムにDOIを入力する、BibTex linkカラムのBiBリンクをクリックする

1. エラーが表示されたら、一度 https://www.doi2bib.org/ を直接クリックすると回復する場合がある。（特に初回アクセス時）

3. doi2bibサイト内でBib情報を得る「Copy Bib to Clipboard」
4. BibTexカラムに上記情報をペーストする
5. automaticeの列に値が自動的に挿入される
6. 自動的に挿入された値が不適当であったら適宜にBibTexカラムの内容を修正する
7. Literature typeカラムの内容を入力する
8. Contributorカラムに主に作成に貢献した者の名前を登録する（管理用共通カラム群参照）
9. ProjectIDカラムにProjectIDを登録する（管理用共通カラム群参照）

DOIを得られない文献の場合：

文献のDOIを得られない場合には、独自にBibTex情報を作成することで文献を登録する。

手順：

1. 追加したい文献のBibTex情報を作成する（各情報は “{”, “}”で囲む形式）
2. BibTexカラムに上記情報をペーストする
3. automaticeの列に値が自動的に挿入される
4. 自動的に挿入された値が不適当であったら適宜にBibTexカラムの内容を修正する
5. Literature typeカラムの内容を入力する
6. Contributorカラムに主に作成に貢献した者の名前を登録する（管理用共通カラム群参照）
7. ProjectIDカラムにProjectIDを登録する（管理用共通カラム群参照）

Circuitsの追加(“Circuits”シート)

本シートでは以下の2つの対応を行う。

• （必要に応じて）Circuitsを追加する（see: Circuitsの追加）
• （必須）ROIを指定する（see. ROIの指定）

Circuitsの追加

“FRG”シートで利用するCircuits情報が “Circuits”シート内に列挙されている。

このシート内では予め、WholeBIFファイル内の “wbCircuits”の情報が参照されているが、さらに追加したい参考文献をレコード毎に独自に追加することができる。

非Uniform Circuitsからの投射を記述する方法【重要】

BIFデータの記述においては、比較的大きな脳部位である非Uniform Circuitからの投射を記述したくなることがある。例えば、HCDを設計する際には、実現すべき機能仮説を記述するために、非Uniform Circuitから何らかのOutput Semanticsをもつ信号を出力するような記述を行いたくなる。

しかしながらBIFデータにおいて、「投射の始点となれるのはUniform Circuit^[3]のみ」であるため、そうした記述を行うことは許されない。

この場合における望ましい対応策は、非Uniform CircuitsのSub-Circuitsとして解剖学的に既知のUniform Circuitを記述し、そこから投射（出力）を行うというアプローチである。

しかしながら、解剖学的知見の不十分さなどにより、非Uniform Circuit内において投射を担うべきUniform Circuitを特定することが困難な場合も少なくない。その場合の対応策は、非Uniform CircuitsのSub-Circuitsとして暫定的なUniform Circuitを作成し、そこからの出力（投射）を記述することである。なお、そのUniform Circuitの Source of IDを"makeshift"とする。

以上のいずれかの対応策により、非Uniform Circuitsからの投射も、BIF形式に準拠した形で記述できる。

カラムの説明

Circuitシートは以下のカラムを含むレコードによって記述される。

表8: Circuitシートに含まれるカラム

属性の補足説明

Names

サーキットのラベルであり複数記述できる。Circuit IDが 略語(頭字語)の場合、フルネームを左端に書き、同義語を ; 区切りでリストする。英語以外の名前をつけたい場合はISO639コードを@の後につける。Circuit ID と同じ場合は書かなくてもよい。

例：

Example:

DHBA: graph_order

Size

Uniform Circuitのニューロン数を示す。

書式

“[“author, year, size, taxon”]”

ここで

size ：ニューロン数

taxon ：動物種名（Project Sheet の項参照）
author,year = reference ID（Reference Sheet を参照）

Output Semantics (0)

Output Semantics (0)の記述内容は1つ以上のReference (“[“ Reference ID “]”) を含む。
（公式審査では参考文献を確認する。）

Circuitの追加手順

本データ内のAカラムにある赤色のセル以降は、WholeBIFのwbCircuitに対する参照である。よってレコードの追加は、その赤色セルより上の部分に対して行う。

行数が不足する場合には、赤色セルより上に行を挿入して計算式を複製する。

手順：

1. 新たに追加するCircuit IDの文字列を定義する

• 既に存在するCircuit ID文字列と重複しない文字列を定義する
• WholeBIFに存在するCircuit IDを記入するとエラーが出力される
• use only alphanumeric characters, ".", "_", and "~"

2. 特定レコードのCircuit IDカラムに定義した文字列を記述する
3. 同レコードのSource of IDカラムに、Circuit IDの解剖学的な出所を表す以下を記述する。値は以下のいずれかである。このシートには解剖学的な事実を記述するものであるため、例えばHCD構築の必要性等から仮説として導入するCircuitでは “makeshift”と指定する。

• ontology : DHBA、MBA、UBERONなどの外部領域名セットなどの識別子
• “collection” : 複数のサーキットが結合されたサーキット
  Sub-Circuitsに makeshift でないCircuit ID が一つ以上記述される必要がある
• “makeshift”： 暫定的に導入したサーキット
• reference ID: 特定の論文で利用しているサーキットについてその文献IDを記す
  （Reference Sheet の項参照）

4. 同じレコードのNamesカラムに、一般的な脳器官の名前を記述する
5. 登録する脳器官を含む最小のDHBA由来のサーキットのDHBA: graph_orderに対して小数点以下の数字を付与して、DHBA: graph_orderカラムに登録する。
6. 必要に応じて Sub-Circuitsカラム、Super Classカラムを記述する
7. Uniformカラムを記述する
8. Uniform=TRUEの場合には、Transmitterカラム、Modulation Typeカラムを記述する
9. 必要に応じて、Sizeカラム、Output Semantics (0)、Physiological Dataカラム、Process (0)カラムを記述する
10. Contributorカラムに主に作成に貢献した者の名前を登録する（管理用共通カラム群参照）

ROIの指定(必須)

2行目に ROI に関する情報を以下の用法で記載する。

※ROIのsub-circuitsに登録された情報を用いて、FRGシートのRegion Categoryが決定する

Connectionsの追加 (“Connections”シート)

“FRG”シートで利用するConnections情報が “Connections”シート内に列挙されている。

このシート内では予め、WholeBIFファイル内の “wbConnectons”の情報が参照されているが、さらに追加したい参考文献をレコード毎に独自に追加することができる。

なおConnectionは、異なる情報源に基づくならば同じsCIDからrCIDへの投射を複数個登録できる。

なお、カラムA～Fにかかわる、包含関係を含むサーキットの扱いについては、間接的なConnectionの証拠(Output Circuit Validationでのエラー対応) を参照のこと。

カラムの説明

Connectionsシートは以下のカラムを含むレコードによって記述される。contributorが記述するのはカラムA〜Nまでであり、それ以降のカラムN〜ACまでは自動的に計算される。

表9: Connectionsシートに含まれるカラム

Connectionの追加手順

本データ内のAカラムにある赤色のセル以降は、WholeBIFのwbConnectionsに対する参照である。よってレコードの追加は、その赤色セルより上の部分に対して行う。

行数が不足する場合には、赤色セルより上に行を挿入して計算式を複製する。

手順

1. 送信側サーキットの登録（カラムA~Cに記述）

1. カラムAに送信側のサーキット識別子(sCID)を登録する

1. Uniform Circuitのみが登録可能である。
2. 適切なサーキット識別子が存在しない場合には、Circuitシートの行に追加登録する。

2. 文献に記述された対応する回路との解剖学的包含関係をカラムBに記述する

1. 一致していれば “‘=”（アポストロフィー付きの＝記号）、文献上の回路に包含されていれば “<”、文献上の回路を包含していれば “>”と記述する。(但し、プルダウンメニューに現れる“=”は選択しないこと^[4]。）

3. 上記で一致している以外の場合には、カラムCに文献上に記載された回路の識別子を記述する

2. 受信側サーキット識別子(rCID)の登録（カラムD~Fに記述）

1. 記述方法は送信側サーキットと同様

3. 適宜、カラムGにコメントを記述する
4. カラムHに、Reference IDを記述する

1. 間接的であってもサポートしうる証拠を記述する(例えば、粗い粒度では接続の証拠があるなど)

1. c.f .間接的なConnectionの証拠(Output Circuit Validationでのエラー対応)

2. 間接的にも証拠がない仮説として導入するConnectionは”makeshift”と指定する。

5. カラムIに、動物種を記述する
6. カラムJに、測定方法（Measurment mehod）を記述する

1. Measurement methodの選択肢が無い場合

1. 適当な選択肢が表示されない場合は、エラーを無視して書き込む。

2. Measurement method が当該文献上で明らかで無い場合の対処

1. 該当セルでは、(No description) を選択する。
2. 当該文献上で、その根拠として参照している文献を調査して、新たなConnection 行として追加する。

7. 文献上での記述箇所として少なくとも以下の一報を記述する

1. カラムKに文献中での投射に言及した文章を引用する
2. カラムLに文献中で投射を示した図面を指定する

8. この投射の信憑性を高めるために、文献中のリファレンスに基づいて深掘りした文献のReference IDをカラムMに記述する。
9. Contributorカラムに主に作成に貢献した者の名前を登録する（管理用共通カラム群参照）

GraphGeneratorの使い方

GraphGeneratorとは

BRA data の Template ver.2.2 以降より「GraphGenerator」が利用できる。GraphGenerator では、Contributor が登録をしたシートの情報を参考に、BIF/HCD/FRG Imageに関する draw.io の情報を自動で出力する。

図にあるように、データ上部の「GraphGenerator」を押下することで、Graph Generator の機能を呼び出すことができる。Graph Generator には、以下の機能が含まれる。

1. BIF Generator：Circuits, Connectionsシートに記載された情報から、BIF Imageを作成するための draw.io 情報を表示する
2. HCD Generator：FRGシートに記載された情報から、HCD Image を作成するための draw.io 情報を表示する
3. FRG Generator：FRGシートに記載された情報から、FRG Image を作成するための draw.io 情報を表示する

表示された情報を draw.io で処理することで、Image を作成することができる。以下では、GraphGeneratorの使い方の手順を説明する。

図. GraphGenerator は Template 上部の「GraphGenerator」を押下することで利用できる。

BIF Generator による BIF Image の作成手順

※Draw.io による Image の表示方法は共通しているため、本節の最後「Draw.io による Image の表示方法」に示す。

1. Circuits シートと Connections シートに必要な情報を記載する。
2. BRA data のシート上部にある「GraphGenerator」から「BIF Generator」を選択する。
3. 出力された画面の内容（図）をすべて選択し、コピーする。
4. Draw.io を開き、コピーした内容を表示する。

図. BIF Generator を実行した出力結果（登録されていたBIFに基づいて出力結果が変わる）

HCD Generator による HCD Image の作成手順

※Draw.io による Image の表示方法は共通しているため、本節の最後「Draw.io による Image の表示方法」に示す。

1. FRGシートに必要な情報を記載する。
2. BRA data のシート上部にある「GraphGenerator」から「HCD Generator」を選択する。
3. 出力された画面の内容（図）をすべて選択し、コピーする。
4. Draw.io を開き、コピーした内容を表示する。

FRG Generator による FRG Image の作成手順

※Draw.io による Image の表示方法は共通しているため、本節の最後「Draw.io による Image の表示方法」に示す。

1. FRGシートに必要な情報を記載する。
2. BRA data のシート上部にある「GraphGenerator」から「FRG Generator」を選択する。
3. 出力された画面の内容（図）をすべて選択し、コピーする。
4. Draw.io を開き、コピーした内容を表示する。

Draw.io による Image の表示方法

BIF Generator, HCD Generator, FRG Generator を実行後、自身のGoogle drive の作業フォルダにて、以下の手順で Image を作成する。

1. Drive の作業フォルダにて、右クリック。「draw.io」（「その他」→「draw.io」）を選択
2. 「ダイアグラム名」（ファイル名）を記入し、「白紙ファイル」を選択して、「作成」を押す。
3. 「配置」→「挿入」→「高度な設定」→「CSV…」を選択する
4. 表示された画面の内容をすべて削除し、Generator実行後表示された画面の内容を貼り付ける。
5. 「インポート」

以上の手続きで、BRA Images の様式に従った図が自動で生成される。

Review Commentsへの対応

ライセンス

WholeBIFのライセンスは、ファイル内の「License」シートを参照。

References

[1] Yamakawa, H. (2021). The whole brain architecture approach: Accelerating the development of artificial general intelligence by referring to the brain. Neural Networks: The Official Journal of the International Neural Network Society, 144, 478–495. https://doi.org/10.1016/j.neunet.2021.09.004 

[2] 山川 宏. (2022). 全脳アーキテクチャ ─ 機能を理解しながら脳型AIを設計・開発する ─. In 横澤一彦 (Ed.), 認知科学講座4 心をとらえるフレームワークの展開 (pp. 209–249). 東京大学出版会. http://www.utp.or.jp/book/b609203.html

[3] 山川 宏、田和辻 可昌、宮本 竜也、荒川 直哉、芦原 佑太、布川 絢子、高橋 恒一、松尾 豊 (2024). 脳計算機能の効率的なリバースエンジニアリングのためのデータ記述形式, 信学技報NC研究会, 123:418, 53-58. https://ken.ieice.org/ken/paper/20240312JccC/